ティリの監督就任は、単に海外の有名指導者を招聘したという話ではありません。日本バレーボール協会(JVA)が掲げるロサンゼルス2028五輪でのメダル獲得という目標に向けた、人選でした。
日本バレーボール協会が評価した3つのポイント2024年11月25日、JVAは男子日本代表の次期監督候補としてティリの就任内定を発表しました。監督候補者選考委員会を設置し、複数の候補者を検討したうえでの決定です。
同年12月の就任内定会見で、川合俊一会長は選考理由について説明しています。
東京2020オリンピックで初めてフランスチームを金メダルに導いた実績と、日本のクラブチームで監督をしており、日本選手の気質や風土などに慣れている。
出典:日本バレーボール協会・2024年12月の新監督就任内定会見
この説明から、選考の要点は次の3つに整理できます。
1. オリンピックで優勝した実績
東京五輪でフランスを金メダルに導いた経験は、最大の評価材料です。五輪の大舞台で選手の能力を引き出し、長期間にわたる強化を成功させた実績があります。
2. 日本のバレーボールへの理解
大阪ブルテオンでの指導経験があり、日本人選手の技術やプレー環境を把握しています。海外から新たに招聘される指導者と比べ、国内事情を理解するための時間を短縮できる利点があります。
3. ロサンゼルス五輪でのメダル獲得を目指せること
日本代表には石川祐希や髙橋藍など、世界トップレベルでプレーする選手がいます。JVAは、既存の選手の能力にティリの国際経験を組み合わせ、さらに高い競技力を目指す構想を示しました。
ロラン・ティリの評判は?指導者としての評価ティリの評判を判断するうえでは、肩書や知名度よりも、実際に残した成績を見ることが重要です。
| 評価項目 | 客観的な実績 |
|---|---|
| 国際的な実績 | 東京五輪金メダル |
| 長期的な指導力 | フランス代表を約10シーズン指揮 |
| 国内クラブへの理解 | 日本のクラブで複数シーズン指導 |
| 日本代表での成果 | 2026年アジア選手権優勝 |
| 課題 | 五輪本大会での日本代表のメダル獲得はこれから |
とりわけ注目したいのは、ティリが短期間の大会成績だけでなく、長期的な代表強化の経験を持っている点です。フランス代表では2015年の欧州選手権、2015年と2017年のワールドリーグ、2021年の東京五輪と、複数の国際大会で結果を残しました。
一方、日本代表監督としての評価は、東京五輪でのフランスの優勝だけで決められるものではありません。日本代表での成績や、2028年五輪に向けたチームの成熟度も含めて判断する必要があります。2026年の実績は、その評価を大きく前進させる材料になっています。
【2025~2026年の戦績】VNLとアジア選手権で日本代表はどう変わった?

ティリ体制の戦績を見ると、就任直後から順調に優勝を重ねたわけではありません。
2025年は世界の強豪との競争を通じてチームを整え、2026年にはネーションズリーグでの好成績とアジア選手権制覇につなげました。
2025年:新体制のスタート2025年の男子ネーションズリーグでは、日本は予選ラウンドを8勝4敗で通過しました。
ファイナルラウンドでは準々決勝でポーランドに敗れ、最終順位は6位。続く2025年男子世界選手権では最終順位7位でした。
この時点では、東京五輪でフランスを優勝させた監督が日本でもすぐに優勝を実現したわけではありません。
ただし、代表チームの強化は一大会だけで評価できるものではありません。選手のコンディションや国際大会の対戦相手、複数大会を通じた選手起用など、さまざまな要素が影響します。
2026年:ネーションズリーグで予選12戦全勝2026年のネーションズリーグでは、日本代表が予選ラウンドで大きな存在感を示しました。
- 予選ラウンド:12勝0敗
- 予選順位:1位
- 準決勝:アメリカに2-3で敗戦
- 3位決定戦:スロベニアに1-3で敗戦
- 最終順位:4位
予選12試合を全勝で終えたことは、ティリ体制の競争力を示す成果です。一方、決勝ラウンドでは準決勝と3位決定戦を落とし、メダルには届きませんでした。
この結果から読み取れるのは、日本が世界トップクラスと互角に戦う力を高めている一方、決勝ラウンドで勝ち切るための課題も残しているということです。
2026年9月:男子アジア選手権で優勝、ロス五輪出場権を獲得2026年9月13日、日本男子代表は福岡・北九州市立総合体育館で開催された男子アジア選手権の決勝に進出しました。
対戦相手は強豪イラン。日本はセットカウント3-0で勝利し、アジア王者に輝きました。
決勝の試合結果
| セット | 日本 | イラン |
|---|---|---|
| 第1セット | 25 | 21 |
| 第2セット | 26 | 24 |
| 第3セット | 25 | 23 |
| 最終結果 | 3 | 0 |
この優勝は、2大会連続、通算11度目のアジア制覇です。日本は1次リーグから6連勝で大会を終えました。
さらに大きかったのが、優勝チームに与えられる2028年ロサンゼルス五輪の出場権を獲得したことです。
日本オリンピック委員会(JOC)も2026年9月13日付で、男子日本代表の五輪出場決定を発表しました。
これはティリ体制にとって、2025年の始動から約1年半で手にした大きな成果です。
2026年の主な成果を整理| 大会 | 結果 | 意味 |
|---|---|---|
| VNL2025 | 6位 | 新体制の国際大会初年度 |
| 2025年世界選手権 | 7位 | 世界大会での競争力を確認 |
| VNL2026 | 4位 | 予選12戦全勝 |
| 2026年男子アジア選手権 | 優勝 | アジア連覇・五輪出場権獲得 |
VNLでは世界の強豪との競争力を示し、アジア選手権では確実に優勝をつかんだ。この2つの結果を合わせて見ると、ティリ体制の強みと今後の課題が見えてきます。
なお、アジア選手権とアジア競技大会は別の大会です。 ロサンゼルス五輪の出場権を獲得したのは、2026年9月の男子アジア選手権で優勝したためです。愛知・名古屋で開催されるアジア競技大会の優勝によるものではありません。
【ティリ監督の戦術と指導方針】日本代表をどう変えるのか
ティリの指導方針を理解するには、東京五輪でのフランス代表の実績と、日本代表就任時に示した発言を合わせて見る必要があります。
注目すべきなのは、日本代表が持つ技術力を土台にしながら、国際大会で勝ち抜くための経験やチーム全体の強さを加えようとしていることです。
1. 日本の技術力を生かし、国際経験を融合するティリは2024年の就任内定会見で、日本代表にはすでに高い技術力があると評価しました。
そのうえで、自身が経験してきたオリンピックや国際大会での指導経験を組み合わせ、新たな力を生み出したいという考えを示しています。
この方針は、日本のバレーボールを一から作り替えるものではありません。
石川祐希や髙橋藍らの持つ技術、選手同士の連係、粘り強くボールをつなぐ能力を生かしながら、世界の強豪と対戦するための総合力を高める方向性です。
2. 主力選手だけに依存しない選手層の強化2026年度の男子日本代表登録メンバーは、JVAの発表によると37人です。初選出の選手も4人含まれています。
これは単に登録人数を増やしたというだけではありません。
長期間にわたる国際大会では、主力選手の疲労や負傷、相手チームとの相性などによって、必要な選手や戦い方が変わります。
そのため、複数のポジションで競争力を維持できる選手層を確保することは、五輪を目指すチームにとって重要な課題です。
2026年の代表メンバーには、石川祐希、髙橋藍、西田有志といった実績のある選手に加え、若手や新たな候補選手も含まれています。
3. VNLを五輪に向けた準備の場として活用する2026年6月4日のJVA発表では、ティリ監督がシーズンの目標について説明しています。
その内容は、アジア選手権を最重要大会と位置づけ、ネーションズリーグを世界ランキングの維持・向上とアジア選手権への準備に活用するというものです。
つまり、すべての大会で同じ目標を設定するのではなく、大会ごとに役割を持たせる強化方針です。
VNLで世界の強豪と対戦して課題を洗い出し、重要な大会に向けてチームの完成度を上げる。その流れが2026年のアジア選手権優勝につながったと考えられます。
4. 目指すのはロサンゼルス五輪のメダルアジア選手権優勝によって五輪出場権を確保した日本ですが、最終目標は出場することだけではありません。
日本代表は1972年ミュンヘン五輪で金メダルを獲得して以来、五輪の表彰台から遠ざかっています。
ティリは就任内定時から、ロサンゼルス五輪でメダルを目指す姿勢を明らかにしていました。2026年9月の出場権獲得は、その目標に向けた大きな前進です。
【プロの結論】男子バレー日本代表の監督を見るときの3つの判断基準
男子日本代表の監督を評価するとき、東京五輪の金メダルやアジア選手権の優勝といった華やかな実績だけを見るのでは、チームの実力を正しく理解できません。
専門的な視点では、次の3点が重要です。
① 世界の強豪との直接対決
アジア選手権で勝つことと、オリンピックでメダルを獲得することは別の難しさがあります。VNLのように世界の強豪と継続的に対戦する大会で、どれだけ勝ち切れるかが問われます。
② 主力選手と若手の融合
石川や髙橋といった中心選手だけでなく、次世代を担う選手がどこまで成長するか。五輪本大会では選手層の厚さが結果を左右します。
③ 大会終盤の勝負強さ
2026年VNLでは予選12戦全勝を達成しながら、準決勝と3位決定戦では敗れました。重要な局面で勝ち切る力を高められるかが、今後の大きな評価ポイントです。
ティリの強みは、フランス代表を五輪優勝に導いた経験と、日本のクラブチームで培った国内事情への理解を併せ持っていることです。2026年のアジア選手権優勝は、その経験が日本代表でも成果につながり始めたことを示しています。
男子バレー日本代表の監督に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、男子バレー日本代表の監督は誰ですか?
A1:フランス出身のロラン・ティリです。2024年11月に就任内定が発表され、2025年から男子日本代表を率いています。
Q2:ロラン・ティリ監督は何歳ですか?国籍はどこですか?
A2:1963年12月1日生まれで、2026年11月5日時点では62歳です。フランス出身の指導者です。
Q3:ロラン・ティリ監督は東京五輪で優勝した監督ですか?
A3:はい。2021年の東京五輪でフランス男子代表を率い、金メダルを獲得しました。
Q4:フィリップ・ブラン前監督は現在どうしていますか?
A4:ブランは2024年パリ五輪後に男子日本代表監督を退任しました。後任としてティリが就任しています。
Q5:2026年の男子アジア選手権で日本は優勝しましたか?
A5:はい。2026年9月13日の決勝でイランを3-0で破り、2大会連続11度目の優勝を果たしました。
Q6:日本はロサンゼルス五輪の出場権を獲得していますか?
A6:はい。2026年男子アジア選手権で優勝したことにより、2028年ロサンゼルス五輪の出場権を獲得しています。
Q7:ティリ監督の最大の目標は何ですか?
A7:2028年ロサンゼルス五輪でのメダル獲得です。出場権を確保した現在は、世界の強豪に勝ち抜けるチームづくりが焦点になっています。
2026年現在、男子バレー日本代表の監督はロラン・ティリです。
フランス代表を東京五輪の金メダルに導いた実績を持ち、日本のクラブチームでの指導経験もあるティリは、日本代表の技術力と国際大会で培った経験を融合させる役割を担っています。
2025年はVNL6位、世界選手権7位からのスタートでしたが、2026年にはVNL予選12戦全勝、アジア選手権優勝、そしてロサンゼルス五輪出場権獲得という成果を残しました。
今後の注目点は、アジアでの強さを世界大会でも発揮できるかどうかです。東京五輪でフランスを頂点に導いた名将が、今度は日本代表でどこまで高い目標を実現できるのか。2028年ロサンゼルス五輪に向けたティリ体制の挑戦は、すでに次の段階に入っています。
主な参考資料:日本バレーボール協会(JVA)、日本オリンピック委員会(JOC)、Volleyball World、2025・2026年国際大会公式記録。