旧ビッグモーターで修理や車検を受けた人にとって、最も気になるのは「支払った修理代金は戻ってくるのか」という点だろう。
株式会社BALMは2024年11月20日、過去の自動車修理に関する被害回復方針を公表した。対象は、原則として2018年1月1日から2023年8月31日までの事故について、旧ビッグモーターの修理工場で修理を受けた約20万人。損害保険会社や共済組合の協力を得て、不適切な行為またはその疑いが確認されたケースについて対応するという内容だった。
BALMが示した被害回復の3つの分類| 問題の種類 | 具体的な内容 | 基本的な対応 |
|---|---|---|
| 修理未履行 | 合意した修理を実施していない疑い | BALMが実際の損害を補償 |
| 作業費の不適切請求 | 不要な作業費を顧客に直接請求した疑い | BALMが実際の損害を補償 |
| 保険金の不適切請求 | 不要な作業などを保険会社に請求した疑い | BALMと保険会社が連携して対応 |
重要なのは、3番目の保険金不適切請求では、返金先が必ずしも顧客本人になるわけではない点だ。BALMの説明では、保険会社に対する不適切な請求については、BALMから保険会社への返金が発生する。顧客には、保険会社の判断に応じて保険利用や等級変更などの手続きが案内される。
一方、修理未履行や顧客への直接請求に問題があった場合は、BALMが顧客に生じた損害を実額補償する方針を示している。
2026年現在も返金請求はできる?過去の修理について不安がある場合、まずBALMに問い合わせることが考えられる。2024年11月の方針では、対象期間の修理を受けた顧客に対して順次案内を送付し、該当するケースには個別に被害回復の対応を行うとしていた。
ただし、対象となる約20万人全員に一律の返金が行われる制度ではない。個別の修理内容、作業記録、見積書、写真などを調査したうえで、問題の有無や補償内容を判断する仕組みだ。
また、2026年11月時点でBALMの公式サイトに掲載されている2025年10月31日付の最新の利益回復報告は、下請事業者への対応に関するものである。一般顧客の修理被害に対する個別案件の進捗を示すものではないため、返金状況を一律に判断することはできない。
返金請求を進めるために準備したい資料申し出を行う前に、次の資料をできる限り集めておくと、調査が進めやすくなる。
- 修理時の見積書・請求書
- 車検証と車両情報
- 修理内容が分かる明細書
- 修理前後の写真
- 部品交換や整備に関する記録
- 保険会社から届いた保険金支払い通知
- 保険証券や事故受付番号
- BALMやWECARSとの過去のやり取り
- 支払いを証明できる領収書や振込記録
書類が手元にない場合でも、修理した時期、利用店舗、事故の内容、保険会社などを整理して相談するとよい。保険会社側に過去の事故資料や見積書が保存されている可能性もある。
車検・修理のクレームで実践したい4つの手順
利用時期と契約先を確認する
2024年5月1日以前の旧ビッグモーターでの修理なのか、それ以降のWECARSでの取引なのかを確認する。
請求内容と実際の作業を照合する
部品交換、整備、板金、塗装など、請求書の項目と実際の作業内容に食い違いがないか確認する。
第三者の整備工場で点検を受ける
必要に応じて別の認証整備工場などに点検を依頼し、車両の状態や不具合について書面で説明を受ける。
担当する会社と保険会社に書面で申し出る
修理不正の補償はBALM、現在のWECARSのサービスに関する苦情はWECARS、保険金や等級の問題は保険会社に相談する。
修理内容を巡って意見が対立した場合は、口頭でのやり取りだけで終わらせず、問い合わせ日時、担当者、回答内容を記録しておきたい。高額な返金請求や損害賠償に発展する場合には、弁護士への相談も選択肢になる。
国土交通省が取りまとめた透明性確保ガイドラインでも、作業内容の説明や作業前後の画像保存が重視されている。消費者側も、見積もりと実際の整備内容を確認できる状態にしておくことが、同様のトラブルを防ぐうえで有効だ。
【2026年最新】WECARSの運営体制とビッグモーターからの変化

旧ビッグモーターの店舗は、現在WECARSのブランドで運営されている。新会社は旧経営陣を含まない新しい経営体制を構築し、伊藤忠グループなどの支援を受けながら事業再建を進めてきた。
2026年のWECARSの会社概要| 項目 | 2026年時点の情報 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社WECARS |
| 代表取締役社長 | 吉田朋史 |
| 設立 | 2024年1月 |
| 店舗数 | 242店舗 |
| 従業員数 | 4,319人 |
| 店舗・従業員数の基準日 | 2026年3月 |
| 主な事業 | 中古車・新車販売、買取、車検、一般整備、板金塗装 |
代表取締役社長は2026年4月1日付の社長メッセージで吉田朋史氏となっている。会社概要によれば、2026年3月時点で242店舗、従業員4,319人を擁する事業規模だ。
伊藤忠商事などによる事業再建2024年5月1日の新会社発足には、伊藤忠商事、伊藤忠エネクス、ジェイ・ウィル・パートナーズが関与した。旧ビッグモーターの事業と従業員を承継しつつ、経営や内部統制の改革を進める枠組みが設けられた。
WECARSの2026年4月の社長メッセージでは、3社の新しい株主による組織風土改革を実施し、内部統制や管理体制を一定程度整えたと説明している。加えて、販売・買取・整備の各事業を組み合わせた成長を目指す方針も示した。
ただし、会社側が改革の進捗を説明していることと、消費者が実際の店舗対応に満足していることは別の問題だ。信頼回復を評価するには、苦情への回答、作業説明、整備品質、再発防止の実効性を継続的に見る必要がある。
2026年11月の注目動向は自賠責保険の取扱い2026年11月2日、WECARSは自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責保険の取扱いを2026年12月1日から開始する予定と発表した。
対象は当初、関東地区の5店舗で、多摩店、鴻巣店、熊谷店、つくば店、千葉店。引受保険会社はAIG損害保険である。これは旧ビッグモーターの代理店登録取消し後、新しい法人であるWECARSが改めて代理店登録を受けたことによる動きだ。
特に注目されるのは、WECARSが保険募集に関する管理体制を新たに構築した点である。同社の発表によると、自動車の販売・車検を担当する部門とは独立した保険・物流統括部を設置し、コンプライアンス推進部や独立した監査機能を含む三線管理体制を整備した。
また、任意自動車保険については、WECARS自身が募集する形ではなく、ほけんの窓口グループが運営する店舗併設の専用ブースで相談を受け付ける方針だ。自賠責保険の取扱いと任意保険の相談業務を区別し、整備・修理と保険募集の利益相反を防ぐ狙いがある。
したがって、今回の代理店登録を「旧ビッグモーターの保険代理店業務が全面的に復活した」と理解するのは正確ではない。対象は自賠責保険であり、取扱開始も2026年12月1日の予定である。
【ビッグモーターのクレーム対応・評判】現在の評価で注意したいポイント
WECARSへの名称変更によって、旧ビッグモーターに対する消費者の不信感が直ちに解消したわけではない。一方で、旧会社と新会社の事業・責任関係を区別せず、過去の口コミだけで現在の全店舗を評価することにも注意が必要だ。
誤解しやすい4つのポイント誤解1:ビッグモーターは名前が変わっただけで、会社も同じ?
旧ビッグモーターの事業をWECARSが承継したが、会社の法人格は別である。旧会社はBALMとして存続し、過去の不正請求に関する補償業務などを担っている。
誤解2:過去に利用した人は全員返金される?
一律返金ではない。BALMの公表方針では、個別に不適切な行為またはその疑いが確認された案件について、修理未履行、顧客への不適切請求、保険金不適切請求の分類に応じて対応する。
誤解3:中古車購入のトラブルもすべてBALMに相談する?
問題の内容によって異なる。現在のWECARSとの売買契約や購入後のサービスについてはWECARSが基本的な窓口になる。旧ビッグモーター時代の中古車表示については、契約書や対象車両を確認し、必要に応じてWECARSと消費生活センターに相談したい。
実際、2024年7月24日には、旧ビッグモーターが2022年9月3日から2023年11月7日までに販売した中古車30台について、車体骨格部分に損傷歴があったにもかかわらず「修復歴なし」と表示していた問題で、消費者庁が措置命令を出した。事業承継会社としてWECARSがこの措置命令を受けている。
誤解4:2026年に自賠責保険を扱うなら、過去の問題は解決した?
代理店登録は、新たな保険取扱いに必要な要件を満たしたことを意味する。しかし、それだけで過去の顧客被害への補償が完了したことや、再発防止策が十分に機能していることまで証明するものではない。
現在のクレーム対応を評価する判断基準WECARSやBALMに申し出る際は、次の点を確認すると、対応の適切さを判断しやすい。
- 作業内容と請求金額について具体的な説明があるか。
- 交換した部品や修理箇所について証拠が提示されるか。
- 苦情の受付番号や担当部署が明確になっているか。
- 調査結果や返金の判断が書面で示されるか。
- 返金しない場合、その理由と根拠が説明されるか。
- 保険会社と整備会社の責任分担が明確になっているか。
口コミや評判を見る際にも、旧ビッグモーター時代の投稿と、WECARS発足後の投稿を分けることが大切だ。店舗や担当者によって経験が異なるため、ネット上の評価だけで全体のサービス品質を判断するのは難しい。
消費者にとって重要なのは、企業の広告やブランドイメージよりも、自分の車に何を行い、いくら請求し、問題があったときにどう説明してくれるかという具体的な対応である。
【ビッグモーターのクレーム】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:旧ビッグモーターに修理を依頼した場合、現在はどこに苦情を申し出ればよいですか?
A1:過去の不適切な修理や保険金不正請求に関する補償は、株式会社BALMが引き継いでいます。BALMの公式問い合わせ窓口を利用してください。保険金や等級変更の問題は、当時加入していた損害保険会社にも相談が必要です。
Q2:ビッグモーターで車検を受けた場合、返金してもらえますか?
A2:車検を受けたという理由だけで自動的に返金されるわけではありません。実際に行われなかった整備や不適切な請求が確認されるかどうかがポイントです。見積書、整備記録、請求書などを集めてBALMや消費生活センター188に相談してください。
Q3:ビッグモーターの保険金水増し請求で、自動車保険の等級は下がったままですか?
A3:必ずしもそのままとは限りません。保険会社による調査の結果、不適切な請求が判明し、保険利用や等級訂正の対象になる場合があります。当時の事故受付番号や保険契約情報を準備し、加入していた保険会社に問い合わせてください。
Q4:WECARSは2026年現在、損害保険を取り扱っていますか?
A4:2026年11月6日時点では、WECARSは12月1日から自賠責保険の取扱いを開始する予定です。当初の対象は関東地区の5店舗です。任意自動車保険については、ほけんの窓口グループの専用ブースで相談する仕組みを案内しています。
Q5:WECARSと旧ビッグモーターのクレーム窓口は同じですか?
A5:異なります。WECARSの現在の店舗・サービスについては0120-733-500、旧ビッグモーターの過去の不正請求や補償についてはBALMの公式問い合わせ窓口が基本です。内容に応じて使い分けてください。
ビッグモーターの不正請求問題は、単なる修理費用の水増しにとどまらず、整備現場の管理、経営陣の監督責任、損害保険代理店としての業務管理など、複数の問題が重なった事案だった。
2024年5月には事業がWECARSに承継され、旧会社はBALMとして過去の不正事案に関する補償業務などを担う体制となった。2026年にはWECARSが242店舗を展開し、12月から自賠責保険の取扱いを始める予定となるなど、新しい事業展開も進んでいる。
ただし、企業の再建と過去の被害回復は別の問題である。旧ビッグモーター時代の修理代金や保険金請求に疑問がある場合は、BALMと保険会社に確認することが先決だ。現在のWECARSの店舗や車検に関するトラブルなら、WECARSのお客様相談窓口を利用したい。
修理内容の証拠を残し、見積もりと実際の作業を照合し、必要なら第三者の整備工場や消費生活センター188の助言を受ける。これが、過去のトラブルを解決し、今後の自動車購入や整備で同じ問題を避けるための基本となる。
信頼回復を測る本当の基準は、社名や店舗数ではない。顧客に対して整備内容を透明に説明し、問題が起きたときに責任の所在を明確にして、納得できる被害回復を実行できるかどうかにある。
記事基準日:2026年11月6日
主な参照資料:国土交通省、金融庁、関東財務局、消費者庁、国民生活センター、株式会社BALM、株式会社WECARS、伊藤忠商事、日本損害保険協会。