ドクターショッピングとは、自分の症状や診断、治療方針に納得できず、同じような症状について複数の医療機関を次々と受診する行動を指します。医師を変えて別の意見を求めること自体は患者の正当な選択ですが、これまでの診療内容を共有せずに受診を繰り返すと、重複検査や薬の重複、治療開始の遅れなどにつながる可能性があります。
一方、ドクターショッピングとセカンドオピニオン、転院は同じものではありません。大切なのは、複数の医師の意見を聞くことを避けるのではなく、診療情報を適切に引き継ぎながら、自分が納得できる医療を受けることです。2026年の日本の医療制度も踏まえ、ドクターショッピングが起こる原因や心理、実際の問題点、医療費への影響、かかりつけ医への相談方法まで詳しく解説します。
【基礎知識】ドクターショッピングとは?意味・定義と具体的な行動

ドクターショッピングは、英語の「Doctor Shopping」に由来する言葉です。
医療の分野では、患者が同じ症状や病気について複数の医師や医療機関を次々と受診する行動を指します。
例えば、頭痛が続いて内科を受診したものの、診断や治療に納得できず、別の内科、脳神経内科、総合病院などを続けて受診するケースが挙げられます。
特に、前の医療機関で受けた検査や処方、医師の説明などを次の医療機関に十分伝えず、毎回新しい診察を受ける状態は、ドクターショッピングの典型例です。
ただし、複数の医療機関を受診したという事実だけで、ドクターショッピングと判断することはできません。
症状が改善しない場合や、専門的な検査が必要な場合、現在の医師とは異なる専門医の判断を求める場合など、複数の医療機関を利用することには合理的な理由があります。
ドクターショッピングの具体例代表的な行動には、次のようなものがあります。
- 同じ症状について、短期間に複数の病院やクリニックを受診する。
- 医師の診断に納得できず、別の病院で同じ検査を繰り返す。
- 処方された薬の効果を十分に確認する前に、別の医師から違う薬を処方してもらう。
- 自分が期待する診断や治療法を提示してくれる医師を探し続ける。
- 以前の医療機関での検査結果や治療内容を新しい受診先に伝えない。
重要なのは、受診した医療機関の数ではなく、受診の目的と診療情報の共有状況です。
ドクターショッピングは病気や性格の問題なのかドクターショッピングは、それ自体が医学的な病名や精神疾患の診断名というわけではありません。
患者が複数の医師を訪ねる背景には、身体的な症状が改善しないことや、診断が難しい病気、医療者とのコミュニケーション不足など、さまざまな事情があります。
心理的な不安が関係することもありますが、すべてを患者の性格や精神的な問題に結び付けるのは適切ではありません。
実際、2009年に公開された厚生労働科学研究の報告では、ドクターショッピングを経験した患者の最終診断について、身体的な疾患に関する診断だけでなく、心理社会的な問題に関する診断も確認されています。
つまり、ドクターショッピングという行動の背景には、身体面と心理面の両方から検討すべき課題があります。
【原因と心理】なぜドクターショッピングを繰り返してしまうのか
ドクターショッピングが起こる背景には、単純な医師への不満だけでは説明できない複数の要因があります。
1. 診断結果に納得できず不安が残る最も代表的な理由は、自分の症状について十分に理解できないことです。
検査で異常が見つからなかったとしても、本人が痛みや不調を感じている事実は変わりません。
「検査では異常がないと言われたけれど、実際にはつらい」
「本当にこの診断で間違いないのだろうか」
「重大な病気を見逃しているのではないか」
こうした疑問が解消されないと、別の医師なら原因を見つけてくれるのではないかと考えるようになります。
日本医科大学武蔵小杉病院の総合診療科の医師らによる2023年の医学記事でも、体調に関する不安や疑問が解決されないことが、次々と医療機関を受診する行動につながると説明されています。
2. 治療効果が感じられない薬を服用しても症状が改善しない場合、患者は現在の治療が適切なのか疑問を抱きます。
特に、慢性的な痛み、頭痛、めまい、倦怠感、消化器症状など、原因の特定や治療に時間がかかる症状では、改善を実感できるまでに時間が必要な場合があります。
しかし、患者側からすると、治療を続ける理由や改善までの見通しがわからなければ、不安が大きくなります。
その結果、別の病院で新しい治療を試したいという気持ちが強くなることがあります。
3. 医師の説明が十分に理解できていない医療現場では、専門用語や検査結果を使って病状を説明することがあります。
患者が説明の内容を理解できなかったり、質問する時間がなかったりすると、診断そのものへの不信感につながる可能性があります。
例えば、次のような状況です。
- 病名を聞いたものの、どのような病気なのかわからない。
- 検査結果の意味を十分に説明してもらえなかった。
- 薬を飲み続ける必要性が理解できない。
- 治療の選択肢について説明がなかった。
- 症状を訴えても十分に聞いてもらえなかったと感じる。
このような場合、患者が求めているのは必ずしも別の診断ではありません。
自分の身体に何が起きているのかを理解し、安心して治療を受けられる説明を求めていることもあります。
4. 重大な病気への恐怖や健康不安インターネットやSNSで病気について調べる機会が増え、自分の症状と重大な病気の情報を結び付けて考える人もいます。
軽い症状であっても、深刻な病気の可能性が頭から離れず、医師の説明を聞いても不安が消えないことがあります。
別の医師からも同じ説明を受ければ安心できると考え、受診を繰り返す場合もあります。
ただし、健康不安が強いからといって、実際の身体疾患が存在しないとは限りません。症状そのものと心理的な負担の両方を評価することが大切です。
5. 医師との信頼関係が築けていない医師との相性や診療方針の違いも、受診先を変える理由になります。
例えば、患者は詳しい検査を希望しているのに、医師は経過観察が適切だと判断している場合、双方の考えに隔たりが生じます。
治療の必要性や優先順位について十分な話し合いができなければ、患者は自分の希望を理解してくれる医師を探そうとする可能性があります。
医師を信頼できない状態で無理に通院を続ける必要はありません。大切なのは、医療機関を変更するときに診療情報を適切に引き継ぐことです。
【実態と問題点】ドクターショッピングのデメリットと医療費への影響
ドクターショッピングを繰り返すと、患者本人の身体的・精神的負担だけでなく、医療費や診療の継続性にも影響が出る可能性があります。
重複検査による身体的負担複数の医療機関を受診すると、以前の検査結果を確認できないことなどから、同じような検査が再び実施される場合があります。
例えば、血液検査、レントゲン検査、CT検査、MRI検査などです。
特に、放射線を使用する検査については、検査の必要性を医師が判断する必要があります。
過去の検査結果を共有できれば、不必要な検査の繰り返しを避けられる可能性があります。
ただし、同じ検査を再度受けることが常に問題というわけではありません。症状の変化や時間の経過、画像の品質、診断上の必要性などによって、再検査が医学的に妥当な場合もあります。
薬の重複や飲み合わせによる健康リスク複数の医療機関から薬を処方される場合、特に注意したいのが重複投薬です。
厚生労働省は、複数の医療機関から同じ効能・効果の薬が処方され、患者が重複して服用する状態を「重複投薬」と説明しています。
重複投薬によって、次のような問題が発生する可能性があります。
- 同じ作用の薬を必要以上に服用してしまう。
- 薬の副作用が強くなる。
- 複数の薬の相互作用によって健康被害が生じる。
- 必要な薬と併用できない薬を同時に服用する。
薬の種類によっては、同じ成分が含まれていることに気付かないケースもあります。
そのため、複数の医療機関を受診している場合は、現在服用している薬をすべての医師と薬剤師に伝える必要があります。
診断の遅れと治療の中断ドクターショッピングでは、医療機関を変えるたびに、それまでの症状や治療経過を説明し直すことになります。
前の病院で何を検査し、どのような診断を受け、どの薬を使用したのかが十分に共有されなければ、新しい医師は診断に必要な情報を一から確認しなければなりません。
その結果、必要な検査や治療方針の決定が遅れる可能性があります。
特に、継続的な治療が必要な慢性疾患では、医療機関を頻繁に変えることによって、治療の一貫性が損なわれるおそれがあります。
治療が中断されると、症状の悪化や合併症につながる場合もあるため注意が必要です。
医療費や通院費用の増加医療機関を変更するたびに初診料などが発生する場合があり、受診回数が増えれば患者の経済的負担も大きくなります。
また、検査や薬が重複すれば、その分の費用も必要になります。
2026年の日本では、紹介状なしで一定の大病院を初診受診する場合、通常の窓口負担とは別に特別の料金が必要になる制度もあります。
対象となるのは、特定機能病院、一定規模以上の地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関などです。
2026年6月以降の制度では、医科の初診は7,000円以上、再診は3,000円以上の特別料金が原則として設定されています。歯科は初診5,000円以上、再診1,900円以上です。
ただし、すべての病院が対象というわけではなく、緊急時など徴収対象外となる場合もあります。
この制度はドクターショッピングへの罰則ではなく、地域の診療所と大病院の役割分担を促すための仕組みです。
患者本人の精神的な疲労複数の医師から異なる説明を受けると、かえって判断が難しくなる場合があります。
「A病院では経過観察と言われたのに、B病院では別の治療を勧められた」
「どの医師の説明を信じればよいのかわからない」
このような状況が続くと、医療への不信感や健康不安がさらに強くなることがあります。
医療機関を探し続けること自体が、患者にとって大きなストレスになる点も見過ごせません。
【徹底比較】セカンドオピニオンとドクターショッピング、転院の違い
複数の医療機関を受診することが、必ずしもドクターショッピングに該当するわけではありません。
特に混同されやすいのが、セカンドオピニオンと転院です。
それぞれの目的や診療の進め方には明確な違いがあります。
3つの受診方法の比較| 比較項目 | ドクターショッピング | セカンドオピニオン | 転院 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 納得できる診断や治療を探すため受診を繰り返す | 別の医師から専門的な意見を聞く | 今後の診療を別の医療機関に移す |
| 受診方法 | 情報共有が不十分なまま受診することがある | 紹介状や検査結果を持参する | 紹介状や診療情報を引き継ぐ |
| 診療内容 | 医療機関ごとに診察・検査・処方を受ける場合がある | 原則として意見や助言を受ける | 新しい主治医のもとで診察・検査・治療を受ける |
| 前の主治医との関係 | 相談せず受診を繰り返すケースもある | 原則として現在の主治医に希望を伝える | 診療情報を引き継ぐため相談することが望ましい |
| 医療機関の変更 | 次々と受診先を変える場合がある | 意見を聞いた後も元の主治医のもとで治療を続けられる | 継続的な治療先が変更される |
| 主なメリット | 別の医師の判断を得る機会がある | 治療方針を客観的に比較できる | 信頼できる医師のもとで継続治療ができる |
| 注意点 | 重複検査や治療の遅れにつながる可能性 | 相談内容や対象疾患、費用を事前確認する | 紹介状や検査データの引き継ぎが大切 |
セカンドオピニオンとは、現在診療を受けている医師とは別の医師に、診断内容や治療方針について意見を求めることです。
例えば、がんと診断されて手術を勧められた場合、患者がほかの専門医にも意見を聞き、治療方法を比較してから判断したいと考えることがあります。
このような場面で活用されるのがセカンドオピニオンです。
一般的なセカンドオピニオンでは、現在の主治医から診療情報提供書や検査結果を受け取り、それらをもとに別の医師が意見を伝えます。
通常の外来診療とは異なり、セカンドオピニオン外来では新たな検査や治療を実施しないことが基本です。
相談した結果、別の医療機関で治療を受けたい場合は、改めて転院の手続きを進めます。
なお、セカンドオピニオンは原則として健康保険の適用外となり、費用は医療機関ごとに異なります。
転院とは何か転院とは、現在通院している医療機関から別の医療機関に診療の継続先を変更することです。
例えば、次のような理由が挙げられます。
- 自宅から通いやすい病院に変更したい。
- 専門的な治療を受けられる医療機関に移りたい。
- 現在の医師との信頼関係を築けなくなった。
- 治療方針について別の医療機関で継続的に診てもらいたい。
- 引っ越しや仕事の都合で通院先を変更したい。
転院は患者が医療機関を選択するための正当な方法です。
ただし、治療が途切れないように、現在の医療機関から診療情報を引き継ぐことが望まれます。
複数の医師に相談することは悪いことではないここで押さえておきたいのは、セカンドオピニオンを求めることと、ドクターショッピングは同じではないという点です。
患者には、自分の病状や治療について理解し、納得できる医療を選ぶ権利があります。
別の医師の意見を聞くことは、治療の選択肢を広げるために有効な手段です。
問題になるのは、複数の医師に相談すること自体ではなく、診療情報が共有されず、検査や治療が断片的になってしまうことです。
【実践ガイド】かかりつけ医への相談方法と紹介状の取得手順
ドクターショッピングを避けながら、自分に合った医療機関を見つけるには、現在の主治医とのコミュニケーションが重要です。
かかりつけ医に相談するときの伝え方まずは、現在の症状や治療について不安に感じていることを具体的に伝えます。
医師に不満を伝えることに抵抗がある人もいますが、別の意見を聞きたいと考えることは、決して失礼なことではありません。
例えば、次のような伝え方ができます。
- 「現在の診断について、もう少し詳しく説明していただけますか」
- 「薬を飲み続けていますが、症状が改善しません。今後の治療方針を相談したいです」
- 「別の専門医の意見も聞いてみたいと考えています」
- 「セカンドオピニオンを受けたいので、紹介状をお願いできますか」
- 「今後の通院先を変更したいので、これまでの診療内容を引き継いでいただけますか」
こうした相談によって、現在の治療を続けるべきか、専門医を紹介してもらうべきか、転院したほうがよいかを整理できます。
診療情報提供書と紹介状の役割診療情報提供書は、一般的に紹介状と呼ばれる書類です。
これまで担当していた医師が、別の医療機関に患者を紹介する際に作成します。
主な記載内容は次のとおりです。
- 患者の基本情報
- 現在の症状や主な病名
- これまでの診察や治療の経過
- 実施した検査とその結果
- 現在使用している薬
- アレルギーなどの重要な情報
- 紹介する目的や依頼内容
紹介状があることで、新しい医師は以前の診療内容を把握しやすくなります。
そのため、同じ検査や治療を繰り返す必要性を判断しやすくなり、診療の継続性も確保しやすくなります。
国立がん研究センターのがん情報サービスでも、紹介状は診療のまとめや紹介目的を伝えるための書類として説明されています。
紹介状をもらうときに準備しておきたいもの紹介状だけでなく、これまでの検査結果も重要です。
特に、以下の資料を確認しておきましょう。
1. 血液検査などの検査結果
2. CT・MRI・レントゲンなどの画像データ
3. 病理検査の結果
4. 現在服用している薬の一覧
5. 過去の治療内容や手術歴
6. 症状が出始めた時期や変化の記録
医療機関によって必要な書類は異なります。セカンドオピニオンを希望する場合は、相談先に事前確認しておくと安心です。
紹介状を書いてもらいにくい場合はどうする?主治医との関係が悪くなっている場合や、紹介状を依頼すること自体に抵抗がある場合もあります。
その場合は、次のような方法を検討できます。
- 医療機関の患者相談窓口に相談する。
- 医療ソーシャルワーカーに転院の進め方を聞く。
- 地域の医療安全支援センターに相談する。
- 転院先に事情を説明し、必要な診療情報の取得方法を確認する。
紹介状なしで別の医療機関を受診することが法律上一律に禁止されているわけではありません。
ただし、紹介状がないと過去の検査結果や治療内容を把握しにくくなるほか、対象となる大病院では特別の料金が必要になる場合があります。
受診前に症状や治療経過を整理する医師に短時間で状況を伝えるためには、自分の症状を記録しておくことも有効です。
例えば、次の内容をメモしておきます。
- 症状が始まった時期
- 症状が出る頻度や時間帯
- 痛みや不調の程度
- 症状が悪化する条件
- これまでに受けた検査
- 使用した薬とその効果
- 医師に確認したい疑問点
こうした情報があれば、新しい医師も病状を把握しやすくなります。
【医療機関の選び方】ドクターショッピングに陥らないための判断基準
医療機関を選ぶ際には、単純に口コミの評価や知名度だけで判断するのではなく、自分の症状や治療目的に合っているかを確認する必要があります。
1. 症状に合った診療科を選ぶ最初に確認したいのは、自分の症状に対応できる診療科です。
例えば、頭痛やめまいが続いている場合でも、原因によって適切な診療科は異なります。
症状だけで診療科を決めるのが難しい場合は、総合診療科やかかりつけ医に相談する方法があります。
必要に応じて専門医を紹介してもらえば、受診先を効率的に絞り込めます。
2. 医師が説明を丁寧にしてくれるか信頼できる医療機関を選ぶうえで、説明のわかりやすさは大切な判断材料です。
次のような点を確認しましょう。
- 検査結果を具体的に説明してくれる。
- 診断の根拠を理解できるように話してくれる。
- 治療のメリットとデメリットを説明してくれる。
- 患者の疑問や希望を聞いてくれる。
- 今後の治療計画を共有してくれる。
医師と患者の間で十分な意思疎通ができれば、不要な不安や受診の繰り返しを減らせる可能性があります。
3. 専門性と医療機関の役割を確認する医療機関には、それぞれ得意とする診療領域や役割があります。
地域の診療所は、日常的な健康相談や初期診療、慢性疾患の管理などを担います。
一方、大学病院や専門病院は、高度な検査や専門的な治療を担う役割があります。
厚生労働省が案内する「かかりつけ医」の考え方でも、日常的な健康相談を受け付け、必要に応じて専門医や専門医療機関を紹介する機能が重視されています。
最初から大病院を何か所も受診するのではなく、地域の医療機関を起点に必要な専門医療につなげてもらう方法も検討しましょう。
4. 通院を継続できる環境か確認する病気によっては、長期間の通院が必要になります。
そのため、次のような条件も確認しておきたいポイントです。
- 自宅や職場から通いやすい。
- 診療時間が生活スタイルに合っている。
- 必要な検査や治療を受けられる。
- 他の医療機関との連携体制がある。
- 予約や問い合わせの方法が明確である。
一時的に評判のよい病院を受診することよりも、必要な治療を無理なく続けられる環境を整えることが重要です。
5. 受診先を変更する明確な理由を持つ転院を検討するときは、なぜ医療機関を変更したいのかを整理しましょう。
例えば、専門的な治療が必要になった、通院が難しくなった、治療方針に納得できないなど、理由を明確にすることで新しい医療機関も選びやすくなります。
単に別の病院なら違う診断をしてくれるはずだと期待して受診を繰り返すのではなく、何を確認したいのか、どのような治療を希望するのかを明確にすることが大切です。
【プロの結論】複数の医師に相談することより、診療情報をつなぐことが重要
ドクターショッピングを防ぐために、患者が一つの医療機関だけに通い続けなければならないわけではありません。
医師の診断や治療方針に疑問があれば、別の専門医に意見を求めることは合理的な選択です。
むしろ、納得できないまま治療を続けることが、患者にとって大きな不利益になる場合もあります。
重要なのは、受診先を変える際に診療情報を適切に引き継ぎ、治療の方向性を整理することです。
そのためには、次の3点を意識してください。
第一に、疑問を抱えたままにしないこと。
症状や診断、薬の効果について不安がある場合は、現在の主治医に質問しましょう。説明を受けても納得できない場合は、セカンドオピニオンを検討できます。
第二に、紹介状と検査結果を活用すること。
診療情報提供書や検査データは、医療機関同士をつなぐ重要な情報です。過去の診療内容を正確に共有することで、重複検査や薬の重複を防ぎやすくなります。
第三に、継続的に相談できる医師を見つけること。
症状の変化や治療への不安を相談できるかかりつけ医がいれば、必要なときに専門医を紹介してもらうこともできます。
患者が安心して治療を受けるためには、医師との信頼関係だけでなく、医療機関同士の情報連携も欠かせません。
【ドクターショッピングとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ドクターショッピングとは、具体的にどのような行動ですか?
A1:同じ症状や病気について、診断や治療に納得できず、複数の医療機関を次々と受診する行動です。特に、前の医療機関での診療内容を共有せずに受診を繰り返す場合、重複検査や重複投薬などの問題が生じる可能性があります。
Q2:ドクターショッピングをする人にはどのような心理がありますか?
A2:診断への不安、治療効果への不満、重大な病気への恐怖、医師との信頼関係の問題などが考えられます。必ずしも本人の性格や精神的な問題だけが原因ではなく、身体的な症状が解決されていないことも背景にあります。
Q3:セカンドオピニオンとドクターショッピングの違いは何ですか?
A3:セカンドオピニオンは、現在の主治医から紹介状や検査結果を受け取り、別の医師から診断や治療方針について意見を聞く方法です。一方、ドクターショッピングは、診療情報の共有が不十分なまま複数の医療機関を受診する行動を指すことが多い点で異なります。
Q4:紹介状なしで別の病院を受診しても問題ありませんか?
A4:紹介状なしで別の医療機関を受診することは可能です。ただし、過去の診療情報が引き継がれず、重複検査につながる場合があります。また、対象となる大病院では、通常の診療費とは別に選定療養費が必要になることがあります。
Q5:ドクターショッピングをやめるにはどうすればよいですか?
A5:まずは現在の症状や治療への疑問を整理し、かかりつけ医に相談することが大切です。別の医師の意見を聞きたい場合は、セカンドオピニオンを利用し、診療情報提供書や検査データを活用しましょう。
Q6:主治医と相性が悪い場合は転院してもよいですか?
A6:転院を検討することは問題ありません。医師との信頼関係を築けない場合や、別の医療機関で治療を受けたい場合は、転院先を探して構いません。可能であれば現在の主治医に紹介状を依頼し、治療が中断しないように準備しましょう。
Q7:ドクターショッピングは医療費が高くなりますか?
A7:複数の医療機関で初診や検査、処方を繰り返すと、自己負担額が増える可能性があります。また、紹介状なしで対象となる大病院を受診した場合には、選定療養費が必要になることもあります。受診前に医療機関の料金や制度を確認しましょう。
ドクターショッピングとは、同じ症状や病気について複数の医療機関を次々と受診する行動です。その背景には、診断への不安、治療効果への不満、医師とのコミュニケーション不足など、さまざまな事情があります。
複数の医師の意見を聞くこと自体は悪いことではありません。セカンドオピニオンや転院は、患者が納得できる治療を選択するための正当な方法です。
一方、診療情報が共有されないまま受診を繰り返すと、重複検査や重複投薬、医療費の増加、診断や治療の遅れにつながる可能性があります。
2026年の日本の医療制度では、地域のかかりつけ医と専門医療機関が連携する仕組みも整備されています。
不安や疑問を抱えたときは、一人で悩んだり、次々と病院を変えたりする前に、まずは現在の主治医に相談してみましょう。
紹介状や検査結果を活用し、必要に応じてセカンドオピニオンや転院を選択することが、安心して治療を続けるための第一歩です。
大切なのは、受診する医師の数ではなく、自分の症状と治療経過を理解し、信頼できる医療体制のなかで適切な治療を受け続けることです。
参考にした公的資料・医学情報
- 厚生労働省「かかりつけ医ってなに?」
- 厚生労働省「電子処方せん(国民向け)」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定・選定療養に関する通知」
- 国立がん研究センター「がん情報サービス・紹介状」
- 日本医科大学武蔵小杉病院の医師による医学記事(医学書院『medicina』2023年10月)
- 厚生労働科学研究「総合診療外来におけるドクターショッピング終息効果の検討」(2009年)