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不便益事例を徹底解説|2026年版・日常から仕事まで生きる「手間」の価値

高杉 葵 高杉 葵 • 更新: • 公開: • 読了約 25 分
目次

「便利なものほど優れている」という考え方を、少しだけ疑ってみると、暮らしの見え方が変わってくる。紙の辞書を引くことで目的の言葉以外にも出会う、目的地まで遠回りして思いがけない景色を見つける、自分の手で料理することで好みの味を発見する。こうした経験には、効率化だけでは得られない価値がある。

その価値を表す言葉が「不便益(ふべんえき)」だ。京都先端科学大学の川上浩司教授らが研究を進めてきた考え方で、英語ではBenefit of Inconvenienceと表現される。2026年現在は、AIによる自動化やデジタルサービスの普及が進むなか、人間が自ら考え、選び、工夫する余地をどう残すかという視点でも重要性を持っている。日常生活、学習、移動、ものづくり、ビジネスの具体例から、そのメリットとデメリット、QOLを高める設計の条件まで整理する。

【1】不便益とは?単なる不便との違いと仕組みを解説

不便益事例
不便の中に隠れている価値

不便益とは、文字どおり「不便の益」を意味する。不便であること自体を肯定するのではなく、手間や時間がかかるからこそ得られる利益に注目する考え方だ。

例えば、スマートフォンで単語を検索すれば数秒で意味を確認できる。しかし、紙の辞書を使えば、目的の単語にたどり着くまでに周辺の言葉や関連表現も目に入る。

検索の速さでは電子辞書やスマートフォンが優れている。一方、偶然の発見や寄り道を楽しめる点では、紙の辞書にも独自の価値がある。

このように、同じ目的を達成する方法でも、途中の体験によって得られるものが変わる。

不便益の研究を進めてきた川上浩司教授は、便利な仕組みをあえて不便にすることで、利用者に新たな価値が生まれる可能性を指摘している。

不便益が生まれる理由は何か

不便益の仕組みを理解するうえで重要なのは、人間がシステムにどれだけ関与できるかという点だ。

便利なシステムは、判断や操作を機械側に任せることで、人間の負担を減らす。ところが、その過程で自分で考える機会や、試行錯誤する余地までなくなることがある。

反対に、適度な手間が残されていると、人間は自分で判断し、工夫し、結果を確かめるようになる。

不便益が生まれる主な仕組みは次のとおりだ。

- 主体性: 自分で選択し、行動している実感を得られる。
- 発見: 決められた結果以外の可能性に気づける。
- 技能向上: 繰り返し操作することで知識や技術が身につく。
- 達成感: 手間をかけて完成させた結果に満足できる。
- 特別感: 自分なりの工夫や経験が、その人独自の価値になる。
- プロセスの楽しさ: 目的を達成するまでの時間そのものを楽しめる。

ただし、すべての不便にこうした価値があるわけではない。単純に待たされるだけ、必要な情報にアクセスできないだけといった状況は、不便益ではなく不便による損失になり得る。

不便益と利便性は対立するものではない

不便益は、便利さを全面的に否定する思想ではない。

例えば、仕事で必要な情報を短時間で検索できることは大きなメリットだ。一方、新しい企画を考える場面では、あえて情報を限定したり、手作業でアイデアを組み立てたりすることが創造性につながる場合がある。

重要なのは、目的に応じて便利さと不便さを使い分けることだ。

【2】日常生活・学習で見つかる不便益の具体例7選

不便益は、特別な施設や高価な製品だけに存在するものではない。日常生活の中にも、手間をかけることで得られる価値が数多くある。

① 紙の辞書で言葉を調べる

紙の辞書は、スマートフォンの検索機能と比べると時間がかかる。しかし、ページをめくる過程で、目的の単語以外にも目が向く。

関連する言葉や似た表現を偶然見つけることで、知識の幅が広がる可能性がある。

特に語彙を増やしたい学生や、文章を書く機会の多い人にとって、検索結果だけでは得にくい発見が期待できる。

② 手書きでノートを作る

講義内容を自動的に記録する方法は便利だが、自分の手で要点を選び、図や文章にまとめる作業には別の意味がある。

何を重要と判断するか、どの情報を関連づけるかを考える必要があるからだ。

ただし、手書きが常にデジタル入力より優れた学習方法だと断定することはできない。ここでの不便益は、記録の速さではなく、情報を自分で整理するプロセスにある。

③ 自分で料理をする

完成した料理を注文すれば、買い物や下ごしらえ、調理の手間を省ける。

一方、自分で材料を選び、切り方や火加減を調整すれば、味の違いを発見できる。

最初はレシピどおりに作るだけでも、経験を重ねれば自分好みの味付けを考えられるようになる。

材料だけが届く料理キットや、下ごしらえの一部を利用者に任せるサービスも、利用者が参加する余地を残した仕組みとして考えられる。

④ 手紙を書く

メッセージアプリなら、短時間で相手に連絡できる。

手紙は便箋を選び、文章を考え、文字を書き、相手に届ける必要がある。こうした手間が、伝える内容をじっくり考える時間になる。

受け取る側にとっても、手書きの文字や便箋の選び方から、送り手の個性を感じられることがある。

⑤ キャンプで自分たちの食事を作る

キャンプでは、道具の準備や火起こし、食材の調理など、普段の生活より多くの作業が必要になる。

しかし、その作業自体が楽しみになることもある。

料理が完成するまでの時間や、仲間と協力する過程も体験の一部だ。単に食事を済ませることだけが目的なら、もっと簡単な方法がある。それでもキャンプ料理を選ぶ人がいるのは、過程に価値を見いだしているからだ。

⑥ 自転車や徒歩で移動する

自動車や公共交通機関を利用すれば、短時間で目的地に到着できる場合がある。

一方、徒歩や自転車では、普段見過ごしている店や街並みに気づくことがある。

目的地までの移動を単なる時間消費ではなく、周囲を観察する体験として捉え直すことができる。

⑦ 遠足のおやつを予算内で選ぶ

京都大学での研究を経て不便益を発信してきた川上教授は、博報堂との対談で、子どもの頃の遠足のおやつ選びを例に挙げている。

予算に制限があったからこそ、スーパーを回りながら組み合わせを考え、自分だけのおやつを選ぶ時間が楽しい思い出になったという。

制限がなければ選択は簡単になる。しかし、適度な制約があることで、考える楽しさや工夫する余地が生まれる好例だ。

【3】移動・観光・教育現場で実践された不便益デザイン事例

不便益は、個人の暮らしだけでなく、移動システムや教育、施設設計にも応用されている。

かすれるカーナビで道を覚える

移動分野で興味深いのが、京都大学の研究者らが考案した「かすれるナビ」だ。

一般的なカーナビは、目的地までの道順を繰り返し案内してくれる。便利な反面、利用者が道を覚える必要性は小さくなる。

そこで考案されたのが、通った道の表示が徐々に薄くなる仕組みだ。

朝日新聞GLOBE+の2021年12月の記事によると、このナビは、通過速度に応じて白い丸を表示し、同じ道をゆっくり3回通ると表示が白くなって見えなくなる設計だった。

利用者はナビの情報がいつまでも残るわけではないため、自分で道を覚えようとする。

実際に京都で行われた歩行者向けの町歩き実験では、かすれるナビを使った人の方が、通常のナビを使った人よりも、通った道を写真から正しく識別できたと報告されている。

これは、便利な案内を一部制限することで、利用者の記憶や主体性を引き出そうとした事例だ。

京都の左折オンリーツアー

もう一つの特徴的な事例が、京都の街を舞台にした「左折オンリーツアー」である。

この企画では、交差点で右折せず、左折だけを繰り返して目的地を目指す。

京都の碁盤の目状の道路では、右折したい場所を通り過ぎて左折を3回繰り返すことで、同じ方向へ進める場合がある。

最短距離で移動する方法と比べると、明らかに遠回りだ。

しかし、普段は通らない路地に入り込むことで、偶然の発見や街の雰囲気を楽しめる。目的地への到着だけでなく、移動中の経験そのものを価値に変えている。

教育現場での不便益

教育分野でも、あえて自分で考える余地を残す方法が検討されている。

2020年に公表された「AI時代の教育における不便益の教材内容・経験の調査および授業実践」では、教職志望の大学生を対象に、不便益を取り入れた教材や授業実践が検討された。

教材として挙げられたのは、次のような内容だ。

- 手紙を書く
- 自分で考える
- 本で調べる
- 紙の辞書で調べる
- 筆算で計算する

この研究では、手間をかける経験を通じて子どもに工夫を促すことの意義が示唆されている。

ただし、すべての学習活動をアナログに戻すべきだという意味ではない。AIやデジタル教材を活用しながら、自分で考える機会も確保するというバランスが大切になる。

【4】ものづくり・システムデザインに見る不便益の構造

不便益を製品やサービスに取り入れるとき、重要になるのがシステムデザインの考え方だ。

利用者にどの程度の操作や判断を任せるのか。その余地をどこに残すのかによって、体験の質は変わる。

セル生産方式で生まれる技能と達成感

製造業における代表例がセル生産方式だ。

従来の流れ作業方式では、作業を細かく分割し、担当者が特定の工程を繰り返す。

それに対してセル生産方式では、少人数のチームが複数の作業を担当し、部品を製品の形にまで組み上げていく。

大量生産の効率だけを比較すれば、流れ作業方式が有利な場合もある。

しかし、セル生産方式では担当者が幅広い作業を覚える必要があり、完成品ができるまでの工程にも深く関わる。

朝日新聞GLOBE+の2024年3月の川上教授インタビューでは、セル生産方式について、現場の作業者のモチベーションや技能が向上し、両者が相互に高め合う現象が紹介されている。

作業を単純化するだけでは得られない、仕事の全体像を理解する喜びや完成の達成感が生まれる点に不便益がある。

手動操作が残された電子レンジ

電子レンジにも、不便益を考えるヒントがある。

自動温め機能なら、ボタンを押すだけで機械が加熱条件を判断してくれる。

一方、出力や時間を自分で設定する方式では、食材の状態を考えながら調整する必要がある。

手間は増えるものの、自分なりの最適な温め方を発見できる可能性がある。

この例が示しているのは、製品の完成度が高いことと、利用者が満足することは必ずしも同じではないという点だ。

不便益事例の比較・関係性一覧
分野・事例 あえて残した不便 生まれる益 注意点
紙の辞書 検索に時間がかかる 語彙の発見、知識の広がり 調査の速さはデジタルが有利
かすれるナビ 道順の情報が薄くなる 道を覚える、周囲への注意 緊急移動には不向き
左折オンリーツアー 最短経路を選べない 偶然の発見、観光体験 時間に余裕が必要
セル生産方式 複数の工程を習得する 技能向上、達成感 教育や習熟の負担がある
手動の電子レンジ設定 出力や時間を自分で調整 自分好みの結果の発見 操作ミスや加熱不足に注意
バリアアリー施設 一部に段差などを残す 身体活動や自立の機会 利用者の状態と安全性が重要
星のや京都 舟での移動が必要 秘境感、特別な滞在体験 移動の負担や利用条件への配慮
不便益を生み出す「余白」の設計

日本デザイン学会の学術誌『デザイン学研究』に掲載された2022年の影山友章氏の研究では、製品の使用過程における「余白」が提案されている。

ここでいう余白とは、製品やサービスを使うときに、利用者の行動や意思がどの程度介在できるかを示す考え方だ。

すべての操作を自動化するのではなく、利用者が調整したり、選択したりできる部分を残す。

こうした設計によって、不便益につながる製品アイデアを生み出せる可能性が示された。

加えて、2025年7月31日には、影山友章氏らによる「不便害とならない適切な不便益をもたらす要件の整理と検証」が『デザイン学研究』72巻1号に掲載された。

この研究では、利用者が介入できる余地の大きさと、その介入を受け入れられる許容量の関係が検討されている。

作り手が残したい不便と、利用者が受け入れられる不便を一致させることが、適切な不便益を実現するための重要な条件となる。

【5】ビジネス活用で価値を生む不便益と成功事例

不便益は、企業のマーケティングやサービス設計にも応用できる。

顧客にとっての便利さだけを追求するのではなく、あえて参加や選択の余地を残すことで、他社にはない体験価値を生み出せるからだ。

星のや京都:アクセスの悪さを特別感に変える

代表的なビジネス事例が、京都・嵐山の「星のや京都」だ。

同施設は、渓谷に位置し、専用の舟でアクセスするという特徴を持つ。

通常、宿泊施設にとってアクセスの悪さは弱点になり得る。駅から近く、車で簡単に到着できる方が便利だからだ。

しかし、星のや京都では、舟に乗って訪れるという過程が、秘境に向かうような特別な体験につながっている。

単に不便を我慢させるのではなく、その不便自体を滞在体験の一部にしている点が特徴だ。

行き先を選べない旅行サービス

博報堂と川上教授の対談では、利用者が自分で目的地を選べない航空会社のマイレージ施策も紹介されている。

通常、旅行では目的地を自分で決めたいと考える人が多い。

ところが、行き先が分からないまま出発する仕組みでは、予想外の場所へ向かう楽しみが生まれる。

失敗も含めて楽しむという前提があるからこそ、選択できないことが体験価値に変わる。

あえて配信時間を限定する動画サービス

動画配信は、好きな時間に視聴できることが大きな利点だ。

しかし、博報堂の対談では、決められた時間にならないと視聴できない動画プログラムも、不便益的な施策として紹介されている。

いつでも見られる便利さを制限することで、配信を待つ楽しみや、視聴者同士が同じ時間を共有する感覚が生まれる。

このように、サービスの価値は機能の多さだけでは決まらない。

不便益をビジネスに取り入れる3つの方法

企業が不便益を活用する場合、川上教授が朝日新聞GLOBE+のインタビューで説明した発想法が参考になる。

1. 価値発掘型: 現在の製品やサービスをあえて不便にし、どんな益が生まれるかを探す。
2. 創発型: 既存の不便益事例を参考に、新しいアイデアを発想する。
3. 問題解決型: 便利すぎることによって発生している問題を、不便を取り入れることで解決する。

これらは、単純に機能を減らすという発想とは異なる。

例えば、飲食店で注文を完全自動化することが必ずしも顧客満足につながるとは限らない。スタッフとの会話や、料理ができるまでの過程を楽しみにしている顧客もいる。

どの部分を自動化し、どの部分を人間に残すかを見極めることが、サービス設計の差別化につながる。

【6】不便益のメリット・デメリットとQOLを高める条件

不便益には多くの可能性がある一方、設計を間違えると単なる負担になる。

特に2025年の研究で取り上げられた「不便害」という考え方は、実践するうえで見落とせない。

不便益のメリット

1. 自分で考える力が育つ

自動化された仕組みに任せきりにせず、自分で判断する機会を持てる。

2. 技能や経験が身につく

繰り返し操作したり、試行錯誤したりすることで、知識だけでは得られない経験を積める。

3. 達成感や満足度につながる

自分で完成させた料理や作品には、結果だけでなく、そこに至る過程にも価値を感じられる。

4. 新しい発見が生まれる

最短経路や最適解から外れることで、普段は気づかない情報や可能性を発見できる。

5. 人との関わりが増える

共同作業や対話が必要な仕組みでは、協力する過程そのものが体験価値になる。

不便益のデメリット

一方で、次のような問題もある。

- 時間の負担: 作業に時間がかかり、日常生活や業務の効率が落ちる。
- 身体的負担: 移動や操作に体力を必要とする場合がある。
- 心理的負担: 手間が増えることでストレスや不満が生まれる。
- 利用者の格差: 年齢、障害、経験、生活環境によって、不便を受け入れられる程度が異なる。
- 安全上の問題: あえて操作を複雑にすることで、事故やミスのリスクが高まる可能性がある。

特に注意したいのが、作り手にとって魅力的な不便でも、利用者にとっては苦痛になる場合があることだ。

不便益とQOLの関係

QOL(Quality of Life)は、生活の質を意味する。

QOLを考えるとき、移動時間や作業時間が短くなることだけが価値ではない。

自分でできることが増える、日々の生活に楽しみが生まれる、達成感を得られるといった要素も、生活の満足度に関わってくる。

不便益は、こうした主観的な価値に注目する考え方だ。

例えば、高齢者施設で段差や身体活動の機会を適切に残す「バリアアリー」という発想がある。

バリアフリーが移動や生活上の障壁を取り除くことを重視するのに対し、バリアアリーは、利用者が安全に挑戦できる環境を設けることで、自立や身体活動の機会を確保しようとする。

また、足こぎ車いす「COGY」も、不便益の事例として紹介されている製品の一つだ。

ただし、バリアアリーは段差を増やせばよいという意味ではない。転倒リスクや身体機能の違いを考慮し、必要なバリアフリー設備と選択できる活動環境を両立させる必要がある。

2025年の研究が示した「不便害」を防ぐ視点

2025年に発表された影山友章氏らの研究は、不便益と不便害を分けるうえで重要な示唆を与えている。

同じ操作や手間でも、ある人には楽しく感じられ、別の人には負担になることがある。

研究では、利用者が介入したいと感じる程度と、実際に受け入れられる介入の程度を一致させることが、不便益につながる可能性が示された。

つまり、優れた不便益デザインとは、すべての利用者に同じ手間を要求するものではない。

自分で操作したい人には選択肢を用意し、簡単に済ませたい人には便利な方法も残す。その両立が重要になる。

不便益を暮らしや仕事に取り入れる判断基準

実際に不便益を取り入れるなら、次の5点を確認したい。

- その手間をかけることで、何を得られるのか。
- 利用者自身が、その手間を楽しんだり受け入れたりできるのか。
- 身体的・心理的な負担が過剰になっていないか。
- 安全性や最低限の利便性が確保されているか。
- 利用者が便利な方法と不便な方法を選べるか。

おすすめできるのは、料理やものづくり、趣味、学習、観光など、過程そのものを楽しめる人や場面だ。

反対に、緊急医療、災害時の情報伝達、身体的負担が大きい作業、正確さが求められる手続きなどでは、あえて不便にする合理性は乏しい。

不便益を導入する目的は、便利さを奪うことではない。人間が自分の意思で関われる選択肢を増やすことにある。

【不便益事例に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:不便益とは簡単にいうと何ですか?

A1:不便だからこそ得られる利益のことです。紙の辞書を引いて偶然新しい言葉を見つけたり、自分で料理して好みの味を発見したりするなど、手間をかける過程に価値が生まれる考え方です。

Q2:不便益の身近な具体例には何がありますか?

A2:紙の辞書、手書きのノート、手紙、キャンプ料理、徒歩での町歩きなどがあります。自分で考える、工夫する、発見するという体験が得られることが共通点です。

Q3:不便益と単なる不便は何が違いますか?

A3:不便益には、手間をかけることで得られる発見や達成感、主体性などの価値があります。一方、単なる不便は負担が増えるだけで、利用者にとって意味のある利益が生まれません。

Q4:不便益にはどのようなデメリットがありますか?

A4:時間や労力が増えること、心理的なストレス、身体的な負担、安全性の低下などが挙げられます。利用者によっては不便益ではなく不便害になるため、適切な設計が必要です。

Q5:不便益はビジネスにも活用できますか?

A5:活用できます。星のや京都の舟でのアクセス、行き先を選べない旅行企画、決まった時間に視聴する動画プログラムなどは、手間や制約を特別な体験に変える事例です。

Q6:不便益を取り入れるとQOLは向上しますか?

A6:自分で考える機会や達成感、楽しみが増えることで、生活の質を高める可能性があります。ただし、すべての人に効果があるわけではありません。身体状況や生活環境に合った選択肢が必要です。

Q7:2026年に不便益が注目される理由は何ですか?

A7:AIや自動化によって多くの作業を効率化できるようになった一方、人間が自分で判断したり、技能を身につけたりする機会をどう残すかが課題になっているためです。不便益は、人間が主体的に関わる体験を設計するための視点として活用できます。

不便益事例を振り返ると、共通しているのは、手間をかけること自体ではなく、その先に得られる体験に価値があるという点だ。

紙の辞書には偶然の発見があり、かすれるナビには道を覚える機会がある。セル生産方式には技能と達成感があり、星のや京都には舟で訪れるからこその特別感がある。

これらは、単に昔ながらの不便な方法を残しているわけではない。人間の主体性や創造性、楽しさを引き出すために、あえて手間や制約を設計に取り入れている。

2025年の研究が示したように、不便益を実現するには、利用者が受け入れられる手間の範囲を考慮することも欠かせない。2026年以降、AIや自動化がさらに進むほど、何を機械に任せ、何を人間の経験として残すかという問いは重要になる。

【プロの結論】

不便益を暮らしや仕事に取り入れる際の判断基準は、次の一つに集約できる。

「その手間をなくしたとき、人間が得られるはずだった何かまで失ってしまわないか」

時間を短縮することが最優先の場面では、便利さを選べばよい。一方、学びや発見、創造性、達成感を大切にしたい場面では、あえて手間を残す意味がある。

本当に優れたデザインとは、すべてを自動化することではない。人間が自分で考え、工夫し、楽しめる余白を適切に残すことだ。

不便益は、効率化を否定する考え方ではなく、効率だけでは測れない豊かさを暮らしや仕事に取り戻すための設計思想なのである。

主な根拠資料

- 京都大学・川上浩司教授の研究活動、定義、具体的な事例:朝日新聞GLOBE+(2024年3月、2021年12月)、京都大学研究情報ポータル。
- 不便益の教育・移動・デザインへの応用:朝日新聞GLOBE+、博報堂の川上教授との対談。
- 不便益と利用者の介入余地:日本デザイン学会『デザイン学研究』(2022年、2025年)。
- 教育実践:『AI時代の教育における不便益の教材内容・経験の調査および授業実践』(2020年)。

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高杉 葵

アイドル・グラビア担当。所属事務所の公式発表を一次情報とし、憶測は書きません。

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