2026年11月現在、家族の一人が犯罪を起こした場合、配偶者や親、子ども、きょうだいまで法的責任を負うのでしょうか。結論からいえば、家族であるという理由だけで、本人の犯罪について刑事責任や民事責任を負うことはありません。 ただし、犯罪への関与、証拠隠滅、未成年者に対する監督義務など、家族自身の行為や法律上の特別な事情によって責任が生じる場合があります。
一方、実際の生活では、逮捕直後から家計の悪化、報道機関の取材、近隣住民からの偏見、インターネット上の誹謗中傷、子どもの進学や就職への不安など、家族がさまざまな困難に直面します。NPO法人WorldOpenHeartやスキマサポートセンターなど、加害者家族を専門に支援する団体の活動も広がっています。法律上の責任と社会から受ける不利益を分けながら、家族に起こる現実と2026年の相談先を整理します。
【まず結論】加害者家族は本人の犯罪について法的責任を負うのか?

日本の法律には、親族であることだけを理由に、犯罪者の刑事責任や損害賠償責任を家族に引き継がせる一般的な制度はありません。
刑事責任は、犯罪を実行した本人や、その犯罪に共同して関与した人など、それぞれの行為に基づいて判断されます。
例えば、成人した子どもが殺人や詐欺、窃盗などの犯罪を起こした場合、親が犯罪を知らず、計画にも関与せず、実行を手助けしていなければ、親だからという理由だけで逮捕されたり処罰されたりすることはありません。
配偶者やきょうだいについても基本的な考え方は同じです。
刑事責任は家族関係ではなく本人の行為で判断される刑事責任が問題になるのは、本人の犯罪に対して家族自身が何らかの犯罪行為を行った場合です。
具体的には、次のようなケースが考えられます。
- 犯罪の計画を知りながら一緒に実行した。
- 犯罪の実行を認識したうえで、資金や手段を提供した。
- 逮捕を免れさせる目的で犯人を隠した。
- 刑事事件に関する証拠を故意に隠したり、偽造したりした。
刑法第103条は犯人蔵匿等、第104条は証拠隠滅等を定めています。
ただし、親族による犯人蔵匿や証拠隠滅については、刑法第105条に特例があります。犯人や逃走した者の利益のために親族がこれらの行為をした場合、刑を免除できるという規定です。
これは自動的に犯罪が成立しなくなるという意味ではありません。親族だから何をしても許されるわけではなく、具体的な行為や状況に応じて判断されます。
家族が知らなかった場合と、知って協力した場合の違い重要なのは、家族が事件を知っていたかどうかだけでなく、何をしたのかという点です。
例えば、逮捕後に警察から事情を聞かれた際、事実を知らない家族が知っている範囲で説明することと、犯人を逃がすために積極的に隠すことは法律上まったく異なります。
また、本人と連絡を取ったり、弁護士との面会を調整したりすること自体が、直ちに犯罪への協力になるわけではありません。
家族として本人を心配することと、犯罪に加担することは明確に区別されます。
【刑事責任と民事責任の違い】親の監督義務はどこまで及ぶ?
加害者家族の法的責任を考えるうえで、特に誤解されやすいのが民事責任です。
刑事責任が犯罪に対する刑罰の問題であるのに対し、民事責任は被害者に生じた損害を誰が賠償するのかという問題です。
家族が犯罪そのものに関与していなくても、一定の条件に該当すれば民事上の責任を問われる可能性があります。
民法709条と714条の違い民法709条は、不法行為による損害賠償について定めています。
故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した人は、その損害を賠償する責任を負います。
したがって、家族自身が故意や過失によって損害を発生させた場合には、本人とは別に責任が問題になることがあります。
一方、民法714条は、責任能力のない人を監督する法定の義務を負う人などの責任を定めた条文です。
例えば、自己の行為の責任を弁識する能力がない未成年者が他人に損害を与えた場合、その監督義務者が賠償責任を負う可能性があります。
ただし、監督義務者が必要な監督を怠らなかった場合などには、責任を負わないこともあります。
親の監督義務は親なら必ず発生するのかここで重要なのは、未成年者の親が常に損害賠償責任を負うわけではないという点です。
民法712条では、未成年者が自分の行為の責任を弁識するだけの知能を備えていない場合、その行為について本人は賠償責任を負わないとしています。
そして、その場合に監督義務者の責任を定めているのが714条です。
つまり、単純に18歳未満であることだけで親の賠償責任が決まるわけではありません。
未成年者本人の責任能力、親の監督状況、行為の危険性、予見可能性などを個別に検討する必要があります。
最高裁のサッカーボール事件が示した判断基準親の監督義務を考えるうえで参考になるのが、最高裁判所第一小法廷が2015年4月9日に判決を出した、いわゆるサッカーボール事件です。
この事件では、当時11歳の小学生が放課後の校庭でサッカーボールを蹴ったところ、ボールが道路に転がり出ました。
それを避けようとした自動二輪車の運転者が転倒して負傷し、その後死亡しました。
被害者側の遺族は、ボールを蹴った児童の両親に対して損害賠償を求めました。
最高裁は、児童が通常の校庭利用としてサッカーゴールに向かって練習していたこと、ボールが道路に出ることが常態ではなかったこと、両親が日頃から危険な行為をしないよう指導していたことなどを考慮しました。
その結果、両親は監督義務を怠っていなかったとして、民法714条に基づく賠償責任を認めませんでした。
この判決は、親だからという理由だけで子どもの行為について無条件に賠償責任を負うわけではないことを示す重要な事例です。
家族関係と法的責任の整理| 関係・状況 | 法的責任の基本的な考え方 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 成人した子どもが犯罪を起こした親 | 原則として責任なし | 親自身の犯罪関与がないか |
| 犯罪を起こした配偶者の夫・妻 | 原則として責任なし | 共犯や共同不法行為の有無 |
| 犯罪を起こしたきょうだい | 原則として責任なし | 本人の行為への関与の有無 |
| 責任能力のない未成年者の親 | 責任が生じる場合がある | 民法714条と監督義務 |
| 犯罪を手助けした家族 | 責任が生じる場合がある | 共犯・幇助などの成立要件 |
| 犯人を隠したり証拠を隠滅した親族 | 犯罪が成立する可能性がある | 刑法103条・104条・105条 |
| 損害賠償の保証人になった家族 | 契約に基づく責任が生じる場合がある | 保証契約の内容 |
このように、家族の法的責任は、親族という立場ではなく、本人が何をしたのか、どのような法律関係にあるのかによって判断されます。
【逮捕後の生活】加害者家族に起こる現実と報道・ネット中傷
家族が逮捕された直後から、残された家族の日常生活は大きく変わることがあります。
特に、本人が世帯の主な収入源だった場合、突然の収入減少は深刻です。
家賃や住宅ローン、生活費、子どもの教育費など、これまで本人の収入によって維持されていた生活を見直さなければならないケースもあります。
逮捕後に直面する経済的・社会的な問題加害者家族が抱える問題は、刑事手続きだけではありません。
- 本人の逮捕や勾留による世帯収入の減少
- 弁護士費用や生活費の負担
- 報道による自宅周辺への注目
- 近隣住民や職場からの偏見
- 転居や転職を検討する必要
- 家族関係の悪化や精神的な負担
特に重大事件では、家族の氏名や住所、勤務先などがインターネット上で拡散されることへの不安もあります。
なお、本人が被害者に対して負う損害賠償債務は、原則として本人自身の債務です。家族が自動的に支払わなければならないわけではありません。
家族自身が保証人になっている場合や、共同不法行為など別の法的根拠がある場合は事情が異なります。
報道機関への対応はどうすればよいのか重大事件では、テレビ局、新聞社、週刊誌などの報道機関が家族の自宅や勤務先を訪問することがあります。
取材を受けることに心理的な負担を感じる人も少なくありません。
こうした状況では、家族が個別に対応するよりも、窓口を一本化することが現実的です。
具体的には、次のような対応が考えられます。
1. 取材への回答をその場で決めない。
2. 家族の代表者や弁護士など、対応する窓口を決める。
3. 家族や子どもの個人情報を不用意に公開しない。
4. 取材日時、担当者、質問内容などを記録する。
5. 執拗な訪問や威圧的な取材については専門家に相談する。
家族には、報道機関に対して必ず取材に応じなければならない義務があるわけではありません。
また、被害者や遺族への謝罪についても、感情だけで急いで行動するのではなく、本人の弁護士や支援者と相談しながら慎重に進める必要があります。
インターネット上の誹謗中傷と個人情報の拡散事件が報道されると、SNSや掲示板などで家族に関する情報が投稿されることがあります。
本人の犯罪とは無関係な親族が、家族関係を理由に批判されたり、勤務先や学校などを特定されたりする問題です。
家族に対する誹謗中傷は、内容によって名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害などの法的問題になり得ます。
対処する際には、次の点を意識してください。
- 投稿のスクリーンショットを保存する。
- 投稿日時やアカウント名、投稿先を記録する。
- 削除を求める場合は、投稿内容とURLを保存してから対応する。
- 個人情報や脅迫的な投稿については弁護士や警察に相談する。
- 感情的な反論によって情報をさらに拡散させない。
警察庁は、インターネット上の誹謗中傷について、違法・有害情報相談センターや法務省の人権相談などを案内しています。
また、一般社団法人セーファーインターネット協会の誹謗中傷ホットラインでは、該当する投稿についてプロバイダに削除等の対応を促す通知を行っています。ただし、同ホットラインは個別の相談窓口ではありません。
被害の内容に応じて、相談先を使い分けることが大切です。
【子どもへの影響】学校・進学・就職・結婚にまで及ぶのか
加害者家族の問題で、特に慎重な配慮が必要なのが子どもです。
親やきょうだいが犯罪を起こした場合、子ども本人は事件に関与していなくても、学校や地域社会で事件について知られる可能性があります。
本人の意思とは無関係に、周囲の視線を意識しながら生活することになり、精神的な負担が大きくなる場合があります。
子どもの学校生活に生じる変化スキマサポートセンターが家族向けの支援情報として挙げている相談には、学校でのうわさ、事件を子どもにどう伝えるか、転校、将来への影響などがあります。
毎日新聞が2023年12月に報じた加害者家族支援のシンポジウムでも、子どもの学校生活や進路への不安が取り上げられました。
事件をきっかけに、ストレスによる不登校や心身の不調などが現れるケースも報告されています。
ただし、すべての子どもに同じ影響が生じるわけではありません。
子どもが置かれている環境、事件の内容、家族との関係、学校での対応などによって状況は異なります。
事件を子どもにどう説明するべきか家族が事件を隠そうとするあまり、子どもに何も説明しないまま生活を続けることには難しさがあります。
学校や周囲から先に情報が伝わってしまう可能性もあるためです。
説明する場合は、年齢や理解力に応じて、必要な範囲の事実を落ち着いて伝えることが大切です。
例えば、次のような点に配慮できます。
- 子ども自身に事件の責任がないことを伝える。
- 大人の問題を子どもに解決させようとしない。
- 無理に謝罪や説明をさせない。
- 学校で困ったことがあれば相談できる大人を確保する。
- 日常生活や学習、友人関係をできる限り維持する。
必要に応じて、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、児童相談所などにつなぐことも考えられます。
就職・結婚への影響は法律で決まっているのか親が犯罪を起こしたという理由だけで、子どもの進学、就職、結婚が法律上当然に制限されるわけではありません。
本人が犯罪をしていないのであれば、親の刑事責任がそのまま子どもに引き継がれることもありません。
しかし、現実の社会生活では、家族関係を理由に不利益を受けることを心配する人がいます。
例えば、次のような不安です。
- 就職活動で家族の事件が知られるのではないか。
- 勤務先に事件のことを知られ、居づらくなるのではないか。
- 結婚相手やその家族から反対されるのではないか。
- インターネット検索で家族の事件が将来も残るのではないか。
- 本人の子どもにまで偏見が引き継がれるのではないか。
こうした不安は、スキマサポートセンターが扱う相談テーマにも含まれています。
一方で、家族の犯罪を理由にした就職や結婚への影響について、全国の実態を代表する公的な統計が整備されているわけではありません。
そのため、特定の事件の事例だけから、すべての加害者家族に同じ将来が待っていると判断することは適切ではありません。
家族の過去と、子ども自身の将来は分けて考える必要があります。
【2026年最新】加害者家族の相談窓口と支援制度を徹底整理
加害者家族の支援では、法律、心理、福祉、生活再建など、複数の問題を同時に扱う必要があります。
2026年11月現在、特に相談先として知られているのが、NPO法人WorldOpenHeartとNPO法人スキマサポートセンターです。
NPO法人WorldOpenHeartとは?特定非営利活動法人WorldOpenHeartは、2008年に仙台市で加害者家族支援を目的として活動を開始した団体です。
2011年に法人格を取得し、代表を務めるのは阿部恭子氏です。
同団体は、家族の逮捕によって突然生活が変わった人たちに対して、必要な情報や助言を提供しています。
公式サイトでは、2008年から全国2,000件以上の加害者家族に寄り添ってきた活動実績を公表しています。
主な支援内容は次のとおりです。
- 加害者家族ホットラインによる電話相談
- 刑事手続きや裁判に関する情報提供
- 報道機関への対応
- 家族会やピアカウンセリング
- 子どもへの事件の伝え方に関する相談
- 生活や本人との関わり方に関する助言
特に特徴的なのが、同じ境遇にある家族同士が悩みを共有する「オープンハートタイム」です。
家族の逮捕という出来事は、友人や職場の人に簡単に話せるものではありません。
同じ立場を経験した人と話せる場所があることは、孤立を防ぐうえで大きな意味を持ちます。
相談窓口:加害者家族ホットライン
電話番号:090-5831-0810
- 24時間・年中無休
- 匿名相談に対応
- 電話相談の相談料は無料(通話料は自己負担)
- 非通知設定では接続できないため、番号通知が必要
公式サイトでは、最初の電話以外の相談方法については、原則として電話での相談を受けた後に案内するとしています。
スキマサポートセンターとは?特定非営利活動法人スキマサポートセンターは、大阪を拠点に加害者家族の支援を行う団体です。
心理、法律、福祉など複数の専門分野を組み合わせた支援を特徴としています。
公式サイトでは、臨床心理士、公認心理師、弁護士、社会福祉士、精神保健福祉士、キャリアコンサルタントなどの専門スタッフによる対応を案内しています。
主な支援内容は次のとおりです。
1. 無料電話相談
突然の逮捕によって何をすればよいか分からない家族に対して、匿名での電話相談を受け付けています。
2. 家族会・無料相談会
同じ経験を持つ家族が悩みを共有できる場を提供しています。
大阪、名古屋、東京などで開催され、開催場所はプライバシー保護のため非公開とされています。
3. 心理的な支援
臨床心理士などの専門家と連携し、精神的な負担や家族関係の問題について相談できます。
4. 法律・裁判に関する支援
弁護士と連携し、本人が留置・勾留されている段階から、家族への支援や裁判に関するサポートを行っています。
5. 生活再建に関する支援
生活保護制度の説明、債務の相談、転居、持ち家の処分など、逮捕後の生活に関する相談にも対応しています。
相談窓口:スキマサポートセンター
電話番号:070-5650-9473
- 無料電話相談
- 匿名相談に対応
- 24時間・365日受付
- 相談内容の守秘を案内
加害者家族支援の実情を理解するうえでは、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が公表した助成事業の報告も参考になります。
2025年9月掲載のWAMの活動紹介では、WorldOpenHeartが実施した2023年度事業「加害者家族支援を通した地域の再犯防止ネットワークの構築事業」が取り上げられています。
同事業では、次のような活動実績が報告されています。
| 項目 | 実績・内容 |
|---|---|
| 電話相談 | 年間延べ377件 |
| 個別相談会・家族会 | 全国6地域で開催 |
| 個別相談会の参加者 | 延べ86人 |
| 家族会の参加者 | 延べ41人 |
| 再犯防止ネットワーク会議 | 全国16地域で28回開催 |
| 会議参加者 | 延べ132人 |
| WAM助成額 | 210万円 |
相談内容には、事件が今後どのように進むのか、本人との関係をどうするか、弁護士とのやり取り、被害者への対応、学校や職場への説明などが含まれていました。
また、全国6地域で行われた個別相談会や家族会には、合計127人が参加しています。
注目すべきなのは、加害者家族への相談支援だけでなく、保護観察所、専門職、再犯防止に関わる団体、報道関係者などとのネットワークづくりも進められたことです。
なお、377件は特定団体の事業における相談対応件数であり、全国の加害者家族の人数や相談需要全体を示す統計ではありません。
それでも、家族支援が個人の悩み相談にとどまらず、地域の再犯防止や社会復帰を支える活動として位置付けられていることが分かります。
公的な相談窓口も活用できる民間NPOだけでなく、公的な相談窓口も状況に応じて利用できます。
ただし、犯罪被害者向けの給付や支援制度と、加害者家族向けの支援は区別する必要があります。
加害者家族を対象とする全国一律の給付制度が整備されているわけではなく、実際には既存の福祉制度、法律相談、人権相談、自治体のサービスなどを組み合わせることになります。
| 相談内容 | 主な相談先 | 対応内容 |
|---|---|---|
| 刑事・民事上の責任 | 弁護士・弁護士会 | 法律関係の整理、法的助言 |
| 心理的な負担 | WorldOpenHeart | 匿名相談、家族会 |
| 生活・福祉の問題 | スキマサポートセンター | 生活相談、専門家への橋渡し |
| ネット上の誹謗中傷 | 違法・有害情報相談センター | 削除対応の方法などの助言 |
| 人権侵害・プライバシー問題 | 法務省・法務局 | 人権相談、削除要請など |
| 子どもの学校生活 | 学校・教育相談機関 | いじめや不登校などへの対応 |
特にネット上の誹謗中傷については、次の窓口が利用できます。
- 法務省・みんなの人権110番:0570-003-110
- こどもの人権110番:0120-007-110
- 違法・有害情報相談センター: インターネット上の名誉毀損やプライバシー侵害などについて相談可能。
- インターネット人権相談受付窓口: 法務省のオンライン相談窓口。インターネットから相談を申し込めます。
法務省のインターネット人権相談は、相談フォームから申し込むと、最寄りの法務局からメール、電話または面談で回答を受ける仕組みです。
相談内容によっては、法務局がプロバイダなどに削除を求めることもあります。
相談先を選ぶ際は、刑事事件の弁護を担当する弁護士と、家族自身の生活や人権問題を扱う支援者を区別することも大切です。
【プロの結論】加害者家族への社会的制裁と本人の責任は分けて考えるべき
加害者家族をめぐる問題の本質は、法律上の責任と社会から受ける制裁が必ずしも一致していないことにあります。
本人が重大な犯罪を起こせば、被害者や遺族が深刻な苦痛を受けるのは当然です。
犯罪の責任を明確にし、適切な刑事処分や損害賠償を求めることは、被害者の権利を守るうえで欠かせません。
しかし、その責任を親や配偶者、子どもにまで無条件に広げることは、法律上も社会的にも別の問題です。
家族を支援することは犯罪を肯定することではない加害者家族への支援については、犯罪を起こした本人を擁護しているのではないかという疑問が生じることがあります。
しかし、家族への支援と犯罪の正当化は同じではありません。
家族が精神的・経済的に追い詰められ、社会から孤立すれば、本人との関係を冷静に考えることも難しくなります。
本人の更生を支える場合にも、家族自身の生活が安定していることは重要です。
本人と距離を置く必要がある家族もいれば、適切な境界線を保ちながら関係を続ける家族もいます。
どちらか一方を正解とするのではなく、家族自身の安全と意思を尊重した支援が大切です。
社会が考えるべき3つの判断基準加害者家族の問題を考える際には、次の3つの基準が重要です。
第一に、責任は個人の行為に基づいて判断すること。
家族というだけで犯罪者と同じ扱いをしたり、本人の刑罰を家族にまで広げたりすることは適切ではありません。
第二に、子どもの権利と生活を守ること。
親の犯罪によって子どもが学校や地域で排除されることは、子ども自身の責任とは無関係です。教育や心理的ケアを継続できる環境が必要です。
第三に、家族支援を再犯防止や社会復帰につなげること。
家族が必要な情報を得て、本人との関わり方や今後の生活を整理できることは、本人の更生と社会復帰を考えるうえでも意味があります。
加害者家族への支援は、被害者の苦痛を軽視するものではありません。被害者の権利を守ることと、犯罪に関与していない家族の人権を守ることは、両立させるべき課題です。
【加害者家族に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:家族が逮捕されたら、親や配偶者も逮捕されますか?
A1:家族という理由だけで逮捕されることはありません。ただし、犯罪への共謀や実行への協力、犯人蔵匿、証拠隠滅など、家族自身に犯罪行為があれば別途責任を問われる可能性があります。
Q2:加害者家族は被害者への損害賠償を支払う必要がありますか?
A2:原則として、本人の損害賠償債務を家族が自動的に引き受けることはありません。ただし、家族自身が共同不法行為を行った場合、保証人になっている場合、未成年者の監督義務者として責任を負う場合などは別です。
Q3:親が犯罪を起こした場合、子どもの就職や結婚に制限はありますか?
A3:親の犯罪を理由に、子どもの就職や結婚が法律上当然に制限されることはありません。ただし、周囲の偏見やネット上の情報拡散によって不利益を心配するケースがあります。子ども本人の権利とプライバシーを守ることが大切です。
Q4:家族が逮捕された直後でも相談できますか?
A4:相談できます。WorldOpenHeartは24時間年中無休の加害者家族ホットラインを設置しており、スキマサポートセンターも24時間・365日の電話相談を案内しています。事件の詳細が整理できていなくても、まずは現在困っていることを相談できます。
加害者家族は、本人の犯罪について家族であるという理由だけで刑事責任や民事責任を負うわけではありません。
ただし、犯罪への関与や証拠隠滅などの独立した行為、責任能力のない未成年者に対する監督義務など、法律上の条件に該当する場合には責任が生じる可能性があります。
一方で、逮捕後の生活には、経済的な問題、報道対応、ネット上の誹謗中傷、子どもの学校生活や将来への不安など、法律だけでは解決できない課題が残ります。
2026年現在、WorldOpenHeartやスキマサポートセンターなどの民間団体が、心理・法律・福祉の面から家族を支えています。公的な人権相談や地域の福祉サービスも、必要に応じて活用できます。
本人の犯罪に対する責任を曖昧にしないことと、犯罪に関与していない家族を社会的な制裁から守ることは、決して矛盾しません。
被害者の権利を尊重しながら、家族の人権や子どもの将来も守る。その両方を実現するための支援体制を整えることが、今後の日本社会に求められています。
主な根拠資料(2026年11月時点)
- 法務省・e-Gov法令検索:民法709条・712条・714条、刑法103条~105条。
- 最高裁判所第一小法廷:2015年4月9日判決(平成24年受第1948号)。
- 独立行政法人福祉医療機構:2025年9月掲載「WAM助成」活動紹介。
- NPO法人WorldOpenHeart:団体概要・相談案内・2026年のお知らせ。
- NPO法人スキマサポートセンター:家族向け支援内容・相談案内。
- 警察庁・法務省:インターネット上の誹謗中傷、人権相談に関する案内。