ミッフィーの顔の中央にある「×」は、鼻と口を合わせて描いたものです。つまり、鼻だけが別の場所に隠れているわけでも、口だけをバッテンにしているわけでもありません。
この疑問に直接答えているのが、2013年3月19日に公開された日本のミッフィー情報サイト「dickbruna.jp」の公式ブログ記事「ミッフィーのお顔にあるバッテンは?」です。
同記事では、実際のうさぎの顔写真を紹介しながら、鼻と口の形がバッテンのように見えることを説明しています。
ディック・ブルーナは、うさぎの鼻から口にかけての特徴を、少ない線で表現しました。目は黒い点のような丸、鼻と口は交差する線。この組み合わせによって、ひと目でうさぎと分かる顔が完成しています。
鼻はどこにある?顔のパーツを分解してみるミッフィーの鼻の位置を理解するには、バッテンを上下に分けて眺めると分かりやすくなります。
- 鼻に相当する部分: 顔の中央上部にある鼻先を表す線。
- 口に相当する部分: 鼻の下から左右に分かれる口元の線。
- 全体の役割: 鼻と口をひとつの記号としてまとめたデザイン。
ただし、公式の説明は鼻と口を合わせた表現というものであり、鼻と口を独立したパーツとして別々に配置しているわけではありません。
ここが一般的なキャラクターの顔との大きな違いです。
「口だけ」という解釈が広まった理由バッテンは、顔の中央下寄りに配置されています。そのため、普段からキャラクターの顔を見るときに口元を意識する人には、口の記号として認識されやすいのでしょう。
また、ミッフィーの目には黒い丸が二つあるため、顔のパーツを目・口という組み合わせで理解しやすいことも関係しています。
しかし、公式説明では明確に鼻と口の両方です。
「×=口」という理解は完全に間違いというより、鼻の役割を見落とした見方なのです。
【デザインの由来】ディック・ブルーナはなぜ鼻と口を一体化したのか

ミッフィーの顔を理解するには、作者のディック・ブルーナがどのような考えで絵を描いていたのかを知る必要があります。
ブルーナは1927年8月23日、オランダのユトレヒトに生まれました。絵本作家・イラストレーターとして活動し、124冊の絵本を手がけています。
ミッフィーが誕生したのは1955年。家族で海辺の町エグモント・アーン・ゼーに滞在していた際、ブルーナが長男シルクに、庭に住む白いうさぎのお話を聞かせたことが着想につながりました。
2026年11月現在、ミッフィーは誕生から71年を迎えています。
本物のうさぎを観察して生まれたデザイン講談社のWEBげんきが2022年6月21日に掲載した解説では、ブルーナが子どもの頃から身近にいた野生のうさぎと遊び、その姿をよく観察していたことが紹介されています。
興味深いのは、ブルーナが実物のうさぎをそのまま再現しようとしていたわけではない点です。
同記事で紹介されたインタビューブック『ミッフィーからの贈り物』では、ブルーナ自身が、うさぎだと分かる一方で、本物のうさぎとはまったく違う形にしたかったという趣旨を語っています。
つまり、写実性よりも、キャラクターとしての独自性を重視したのです。
「引き算のデザイン」がミッフィーの顔を作ったブルーナの作品に共通する特徴は、余計な線をできる限り取り除くことです。
実際、講談社の記事では、動物を描く際にはまず正確なスケッチを行い、その後、形から不要な要素を少しずつ削っていく制作過程が紹介されています。
この考え方は、ミッフィーの顔にも表れています。
例えば、一般的なうさぎのイラストでは、次のような要素を描くことがあります。
- 鼻の輪郭や鼻孔
- 上唇や下唇
- 口元の毛並み
- 口の周囲の陰影
- 表情を作る細かな線
一方、ミッフィーでは、こうした細部を大胆に省略しています。
鼻と口を一体化したバッテンにまとめることで、顔の印象が非常に明快になりました。
これは単に絵を簡単にしたという話ではありません。必要最小限の線だけで、うさぎらしさを伝えるというデザイン上の選択です。
2026年まで受け継がれるブルーナのデザイン思想ミッフィーのデザインは、顔だけでなく色使いや絵本の構成にも一貫性があります。
講談社の解説によると、初期の絵本では黒い輪郭線に加えて赤・青・黄・緑が使われ、その後、灰色や茶色などが加わりました。
こうした厳選された色は「ブルーナカラー」と呼ばれています。
また、ブルーナの絵本では、登場人物が基本的に正面を向いています。
これは読者である子どもたちと目を合わせ、うれしいときも悲しいときも、まっすぐ向き合いたいという考えに基づくものです。
顔のバッテンも、正面を向く目も、読者に余計な情報を押しつけず、キャラクターそのものを伝えるための工夫として理解できます。
【家族の顔を比較】ミッフィーのパパ・ママ・祖父母の口が「*」に見える理由
ミッフィーの顔について、もうひとつ気になるのが家族との違いです。
ミッフィー本人の口元は「×」ですが、パパやママは「*」のように見える形をしています。おじいちゃんやおばあちゃんにも、同じように横線が加わっています。
この違いにも、公式の説明があります。
2013年の公式ブログと2020年のオリコンニュースによるブルーナ・ジャパン広報担当者への取材では、バッテンに加わった横線1本は、年齢を表すしわだと説明されています。
ブルーナにとって、しわは大人であることを示す印だったのです。
ミッフィーと家族の顔の違いを一覧で比較| キャラクター・対象 | 口元の特徴 | デザイン上の意味 |
|---|---|---|
| ミッフィー | 基本の「×」 | 鼻と口を一体化した表現 |
| パパ | 横線が1本加わる | 大人であること、しわ |
| ママ | 横線が1本加わる | 大人であること、しわ |
| おじいちゃん | 横線が1本加わる | 年齢を示すしわ |
| おばあちゃん | 横線が1本加わる | 年齢を示すしわ |
パパとママの顔を見ると、ミッフィーのバッテンに横方向の線が追加されていることが分かります。
そのため、記号として見ると「*」に近い印象になります。
しかし、これは大人専用の別の口を作ったということではありません。
基本となる鼻と口のデザインは共通で、そこに年齢を表す線が加わったものです。
この仕組みが分かると、親子の顔を見比べたときに、単なる描き分け以上の意味が見えてきます。
祖父母の口元にもしわが描かれているおじいちゃんやおばあちゃんも、基本的には同じルールで描かれています。
公式ブログでは、両親だけでなく祖父母にもバッテンに1本の線が加わることが説明されています。
ここで注意したいのは、祖父母だけに特別な追加記号があるわけではないという点です。
横線1本が年齢を示すという共通のルールで、子どもと大人を視覚的に区別しています。
顔の線だけで家族の年齢を伝える技術一般的な絵本では、年齢の違いを表すために、髪の色や体格、服装などを変えることがあります。
ブルーナは、それだけに頼らず、顔の線を少し変えることで年齢の違いを表しました。
これは絵本を読む子どもにとっても理解しやすい工夫です。
大人のキャラクターは、子どものミッフィーと顔の基本構造を共有しています。それでも、横線が1本加わるだけで、親や祖父母として認識しやすくなるのです。
【絵本で検証】ミッフィーは口を開けることがある?実際の2作品を紹介
「ミッフィーの口は×なのだから、ずっと閉じたままなのでは?」
そんな疑問を持つ人もいる可能性があります。
実は、ミッフィーの絵本には、口を開けた表情が登場します。
この点についても、公式ブログが具体的な作品を挙げて紹介しています。
1.『うさこちゃんがっこうへいく』では歌う姿が登場
『うさこちゃんがっこうへいく』
ディック・ブルーナ 文・絵/福音館書店
学校で過ごすミッフィーの姿を描いた作品です。
2013年3月19日の公式ブログでは、この作品の一場面が紹介されています。
そこでは、ミッフィーが口を開けて歌っています。
いつものバッテンではなく、歌っていることが分かるように口元が描き分けられているのです。
この場面は、ミッフィーの口が固定された記号ではなく、物語の状況に応じて表現が変わることを示す具体例です。
2.『うさこちゃんおばけになる』では友達の口が丸くなる
『うさこちゃんおばけになる』
ディック・ブルーナ 文・絵/福音館書店
ミッフィーがおばけに変装して、友達を驚かせるお話です。
こちらは、少し違った意味で興味深い作品です。
ミッフィーがおばけに変装して友達を驚かせると、友達の口が丸く開いた表情になります。
つまり、口が開いているのはミッフィー本人ではなく、驚かされた友達たちです。
公式ブログでは、この場面についても紹介されており、驚きの感情が口の形で表現されていることが分かります。
口を開ける表現から分かるブルーナの工夫この2作品を比べると、興味深い共通点があります。
それは、顔の線を必要以上に増やさず、状況に応じて口の形を変えていることです。
- 歌う場面では、声を出していることが伝わる口元。
- 驚く場面では、丸く開いた口元。
- 通常の場面では、鼻と口を合わせたバッテン。
こうした描き分けは、限られた線でも登場人物の行動や感情を伝えられることを示しています。
【誤解を解消】ミッフィーの顔についてよくある勘違いと本当の意味
ミッフィーの顔は非常にシンプルだからこそ、見る人によって解釈が分かれやすい部分があります。
ここでは、特に間違えやすいポイントを整理します。
誤解1:バッテンは口だけを表しているこれは正確ではありません。
公式ブログでは、鼻と口の両方を表していると説明されています。
鼻の存在を忘れて口だけと考えると、デザインの本来の意味を見落としてしまいます。
誤解2:パパとママの「*」はひげを表しているこれも公式説明とは異なります。
横線は年齢を示すしわです。
ひげや装飾として加えられたものではなく、ミッフィーとの年齢差を顔のデザインで表現するための工夫です。
誤解3:祖父母だけは別の顔の仕組みになっている祖父母も、両親と同じく基本のバッテンに横線が1本加わっています。
別々の記号を割り当てているわけではありません。
誤解4:ミッフィーは口を開けられない絵本には歌う場面など、口を開けた表現が存在します。
普段の顔がバッテンだからといって、表情が固定されているわけではありません。
誤解5:顔がシンプルなのは、描く手間を省くためむしろ、ブルーナのデザイン思想とは逆の理解です。
講談社の記事では、正確に観察した形から不要な要素を削ぎ落とす工程が紹介されています。
シンプルな形に到達するまでには、観察と試行錯誤が必要だったのです。
【プロの結論】ミッフィーの「×」はシンプルさと感情表現を両立したデザイン
ミッフィーの鼻と口をめぐる疑問を整理すると、見えてくるのはブルーナの一貫したデザイン思想です。
大切なのは、少ない線でキャラクターの特徴を伝えること。そして、読み手が表情や物語を想像できる余白を残すことです。
特に注目したいのは、次の3点です。
第一に、鼻と口を一体化したこと。
通常なら別々に描くこともできる顔のパーツを、バッテンというひとつの形にまとめました。これがミッフィーを識別する大きな特徴になっています。
第二に、年齢を横線1本で表したこと。
パパやママ、祖父母の顔には、同じ基本形を残しながらしわを追加しています。家族の関係性と年齢の違いを、少ない線で表現したのです。
第三に、場面によって口の形を変えたこと。
歌うときや驚くときには、通常のバッテンとは異なる口元が描かれます。基本デザインを守りながらも、物語に必要な表情はきちんと描き分けています。
こうして見ると、ミッフィーの顔は単純な記号ではありません。
子どもにも分かりやすく、大人が見ても発見がある。何十年も親しまれてきた理由のひとつは、この絶妙なデザインのバランスにあるのでしょう。
【よくある質問】ミッフィーの鼻と口に関するFAQ
Q1:ミッフィーの鼻はどこにありますか?
A1:顔の中央にある「×」の中にあります。鼻と口を一体化した表現なので、鼻だけが独立したパーツとして描かれているわけではありません。
Q2:ミッフィーのバッテンはなぜ「×」なのですか?
A2:作者ディック・ブルーナがうさぎの顔を観察した際、鼻から口にかけての形がバッテンのように見えたことが由来です。シンプルに描くというデザイン思想も反映されています。
Q3:ミッフィーのパパとママの口が「*」なのはなぜですか?
A3:基本のバッテンに横線が1本加わっているためです。この線はしわを表し、大人であることを示しています。
Q4:おじいちゃんやおばあちゃんの口元にも意味がありますか?
A4:あります。両親と同様、バッテンに加わった横線1本が年齢を表すしわです。
Q5:ミッフィーが口を開けている絵本は何ですか?
A5:『うさこちゃんがっこうへいく』です。歌っている場面で口を開けた姿が登場します。また、『うさこちゃんおばけになる』では、驚いた友達たちの口が丸く開いています。
Q6:ミッフィーと「うさこちゃん」は別のキャラクターですか?
A6:同じキャラクターです。オランダ語の原題では「ナインチェ」、日本の絵本では「うさこちゃん」、英語圏などでは「ミッフィー」と呼ばれています。日本では1964年に「うさこちゃん」として翻訳出版されました。
ミッフィーの顔にある「×」は、鼻と口を一体化したデザインです。作者ディック・ブルーナが実際のうさぎを観察し、余計な線を削ぎ落とすことで生み出しました。
パパやママ、祖父母の口元に加わる横線は、年齢を示すしわ。さらに『うさこちゃんがっこうへいく』では歌うために口を開けた姿も描かれています。
2026年現在、誕生から71年を迎えたミッフィー。その顔に込められた工夫を知ると、いつものシンプルな表情が少し違って見えてきます。次に絵本やグッズでミッフィーを見かけたら、ぜひ鼻と口、そして家族の顔の違いにも注目してみてください。
主な参考資料
- dickbruna.jp 日本のミッフィー情報サイト「ミッフィーのお顔にあるバッテンは?」(2013年3月19日)
- 講談社 WEBげんき「6月21日はミッフィーの誕生日!ディック・ブルーナが込めた4つの秘密」(2022年6月21日)
- ORICON NEWS「ミッフィーはなぜ口が『×』なのか…65周年でもなお愛される秘密」(2020年6月10日)
- ミッフィー公式サイト「About Miffy」「How Miffy Was Born」「About Dick Bruna」
記事基準日:2026年11月6日