ホーム 芸能ニュース・ゴシップ 【まず結論】二階級特進の意味とは?死亡すれば必ず昇任するのか

【まず結論】二階級特進の意味とは?死亡すれば必ず昇任するのか

伊部 拓海 伊部 拓海 • 更新: • 公開: • 読了約 17 分
目次

二階級特進とは、本人が生前に持っていた階級から、二段階上の階級へ特別に昇任することです。

例えば、ある警察官が巡査部長だった場合、二階級上位は警部補、警部という順番になります。ただし、組織によって階級の名称や昇任制度は異なるため、具体的な階級は所属組織に応じて判断しなければなりません。

ここで押さえておきたいのは、「二階級特進」は、死亡そのものに自動的に結び付く権利ではないという点です。

二階級特進と通常の昇任は何が違う?

通常の昇任は、勤務成績、経験年数、試験、職務能力などを総合的に評価して行われます。

一方、特別昇任は、通常の昇任ルートとは別に、特に顕著な功績や公務上の負傷・死亡などを理由として、特別な選考によって階級を上げる仕組みです。

両者の違いを整理すると、次のようになります。

- 通常昇任: 試験、勤務成績、経験、能力などを評価する。
- 一階級特進: 特別な功績や公務上の負傷・死亡などを理由に、一段階上の階級へ昇任する。
- 二階級特進: 特に顕著な功労など、組織が定めた条件を満たす場合に二段階上の階級へ昇任する。

なお、現在の法令では「特別昇任」「特殊進級」「二階級上位の階級への昇任」など、組織ごとに異なる表現が使われています。

つまり、二階級特進は一つの法律で全国の警察官や自衛官に共通して適用される制度ではありません。

【歴史と経緯】旧日本軍で二階級特進が広まった理由

二階級特進

二階級特進の歴史を理解するには、旧日本軍の陸軍と海軍を分けて考える必要があります。

現在のように、殉職者への顕彰を人事制度の一部として整理する考え方とは異なり、当時は軍功、戦時の人事、国家的な顕彰活動が複雑に絡み合っていました。

1920年施行の海軍武官進級令とは

旧日本海軍の進級制度を知るうえで欠かせない史料が、1920年(大正9年)の海軍武官進級令です。

同令は同年3月29日に公布され、4月1日に施行されました。名古屋大学大学院法学研究科の法令データベースに、当時の勅令第58号の全文が収録されています。

この法令で特に重要なのが、第17条から第18条にかけて定められた特殊進級です。

第17条では、通常の規則に従わない進級を「特殊進級」と位置付けています。

第18条では、次のような場合に特別な進級を認めていました。

1. 敵前で特別な武功を立て、指揮官が全軍に布告した場合。
2. 戦時・事変に際して武功を立て、または顕著な功績があり、その戦時・事変中に負傷や疾病によって危篤となった場合。
3. 極めて勇敢な行為と顕著な功績があり、海軍大臣が軍人の模範として海軍全体に布告した場合。

注目すべきなのは、条文が「死亡した者は必ず二階級進級させる」と定めているわけではないことです。

あくまで功績や行為の内容を基準に、通常の進級とは別の特別な措置を認める規定でした。

また、同令には通常の進級に必要な勤務年数や、士官の進級候補者を決める手続きも規定されています。

爆弾三勇士と二階級特進

1932年(昭和7年)の第一次上海事変で知られるのが、爆弾三勇士、別名「肉弾三勇士」です。

工兵第18大隊に所属していた江下武二、北川丞、作江伊之助の3人は、上海郊外の廟行鎮で鉄条網を突破する作戦に参加し、爆破筒を使った攻撃で命を落としました。

この出来事は当時の新聞や出版物で大きく取り上げられ、3人は軍神として顕彰されました。

戦後の歴史解説では、爆弾三勇士は二階級特進の初期の代表的事例として紹介されています。3人は死後に二階級昇任したと伝えられています。

ただし、この出来事にはもう一つの側面があります。

当時の軍内部には、爆破筒を使った攻撃方法について技術的な問題を指摘する見方もありました。世間で英雄視された行動と、軍内部での作戦評価は必ずしも同じではなかったのです。

二階級特進という言葉の歴史には、戦場での功績だけでなく、当時の社会がどのように戦死者を英雄として扱ったかという問題も含まれています。

九軍神の二階級特進と1942年の真珠湾攻撃

二階級特進の歴史を語るうえで、もう一つ重要なのが九軍神です。

1941年12月8日の真珠湾攻撃では、日本海軍の航空部隊に加え、特殊潜航艇による攻撃も実施されました。

特殊潜航艇の乗組員10人のうち、9人が戦死し、1人は米軍の捕虜となりました。

海軍は翌1942年3月6日、戦死した9人の氏名を公表しました。この9人は二階級特進し、九軍神として大々的に顕彰されます。

昭和館デジタルアーカイブに登録されている1942年刊行の『嗚呼特別攻撃隊』や『特別攻撃隊軍神九勇士』にも、九勇士の二階級特進や感状授与に関する記録が残されています。

しかし、この出来事を単純に「戦死した軍人が全員二階級特進した」と理解するのは正確ではありません。

神戸新聞の2020年12月の調査報道は、真珠湾攻撃で戦死認定された航空兵55人のうち、二階級特進したのは49人で、残る6人は一階級の進級にとどまったことを明らかにしました。

つまり、同じ作戦に参加して亡くなった人たちの間でも、処遇に違いがあったのです。

この6人の扱いについては、戦死状況や当時の人事上の評価などが論点になりましたが、判断の詳細を一つの確定した基準として説明できる公文書は確認されていません。

この事例は、二階級特進が戦死という事実だけで決まるものではなかったことを示す重要な歴史的材料です。

【制度比較】旧日本軍・警察・自衛隊の二階級特進はどう違う?

ここまでの歴史を踏まえ、2026年現在の警察と自衛隊の制度を比較します。

特に重要なのは、同じ「二階級特進」という呼び方でも、根拠となる規定や対象者、判断方法が異なることです。

二階級特進に関係する制度の比較表
組織・時代 制度・主な条件 特徴・注意点 旧日本陸軍 戦時の功績に対する特別な進級 爆弾三勇士が初期の代表的事例として知られる 旧日本海軍 1920年施行の海軍武官進級令第18条など 武功や顕著な功績を条件とする特殊進級。戦死者全員への一律適用ではない 警視庁 生命の危険を顧みない職務遂行と特に顕著な功労、死亡 該当する場合、二階級上位への昇任が可能 愛知県警 公務による負傷・疾病で死亡した場合など 規程により二階級上位への昇任を認める場合がある 自衛隊 自衛隊法施行規則第30条 選考により一階級または二階級上位への特別昇任が可能

この比較から分かるのは、旧日本軍の戦時顕彰と、現在の警察・自衛隊の人事制度を同一視できないことです。

それぞれの組織が定める規程を確認することが、二階級特進の実態を理解する近道になります。

【警察の実態】警視庁の二階級昇任基準と殉職者の扱い

警察官の場合、一般的な昇任制度と殉職時などの特例を分けて理解する必要があります。

警察官の階級は、巡査、巡査部長、警部補、警部、警視などに分かれています。

通常の昇任は、試験、勤務成績、専門能力、経験などを評価して決定されます。

警察庁が2025年3月31日に発出した昇任基準の運用通知でも、選抜昇任、試験昇任、選考昇任という区分が示されています。

警視庁ではどのような場合に二階級昇任する?

警視庁の制度を確認するうえで重要なのが「警視庁職員任用規程」の別表第9の2です。

この別表には、一階級上位への昇任と二階級上位への昇任について、それぞれ異なる基準が定められています。

二階級上位への昇任については、次の条件が示されています。

- 生命の危険を顧みず職務を遂行したこと。
- 特に顕著な功労があると認められること。
- その職務遂行の結果として死亡したこと。

この二階級昇任の区分では、勤続年数と勤務成績について「問わない」とされています。

これは、一般的な昇任で必要とされる勤務年数や能力評価とは別の特例であることを意味します。

また、死亡した職員に対する昇任は、死亡した日に遡って行うと定められています。

つまり、警視庁では単に職務中に亡くなったという事実だけで二階級昇任するのではなく、職務遂行の内容と功労の程度が判断のポイントになります。

全国の警察官に同じ基準が適用されるのか

ここも誤解されやすい部分です。

警察官の人事制度は、警察庁が示す基準を踏まえながら、都道府県警察ごとに運用されています。

例えば、愛知県警察の「警察官任用規程」第4条では、公務による負傷や疾病によって危篤または著しい障害の状態となった警察官を一階級上位に昇任させることができるとしています。

加えて、その負傷や疾病によって死亡した場合には、二階級上位への昇任が可能と定めています。

また、生命を賭して職務を遂行し、警察勲功章などを授与された場合の特例もあります。

このように、警視庁と愛知県警では、特別昇任の規定や条件の表現に違いがあります。

「警察官なら全国どこでも同じ条件で二階級特進する」という理解は正確ではありません。

【自衛隊の現在】殉職者への特別昇任は法律でどう定められている?

自衛隊については、警察と異なり、特別昇任の根拠が自衛隊法施行規則に明記されています。

2026年11月時点で確認できる同規則第30条には、特別昇任の対象者が定められています。

自衛隊法施行規則第30条の内容

同条では、通常の昇任に関する規定にかかわらず、選考によって一階級または二階級上位の階級に昇任させることができるとしています。

対象となるのは、次の5つの区分です。

1. 職務遂行上、功労があった者。
2. 公務上の負傷または疾病によって死亡した者、あるいは心身に障害が生じた者。
3. 国際連合派遣自衛官で、国際連合の業務遂行上の功労があった者。
4. 派遣隊員で、派遣先の機関の業務遂行上の功労があった者。
5. その他、防衛大臣が特に定めた場合に該当する者。

ここで特に重要なのが、第30条の「選考によって」という文言です。

公務上の負傷や疾病によって死亡した場合でも、規定上は自動的に二階級上がるわけではありません。

また、特別昇任は死亡者だけを対象にしたものでもありません。職務上の功績や派遣先での顕著な功労なども対象となっています。

自衛隊の殉職者は全員二階級特進する?

答えは、いいえです。

規則では一階級または二階級上位への昇任が認められていますが、どちらになるかは選考によって決まります。

また、対象となる条件には公務上の負傷・疾病という要件が含まれているため、単に在職中に死亡した場合と、公務に起因する死亡は区別されます。

この違いは非常に重要です。

例えば、勤務中に発生した事故であっても、その事故が公務上の負傷に該当するかどうかなど、個別の事情が問題になります。

加えて、自衛隊では通常の昇任も人事評価や勤務期間などに基づいて行われます。特別昇任は、それらの一般的な手続きとは別に設けられた制度です。

したがって、2026年現在の自衛隊における二階級特進は、殉職者への顕彰を可能にする制度であり、死亡者全員に保障された昇任ではありません。

【二階級特進の理由と実態】なぜ一階級ではなく二階級なのか

そもそも、なぜ一階級ではなく二階級なのでしょうか。

その背景には、通常の勤務評価では測りきれない功績を、人事上の特別な処遇として示すという考え方があります。

二階級特進が行われる主な理由

大きく分けると、次の3つの意味があります。

1.特に大きな功績を階級という形で評価する

危険な状況で人命を救ったり、組織の任務遂行に大きく貢献したりした場合、その功績を通常の昇任とは別の形で評価することがあります。

2.殉職者への顕彰

公務によって命を落とした人に対し、生前の職務や功績を踏まえ、特別な処遇を行う意味があります。

3.組織として功績を記録する

階級の昇任は、個人の功績を組織の人事記録に反映させる一つの方法でもあります。

ただし、これらは制度の意義を説明するものであり、すべての組織で同じ目的や判断基準が採用されているわけではありません。

二階級特進は遺族への補償なのか

ここにも誤解があります。

二階級特進は、本人に対する人事上の昇任措置です。遺族への補償や給付金と同じ制度ではありません。

警察の場合、警察表彰規則には殉職者特別賞じゅつ金という別の仕組みがあります。

同規則第5条の2では、特に生命の危険が予想される状況で職務を遂行し、その結果死亡して警察勲功章を授与された場合などに、特別賞じゅつ金を付与できるとしています。

その上限は、対象となる職員の区分によって3,000万円または6,000万円です。

これは二階級昇任とは別の表彰制度であり、すべての殉職者に同額が支給されるという意味ではありません。

二階級特進の実態を見極める4つのポイント

二階級特進に関するニュースや歴史資料を読む場合、次の4点を確認すると誤解を防げます。

- 所属組織: 警察、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊、旧日本軍のどれなのか。
- 適用規程: 特別昇任の根拠となる法律や内部規程は何か。
- 死亡・功績の条件: 公務上の死亡なのか、特別な功績が認定されたのか。
- 昇任の結果: 一階級なのか、二階級なのか。また、正式な昇任なのか、表彰や顕彰なのか。

特に旧日本軍の資料では、戦時中の報道や顕彰と、実際の人事記録を分けて読むことが大切です。

九軍神のように大きく報道された事例だけを基準にすると、同じ戦争で亡くなった人たちの間にも処遇の違いがあったという実態を見落としてしまいます。

【二階級特進に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:二階級特進は、戦死や殉職をすれば必ず適用されますか?

A1:いいえ。死亡したという事実だけでは決まりません。警視庁では特に顕著な功労を伴う職務遂行と死亡が二階級昇任の条件になっており、自衛隊でも選考によって一階級または二階級上位への特別昇任が決定されます。

Q2:警察官と自衛官では二階級特進の条件が違いますか?

A2:違います。警視庁には職員任用規程の別表第9の2があり、自衛隊には自衛隊法施行規則第30条があります。いずれも特別な昇任を認めていますが、具体的な条件や選考方法は異なります。

Q3:二階級特進は現在も行われている制度ですか?

A3:はい。2026年現在も、自衛隊法施行規則には特別昇任の規定があり、警察にも殉職者などを対象とする特別な昇任基準があります。ただし、すべての殉職者に二階級昇任が適用されるわけではありません。

二階級特進は、戦死や殉職を理由に必ず階級が上がる制度ではありません。

旧日本軍では、爆弾三勇士や九軍神の事例を通じて広く知られるようになりましたが、戦時中であっても一律の適用ではなく、処遇に差が存在しました。

現在の制度を整理すると、次のようになります。

- 旧日本軍: 武功や顕著な功績に基づく特殊進級が存在した。
- 警視庁: 特に顕著な功労を伴う職務遂行と死亡などを条件に、二階級上位への昇任が可能。
- 自衛隊: 自衛隊法施行規則第30条により、選考による一階級または二階級上位への特別昇任が可能。

2026年現在の二階級特進を正しく理解するには、単に「殉職したから階級が上がった」と捉えるのではなく、所属組織の規程、功績の認定、選考の仕組みを確認する必要があります。

二階級特進の本質は、死亡に対する自動的な報酬ではなく、特別な功績や公務上の犠牲を組織が人事上の処遇として評価することにあります。

この点を理解すれば、旧日本軍の歴史的な顕彰と、現在の警察・自衛隊の制度を混同せずに判断できるようになります。

同じカテゴリの記事

伊部 拓海
コンテンツディレクター 伊部 拓海
プロフィールを見る →

映画・ドラマ担当。公開資料と一次報道を照合し、ネタバレの扱いには線引きルールを設けています。

おすすめの関連記事