「お可愛いこと……」。上品な口調と、相手を見下すような冷たい表情が印象的なこのセリフは、赤坂アカの漫画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』を代表する名フレーズだ。主人公の一人、四宮かぐやの決めゼリフとして知られ、アニメでも強烈な印象を残している。
しかし、実際の原作を読むと意外な事実が見えてくる。白銀御行が思い描く「お可愛いこと」と、四宮かぐや本人が現実に口にする「お可愛いこと」は、必ずしも同じ意味ではない。初登場は原作1巻第1話だが、最初の発言者は現実のかぐやではなく、白銀の脳内にいるかぐやなのである。
【意味を解説】「お可愛いこと」は褒め言葉?それとも皮肉?

「お可愛いこと」は、「可愛い」という形容詞に接頭語の「お」と、名詞的な働きを持つ「こと」を組み合わせた、お嬢様らしい上品な言い回しである。
一般的な意味に置き換えるなら、「なんて可愛らしいのでしょう」「まあ、可愛いこと」といったニュアンスになる。
ただし、『かぐや様は告らせたい』で使われる場合は、単純な称賛ではない。相手の失敗や未熟さを見透かし、余裕のある立場から軽くあしらうような皮肉が込められている。
特に白銀御行の脳内に登場するかぐやは、口元に手を添え、冷ややかな視線を向けながらこの言葉を発する。言葉遣いは丁寧なのに、伝わってくる感情は容赦ない。このギャップこそが、セリフの面白さだ。
なぜ「お可愛いこと」が白銀にとって恐ろしいのか白銀御行は秀知院学園の生徒会長であり、学年トップクラスの成績を誇る努力家だ。一方、四宮かぐやは名家の令嬢で、財力、家柄、才能に恵まれた人物である。
二人は互いに惹かれ合っているにもかかわらず、「好きになった方が負け」という独自の恋愛観に縛られている。そのため、相手に好意を見抜かれることを極端に恐れている。
白銀にとって、かぐやに自分の好意を悟られることは、恋愛頭脳戦で敗北することを意味する。
そこで脳内に現れるのが、弱みを見せた自分を冷笑する「妄想のかぐや」だ。実際のかぐやがどう思っているかとは関係なく、白銀自身の不安とプライドが、この恐ろしいイメージを作り上げている。
【元ネタ・初登場】原作1巻第1話とアニメ第1話を検証
原作の初登場は1巻第1話「映画に誘わせたい」「お可愛いこと」の原点は、原作漫画の第1話「映画に誘わせたい」にある。
物語の舞台は、エリートが集まる秀知院学園。生徒会長の白銀御行と副会長の四宮かぐやは、互いに好意を抱きながらも、自分から告白することを避けている。
ある日、書記の藤原千花が、男女で一緒に観ると結ばれるというジンクスのある映画のペアチケットを手に入れる。
白銀はかぐやを映画に誘いたい。しかし、その誘いは実質的な告白と受け取られる可能性がある。自分から誘えば、相手に好意を知られてしまうかもしれない。
その不安から白銀の脳内に現れるのが、かぐやの冷たい表情と「お可愛いこと」という言葉だ。
つまり、最初からかぐや本人の口癖として描かれたわけではない。白銀が想像する、最悪の展開を象徴する演出として登場したのである。
集英社の公式書誌情報では、原作4巻に第36話、14巻に第138話、15巻に第142話が収録されている。初登場の第1話と合わせて巻数を追うと、セリフの意味が変化していく過程を理解しやすい。
アニメでは第1期第1話から登場アニメ版でも、記念すべき第1期第1話「映画に誘わせたい」で登場する。
このエピソードでは、白銀とかぐやの恋愛頭脳戦の基本構造が紹介される。二人が相手の気持ちを読み合い、少しの行動にも深読みを重ねていく展開の中で、「お可愛いこと」が印象的な演出として使われている。
アニメ公式サイトが掲載する第1話の構成は、次の3エピソードだ。
- 「映画に誘わせたい」
- 「かぐや様は止められたい」
- 「かぐや様はいただきたい」
この第1話で作品のテンポや二人の関係性が提示されるため、「お可愛いこと」は単なるキャラクターの決めゼリフではなく、恋愛頭脳戦の敗北を想像させる演出として機能している。
アニメの公式ストーリー情報でも、二人が互いに告白させようとする関係性が第1話の中心として紹介されている。
【実際に言った?】原作の発言回・収録巻を一覧で比較
「お可愛いこと」は、かぐやが何度も口にしているように感じられる。しかし、その印象の大部分は白銀の妄想によって作られている。
ファンによる原作の用例整理では、かぐや本人が実際にこの言葉を発する場面は、主に次の4つの時期にまとめられている。
| 原作の話数・巻数 | 相手・状況 | 発言の性質 |
|---|---|---|
| 第1巻・第1話 | 白銀の脳内に登場するかぐや | 映画に誘うことをためらう白銀の妄想。実際の発言ではない。 |
| 第4巻・第36話 | 白銀御行 | 風邪で幼児のような状態になったかぐやが発言。侮蔑ではない。 |
| 第14巻・第138話 | 早坂愛 | かぐやのデフォルメされた状態での発言。典型的な冷笑とは異なる。 |
| 第15巻・第142話 | 白銀御行 | 帰り際、白銀の不器用な振る舞いに対して発言。妄想に最も近い現実の場面。 |
| 第28巻・最終話 | 白銀御行 | 笑顔を伴う発言。侮蔑ではなく、親しみや愛情を感じさせる締めくくり。 |
※第1巻第1話は初登場の妄想シーン。本人の実際の発言として整理されるのは、第4巻以降の4つの場面である。
原作4巻36話:風邪を引いたかぐやの発言最初の実際の発言として知られるのが、第4巻第36話「四宮かぐやについて①」だ。
このエピソードでは、体調を崩したかぐやの様子が普段とは大きく異なる。白銀と接する際にも、いつもの冷静さや計算高さが薄れ、幼い子どものような振る舞いを見せる。
そこで白銀に向けて発せられるのが「おかわいいこと」という言葉だ。
重要なのは、ここには白銀の妄想で描かれるような冷酷な見下しの意図がないこと。かぐやの状態そのものが普段と違うため、同じ言葉でも意味合いは大きく異なる。
集英社の第4巻公式目次でも、第36話のタイトルが「四宮かぐやについて①」であることを確認できる。
原作14巻138話:早坂愛に向けた発言次の注目シーンは、第14巻第138話「かぐや様は教えたい」だ。
この回では、キスに関する話題を通じて、かぐやと早坂愛の関係性が描かれる。普段は冷静な早坂が、恋愛に関しては意外な一面を見せるのも見どころだ。
かぐやは、この場面で早坂に向けて「お可愛いこと」と発言する。ただし、白銀が想像するような完璧なお嬢様の冷笑ではない。
いわゆる「お可愛いことフェイス」と実際のかぐやの表情が一致しないことが、ファンの間でも話題になるポイントだ。
原作15巻142話:白銀に向けた本格的な発言このセリフの真相を知るうえで、特に重要なのが第15巻第142話「四宮かぐやについて④」である。
白銀とかぐやは一緒に帰ることになるが、かぐやは白銀に手をつないでほしいという気持ちを遠回しに伝えようとする。
しかし、白銀はそのサインを十分に理解できない。かぐやは期待した反応が得られず、ついにタクシーへ乗り込む際、白銀に対して「お可愛いこと」と言い放つ。
それまで白銀の脳内で何度も再生されてきた言葉が、ついに現実の会話として登場する場面だ。
ただし、かぐやが白銀を本気で見下しているわけではない。期待を裏切られた不満や、素直になれない気持ちが背景にある。白銀が長年恐れてきたセリフが、恋愛感情の裏返しとして実現するところに、この場面の面白さがある。
原作28巻最終話:最後に変わる言葉の意味さらに見逃せないのが、最終28巻に収録された最終話「グッバイ秀知院!」だ。
物語の終盤、かぐやと白銀は卒業を迎える。最後の場面では、白銀に向けて再び「お可愛いこと」という言葉が登場する。
しかし、ここでのかぐやは、かつて白銀が恐れていた冷淡な妄想の人物ではない。笑顔を見せながら、親しみを込めて言葉を返している。
第1話では敗北を象徴していたセリフが、最終話では二人の関係が深まったことを示す言葉へと変わる。物語の始まりと終わりをつなぐ、象徴的な演出といえる。
集英社の公式情報でも、28巻がシリーズ最終巻であり、最終話のタイトルが「グッバイ秀知院!」であることが確認できる。
【赤坂アカの意図】なぜ「お可愛いこと」を繰り返したのか
このセリフが作品の象徴になった背景には、作者・赤坂アカのギャグ演出に対する考え方がある。
2020年2月、ABEMA TIMESのインタビューで赤坂アカは、「お可愛いこと」の誕生と繰り返し使用した理由について説明している。
「『お可愛いこと』というセリフは担当編集氏の『5回続ければ力を持つ』という言葉を信じて、頑張って入れ続けました。」
赤坂アカが好んでいたのは、同じパターンを繰り返すことで笑いを生む「天丼」という手法だった。
最初は一度の妄想として登場したセリフでも、白銀が失敗を恐れるたびに繰り返し登場すれば、読者は次第にその演出を待つようになる。
つまり、セリフそのものの意味だけでなく、「また出てきた」という反復の面白さが作品の魅力を強めたのである。
赤坂アカ自身も、繰り返し使い続けるのは簡単ではなかったと振り返っている。毎回同じパターンを使いながら、読者を飽きさせず笑わせ続けることには、相応の工夫が必要だったということだ。
声優・古賀葵が語った演技のポイントアニメ版で四宮かぐやを演じる古賀葵も、このセリフについて興味深い話をしている。
2019年のアニメイトタイムズのインタビューによると、古賀は当初「お可愛いこと」を嫌みったらしく、時間をかけて演じていたという。
しかし、音響監督の明田川仁や原作者の赤坂アカから、かぐやの冷たさや怖さを重視する演技の方向性について助言を受け、表現を変更した。
古賀が目指したのは、感情をあまり表に出さず、相手を一言で切り捨てるような冷淡さだった。
また、古賀は通常のセリフと脳内モノローグで演技を使い分けていることも明かしている。相手に聞こえない心の声と、表向きの上品な発言を別々に表現することで、かぐやの二面性を際立たせている。
この演技の違いを意識すると、アニメ版の「お可愛いこと」が単なる決めゼリフではなく、キャラクターの心理を表現する重要なセリフであることがわかる。
【名シーンの魅力】四宮かぐやと白銀御行の関係性から読み解く
白銀の妄想は、かぐやへの恐怖と憧れの裏返し白銀が想像するかぐやは、実際のかぐやよりもはるかに冷酷で、隙を見せた相手を容赦なく見下す存在として描かれている。
しかし、これはかぐやの本性をそのまま表しているわけではない。
白銀は、努力によって学園のトップに立った人物だ。自分の能力や立場に誇りを持っている一方、四宮家という巨大な家柄を背負うかぐやに対して、無意識の劣等感も抱いている。
そのため、好意を見抜かれたり、失敗を見られたりすることに過敏になる。
白銀の妄想に登場する「お可愛いこと」は、かぐやからの攻撃というより、白銀自身が抱えるプライドや不安を視覚化したものなのだ。
二人の関係性を整理| 登場人物・作品要素 | 役割・関係 | セリフとの関係 |
|---|---|---|
| 四宮かぐや | 生徒会副会長・ヒロイン | 妄想と現実の両方でセリフを発する人物。 |
| 白銀御行 | 生徒会長・もう一人の主人公 | 妄想の「お可愛いこと」を繰り返し生み出す。 |
| 藤原千花 | 生徒会書記 | 二人の恋愛頭脳戦をかき乱す存在。 |
| 早坂愛 | かぐやに仕える人物・友人 | 14巻138話で実際の発言を受ける。 |
| 赤坂アカ | 原作者 | 反復によるギャグ演出を生み出した。 |
序盤の白銀にとって、この言葉は絶対に聞きたくない敗北の宣告だった。
ところが、物語が進むにつれて、かぐやの本心が明らかになり、二人の関係も変化していく。
15巻142話では、かぐやの不満や寂しさが言葉の裏に見える。そして最終話では、同じフレーズが笑顔とともに登場する。
この変化は、単にキャラクターが成長したというだけではない。読者が最初に抱いた「かぐやは白銀を見下している」というイメージそのものが、物語の進行によって塗り替えられていく仕掛けでもある。
【ネットミームとしての使い方】SNSではどんな場面に合う?
「お可愛いこと」は、作品のファン以外にも伝わりやすい特徴的な言い回しだ。上品な言葉と冷淡なニュアンスの組み合わせが印象的で、ネット上では作品を知らない人にも伝わる皮肉表現として応用しやすい。
代表的な使い方は3パターン1. 相手のちょっとした失敗をからかう場合
ゲームで自信満々に挑戦した人が思わぬ失敗をしたときや、知ったかぶりが発覚したときなど、親しい相手に冗談交じりで使える。
2. 自分の失敗を笑いに変える場合
自分の不器用な行動や、少し恥ずかしい失敗を振り返り、自虐的なコメントとして使う方法もある。
3. 可愛らしい行動への愛情表現
作品の最終話のように、相手の不器用さや一生懸命な姿を微笑ましく感じたときに使う方法だ。必ずしも侮辱を意味するわけではない。
実際に使うなら注意したいポイントこのセリフの面白さは、上品な言葉遣いと少し意地悪なニュアンスのギャップにある。しかし、相手との関係性を考えずに使うと、単なる嫌味や見下しとして受け取られる可能性がある。
特に、仕事上のやり取りや初対面の相手との会話、真剣な相談を受けている場面には向いていない。
使うなら、作品の文脈を共有している友人同士や、冗談を言い合える関係が適している。相手が笑って受け止められる状況かどうかが判断基準になる。
また、原作を知らない相手に対して使う場合は、四宮かぐやのセリフであることを添えると、意図が伝わりやすくなる。
【プロの結論】「お可愛いこと」の本当の魅力は妄想と現実のギャップ
「お可愛いこと」は、四宮かぐやを象徴する言葉でありながら、実際には白銀御行の心理を映し出す役割も担っている。
白銀の脳内に登場するかぐやは、相手の好意を見抜いて冷笑する完璧なお嬢様だ。しかし現実のかぐやは、白銀と同じように恋愛に不器用で、相手の反応に一喜一憂する普通の女の子でもある。
この二つの姿の落差が、作品の笑いと恋愛要素を同時に成立させている。
赤坂アカがインタビューで語った反復の演出意図を踏まえると、「お可愛いこと」は一度だけでは成立しない。何度も繰り返されることで白銀の恐怖が読者にも共有され、実際にかぐやが発言したときのインパクトが大きくなる。
そして、最終話で再び登場することで、序盤から続いてきた二人の恋愛頭脳戦を象徴する言葉として物語を締めくくる。
このセリフをより深く楽しみたい人には、原作1巻第1話、4巻第36話、14巻第138話、15巻第142話、そして28巻の最終話を順番に読むことをおすすめしたい。白銀の妄想と現実のかぐやを比較すると、同じ言葉がまったく違う表情を持つことがわかる。
【よくある質問】「お可愛いこと」に関するFAQ
Q1:「お可愛いこと」の元ネタは何ですか?
A1:赤坂アカの漫画『かぐや様は告らせたい』が元ネタです。原作1巻第1話「映画に誘わせたい」で、白銀御行の妄想に登場するかぐやのセリフとして初めて描かれました。
Q2:「お可愛いこと」は原作の何巻で実際に言っていますか?
A2:代表的な実際の発言は4巻36話、14巻138話、15巻142話です。また、最終28巻の最終話にも登場します。特に15巻142話は白銀に直接向けられた印象的な場面です。
Q3:アニメで「お可愛いこと」が初登場するのは何話ですか?
A3:テレビアニメ第1期第1話「映画に誘わせたい」です。白銀の脳内に現れる妄想のかぐやによって、作品序盤から印象的に登場します。
Q4:「お可愛いこと」は本当にかぐやの口癖ですか?
A4:一般的なイメージとは異なり、実際に本人が口にする回数は少なく、大部分は白銀の妄想です。頻繁に登場する印象が強いため、かぐやの口癖として認識されやすくなっています。
Q5:赤坂アカはなぜこのセリフを繰り返したのですか?
A5:担当編集者から「5回続ければ力を持つ」という助言を受け、同じセリフを繰り返すことで笑いを生む「天丼」の演出を取り入れたためです。作者自身も、繰り返し続けたことが報われたと振り返っています。
Q6:「お可愛いこと」はネットでどのように使いますか?
A6:友人のちょっとした失敗を上品にからかったり、相手の不器用な行動を微笑ましく表現したりする際に使われます。ただし、相手によっては嫌味に聞こえるため、冗談が通じる関係で使うのが適切です。
「お可愛いこと」は、四宮かぐやが日常的に白銀を見下すために使っている言葉ではない。原作1巻第1話で白銀の妄想として生まれ、繰り返し登場することで作品を象徴するフレーズへと成長した。
実際の発言は4巻36話、14巻138話、15巻142話、そして最終28巻の最終話などに登場する。特に15巻142話と最終話では、白銀が長く抱いていたイメージと、現実のかぐやの気持ちの違いが際立っている。
作者・赤坂アカが意識した反復のギャグ、古賀葵による冷淡さを表現した演技、そして白銀の妄想と現実のギャップ。この3つが重なったことで、「お可愛いこと」は単なる決めゼリフを超えた作品の象徴になった。
2026年現在、原作は全28巻で完結している。これから作品を読み返す人も、アニメから入った人も、最初の妄想シーンと最後の笑顔を見比べてほしい。同じ言葉でありながら、そこに込められた二人の関係性は大きく変わっている。
参考にした主な資料- 集英社『かぐや様は告らせたい』各巻の公式書誌情報・収録話一覧。
- 少年ジャンプ+掲載の原作第1話・第141話・第281話。
- ABEMA TIMES「『かぐや様は告らせたい』作者・赤坂アカ氏、企画はツッコミの定番『お前もかい!』から生まれた」。
- アニメイトタイムズ「四宮かぐや役・古賀葵さんインタビュー」。