「親の介護をしたくない」「自分の人生を犠牲にしてまで親の面倒を見る必要があるのだろうか」。親の高齢化や認知症、身体機能の低下をきっかけに、こうした気持ちを抱く人は少なくありません。親との関係が良好であっても、仕事や子育て、自分自身の生活、経済的な事情を考えれば、介護を引き受けることに抵抗を感じるのは自然なことです。
実際、親の介護をめぐっては、民法877条の扶養義務、兄弟姉妹との負担の偏り、介護費用、介護離職など、感情だけでは解決できない問題が重なります。しかし、親の介護をしたくないからといって、自分が必ず同居して身の回りの世話をしなければならないわけではありません。2026年11月現在の法制度や厚生労働省の資料を踏まえ、介護をしない選択肢、法的責任、地域包括支援センターへの相談方法、介護保険サービスや仕事との両立策を整理します。
【親の介護をしたくないのは冷たい?そう感じる5つの理由と家族介護の現実】

親の介護をしたくないという感情には、さまざまな背景があります。単に親を嫌っているからではなく、介護によって自分の生活が維持できなくなることへの不安や、過去の親子関係、将来への経済的な心配が関係している場合もあります。
1.自分の仕事や人生を犠牲にしたくない介護が始まると、通院への付き添い、買い物、食事の準備、行政手続き、介護サービスの調整など、日常的な対応が必要になります。親の状態によっては、夜間の見守りや緊急時の対応も発生します。
現役世代にとって、こうした負担は仕事や生活に直結します。昇進や転職を諦めたり、勤務時間を短縮したり、遠方に住む親のために頻繁に帰省したりすることになれば、自分の将来設計にも影響します。
親の介護よりも自分の仕事や生活を優先したいと考えることは、必ずしも親への愛情がないことを意味しません。自分の生活を守ることも、介護問題を考えるうえで正当な判断材料です。
2.親との関係が悪く、介護を引き受けたくない親子関係が良好でない場合、介護は精神的に大きな負担になります。
幼少期から親の暴言や暴力、過度な干渉を受けてきた人にとって、親の介護は過去のつらい記憶を呼び起こす可能性があります。親から長年否定されてきた人が、介護を機に再び親と密接に関わることに抵抗を感じても不思議ではありません。
また、親が介護を受ける立場になっても、子どもに対して命令的な態度を取り続けるケースもあります。介護の必要性と、親子関係を修復しなければならないという問題は、分けて考える必要があります。
3.介護に必要な知識や体力がない排泄や入浴、着替え、移乗、食事介助などは、経験のない人にとって簡単な作業ではありません。認知症による徘徊や夜間の不眠、介護への拒否が加われば、専門的な知識や継続的な対応が大切です。
腰痛などの身体的な問題を抱えている人や、自分自身の健康状態に不安がある人が介護を担うことには、本人と親の双方にリスクがあります。
介護の専門職に任せたいと考えることは、無責任な選択ではありません。専門的な支援を利用することは、本人の安全を守る方法でもあります。
4.経済的な負担が心配親の年金や貯蓄だけで介護費用を賄えるのか、自分が生活費を援助しなければならないのか、施設に入る場合はいくら必要なのか。こうした不安も、介護を避けたいと感じる大きな理由です。
自分自身にも住宅ローン、子どもの教育費、生活費などがあれば、親の介護費用まで負担する余裕がないこともあります。
介護費用については、まず親本人の年金、預貯金、資産、介護保険の利用可能額を確認することが基本です。子どもが最初から全額を負担する前提で考える必要はありません。
5.兄弟姉妹の間で負担が偏るのが嫌だ兄弟姉妹が複数いても、実際の介護が特定の子どもに集中することがあります。
親の近くに住んでいる人、仕事の融通が利く人、独身の人、長女や長男など、さまざまな理由で一人だけが介護の中心になってしまう場合です。
経済的な援助は全員で分担していても、通院の付き添いや緊急時の対応は一人に集中することがあります。こうした不公平感が積み重なると、親の介護そのものに拒否感を抱くようになります。
親の介護をめぐる社会的な負担も無視できない総務省の2022年就業構造基本調査によると、「介護・看護のため」を理由に前職を離職した人は約47万4,000人でした。そのうち、調査直近の1年間に離職した人は約10万6,000人です。
この数字は親の介護だけを対象にしたものではありませんが、家族の介護が働く人のキャリアに影響していることを示しています。
介護を引き受けることによって仕事や収入を失う可能性がある以上、「自分が介護をしたくない」と感じる背景には、個人の感情だけでは説明できない社会的な問題もあります。
【民法877条で親の介護は義務?しない場合の法的責任を解説】
親の介護をしたくない人が特に気になるのが、法律上の責任です。「親を介護しなければ法律違反になるのではないか」「兄弟姉妹がいる場合も自分だけが責任を負うのか」と不安になる人もいるでしょう。
ここで押さえておきたいのが、民法877条と879条です。
民法877条は親子間の扶養義務を定めている民法877条1項では、直系血族および兄弟姉妹が互いに扶養する義務を負うと定めています。
親と子どもは直系血族に該当するため、子どもには親に対する扶養義務があります。また、兄弟姉妹同士にも扶養義務があります。
ただし、ここで注意したいのは、扶養義務と、自分自身が直接介護をする義務は同じではないという点です。
民法877条は、親の生活を支えるための扶養関係を定めた規定です。子どもが必ず親と同居することや、入浴・排泄・食事などの身体介護を自分で行うことを一律に命じる条文ではありません。
そのため、介護施設や訪問介護などの専門サービスを利用し、直接的な介護を専門職に任せるという選択肢も考えられます。
民法879条では扶養する側の経済状況も考慮される民法879条は、扶養の程度や方法について当事者間で話し合いがまとまらない場合、扶養を必要とする人の需要、扶養義務者の資力、その他一切の事情を考慮して家庭裁判所が定めるとしています。
つまり、親に十分な収入がないからといって、子どもが無制限にお金を負担しなければならないわけではありません。
子ども自身に扶養すべき家族がいるか、収入や資産がどの程度あるか、健康状態や生活状況はどうかなど、個別の事情が考慮されます。
親の介護を断ったら逮捕される?損害賠償を請求される?親の介護を断ったという事実だけで、直ちに刑事罰を受けたり、逮捕されたりするわけではありません。
また、民法877条があるからといって、子どもが必ず親を自宅に引き取らなければならないという結論にもなりません。
ただし、扶養義務そのものがなくなるわけではありません。親から扶養料を請求された場合や、兄弟姉妹との間で扶養の方法について争いが生じた場合には、家庭裁判所の調停や審判で判断される可能性があります。
加えて、親の財産管理を任されている場合や、成年後見人などの法的な立場にある場合は、別の責任が問題になることがあります。すでに引き受けている契約上の義務や具体的な事情も確認が必要です。
親が自力で生活できず、生命や身体に差し迫った危険がある場合に、何の対応もしないまま放置することも避けなければなりません。介護を自分で担わない場合でも、行政や専門機関につなぐ対応は考えておく必要があります。
親・子ども・兄弟姉妹・行政の関係を整理親の介護をめぐる責任は、一人の子どもだけに集約されるものではありません。法律上の関係と、実際の介護体制を分けて考えることが大切です。
| 関係者・制度 | 法律・制度上の位置づけ | 具体的な役割 |
|---|---|---|
| 親本人 | 介護サービスの利用者 | 本人の収入や資産、希望を踏まえて介護方針を検討する |
| 子ども | 民法877条の扶養義務者 | 経済状況などに応じて扶養を検討する。身体介護を必ず自分で行うという意味ではない |
| 兄弟姉妹 | 互いに扶養義務を負う | 費用負担、手続き、連絡、通院対応などを話し合う |
| 家庭裁判所 | 民法878条・879条などに基づく判断 | 扶養の順位や程度、方法について必要に応じて調停・審判を行う |
| 地域包括支援センター | 市町村が設置する高齢者の総合相談機関 | 介護保険、介護サービス、家族介護者の相談を受ける |
| 介護サービス事業者 | 介護保険制度に基づくサービス提供者 | 訪問介護、通所介護、施設サービスなどを提供する |
裁判所の案内によると、扶養について当事者間の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に扶養請求調停を申し立てることができます。調停が不成立になった場合は、原則として審判手続に移行します。
重要なのは、法律上の扶養義務があることと、一人の家族が24時間の介護を引き受けることを混同しないことです。
【親の介護をしない選択肢はある?無理なく距離を取る5つの方法】
親の介護をしたくない場合、選択肢は「すべて自分で引き受ける」か「完全に関係を断つ」かの二択ではありません。
自分ができることと、できないことを明確にし、専門サービスや行政の支援を組み合わせることで、直接介護をしない生活設計をつくることができます。
選択肢1.訪問介護などの外部サービスを利用する親が自宅で生活することを希望している場合は、訪問介護を利用する方法があります。
訪問介護では、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行います。
サービスの内容や利用回数は、本人の要介護度やケアプランなどによって異なります。家族が毎日の食事や入浴を担当しなくても、必要な支援を専門職に依頼できる場合があります。
選択肢2.デイサービスやショートステイを利用するデイサービスは、施設に通って食事や入浴、機能訓練などのサービスを受ける仕組みです。
日中に専門職が対応するため、家族が介護に費やす時間を減らすことにつながります。
ショートステイは、短期間施設に宿泊して介護を受けるサービスです。家族の休息や仕事の都合、冠婚葬祭などに合わせて利用できる場合があります。
特に、親と離れて暮らしている人や、仕事を続けながら介護をしている人にとって、こうしたサービスは重要な選択肢です。
選択肢3.介護施設への入所を検討する在宅介護が難しい場合は、介護施設への入所も検討できます。
代表的な施設には、次のような種類があります。
- 特別養護老人ホーム:原則として要介護3以上の人を対象とする公的な介護施設。重度の介護が必要な人の生活を支える。
- 介護老人保健施設:在宅復帰を目指す人に対し、リハビリテーションや医療・介護を提供する。
- 介護医療院:長期的な療養が必要な人に、医療と介護を一体的に提供する。
- 介護付き有料老人ホーム:契約内容に応じて生活支援や介護サービスを受けられる民間施設。
- サービス付き高齢者向け住宅:高齢者向けの住まいで、安否確認や生活相談などを基本とし、介護サービスは必要に応じて組み合わせる。
施設によって入居条件、費用、提供される介護内容は異なります。親本人の希望や健康状態を踏まえて比較することが必要です。
選択肢4.経済的な援助や手続きだけを担当する直接介護をすることは難しくても、行政手続きやサービスの契約、費用の確認などなら対応できるという人もいます。
その場合は、身体介護を専門職に任せ、自分は必要な連絡や手続きだけを担当する方法があります。
ただし、金銭的な援助についても自分の生活を圧迫しない範囲で検討し、負担額や支払い方法を明確にしておくことが大切です。
選択肢5.親との連絡や訪問頻度に上限を設ける親との関係が精神的な負担になっている場合は、連絡頻度や訪問回数を限定することも選択肢です。
例えば、緊急時の連絡先を地域包括支援センターや担当ケアマネジャーに集約する、日常的な連絡は兄弟姉妹に依頼する、訪問は月に一度までと決めるなど、具体的な境界線を設けます。
過去に暴力や虐待を受けた経験がある場合は、無理に親と直接交渉する必要はありません。第三者や専門機関を介して支援体制を整える方法もあります。
親の介護を断るときの伝え方親や兄弟姉妹に介護を断る意思を伝えるときは、感情的な言い争いを避け、できないことを具体的に伝える方法が有効です。
例えば、次のような伝え方が考えられます。
「仕事や自分の生活があるため、毎日の介護を引き受けることはできません。自宅での身体介護や同居は難しいので、介護保険サービスや施設利用を前提に考えたいです。必要な手続きについては、地域包括支援センターに相談しましょう」
兄弟姉妹に対しては、次のように伝えることもできます。
「私一人が継続的に介護を担当することはできません。費用、通院、手続き、緊急時の連絡などを分担し、必要な介護は専門職にお願いする形にしたいです」
重要なのは、できないことを曖昧にしないことです。「できる限り頑張る」と伝えると、周囲から際限なく役割を求められる場合があります。
自分が担当できる範囲を明確にし、実際の介護体制は専門家を交えて決めることが、長期的なトラブルを防ぐことにつながります。
【地域包括支援センターと介護保険サービスの利用方法】
親の介護を自分で引き受けたくない場合、最初に相談したいのが地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談機関です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が連携し、高齢者本人だけでなく家族介護者の相談にも対応しています。
地域包括支援センターは家族の相談にも対応する地域包括支援センターでは、介護保険サービスの利用方法、要介護認定の申請、介護予防、権利擁護、家族の介護負担などについて相談できます。
厚生労働省の公表情報では、2025年4月末時点で全国に5,487か所の地域包括支援センターが設置されています。支所であるブランチを含めると7,374か所です。
相談先は、原則として親が住んでいる地域を担当するセンターです。子どもが遠方に住んでいても、家族として相談することができます。
介護の相談は無料で受け付けているため、介護が始まる前の段階でも問い合わせて構いません。
介護保険サービスを利用するまでの5ステップ介護保険サービスは、原則として要介護・要支援認定を受けて利用します。厚生労働省が示す基本的な流れは次のとおりです。
ステップ1:要介護認定を申請する
親本人が住んでいる市区町村の介護保険担当窓口で申請します。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が申請を代行できる場合もあります。
ステップ2:認定調査を受ける
市区町村の認定調査員が本人の自宅などを訪問し、身体状況や日常生活の状態を確認します。また、主治医の意見書なども参考にして審査・判定が行われます。
ステップ3:要介護度が決まる
認定結果は、要支援1・2、要介護1~5の7段階です。認定された区分によって利用できるサービスや支給限度額が異なります。
ステップ4:ケアプランを作成する
ケアマネジャーなどの専門職と相談し、本人の状態や希望に合わせてサービスの内容や利用回数を決めます。介護者の仕事や生活上の事情も伝えておきましょう。
ステップ5:介護サービスを契約・利用する
サービス事業者と契約し、ケアプランに沿って訪問介護やデイサービス、施設サービスなどを利用します。
介護保険の自己負担は原則1割、所得に応じて2割・3割介護保険サービスの利用者負担は、原則1割です。ただし、一定以上の所得がある人は2割または3割になります。
また、介護保険施設を利用する場合には、サービス利用料とは別に食費、居住費、日常生活費などが必要です。
所得の低い人などを対象に、食費や居住費の負担を軽減する制度や、高額介護サービス費による自己負担額の上限制度も設けられています。対象条件や対象外の費用は制度ごとに異なるため、市区町村で確認しましょう。
親の介護費用と施設入所費用は何を比較すべきか介護費用は、在宅介護か施設介護か、親の要介護度、利用するサービス、所得、居住地域などによって変わります。
そのため、施設の月額利用料だけで判断するのではなく、実際に必要になる費用を項目ごとに確認が必要です。
- 在宅介護:訪問介護、デイサービス、福祉用具、住宅改修、通院交通費など。
- 施設介護:月額利用料、介護保険自己負担、食費、居住費、日用品費、医療費など。
- 入居時の費用:有料老人ホームなどでは入居一時金や保証金が必要な場合がある。
- 追加費用:おむつ、理美容、通院付き添い、個別サービスなど、契約内容によって別途発生する費用。
施設を比較するときは、入居時に必要な金額、毎月の支払額、追加料金、退去時の精算条件を確認します。入居一時金がない施設でも、月額費用や追加サービス費用が高くなる場合があります。
親本人の年金や資産でどこまで支払えるかを確認し、子どもが負担する場合は、無理のない金額を先に決めておくとよいでしょう。
【仕事と介護の両立は可能?介護休業制度・給付金と兄弟姉妹の分担】
親の介護をしたくない理由として、仕事を辞めたくないという気持ちは大きなものです。介護のために退職すると、収入が減るだけでなく、再就職が難しくなる可能性もあります。
そこで知っておきたいのが、育児・介護休業法に基づく介護休業制度や介護休暇、勤務時間の調整に関する制度です。
介護休業は対象家族1人につき通算93日まで介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するために、一定期間仕事を休める制度です。
対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として分割取得できます。
介護休業の目的は、労働者が介護をすべて自分で担うことではありません。介護サービスの手配や施設の検討、家族間の調整など、介護体制を整えるために活用する制度です。
介護休業給付金は休業開始時賃金の67%相当雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合、介護休業中に介護休業給付金を受け取ることができます。
厚生労働省によると、給付額は原則として休業開始時賃金日額に支給日数を乗じた金額の67%です。
例えば、休業期間中に賃金の支払いがない場合の概算では、休業前の平均賃金月額が次の金額なら、給付額の目安は以下のようになります。
- 平均月額15万円:給付額は約10万円。
- 平均月額20万円:給付額は約13万4,000円。
- 平均月額30万円:給付額は約20万1,000円。
ただし、給付額には上限があり、休業期間中の賃金支払い状況によって減額される場合もあります。
また、介護休業開始前2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が通算12か月以上必要など、雇用保険上の受給要件があります。休業当初から退職を予定している場合は、原則として給付対象になりません。
介護休暇や短時間勤務も利用できる長期間の休業が必要ない場合は、介護休暇を利用する方法もあります。
対象家族が1人の場合は年間5日、2人以上の場合は年間10日まで取得できます。通院の付き添いや介護サービスの手続きなど、短時間の対応にも活用できます。
そのほか、短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、残業の制限、深夜業の制限などの制度もあります。勤務先の規程を確認し、自分の状況に合う制度を組み合わせましょう。
2025年4月施行の法改正で会社の対応義務が強化2025年4月1日から、育児・介護休業法の改正により、介護離職を防止するための企業の対応が強化されました。
主な変更点は次のとおりです。
- 介護に直面した労働者に対する制度の個別周知と利用意向の確認。
- 介護休業や両立支援制度を利用しやすくするための雇用環境整備。
- 労働者が40歳に達する時期などに、介護制度に関する情報を提供すること。
- 介護のためのテレワークなどを選択できるようにする措置の努力義務化。
特に重要なのは、介護に直面したことを会社に申し出た労働者に対し、会社が制度の内容や申出先、給付金について個別に周知し、利用意向を確認する義務が設けられたことです。
介護を理由に退職を考える前に、人事部門や社内相談窓口に制度の利用を相談することが大切です。
兄弟姉妹との介護分担はどう決めるべきか兄弟姉妹がいる場合は、介護を一人に集中させないための話し合いが欠かせません。
ただし、全員が同じ金額を負担すれば公平になるとは限りません。住んでいる場所、勤務形態、収入、健康状態、家庭の事情などによって、できることは異なります。
例えば、次のような分担方法が考えられます。
- 近くに住む兄弟:定期的な様子確認や通院時の対応。
- 遠方に住む兄弟:電話での連絡、行政手続きの確認、費用の分担。
- 仕事の融通が利く兄弟:ケアマネジャーとの連絡やサービスの調整。
- 経済的な余裕がある兄弟:本人の生活状況を踏まえた金銭的な援助。
分担内容は口約束で終わらせず、誰が何を担当するのか、費用はいくら負担するのか、緊急時は誰に連絡するのかを記録しておくとトラブルを減らせます。
話し合いがまとまらない場合は、地域包括支援センターや家庭裁判所の扶養請求調停など、第三者の支援を利用する方法もあります。
【親の介護ストレスで限界を感じたら?2026年最新の支援策と相談先】
親の介護をしたくないという気持ちが強くなっている場合、すでに精神的な限界に近づいている可能性もあります。
介護は短期間で終わるとは限りません。睡眠不足、仕事との両立、親との関係、兄弟姉妹との対立などが重なると、介護者自身の健康や生活が損なわれることがあります。
介護ストレスが限界に達する前に確認したいサイン次のような状態が続いている場合は、介護負担を見直す必要があります。
- 親からの電話や連絡を見るだけで強いストレスを感じる。
- 介護のことが頭から離れず、仕事や家事に集中できない。
- 夜間の対応が続き、睡眠不足になっている。
- 兄弟姉妹への怒りや不公平感が強くなっている。
- 親に対して強い怒りを感じ、自分の感情を抑えられない。
- 自分の健康や家庭生活を犠牲にしている。
こうした状態になったときに、さらに頑張ろうとする必要はありません。介護サービスの回数を増やす、ショートステイを利用する、施設入所を検討するなど、介護体制そのものを変更することが大切です。
自分や親の安全を保てないと感じる場合は、速やかに自治体や専門機関に相談してください。緊急の医療対応が必要な場合は119番などの緊急窓口を利用します。
2026年11月時点の介護保険制度の動向2026年の介護保険制度を考えるうえで注目されるのが、次期制度改正に向けた社会保障審議会介護保険部会の議論です。
厚生労働省の公表資料によると、2025年12月25日に介護保険制度の見直しに関する意見が取りまとめられました。その後も2026年に入り、制度の持続可能性や給付と負担、要介護認定などについて検討が続いています。
直近の2026年10月26日に開催された第137回介護保険部会でも、主な議題として次の内容が取り上げられました。
- 介護保険制度の持続可能性の確保。
- 介護サービスの給付と負担のあり方。
- 要介護認定に関する課題。
- 介護支援専門員の法定研修の見直し状況。
こうした議論は、今後の介護保険制度の運用に影響する可能性があります。ただし、審議会で検討されている内容と、すでに成立・施行された法律や制度は区別する必要があります。
2026年11月時点では、2025年4月施行の仕事と介護の両立支援に関する改正内容を押さえたうえで、最新の制度改正情報を確認が必要です。
厚生労働省が進める家族介護者支援厚生労働省は、高齢者本人だけでなく、家族介護者も含めて社会全体で支える地域包括ケアシステムを推進しています。
地域包括支援センターには、家族介護者の相談支援や情報提供、関係機関との連携などが求められています。
つまり、介護をしている家族が疲れ切ってから相談するのではなく、介護が始まった段階で支援につながることも想定されているのです。
「親の介護をしたくない」という気持ちを隠す必要はありません。地域包括支援センターには、介護をする家族自身の負担についても率直に伝えて構いません。
相談先を目的別に整理- 地域包括支援センター:介護サービス、要介護認定、家族介護者の負担、施設入所などの相談。
- 市区町村の介護保険担当窓口:要介護認定、介護保険料、利用者負担軽減制度などの相談。
- 勤務先の人事・労務担当者:介護休業、介護休暇、短時間勤務、給付金の申請方法などの確認。
- ハローワーク:介護休業給付金の受給資格や支給手続きの相談。
- 家庭裁判所:扶養義務や費用負担について家族間で合意できない場合の調停・審判。
- 弁護士などの法律専門家:扶養義務の範囲、親族間の金銭トラブル、法的責任の個別相談。
親の介護に関する相談は、必ずしも親本人が最初に行わなければならないわけではありません。子どもや家族から相談を始め、利用できる制度や支援策を確認することができます。
【親の介護したくない人に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:親の介護をしたくないと思うのは親不孝ですか?
A1:親の介護をしたくないと感じること自体は、親不孝や冷たい人間であることを意味しません。仕事、健康、経済状況、親子関係など、さまざまな事情があります。自分で介護を担うことが難しい場合は、介護保険サービスや施設入所などを利用し、無理のない支援体制を整える方法があります。
Q2:親の介護をしないと民法877条違反になりますか?
A2:民法877条は親子間の扶養義務を定めていますが、子どもが必ず同居して身体介護をしなければならないという規定ではありません。ただし、扶養義務そのものがなくなるわけではなく、親の生活状況や子どもの経済状況などによって扶養の程度や方法が判断される場合があります。
Q3:親の介護を拒否したら逮捕されますか?
A3:介護を引き受けないという意思表示だけで、直ちに逮捕されるわけではありません。ただし、具体的な状況によって別の法的責任が問題になることはあります。親の生命や身体に危険がある場合は放置せず、自治体や専門機関につなぐことが必要です。
Q4:兄弟姉妹がいる場合、親の介護は誰が担当すべきですか?
A4:一人だけが必ず介護を担当しなければならないという決まりはありません。民法877条では兄弟姉妹も扶養義務を負います。経済状況や生活事情を踏まえ、費用、手続き、通院、連絡などを分担する方法を検討しましょう。
Q5:親の介護をしたくない場合、最初にどこへ相談すればよいですか?
A5:親が住んでいる地域を担当する地域包括支援センターがおすすめです。要介護認定の申請、介護保険サービス、ケアマネジャーの紹介、施設入所、家族の介護負担などについて相談できます。
Q6:親を介護施設に入れる費用は子どもが支払わなければなりませんか?
A6:施設費用の支払いは、親本人の年金や預貯金、契約内容、家族間の合意、具体的な扶養関係などによって異なります。子どもが必ず施設費用の全額を支払うという一律のルールはありません。ただし、扶養義務に基づく負担が問題になる場合は、個別の事情に応じた判断が必要です。
Q7:親の介護を理由に仕事を辞めたくない場合、利用できる制度はありますか?
A7:介護休業、介護休暇、短時間勤務、残業の制限、時差出勤などがあります。また、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者は介護休業給付金を受けられます。退職を決断する前に、勤務先の人事担当者やハローワークに相談してください。
【プロの結論】親の介護をしたくないなら自分を犠牲にしない仕組みを作る
親の介護をしたくないという気持ちは、必ずしも親への愛情の欠如を意味しません。自分の人生や仕事、健康、家庭を守りたいという思いが背景にある場合もあります。
法律上、親子間には民法877条に基づく扶養義務があります。しかし、それは子どもが必ず同居して24時間の身体介護を引き受けなければならないという意味ではありません。民法879条に基づき、扶養の程度や方法は本人と扶養義務者の事情を踏まえて判断されます。
親の介護をしたくない人が、最初に考えるべきなのは、介護をするかしないかという二択ではなく、どのような支援体制なら親の生活と自分の生活を両立できるかという問題です。
判断の基準として、次の4点を確認してください。
- 身体介護:自分が直接担当する必要があるのか、専門職に任せられるのか。
- 経済的負担:親本人の年金や資産、介護保険制度でどこまで対応できるのか。
- 家族の役割:兄弟姉妹で費用や手続きを分担できるのか。
- 生活の維持:仕事や健康、自分の家庭を犠牲にしない介護体制を組めるのか。
2026年現在、介護保険サービス、地域包括支援センター、介護休業制度、介護休業給付金など、家族の負担を軽減するための仕組みは整備されています。制度を使うことは、親を見捨てることではありません。
親の介護を一人で抱え込最初に、まずは地域包括支援センターに相談し、専門職を交えた支援体制を整えることが現実的な第一歩です。
親を大切にすることと、自分の人生を犠牲にすることは同じではありません。自分ができないことには境界線を引き、必要な支援を社会につなぐ。それも、親のこれからの生活を守るための一つの選択です。
主な公的根拠資料
- 厚生労働省「介護保険サービスの利用方法」「地域包括支援センター」
- 厚生労働省「介護休業制度・介護休業給付Q&A」
- 総務省「令和4年就業構造基本調査」
- 裁判所「扶養請求調停」
- 厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会」2026年10月開催資料