2026年11月現在、楽天グループの業績に大きな変化が表れている。2026年8月10日に発表された2026年12月期第2四半期(中間期)決算では、売上収益が前年同期比12.9%増の1兆3,090億円となり、IFRS営業利益も504億円の黒字に転換した。長年の課題だった収益性の改善が数字に表れた決算だ。
しかし、手放しで好調とは判断できない。親会社の所有者に帰属する中間損益は109億円の赤字が残っている。一方、第2四半期単独では親会社帰属利益が約77億円の黒字となった。この違いは何を意味するのか。楽天モバイルの損失改善、フィンテック事業の成長、楽天市場などインターネットサービスの収益力を整理し、証券コード4755の今後を左右するポイントまで検証する。
【楽天の結果はどうだった?】2026年中間決算で営業黒字に転換

楽天グループの2026年12月期第2四半期決算は、売上成長と営業収益力の回復が同時に確認できる内容となった。
楽天グループが公表した2026年1月1日から6月30日までの連結業績は、次のとおりだ。
| 決算項目 | 2026年中間期 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆3,090億円 | 1兆1,591億円 |
| 売上収益成長率 | +12.9% | +10.3% |
| IFRS営業利益 | 504億円 | 66億円の赤字 |
| 税引前中間利益 | 179億円 | 662億円の赤字 |
| 中間利益(連結全体) | 254億円 | 1,020億円の赤字 |
| 親会社帰属中間損益 | 109億円の赤字 | 1,244億円の赤字 |
| Non-GAAP営業利益 | 783億円 | 198億円 |
金額は百万円単位の公式決算数値を億円単位に換算し、四捨五入。出典:楽天グループ2026年12月期第2四半期決算短信。
売上収益1兆3,090億円の意味前年同期の売上収益は1兆1,591億円だった。2026年中間期には約1,500億円増加し、成長率は12.9%に達した。
注目すべきは、特定の事業だけに成長が集中していない点だ。
楽天グループは、インターネットサービス、フィンテック、モバイルの3セグメントすべてで前年同期比の増収を達成した。
特にフィンテックは25.1%増と高い成長率を記録。楽天カード、楽天銀行、楽天証券などの顧客基盤拡大が収益を押し上げている。
一方、楽天モバイルも契約回線数の増加に伴い売上収益が拡大した。通信品質の改善や楽天市場・楽天カードとの相互利用を促す施策が、顧客獲得に寄与している。
IFRS営業利益504億円は黒字化の重要な節目前年同期のIFRS営業損益は66億円の赤字だった。
それが2026年中間期には504億円の黒字に転換している。前年同期からの改善幅は約571億円だ。
営業利益は、本業によってどれだけ利益を生み出せているかを測る基本的な指標である。
楽天市場や金融サービスの収益拡大に加え、モバイル事業の赤字縮小がグループ全体の営業損益を押し上げた。
ただし、営業利益の黒字化と最終利益の黒字化は別問題だ。この点が今回の決算を読み解く最大のポイントになる。
【なぜ営業黒字なのに赤字?】109億円の中間損失と四半期黒字の違い
今回の楽天の決算結果で、最も誤解されやすいのが親会社帰属損益だ。
中間期では109億円の赤字なのに、第2四半期単独では約77億円の黒字となっている。
この2つは矛盾していない。集計期間が異なるためだ。
中間期と第2四半期単独の数字を比較中間期決算は1月から6月までの累計実績である。一方、第2四半期単独の数字は4月から6月までの3か月間を対象としている。
| 項目 | 2026年中間期累計 | 第2四半期単独 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆3,090億円 | 6,655億円 |
| IFRS営業利益 | 504億円 | 200億円 |
| 税引前利益 | 179億円 | 約5億円 |
| 親会社帰属損益 | ▲109億円 | +77億円 |
第1四半期の親会社帰属損失は約186億円だった。そこから第2四半期単独で約77億円の利益を計上したため、半年間の累計では約109億円の赤字が残ったことになる。
つまり、第2四半期には黒字化したものの、上半期全体では赤字を解消できていないというのが正確な状況だ。
もう一つの要点は非支配持分さらに重要なのが、連結全体の利益と親会社株主に帰属する利益の違いである。
IFRS決算では、連結子会社の利益のうち、楽天グループ以外の株主に帰属する部分を非支配持分として区分する。
2026年中間期の数字を見ると、次のようになる。
- 連結全体の中間利益:約254億円
- 非支配持分に帰属する利益:約364億円
- 親会社の所有者に帰属する損失:約109億円
連結全体では利益が出ていても、その利益の一部が外部株主に帰属するため、親会社の所有者に帰属する損益は赤字になる。
楽天銀行や楽天カードなど、金融事業を含むグループ構造を理解するうえで欠かせない会計上の違いだ。
第2四半期の黒字には税金の影響もあるもう一つ見逃せないのが法人所得税費用だ。
第2四半期単独では、税引前利益が約5億円だったのに対し、法人所得税費用は約267億円のマイナスとなっている。
つまり、税金費用が利益を押し上げる方向に働き、連結全体の四半期利益は約272億円となった。
親会社帰属利益は約77億円だった。
このため、四半期の黒字化をそのまま本業の収益力が完全に回復した証拠と受け取るのは早い。営業利益の継続的な増加と、税効果に依存しない最終利益の確保を分けて確認する必要がある。
【3事業の業績を比較】楽天モバイル・フィンテック・インターネットサービスの実力
楽天グループの収益構造を理解するには、3つの主要セグメントを分けて見る必要がある。
今回の中間決算では、特にフィンテックの成長が際立った。一方、モバイルは赤字が続いているものの、改善幅が確認できる。
以下は2026年1~6月の累計実績。セグメント損益は会社開示のNon-GAAP営業損益ベース。
楽天市場を中心とするEC事業
売上収益は6,558億円、前年同期比4.1%増。セグメント利益は442億円で、67.2%増となった。
主力の楽天市場では、新規顧客の獲得とロイヤルユーザーの育成に取り組んだ。マーケティング効率の改善も利益拡大につながっている。
楽天トラベルも好調だった。訪日外国人による利用拡大に加え、国内旅行の取扱高も堅調に推移した。
広告事業ではAIを活用した検索連動型広告やターゲティング広告の強化も進んでいる。
注目したいのは、売上成長率4.1%に対して利益成長率が67.2%に達したことだ。単に売上を増やすだけでなく、収益性を高める動きが表れている。
2. フィンテック:グループ最大の利益貢献事業
楽天カード・楽天銀行・楽天証券
売上収益は5,708億円、前年同期比25.1%増。セグメント利益は1,277億円、46.9%増となった。
今回の決算で最も力強い数字を示したのがフィンテックだ。
各サービスの成長要因は異なる。
- 楽天カード: 顧客基盤の拡大とショッピング取扱高の増加が手数料収益を押し上げた。
- 楽天銀行: 預金・運用資産の拡大に加え、日銀の政策金利引き上げによる運用利回りの改善が寄与した。
- 楽天証券: 新規口座獲得と投資信託残高の積み上げ、市場環境を背景とした金融収益が成長を支えた。
- 楽天ペイメント: 楽天ペイの利用者基盤と取扱高の拡大が増収増益につながった。
楽天銀行は2026年6月末時点で1,846万口座、楽天証券は1,439万口座を確保。楽天証券のNISA口座数も792万口座に達していた。
フィンテックの強さは、楽天経済圏の相互利用にもある。
楽天市場を利用する顧客が楽天カードを使い、楽天銀行を決済口座に設定する。さらに楽天証券で資産運用を始める。
こうしたサービス間の連携が、顧客の継続利用と収益機会の拡大につながっている。
3. モバイル:赤字縮小は進むが、まだ利益事業ではない
楽天モバイルの損益改善
売上収益は2,525億円、前年同期比13.3%増。セグメント損失は710億円で、前年同期の884億円から縮小した。
楽天モバイルの契約回線数は増加傾向にある。
2026年6月末の全契約回線数は1,075万回線。前年同期から178万回線増加した。
第2四半期単独では、楽天モバイルの売上収益は1,013億円、Non-GAAP営業損失は323億円となった。前年同期と比べて損失が67億円改善している。
加えて、EBITDAは59億円と黒字を確保した。
正味ARPUは2,516円で前年同期から42円上昇している。契約者数の増加だけでなく、1回線当たりの収益性を高める動きも確認できる。
ただし、EBITDAの黒字化と営業利益の黒字化は別だ。ネットワーク設備の減価償却費などを考慮すれば、通信事業そのものの利益化には引き続き課題がある。
2026年度のネットワーク関連設備投資計画は2,000億円。通信品質の改善と基地局建設を継続する方針だ。
楽天モバイルの今後を判断するなら、契約回線数だけでなく、ARPU、解約率、設備投資負担、営業損失の推移を合わせて確認したい。
【楽天の赤字縮小はなぜ実現した?】営業利益とNon-GAAPの違いも解説
楽天グループの黒字転換を支えた要因は、大きく分けて3つある。
収益基盤の拡大とコスト管理第一の要因は、フィンテックの利益成長だ。
金融サービスの利用者と取扱高が拡大したことで、モバイル事業の赤字を吸収できるだけの利益基盤が育ってきた。
第二の要因は、インターネットサービスの収益性改善である。
楽天市場や楽天トラベルの堅調な取扱高に加え、広告事業のAI活用や成長投資事業のコスト管理が利益率の改善に貢献した。
第三の要因は、楽天モバイルの損失縮小だ。
契約回線数の増加、正味ARPUの改善、楽天経済圏との連携による顧客獲得が、モバイル事業の収益力を押し上げている。
Non-GAAP営業利益783億円とIFRS営業利益504億円は何が違う?今回の決算では、Non-GAAP営業利益も注目されている。
中間期のNon-GAAP営業利益は783億円で、前年同期比296.6%増だった。
一方、IFRS営業利益は504億円である。
両者の違いは、利益を計算する際に何を含めるかという点にある。
楽天グループはNon-GAAP営業利益について、IFRS営業利益から同社が定める非経常的な項目や調整項目を控除した指標と説明している。
主な調整項目には、次のものがある。
- 無形資産償却費:約8億円
- 株式報酬費用:約91億円
- 非経常的な項目:約180億円
これらを考慮すると、Non-GAAP営業利益783億円からIFRS営業利益504億円へと調整される。
特に注目すべきなのは、非経常的な費用の中身だ。
2026年中間期には、欧州マーケットプレイス事業の撤退に伴う減損約10億円や、物流事業における倉庫の自社利用への転換に伴う減損など約170億円が計上された。
つまり、営業利益の黒字化を評価する一方で、事業再編や資産の収益性に関する負担も残っている。
投資家が確認すべきなのは、Non-GAAPだけではない。
Non-GAAPは経営陣が恒常的な業績を把握するために用いる指標だが、会社独自の調整が含まれる。IFRS営業利益と並べて見ることで、実際の会計上の利益と調整後の利益の差を理解できる。
【2026年後半の業績見通し】フィンテック再編と第3四半期決算が焦点
2026年11月6日時点で、楽天グループの次の大きな注目材料は第3四半期決算だ。
楽天グループの公式IRカレンダーでは、2026年11月13日(金)に第3四半期決算発表・決算説明会を予定している。
10月1日にフィンテック事業の再編が完了2026年10月1日、楽天グループはフィンテック事業再編の効力発生を発表した。
この再編により、楽天カードと楽天証券ホールディングスは楽天銀行の連結子会社となった。
楽天グループが狙うのは、銀行・カード・証券の連携強化だ。
資金調達の柔軟化や調達コストの最適化に加え、サービス間のマーケティング連携を強化し、顧客基盤と収益力の拡大を目指す。
ただし、再編には会計上の注意点もある。
楽天グループは2026年10月1日の発表で、再編に伴う株式譲渡益に関連して、2026年12月期第3四半期連結決算に約230億円の法人所得税費用を計上する見込みだと説明した。
この金額は発表時点の試算であり、監査などによって変動する可能性がある。
したがって、第3四半期の最終損益を確認するときは、本業の営業利益と再編に伴う税金費用を区別する必要がある。
通期業績予想は黒字化を目指す方針2026年8月の中間決算短信では、楽天グループは通期の業績目標について次の方針を示している。
- 売上収益:2025年12月期と比べて一桁後半の成長率を目指す。
- Non-GAAP営業利益:通期黒字化を目指す。
- 税引前当期利益:黒字化を目指す。
- 当期利益:黒字化を目指す。
8月10日時点では、会社は直近の業績予想からの修正はないとしていた。
ただし、これらは会社の目標であり、達成が確定した数字ではない。
第3四半期では、フィンテック再編に伴う税金費用、モバイルの損失改善、インターネットサービスの収益成長が重要な確認項目になる。
財務面では現金と資本構成も確認したい利益の回復だけでなく、財務状態にも目を向ける必要がある。
2026年6月末の現金及び現金同等物は約4兆4,905億円で、2025年末の約5兆8,376億円から減少した。
一方、証券事業の金融資産は約2兆9,839億円増加し、銀行事業の貸付金も増えている。金融事業の規模拡大に伴う資産・負債の変化が大きいため、現金残高の減少だけで資金繰り悪化と判断するのは適切ではない。
2026年中間期には保有有価証券の一部売却で約2,000億円を調達し、米ドル建永久劣後債や円建シニア債の償還も実施している。社債償還への対応も、引き続き重要な経営課題だ。
【プロの結論】楽天グループ4755の今後を判断する5つの基準
2026年の楽天グループは、営業赤字からの脱却という大きな節目を迎えた。
しかし、企業価値を判断するうえでは、黒字転換という見出しだけでなく、その利益がどの事業から生まれ、今後も継続できるのかを見極める必要がある。
特に証券コード4755の株価や投資判断を考えるなら、次の5点が重要だ。
1. IFRS営業利益が継続して黒字になるか
Non-GAAP営業利益だけでなく、会計基準に基づくIFRS営業利益が安定して増加するかを確認したい。
2. 親会社帰属利益が累計でも黒字化するか
第2四半期単独の黒字化は前進だが、中間期累計ではまだ赤字だった。次の課題は通期での親会社帰属利益の黒字化だ。
3. 楽天モバイルの損失縮小が続くか
契約回線数1,075万、正味ARPU2,516円という数字は改善材料だ。今後は通信品質の向上と設備投資負担のバランスが問われる。
4. フィンテック再編が実際の利益拡大につながるか
楽天銀行、楽天カード、楽天証券の連携が強化されれば、顧客獲得や金融サービスの利用拡大が期待できる。ただし、再編によるコストや会計上の影響も確認する必要がある。
5. キャッシュフローと財務負担が改善するか
利益だけでなく、現金残高、営業キャッシュフロー、社債償還への対応も重要だ。金融事業の資産・負債構造を踏まえて評価したい。
楽天グループは、フィンテックという収益の柱を持ちながら、モバイル事業の黒字化を目指す構造にある。今後の業績を左右するのは、金融事業の成長を維持しながら、通信事業の赤字をどこまで縮小できるかという点だ。
【楽天の結果に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:楽天グループの2026年中間決算の結果は黒字ですか?
2026年中間期のIFRS営業利益は504億円の黒字です。連結全体の中間利益も254億円の黒字ですが、親会社の所有者に帰属する損益は109億円の赤字です。どの利益指標を見るかによって答えが異なります。
Q2:楽天の2026年中間期の売上収益はいくらですか?
1兆3,090億5,200万円です。前年同期比12.9%増となりました。
Q3:楽天モバイルは2026年に黒字化しましたか?
中間期時点では、モバイルセグメントの損失は710億円残っています。ただし、前年同期の884億円から縮小しました。第2四半期単独でも楽天モバイルのNon-GAAP営業損失は323億円まで改善しています。
Q4:楽天のNon-GAAP営業利益とIFRS営業利益の違いは何ですか?
IFRS営業利益は国際会計基準に基づく営業利益です。Non-GAAP営業利益は、会社が定める非経常的な項目や無形資産償却費、株式報酬費用などを調整した独自指標です。2026年中間期はNon-GAAPが783億円、IFRSが504億円でした。
Q5:楽天グループの第3四半期決算発表日はいつですか?
公式IRカレンダーによると、2026年11月13日(金)に発表・決算説明会を予定しています。日程は変更される可能性があります。
2026年の楽天グループ中間決算は、売上収益1兆3,090億円、IFRS営業利益504億円という大幅な改善を示した。
特にフィンテックの増収増益と楽天モバイルの損失縮小は、グループ全体の収益構造が変化していることを示す重要な材料だ。
一方、親会社帰属損益は中間期累計で109億円の赤字。第2四半期単独では黒字化したものの、税効果や非支配持分の影響を考慮する必要がある。
今後の最大の注目日は2026年11月13日だ。第3四半期決算では、フィンテック再編の影響、約230億円の法人所得税費用、楽天モバイルの損失改善が重要な判断材料となる。
楽天グループの業績回復は確かな前進だが、投資家が本当に確認したいのは、一時的な黒字ではなく、親会社帰属利益を含めた持続的な黒字経営への転換である。
2026年後半は、その実現可能性を見極める重要な局面となりそうだ。
主な参照資料:楽天グループ「2026年度第2四半期決算短信」(2026年8月10日)、同社「2026年度第2四半期決算ハイライト」(2026年8月10日)、「フィンテック事業再編の効力発生及び法人所得税費用の計上に関するお知らせ」(2026年10月1日)、同社IRカレンダー。