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西之島ゴキブリの正体とは?2019年の発見記録と2026年最新調査で現在の生息状況を徹底解説

倉持 玲奈 倉持 玲奈 • 更新: • 公開: • 読了約 20 分
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「人間がほとんど立ち入らない火山島に、なぜゴキブリがいるのか?」――西之島ゴキブリという言葉が注目される背景には、小笠原諸島の西之島で確認された外来種、ワモンゴキブリの存在があります。しかも、この島では2019年の調査で生息が確認されただけでなく、その後の大規模噴火によって、それまでの生態系が大きく変化しました。

2026年11月現在、注目すべきなのは、環境省の令和8年度総合学術調査でハサミムシなどの陸上節足動物が確認されている一方、ワモンゴキブリの最新の生息確認については、発表された調査概要からは判断できないという点です。2019年の発見、2020年の噴火、そして2026年の調査結果を時系列で追うと、西之島で起きている生態系の再形成と、ゴキブリをめぐる疑問が見えてきます。

【正体を解明】西之島ゴキブリはワモンゴキブリだった!2019年調査の記録

西之島ゴキブリ

西之島で発見されたゴキブリの正体は、ワモンゴキブリ(学名:Periplaneta americana)です。

ワモンゴキブリはアフリカ原産とされる大型のゴキブリで、現在では熱帯・亜熱帯を中心に世界各地に分布しています。日本国内でも見られる種類ですが、一般的な住宅環境での発見と、ほとんど人為的影響を受けていない海洋島での発見では、生態学的な意味が異なります。

2019年9月の総合学術調査で生息を確認

西之島では2019年9月、環境省や研究機関などが参加する総合学術調査が行われました。鳥類、植物、昆虫、地質など複数の分野を対象にした本格的な調査です。

森林総合研究所の川上和人氏と自然環境研究センターの森英章氏による研究報告「2019年西之島総合学術調査の成果」では、陸上節足動物として15目28科33種が確認され、その中に外来種のワモンゴキブリが含まれていたことが記録されています。

この調査では、21種が西之島で初めて記録された種でした。つまり、2019年に発見された生物のすべてが新たに侵入したわけではありません。過去に十分な調査が行われていなかったため、それまで存在が把握されていなかった種類も含まれています。

研究報告では、ワモンゴキブリの分布は旧島周辺に限られ、個体群の規模もそれほど大きくないと推定されていました。ただし、原生的な生態系を守る観点から、早期の根絶が理想的であるとの見解も示されています。

この発見が注目されたのは、単に珍しい場所にゴキブリがいたからではありません。人間の活動が少ない島で、外来種が本来の生物間の関係にどのような影響を与えるのかという、自然保護上の問題を浮き彫りにしたからです。

【侵入経緯の真相】ワモンゴキブリはどこから西之島に来たのか?

次に気になるのが、ワモンゴキブリの侵入経路です。

西之島は東京都の小笠原諸島に位置し、本州から約840km離れた孤立性の高い無人島です。人間の定住記録がなく、周辺の島々とも距離があるため、一般的な都市部のように人や物資の移動によって生物が頻繁に持ち込まれる環境ではありません。

有力視されるのは船舶などへの付着・便乗

ワモンゴキブリが西之島に侵入した経緯について、確定した輸送経路を示す記録は公表されていません。

一方、2013年に火山活動が活発化する以前から西之島に生息していたとの指摘があり、東北大学の研究者による当時の解説では、漁船などに便乗して侵入した可能性が挙げられています。

船舶の内部や積載物などに付着した個体が島に運ばれたという説明は考えられますが、実際にどの船が運んだのか、いつ侵入したのかまでは特定されていません。

なぜ人為的な持ち込みが問題になるのか

西之島では、外来生物による生態系への影響を防ぐため、2016年に上陸ルールが定められました。

環境省関東地方環境事務所などが周知している主な対策は次のとおりです。

  • 上陸する人員と調査頻度を必要最小限にする。
  • 靴、衣類、バッグなどは新品またはそれに準じるものを使用する。
  • 再利用する装備は冷凍やアルコール洗浄などで清浄化する。
  • 調査機材はクリーンルームなどで準備する。
  • 上陸時には人間と荷物を海に入れてから上陸するウェットランディングを実施する。
  • 第三者による検疫チェックを受ける。

これらの対策は、人間の靴や荷物に付着した小さな生物、卵、植物の種子などが島内に持ち込まれることを防ぐためのものです。

西之島のように生物相の変化そのものが研究対象となる場所では、調査員が持ち込んだ生物が自然の遷移に影響を与えてしまう可能性があります。そのため、通常の自然観察以上に厳格な管理が求められています。

【決定的な環境変化】2020年の大噴火でゴキブリの生息環境はどう変わった?

西之島ゴキブリの現在を考えるうえで、避けて通れないのが2019年12月以降の火山活動です。

環境省の調査資料によると、令和元年12月以降の火山活動によって、それまで生態系が維持されていた旧西之島の全域が溶岩または火山灰に覆われ、新たな大地が形成されました。

2020年の大規模噴火は、島に生息していた生物にとって非常に大きな環境の変化でした。単に島の面積や地形が変わっただけではありません。植物の生育場所、土壌、有機物の供給源など、生物が生活するための条件そのものが変化したのです。

ゴキブリは噴火後も生き残ったのか?

ここで重要なのは、2019年にワモンゴキブリが確認されたことと、2020年の噴火後も生存していたことは別の事実だという点です。

2019年の研究報告では、ワモンゴキブリは旧島周辺に分布していたとされています。しかし、その旧島は後の火山活動によって溶岩や火山灰に覆われました。

2020年の噴火後にワモンゴキブリが生き残ったのか、別の場所に移動したのか、あるいは個体群が消失したのかについて、2026年の公表調査概要から確定することはできません。

一方、ほかの節足動物では興味深い変化が確認されています。

環境省の令和4年度調査では、海岸にあったクロアジサシの死体から、トビカツオブシムシとヤニイロハサミムシが複数見つかりました。いずれも2019年調査で旧西之島周辺において確認されていた種類で、2020年の大規模噴火後では初めての確認でした。

研究者は、噴火の影響が大きかったにもかかわらず、少数の個体が生き残り、その後に分布を広げた可能性を指摘しています。ただし、これはハサミムシなどについての考察であり、ワモンゴキブリにも同じ経緯が当てはまると確認されたわけではありません。

【まとめ】西之島ゴキブリと陸上節足動物の調査年表

西之島の生物相は、2019年の調査から2026年までに大きく変化しています。ワモンゴキブリだけに注目すると見落としやすい、ほかの節足動物の記録も含めて整理しました。

時期 調査・出来事 確認された内容と意味
2019年9月 総合学術調査 ワモンゴキブリを確認。陸上節足動物は15目28科33種を記録。
2019年12月以降 火山活動の活発化 旧西之島の生態系が維持されていた陸地が溶岩や火山灰に覆われる。
2020年 大規模噴火 旧島の生物相が大きくリセットされ、新たな生態系の形成が始まる。
2021年 総合学術調査 節足動物としてカニやハエなどを確認。火山灰サンプルからは節足動物を確認できず。
2022年 総合学術調査 トビカツオブシムシとヤニイロハサミムシを噴火後初めて確認。
2023年 総合学術調査 ヤニイロハサミムシやダニの一種を確認。海鳥由来の有機物を利用した分布拡大の可能性が示される。
2025年7月 総合学術調査 3年ぶりに上陸。ハサミムシ、トビカツオブシムシを確認。噴火後初めて植物の生育も確認。
2026年7月 令和8年度総合学術調査 ハサミムシの広域分布、トビカツオブシムシの夜間活動などを確認。ワモンゴキブリの記載は公表概要にない。

この年表から分かるのは、噴火後にすべての陸上節足動物が消えたわけではなく、環境に適応できる生物が少しずつ確認されていることです。

特に2022年以降のハサミムシやカツオブシムシの記録は、海鳥の存在と陸上生物の分布が密接に関係していることを示す重要な材料になっています。

なお、この年表は環境省の調査結果や研究報告に基づくもので、各年度の調査範囲や手法は同一ではありません。ある年度に確認されなかった生物が、その年に島から完全に消失したと判断できるわけではありません。

【2026年最新】西之島にゴキブリは現在もいる?ハサミムシとトビカツオブシムシの生息状況

2026年の最新情報を確認するうえで中心となるのが、環境省が2026年10月2日に公表した「令和8年度西之島総合学術調査結果概要について」です。

調査は2026年7月22日から29日まで実施され、前年に続いて2年連続の上陸調査となりました。陸上と海域の双方を対象に、生物や地形、火山活動などを調べています。

ハサミムシは島の周縁部に広く分布

2026年調査で特に注目されるのが、ハサミムシの分布拡大です。

環境省によると、これまでの調査で継続的に確認されていたハサミムシについて、今回は初めて島の南側でも生息を確認しました。これにより、島の周縁部に広く分布していることが明らかになっています。

ハサミムシがどのように島内で分布を広げたのかは、今後の研究課題です。

トビカツオブシムシは夜間に鳥の死骸へ集まる

2026年調査では、トビカツオブシムシの夜間の行動も確認されました。

無人探査機などを利用した夜間調査によって、鳥類の死骸に飛来し、群がる様子が記録されています。

トビカツオブシムシは、死骸などの動物性有機物を利用する分解者です。西之島では海鳥の死骸や吐き戻し、排泄物などが、陸上の節足動物にとって重要な資源になっています。

こうした生物が活動することによって有機物が分解され、土壌形成にもつながっていきます。植物が十分に育っていない火山島において、非常に重要な役割です。

ワモンゴキブリの2026年の生息確認は?

ここが検索者にとって最も気になるポイントでしょう。

2026年10月2日公表の環境省の調査概要には、ワモンゴキブリの生息確認は記載されていません。

一方、同じ調査ではハサミムシ、トビカツオブシムシ、シロオビノメイガなどが確認されています。節足動物の調査そのものが行われていないわけではありません。

ただし、調査概要に名前がないことは、ワモンゴキブリが完全に絶滅した証拠ではありません。調査時期、調査地点、採集方法、個体数などによって発見される可能性は変わります。

したがって、2026年11月現在の適切な整理は、「2019年の生息確認は確実だが、2026年の最新公表資料では現在の生息を確認できない」というものです。

生存しているとも、絶滅したとも断定できない状況です。

【生態系への影響】ワモンゴキブリは西之島の自然を壊すのか?

ワモンゴキブリが問題視された理由は、その大きさだけではありません。

2019年の研究報告では、ワモンゴキブリは旺盛な分解者であり、西之島に残されてきた生物間相互作用のバランスを崩す可能性が指摘されました。

一般的な環境では、分解者は落ち葉や動物の死骸などを分解することで物質循環を支えています。しかし、もともと限られた生物で構成されていた島の生態系に外来の分解者が加わると、既存の生物との餌資源の競合や、有機物の分解速度の変化などが生じる可能性があります。

外来種であることと、侵略的な影響が確認されたことは別

ここで区別したいのは、外来種であることと、実際に生態系への深刻な被害が確認されたことは同じではないという点です。

ワモンゴキブリは西之島にとって外来種ですが、2019年の研究報告では、その分布は旧島周辺に限られ、個体群の規模も大きくないと推定されていました。

そのため、研究者は早期の根絶が理想的との考えを示しています。ただし、実際にどのような駆除が行われたのか、また噴火後に個体群がどうなったのかについては、最新の公表概要だけでは判断できません。

西之島で注目される「海鳥先行型」の生態系

西之島の生態系を理解するうえで、もう一つ重要なのが海鳥の存在です。

一般的な陸上生態系では、まず植物や地衣類が定着し、その後、植物を利用する昆虫や捕食者が増えていくという順序が想定されます。

しかし、西之島では少し違った過程が観察されています。

海鳥は海で餌を確保できるため、陸上に植物や土壌がほとんどない段階でも島に営巣できます。そして、鳥の排泄物や死骸、巣材などが陸地に有機物を運び込みます。その有機物を利用する節足動物が増えることで、土壌形成が進む可能性があります。

2019年の研究報告では、この特徴的な過程を「海鳥先行型生態系」として説明しています。

ワモンゴキブリだけを追うのではなく、海鳥、ハサミムシ、カツオブシムシ、植物の関係まで調べることで、西之島の生態系がどのように再構築されているのかが理解できます。

【プロの結論】西之島のゴキブリ問題から見える一次遷移の重要性

西之島は、火山噴火によって生態系が大きく失われた後、新しい陸地に生物がどのように定着するかを観察できる貴重な研究フィールドです。

この現象を理解するためのキーワードが一次遷移です。

一次遷移とは何か

一次遷移とは、土壌や既存の生態系がほとんど存在しない場所に、生物が新たに定着し、生態系が形成されていく過程を指します。

西之島では、噴火によって生物が利用していた環境が大きく失われました。その後、海鳥や節足動物、藻類、コケ植物などが確認され、少しずつ生物の活動が再び広がっています。

2025年の調査では、2020年の大規模噴火後初めて植物の生育が確認されました。2026年には、前年とは異なるガリーでコケ植物が確認され、胞子体も観察されています。

一方で、前年に植物が確認されたガリーは浸食によって消失し、前年確認されたシダ植物は2026年には確認されませんでした。

このように、西之島では単純に生物の種類が増えていくのではなく、侵入、定着、消失が繰り返されています。

2026年から先の研究で注目したい3つのポイント

今後の西之島の調査では、次の3点が重要になります。

  • 外来種の追跡:ワモンゴキブリを含む外来種が現在も生息しているのか、どの範囲に分布しているのか。
  • 分解者の役割:ハサミムシやトビカツオブシムシが海鳥由来の有機物をどのように利用し、土壌形成に関わるのか。
  • 植物の定着:コケ植物やシダ植物などが、火山活動や浸食による環境変化の中でどのように定着するのか。

環境省は2026年調査で、西之島北部に無人探査機、カメラ、地震計、衛星通信装置などを試行的に設置しました。調査員が常時上陸しなくても、生物や火山活動の状況を遠隔で確認できる仕組みが整いつつあります。

こうした技術は、調査そのものが生態系に与える影響を抑えながら、長期的な変化を記録するうえでも意味があります。

西之島ゴキブリの問題は、単に一種類の昆虫が島に残っているかどうかという話ではありません。人間の影響をできる限り排除した環境で、外来種と在来生物の関係、火山活動による生態系の再編、そして自然の回復過程をどう理解するかという問題につながっています。

【西之島ゴキブリ】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:西之島で発見されたゴキブリの種類は何ですか?

A1:アフリカ原産の外来種であるワモンゴキブリです。2019年9月の総合学術調査で旧西之島周辺における生息が確認され、研究報告にも記録されています。

Q2:西之島のゴキブリは2026年現在も生きていますか?

A2:2026年10月公表の環境省調査概要には、ワモンゴキブリの生息確認は記載されていません。噴火後に絶滅したのか、生き残っているのかは、公表資料からは判断できません。

Q3:2020年の大噴火で西之島のゴキブリは全滅したのですか?

A3:全滅したと断定できる調査結果はありません。旧島は溶岩や火山灰に覆われましたが、ほかの節足動物では噴火後に再確認された種類もあります。ワモンゴキブリについては別途確認が必要です。

Q4:西之島のワモンゴキブリはどこから侵入したのですか?

A4:侵入経路は特定されていません。2013年の火山活動が活発化する以前から生息していたとの指摘があり、漁船などに便乗した可能性が考えられています。

Q5:2026年の西之島では、ほかにどんな虫が確認されていますか?

A5:環境省の令和8年度調査では、ハサミムシの広域分布、トビカツオブシムシの夜間活動、シロオビノメイガの飛来などが確認されています。

Q6:西之島のゴキブリは生態系に悪影響を与えるのですか?

A6:2019年の研究報告では、ワモンゴキブリが旺盛な分解者であるため、島の生物間相互作用のバランスを崩す可能性が指摘されています。ただし、具体的な被害の規模が実証されたという意味ではありません。

西之島ゴキブリの正体は、2019年の総合学術調査で確認された外来種ワモンゴキブリです。旧島周辺に生息していたことが研究報告に残されており、原生的な生態系への影響が懸念されていました。

しかし、2020年の大規模噴火によって旧島の環境は大きく変化しました。その後の調査では、ハサミムシやトビカツオブシムシなどの節足動物が再確認され、2025年には植物、2026年にはコケ植物の繁殖に関わる証拠も見つかっています。

一方、2026年11月現在、ワモンゴキブリの生息継続や絶滅を確定できる最新の公表情報はありません。

今後注目したいのは、ワモンゴキブリの再確認だけでなく、ハサミムシなどの分布拡大、海鳥を起点とする土壌形成、植物の定着、そして外来種の侵入防止策です。

西之島は、噴火によって失われた生態系がどのように再び形づくられるのかを観察できる、世界的にも貴重な場所です。2026年に始まった遠隔モニタリングの取り組みが、今後の自然保護と生態系研究にどのような成果をもたらすのか、引き続き注目されます。

主な根拠資料: 環境省「令和8年度西之島総合学術調査結果概要」(2026年10月2日)、同「令和7年度調査結果概要」(2025年9月12日)、川上和人・森英章「2019年西之島総合学術調査の成果」、環境省「令和4年度・令和5年度調査結果概要」。

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倉持 玲奈

テクノロジー分野を担当。一次情報(公式発表・公式サイト)と発表日を必ず確認し、推測は推測と明記する編集方針に従っています。

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