2026年の坂本花織は、ミラノ・コルティナ五輪と世界選手権という2つの大舞台で、同じフリープログラムを披露した。
特に注目すべきなのは、五輪から約1か月後の世界選手権で、フリーの自己ベストを11点以上更新したことだ。
ミラノ・コルティナ五輪個人戦は147.67点2026年2月19日に行われた女子シングルのフリースケーティングで、坂本は147.67点を獲得した。
フリーの順位は2位。ショートプログラムの77.23点と合わせた総合得点は224.90点となり、個人戦の銀メダルを獲得した。
優勝したアリサ・リュウ(米国)のフリーは150.20点。坂本との差は2.53点だった。
坂本は技術点72.83点、演技構成点74.84点を記録。減点は0点だった。
この結果は、単にジャンプの成否だけでなく、演技全体の完成度が高く評価されたことを示している。
世界選手権2026では158.97点で優勝五輪後、坂本は競技生活最後の大会として、チェコ・プラハで開催された2026年世界選手権に出場した。
女子フリーは3月27日(現地時間)に実施され、坂本は158.97点を獲得。自身のフリー自己ベストを更新し、女子シングルのフリー1位となった。
技術点は80.87点、演技構成点は78.10点。こちらも減点は0点だった。
ショートプログラムの79.31点と合わせた総合得点は238.28点。千葉百音の228.47点を上回り、4度目の世界選手権優勝を果たした。
2022年、2023年、2024年に続く世界選手権のタイトル獲得であり、最後の世界選手権で再び頂点に立ったことになる。
【得点を徹底比較】五輪147.67点・団体戦148.62点・世界選手権158.97点の違い

坂本花織の2026年シーズンを理解するうえで欠かせないのが、3つのフリー演技の比較だ。
同じプログラムを使用していても、大会ごとに得点や技術点・演技構成点の内訳は異なる。
2026年の主要3大会のフリー得点比較出典:国際スケート連盟(ISU)および2026年ミラノ・コルティナ五輪公式競技記録。単位は点。
五輪個人戦と世界選手権のフリー得点を比較すると、差は11.30点になる。
内訳を見ると、技術点の差は8.04点、演技構成点の差は3.26点だ。
つまり、世界選手権ではジャンプやスピンなどの技術的な要素で大きく得点を伸ばし、さらに演技全体の評価も高めている。
ISUの世界選手権公式記録では、坂本は7つのトリプルジャンプを成功させ、難度の高いスピンも披露したと紹介されている。
NBC Sportsも、7つのジャンプパスすべてでプラスの出来栄え評価(GOE)を得た点を報じた。
五輪で銀メダルを獲得した時点でも高い完成度を示していたが、世界選手権ではジャンプの安定性とプログラム全体の質がさらに高まったことが、得点差から読み取れる。
団体戦148.62点と個人戦147.67点は何が違う?もう一つ注目したいのが、五輪団体戦の148.62点だ。
団体戦は2月8日、個人戦は2月19日に行われた。坂本は団体戦の女子フリーで1位となり、日本チームに10ポイントをもたらした。
団体戦と個人戦の得点差はわずか0.95点。
TESは団体戦72.93点、個人戦72.83点でほぼ同じ。一方、PCSは団体戦75.69点、個人戦74.84点だった。
両大会とも同じプログラムを滑っているが、団体戦はチームの順位を争う競技の一部であり、個人戦とは大会の進行や競技環境が異なる。
この0.95点の差だけを取り上げて、どちらの演技が絶対的に優れていたと判断するのは適切ではない。
なお、日本は五輪団体戦でも銀メダルを獲得している。坂本は個人戦と団体戦の両方で銀メダルを手にした。
【フリー曲「愛の讃歌」の正体】3曲のメドレーと振付師マリー=フランス・デュブレイユ
2025-2026シーズンの坂本花織のフリーを語るうえで欠かせないのが、フランスを代表する歌手エディット・ピアフの楽曲を取り入れた音楽構成だ。
日本では「愛の讃歌」として知られる楽曲がプログラムの象徴になっているが、実際には1曲だけで構成されているわけではない。
使用曲は「バラ色の人生」「愛の讃歌」「水に流して」ISUの公式選手プロフィールに記載されている2025-2026シーズンのフリースケーティング使用曲は次の3曲だ。
1. La vie en rose(バラ色の人生)
フランス語の名曲。プログラムの冒頭を彩る楽曲。
2. Hymne à l'amour(愛の讃歌)
プログラムの中心となる象徴的な楽曲。深い愛情を表現する作品。
3. Non, je ne regrette rien(水に流して)
「何も後悔していない」という意味を持つ楽曲。最後の演技を締めくくる。
3曲を通じて、愛、人生の喜び、過去を受け入れて前に進む姿勢という異なる感情を表現できる構成になっている。
特に最後の「Non, je ne regrette rien」は、競技生活の最後を飾る坂本の状況と重なり、プログラムに強い物語性を与えた。
振付師はマリー=フランス・デュブレイユMarie-France Dubreuil
- 2025-2026シーズンのFS振付師
- 坂本の過去のフリープログラムも担当
- 音楽と身体表現を結び付ける演出を手掛ける
フジテレビの公式選手紹介でも、2025-2026シーズンのフリー曲「愛の讃歌」と振付師デュブレイユの組み合わせが明記されている。
興味深いのは、坂本自身がこのフリー曲を希望していたことだ。
世界選手権後のメダリスト会見で、坂本はフリーについて、自分がやりたいという思いがあり、振付師にお願いして振り付けてもらったと説明している。
つまり、振付師が選手に与えたプログラムというだけではない。坂本自身の希望とデュブレイユの振付が組み合わさって生まれた作品だった。
ショートプログラムとの違いにも注目2025-2026シーズンのショートプログラムは「Time To Say Goodbye」。
サラ・ブライトマンとアンドレア・ボチェッリによる楽曲で、振付はブノワ・リショーが担当した。
| 種類 | 使用曲 | 振付師 |
|---|---|---|
| SP | Time To Say Goodbye | ブノワ・リショー |
| FS | 愛の讃歌(3曲メドレー) | マリー=フランス・デュブレイユ |
ショートとフリーでは音楽の方向性も振付師も異なる。
フリーは3曲の流れを通じて感情の変化を描く構成であり、シーズン最後のプログラムとしても印象的な存在になった。
【ジャンプ構成と演技構成を分析】TES・PCSから分かる坂本花織の強み
坂本花織の演技を評価する際、得点だけでなく技術点と演技構成点の内訳を見ると、強みがより明確になる。
TESとは?ジャンプやスピンを評価する技術点TESはTotal Element Scoreの略で、日本語では技術要素点と呼ばれる。
フリースケーティングでは、主に次の要素が評価対象となる。
- ジャンプ:アクセル、ルッツ、フリップ、ループ、サルコウ、トウループ
- スピン:回転の質、姿勢、難度など
- ステップシークエンス:エッジワークやステップの技術
- コレオシークエンス:振付に沿った動きや身体表現
基礎点に加え、各要素の出来栄えを示すGOE(Grade of Execution)が加算・減算される。
坂本はスピードに乗ったジャンプと、着氷後の流れの美しさに定評がある。ジャンプを単独の技術として見せるだけでなく、演技の流れを途切れさせない点も魅力だ。
PCSとは?演技構成点を決める3つの項目PCSはProgram Component Scoreの略。
2026年の採点では、次の3項目で評価される。
| 項目 | 評価内容 |
|---|---|
| Composition | 音楽と動きの構成、プログラムの組み立て |
| Presentation | 音楽の表現、演技の伝達力 |
| Skating Skills | スケーティング技術、エッジワーク、滑走能力 |
かつての採点方式とは異なり、2026年の大会ではこの3項目が採用されている。
坂本の世界選手権でのPCSは78.10点。
内訳を見ると、Compositionは9.68、Presentationは9.75、Skating Skillsは9.82という高い評価を受けた。
特に注目したいのは、Skating Skillsの評価だ。
ジャンプの高さや回転数だけでは説明できない、滑走そのものの質が高く評価されている。
世界選手権で披露したジャンプ構成2026年世界選手権の公式ジャッジスコアに記録された坂本のジャンプ構成は次のとおり。
| 順番 | 技術要素 |
|---|---|
| 1 | 2A(ダブルアクセル) |
| 2 | 3F(トリプルフリップ) |
| 3 | 3Lz+2T(トリプルルッツ+ダブルトウループ) |
| 6 | 3S(トリプルサルコウ) |
| 7 | 3F+3T(トリプルフリップ+トリプルトウループ) |
| 8 | 2A+3T+2T(3連続ジャンプ) |
| 10 | 3Lo(トリプルループ) |
このほか、フライングシットスピン、ステップシークエンス、コレオシークエンス、コンビネーションスピンなどを組み込んでいる。
世界選手権では、7つのジャンプパスすべてでプラスのGOEを得た。
五輪から世界選手権までの改善点五輪個人戦では、ジャンプ構成のうち7番目に3F+REPが記録されている。
一方、世界選手権では同じ位置のジャンプが3F+3Tとなった。
この違いは見逃せない。
3F+3Tはトリプルフリップとトリプルトウループを連続して跳ぶコンビネーションジャンプだ。五輪での3F+REPとは基礎点に差がある。
もちろん、11.30点の差すべてをこのジャンプだけで説明することはできない。しかし、ジャンプの完成度がTESの上昇に貢献したことは公式記録から確認できる。
五輪後に演技をさらに磨き、最後の世界選手権でプログラムの完成度を引き上げたことが、158.97点という結果につながった。
【歴代フリープログラム一覧】坂本花織が歩んできた音楽と表現の変化
坂本花織は、シーズンごとに異なる音楽や振付に挑戦してきた。
フジテレビの公式選手紹介に掲載された過去のプログラムを整理すると、映画音楽から現代的なポップス、ミュージカル、フランスのシャンソンまで、幅広いジャンルを経験していることが分かる。
2015-2016年から2025-2026年までの使用曲
2015-2016/2016-2017
映画『カラーパープル』より
振付:マッシモ・スカリ
2017-2018
映画『アメリ』より
振付:ブノワ・リショー
2018-2019
映画『ピアノ・レッスン』より
振付:ブノワ・リショー
2019-2020/2020-2021
映画『マトリックス』より
振付:ブノワ・リショー
2021-2022
映画『WOMAN』より
振付:ブノワ・リショー
2022-2023
Elastic Heart
振付:マリー=フランス・デュブレイユ
2023-2024
Wild is the Wind/Feeling Good
振付:マリー=フランス・デュブレイユ
2024-2025
ミュージカル『シカゴ』より
振付:マリー=フランス・デュブレイユ
2025-2026
愛の讃歌(3曲メドレー)
振付:マリー=フランス・デュブレイユ
1. 映画音楽を使った物語性のある演技
『アメリ』『ピアノ・レッスン』『マトリックス』など、映画の世界観を生かしたプログラムが多い。
音楽の背景を知ってから演技を見ると、振付や表情の意味をより深く理解できる。
2. マリー=フランス・デュブレイユとの継続的な協働
2022-2023年以降のフリーでは、デュブレイユが継続して振付を担当している。
『Elastic Heart』『Wild is the Wind/Feeling Good』『シカゴ』、そして最後の「愛の讃歌」と、異なるジャンルを坂本の滑りに合わせて表現してきた。
3. 最終シーズンで選んだのは人生を振り返るような楽曲
最後のプログラムにフランスのシャンソンを選んだことは、これまでの競技生活を振り返るうえでも象徴的だ。
ただし、単に引退を演出するためだけの選曲ではない。坂本自身が希望した曲であり、本人の意思が反映された作品だった。
【2026年引退】坂本花織の現役最後の演技は世界選手権だった
坂本花織は2025-2026シーズンを最後に、競技スケートから引退する意向を示していた。
そして2026年3月27日、チェコ・プラハで行われた世界選手権の女子フリーが、競技者として最後の演技となった。
最後の大会を世界選手権に決めた理由2026年3月7日、坂本は大阪市内で行われたイベントで、世界選手権への出場と現役最後の大会について言及した。
「最後は世界選手権になる」と明言し、自分自身が満足できる、やり切れたと思える試合にしたいという意向を示した。
五輪で個人戦と団体戦の銀メダルを獲得した後、最後の舞台として世界選手権を選んだ形だ。
3月27日、158.97点で迎えた最後のフリープラハのO2アリーナで行われた女子フリー。
坂本はエディット・ピアフの楽曲に合わせて演技し、7つのトリプルジャンプを決めた。最後の曲は「Non, je ne regrette rien」。
ISUによると、会場では1万4000人を超える観客がスタンディングオベーションを送り、坂本は大きな拍手に包まれた。
その演技でフリー158.97点、総合238.28点を記録。4度目の世界選手権優勝を手にした。
ISUの大会後の記事では、競技生活最後の演技を終えた坂本の姿が紹介されている。
最後の演技後に語った本人の言葉世界選手権後のメダリスト会見で、坂本は競技生活を終える気持ちについて次のように語った。
「晴れやかな気持ちで競技から退けるので、もう本当にいますごく幸せです。」
出典:2026年3月28日公開、ワールド・フィギュアスケートWebのメダリスト会見記事。
また、引退後に恋しくなるものとして、試合に向けて練習を重ね、新しいプログラムを作り、本番で結果を残すまでの過程を挙げた。
競技生活について「青春だった」と振り返った言葉からは、長年の努力を終える寂しさと、やり切ったという達成感の両方が伝わってくる。
坂本花織のフリー演技動画を見るには?2026年世界選手権のフリー演技は、ISU公式YouTubeチャンネル「Skating ISU」で公開されている。
動画のタイトルは次のとおり。
Kaori SAKAMOTO (JPN) | Women Free Skating | ISU World Championships Prague 2026 | #FigureSkating
2026年3月27日公開の映像で、最後の世界選手権における坂本のフリーを確認できる。
また、フジテレビの公式スケート情報サイトでも2026年世界選手権の関連動画が掲載されている。
【坂本花織のフリーに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:坂本花織の2026年フリー曲は何ですか?
A1:2025-2026シーズンのフリー曲は「愛の讃歌(Hymne à l'amour)」を含む3曲のメドレーです。「La vie en rose(バラ色の人生)」「Hymne à l'amour(愛の讃歌)」「Non, je ne regrette rien(水に流して)」で構成されています。
Q2:ミラノ・コルティナ五輪のフリー得点は何点でしたか?
A2:2026年2月19日の個人戦では147.67点を獲得しました。フリー2位、総合224.90点で銀メダルを獲得しています。
Q3:世界選手権2026のフリー得点は何点でしたか?
A3:2026年3月27日の世界選手権では158.97点を記録しました。TES80.87点、PCS78.10点で、フリー1位となりました。
Q4:坂本花織のフリーの振付師は誰ですか?
A4:マリー=フランス・デュブレイユです。2025-2026シーズンのフリー「愛の讃歌」を担当しました。
Q5:団体戦のフリー148.62点は個人戦の得点ですか?
A5:いいえ。148.62点は2026年2月8日の五輪団体戦で記録した女子フリーの得点です。女子フリー1位となり、日本チームに10ポイントをもたらしました。
Q6:坂本花織の現役最後の演技はいつですか?
A6:2026年3月27日の世界選手権女子フリーです。プラハで158.97点を記録し、4度目の世界選手権優勝で競技生活を締めくくりました。
Q7:坂本花織のフリー演技動画はどこで見られますか?
A7:ISU公式YouTubeチャンネル「Skating ISU」で、2026年世界選手権のフリー演技動画が公開されています。動画タイトルは「Kaori SAKAMOTO (JPN) | Women Free Skating | ISU World Championships Prague 2026」です。
2026年の坂本花織は、ミラノ・コルティナ五輪で個人戦147.67点の銀メダル、団体戦で148.62点、そして世界選手権では158.97点という自己ベストで優勝した。
最後のフリーを彩ったのは、エディット・ピアフの楽曲を組み合わせた3曲のメドレー。振付師マリー=フランス・デュブレイユと坂本自身の希望が結実したプログラムだった。
今回の演技を評価する際に押さえておきたい要点は3つある。
- 得点面: 世界選手権でTES80.87点、PCS78.10点を獲得し、自己ベストを更新した。
- 技術面: 7つのジャンプパスをプラス評価でまとめ、スケーティングと表現の両面で高評価を得た。
- 物語面: 「Non, je ne regrette rien」を最後に据えたプログラムで、競技人生の最後を世界選手権4度目の優勝で締めくくった。
特に重要なのは、五輪の銀メダルだけで坂本の2026年を振り返らないことだ。
五輪での悔しさを経て、最後の世界選手権で158.97点を出し、競技者としてのキャリアを終えた。その歩みこそが、2025-2026シーズンのフリー「愛の讃歌」の価値を際立たせている。
坂本花織の最後のフリーは、単なる引退プログラムではない。4度の世界女王に輝いたトップスケーターが、自ら選んだ音楽と演技で競技人生を締めくくった、記憶に残るラストダンスだった。