『風立ちぬ』の声優陣は、アニメーション監督、実力派俳優、舞台俳優など、異なる分野で活躍する人物によって構成されています。スタジオジブリの公式作品ページとディズニー公式の作品紹介ページでは、主要キャストの名前が確認できます。
特に注目したいのは、主人公を演じる庵野秀明だけでなく、ヒロイン役の瀧本美織や、二郎の友人を演じる西島秀俊など、俳優として知られる出演者が多いことです。
『風立ちぬ』主要キャスト・役名一覧
出典:スタジオジブリ公式作品情報、ディズニー公式作品紹介。役名の表記は公開時の作品情報に準拠。
主人公・堀越二郎役は庵野秀明堀越二郎を演じたのは、アニメーション監督・プロデューサーとして知られる庵野秀明です。
『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』などを手がけてきた庵野は、一般的な声優とは異なる立場から主人公を担当しました。長編アニメーション映画で主演声優を務めるのは初めての挑戦でした。
二郎は、飛行機の設計という夢に没頭する一方、時代の大きな変化や戦争の現実にも向き合う人物です。感情を大きく表現するタイプではなく、静かな語り口が特徴となっています。
ヒロイン・里見菜穂子役は瀧本美織里見菜穂子を演じたのは、女優の瀧本美織です。
瀧本はNHK連続テレビ小説『てっぱん』のヒロインを務めたことで知られ、2013年には映画『風立ちぬ』で声の出演を果たしました。
菜穂子は、二郎と出会い、恋愛関係を深めていく重要な人物です。病と向き合いながらも自分らしく生きようとする姿が、作品の感情的な軸を形成しています。
瀧本は、その繊細さと明るさを併せ持つ人物を演じています。庵野秀明の抑制された声との対比も、二人の関係を描くうえで印象的です。瀧本本人の公式プロフィールにも、本作の菜穂子役が出演歴として掲載されています。
本庄役は西島秀俊、カプローニ役は野村萬斎本庄を演じたのは西島秀俊です。二郎と同じ航空機開発に携わる仲間であり、仕事に対する考え方や時代への認識を共有する重要な存在です。
野村萬斎が演じたカプローニは、イタリアの航空技術者であり、二郎の夢の中に登場する人物です。二郎にとって、飛行機を作ることの喜びや夢を象徴する存在でもあります。
狂言師として培ってきた野村萬斎の独特な発声や間の取り方は、現実と夢が交差するカプローニの場面に個性を与えています。
黒川役・西村雅彦、堀越加代役・志田未来にも注目黒川を演じたのは、公開当時のクレジットで西村雅彦と表記された俳優です。現在の公式プロフィールでは西村まさ彦の表記が使われています。二郎の仕事上の上司として、厳しさと人間味を持つ人物を演じました。
二郎の妹・堀越加代を演じたのは志田未来です。加代は医師を志す人物で、飛行機作りに集中する兄とは異なる方向から人生と向き合います。
また、竹下景子、大竹しのぶ、國村隼、風間杜夫といったベテラン俳優も参加しています。声優を専門とする出演者だけに頼らず、映画や舞台で培われた表現力を持つ俳優を集めたキャスティングが特徴です。
【なぜ庵野秀明が選ばれた?】宮崎駿のオーディションと起用理由

『風立ちぬ』のキャスティングで最大の話題となったのが、庵野秀明の主人公起用です。アニメーション監督としては著名でも、声の演技を専門としていない人物が、なぜ長編映画の主人公に選ばれたのでしょうか。
起用のきっかけは鈴木敏夫プロデューサーの提案2013年5月10日、スタジオジブリは庵野秀明が堀越二郎役を担当することを発表しました。
当初、宮崎駿監督は二郎の声について、早口で滑舌がよく、凛とした印象を持つ人物を求めていました。しかし、イメージに合う出演者を探すなかで、キャスティングは簡単には決まりませんでした。
そこで候補として浮上したのが庵野秀明です。鈴木敏夫プロデューサーが名前を挙げ、庵野がオーディションに参加することになりました。
庵野自身は、当初から引き受けるつもりだったわけではありません。本人の公開当時のインタビューによると、オーディションを受けて適性を確認するという話だったといいます。
ところが、実際に声を聞いた宮崎監督は満面の笑みを浮かべ、庵野に出演を直接依頼しました。AV Watchの当時の報道でも、この異例の決定過程が詳しく紹介されています。
宮崎駿が評価したのは声の技術よりも存在感起用の理由を理解するうえで重要なのが、宮崎監督が庵野の声に何を感じていたかという点です。
宮崎監督は収録時、庵野に対して次のような趣旨の助言をしました。
「いい声だからでなく、存在感で選んだ」
この言葉は、AV Watchが2013年5月に報じたアフレコ現場の取材内容に基づくものです。宮崎監督は、声優として上手に演じることだけを求めていたわけではありませんでした。
また、鈴木敏夫プロデューサーも、庵野を起用した理由について、一般の役者とは違う存在感を評価したと説明しています。
ここには、二郎というキャラクターと庵野自身の仕事の共通点がありました。
二郎は飛行機を設計し、庵野はアニメーションや映画を設計する監督です。どちらも頭の中にあるイメージを、技術と努力によって具体的な形にしていく仕事をしています。
鈴木プロデューサーは、この共通点にも着目しました。演技経験だけでは測れない人物としての存在感を、作品に取り込もうとしたキャスティングだったのです。
庵野秀明と宮崎駿には『風の谷のナウシカ』からの縁があった二人の関係は『風立ちぬ』で突然始まったものではありません。
1984年公開の『風の谷のナウシカ』で、庵野はアニメーターとして制作に参加しました。特に終盤に登場する巨神兵の原画を担当したことで知られています。
当時から宮崎監督と仕事をしていた庵野は、アニメーション制作の現場で宮崎の仕事に触れてきました。その後も二人には、作品制作を通じた関係が続いています。
つまり、宮崎監督が庵野を起用した背景には、声の印象だけではなく、長年の仕事上の関係や、クリエイターとしての庵野への理解があったのです。
2013年の主演起用は、1984年の『ナウシカ』から続く二人の関係を、今度は声の出演という形で結び直した出来事でもありました。
【風立ちぬの庵野秀明はひどい?】演技の評判と賛否両論を検証
「風立ちぬ 声優 ひどい」という検索が生まれる最大の理由は、主人公・堀越二郎を演じる庵野秀明の独特な声です。
公開当時から、声に違和感があるという意見と、作品の雰囲気に合っているという意見が存在しました。これは単純に演技が上手か下手かだけでは説明できない問題です。
否定的な評価が生まれた3つの理由1.一般的な声優の演技とは異なる発声
庵野の声は、アニメ作品でよく聞かれる抑揚の大きな演技とは異なります。セリフによっては淡々として聞こえ、感情の変化が伝わりにくいと感じる視聴者もいます。
特に二郎が菜穂子に愛情を伝える場面や、人生の重要な決断をする場面では、もっと感情を込めてほしいと感じる人がいても不思議ではありません。
2.主人公の登場時間が長い
脇役であれば多少の声の違和感があっても、映像やストーリーに意識を向けられます。しかし、本作は二郎の半生を描く物語です。
主人公が長時間にわたって会話するため、声質や話し方が作品全体の印象に影響します。違和感を持った人にとっては、最後まで気になる要素になりやすいのです。
3.期待していたジブリ作品の声と違った
ジブリ映画には、作品ごとに印象的な声の演技があります。過去の作品で親しんだ声優や俳優の演技を期待していた視聴者にとって、庵野の起用は意外性の大きいものでした。
作品への期待が高かったからこそ、キャスティングに対する反応も強くなったと考えられます。
肯定的な評価では二郎の人物像との相性が注目される一方、庵野の声を評価する意見にも理由があります。
堀越二郎は、自分の夢や仕事に深く没頭する人物です。感情を大きく表現するよりも、目の前の課題を静かに考え、必要な言葉を口にするタイプとして描かれています。
庵野の抑制された声は、この人物像に重なる部分があります。上手に演じようとする技巧よりも、人物の内面にある不器用さや真面目さを感じ取る見方です。
また、宮崎監督は庵野に対し、単にセリフを読むだけでなく、二郎の年齢や場面に応じた声の調整も指示していました。公開当時の取材記事によれば、収録は4日間にわたって行われています。
最初は難しさを口にしていた庵野も、収録を重ねるなかで役をつかんでいきました。ヒロインとの愛情を表現する場面では、現場で高い評価を受けたという報道もあります。
公開当時の視聴者の反応はどうだった?2013年7月の公開直後、映画メディアのCINEMACAFE.netは、作品に対する一般の感想が賛否両論だったことを報じています。
特に映像や物語を評価する声がある一方で、庵野の声に違和感を覚える視聴者もいました。映画関係者による好意的な評価と、一般のレビューでの反応に違いが見られた点も紹介されています。
その後も映画レビューサイトでは、主人公の声が気になったという感想や、逆に作品の静かな雰囲気に合っているという評価が投稿されています。2025年の映画.comのレビューにも、庵野の声を理由に作品の評価が変わったという意見が掲載されました。
ただし、映画レビューサイトの投稿は視聴者全体を対象とした世論調査ではありません。賛否の割合を正確な数字で断定することはできません。
重要なのは、庵野の演技が作品の特徴の一つとして受け取られていることです。一般的な声優演技の基準で見るか、宮崎駿が描こうとした二郎の人物像との相性で見るかによって、評価が変わります。
【風立ちぬの声優の現在】2026年11月の活動とその後
『風立ちぬ』の公開から13年が経過した2026年。出演者たちは、それぞれの専門分野で活動を続けています。
特に庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、野村萬斎、志田未来は、映画や舞台、テレビなど異なる領域で存在感を示しています。
庵野秀明:エヴァンゲリオン30周年関連企画でも活動堀越二郎役
アニメーション監督・映画監督・プロデューサー
庵野秀明は、株式会社カラーの代表としてアニメーションや映画の企画・制作に携わっています。
2026年には『エヴァンゲリオン放送30周年記念特別興行』の企画・原作・総監修・脚本を担当する仕事が公式の仕事履歴に掲載されています。
また、株式会社カラーは2026年3月、庵野がPOPOPO株式会社の社外取締役に同年3月1日付で就任したことを発表しました。
『風立ちぬ』の主演を務めた後も、声優を本業に転じたわけではなく、映画監督・クリエイターとしての活動を軸にしています。
瀧本美織:女優・歌手として活動を継続里見菜穂子役
女優・歌手
1991年10月16日生まれ
瀧本美織は、『てっぱん』をはじめとするテレビドラマや映画への出演を続けています。
2025年には『財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~』『トウキョウホリディ』『死ぬほど愛して』などのドラマに出演。2026年10月にも本人の公式サイトでファンクラブ関連の更新や活動情報が掲載されています。
また、声の出演では『風立ちぬ』の後に『天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~』にも参加しました。女優としてのキャリアと声の表現の両方を経験している出演者です。
西島秀俊:映画・ドラマで幅広く活躍本庄役
俳優
1971年3月29日生まれ
西島秀俊は、映画やテレビドラマを中心に活躍する俳優です。
『きのう何食べた?』『シン・ウルトラマン』など、幅広いジャンルの作品に出演してきました。2026年の出演映画として『時には懺悔を』が記録されています。
加えて、2027年2月公開予定の映画『存在のすべてを』では主演を務めることが公式サイトで発表されています。
野村萬斎:狂言師として伝統芸能の第一線に立つカプローニ役
狂言師・俳優・演出家
1966年4月5日生まれ
野村萬斎は、狂言師としての活動を中心に、映画、舞台、テレビなどでも活躍しています。
2026年には還暦を迎え、国立能楽堂での記念公演をはじめ、各地で狂言公演に出演しています。所属する「万作の会」の公演情報にも、2026年11月以降の予定が掲載されています。
カプローニ役で見せた独特の声の表現は、狂言師としての経験を持つ野村ならではの魅力を感じさせるものでした。
志田未来・西村まさ彦らの現在堀越加代役の志田未来も、2026年現在、女優として活動を続けています。所属事務所の公式情報では、2026年のイベント出演や、2027年度前期のNHK連続テレビ小説『巡るスワン』への出演予定が紹介されています。
黒川役の西村まさ彦は、映画・ドラマ・舞台で幅広く活動しています。公式プロフィールには、2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』への出演などが掲載されています。
また、服部役の國村隼も2026年の映画・ドラマに出演するなど、俳優として第一線で活動しています。
このように、『風立ちぬ』の出演者は、映画監督、俳優、狂言師という異なる分野でそれぞれのキャリアを発展させています。
【声優と登場人物の関係性】キャスティングから読み解く『風立ちぬ』の魅力
『風立ちぬ』のキャストを理解するうえでは、出演者の知名度だけでなく、それぞれの人物が物語のなかでどんな役割を担っているのかを押さえることも大切です。
二郎と本庄:同じ夢を追う仲間であり、異なる現実を見る二人堀越二郎と本庄は、航空機開発に携わる技術者です。二人には飛行機を作るという共通の目的がありますが、仕事や社会に対する視点には違いがあります。
二郎は飛行機の美しさや設計そのものに強い情熱を抱いています。一方、本庄は日本の技術力や国際情勢、軍事的な背景など、より広い視野から状況を見つめています。
西島秀俊の落ち着いた声は、庵野演じる二郎との対話に現実的な重みを与えています。
二郎と菜穂子:夢と愛情が交差する関係本作のもう一つの中心は、二郎と菜穂子の恋愛です。
二郎が仕事に情熱を注ぐ一方で、菜穂子との時間は彼にとってかけがえのないものになります。しかし、二人の人生には病気という避けられない問題が存在します。
瀧本美織の柔らかい声と、庵野秀明の不器用で抑制された声の組み合わせは、この二人の関係を表現するうえで特徴的です。
二郎とカプローニ:夢を追い続ける者同士の対話カプローニは、単なる脇役ではありません。二郎の夢の中に現れ、飛行機を作ることの喜びと、その先にある現実を考えさせる人物です。
野村萬斎の声には、舞台で鍛えられた独特の響きがあります。現実の人物とは異なる存在感を持つカプローニの役柄に、よく合ったキャスティングです。
こうして見ると、本作の声優陣は単純な人気や知名度だけで選ばれたわけではなく、各キャラクターが持つ役割や雰囲気と結びついています。
実話なのか?堀越二郎と堀辰雄を重ねた物語『風立ちぬ』は、実在した航空技術者・堀越二郎をモデルにしています。ただし、映画は史実をそのまま再現した伝記ではありません。
宮崎駿監督は、堀越二郎だけでなく、作家・堀辰雄の文学作品にも敬意を込めて物語を構成しました。
飛行機の設計に人生を懸ける青年と、愛する人との限られた時間を生きる青年という二つの要素が重なり、映画独自の堀越二郎像が作られています。
そのため、庵野秀明の声も、実在した堀越二郎本人の声を再現するものではなく、宮崎駿が描いた映画の主人公を表現するものとして捉える必要があります。
【風立ちぬの声優に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎の声優は誰ですか?
A1:庵野秀明です。『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズなどを手がけたアニメーション監督で、宮崎駿監督から直接依頼を受けて主演を務めました。
Q2:里見菜穂子の声優は誰ですか?
A2:女優の瀧本美織です。NHK連続テレビ小説『てっぱん』などで知られ、本作では二郎の恋人・菜穂子を演じています。
Q3:本庄とカプローニの声優は誰ですか?
A3:本庄役は西島秀俊、カプローニ役は野村萬斎です。どちらも俳優として活躍する人物で、野村萬斎は狂言師としても知られています。
Q4:なぜ宮崎駿監督は庵野秀明を起用したのですか?
A4:声の技巧だけではなく、庵野本人が持つ存在感や誠実さを評価したためです。鈴木敏夫プロデューサーの提案をきっかけにオーディションが行われ、宮崎監督が本人の声を気に入ったことで出演が決まりました。
Q5:庵野秀明の演技は本当にひどいのですか?
A5:評価は分かれています。声の抑揚が少なく、一般的なアニメ声優の演技と異なるため違和感を覚える人がいる一方、二郎の寡黙で不器用な人物像に合っていると評価する人もいます。
Q6:『風立ちぬ』の声優は2026年現在も活動していますか?
A6:はい。庵野秀明は映画・アニメーションの企画や監修、瀧本美織や西島秀俊は俳優活動、野村萬斎は狂言や舞台など、それぞれの分野で活動を続けています。
Q7:黒川役の声優は西村雅彦ですか?西村まさ彦ですか?
A7:『風立ちぬ』の公開当時のキャスト表記は西村雅彦です。現在の公式プロフィールでは西村まさ彦という表記が使われています。同一人物です。
『風立ちぬ』の主要キャストには、庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、野村萬斎、西村雅彦、志田未来など、さまざまな分野で活躍する出演者が集まっています。
なかでも庵野秀明の堀越二郎役は、公開から13年が経過した2026年現在も話題に上がる異色のキャスティングです。
宮崎駿監督が庵野を選んだ理由は、単純に知名度や話題性を狙ったものではありません。『風の谷のナウシカ』から続く関係、クリエイターとしての共通点、そして声に宿る独特の存在感が重なった結果でした。
演技については、声優としての技術を重視すれば違和感を覚える部分がある可能性があります。しかし、二郎の不器用さや仕事に没頭する姿勢を含めて作品を見ると、庵野の声が選ばれた意味も見えてきます。
『風立ちぬ』をもう一度鑑賞するなら、次の3点に注目してみてください。
- 庵野秀明の声が表現する堀越二郎の寡黙さと誠実さ。
- 瀧本美織と西島秀俊が支える人間関係の繊細な描写。
- 野村萬斎の声によって生まれるカプローニの夢のような存在感。
キャストの背景を知ることで、物語だけでなく、宮崎駿監督が声に込めた演出意図もより深く味わえるはずです。
主な参照資料:スタジオジブリ公式作品情報、ウォルト・ディズニー・スタジオ公式作品紹介、株式会社カラー公式情報、出演者公式プロフィール、AV Watch、ORICON NEWS、日刊スポーツ。