本作の原作は、歴史小説家・海音寺潮五郎による同名小説『天と地と』です。上杉謙信の生涯を中心に、戦国時代の政治情勢や武将たちの人間関係を描いた作品で、映画版はその世界観を約2時間の映像作品にまとめています。
原作と映画の大きな違いは、表現できる情報量です。小説では人物の心理や歴史的背景を文章で掘り下げられますが、映画では限られた時間のなかで人物関係と合戦の展開を視覚的に伝える必要があります。そのため、景虎と乃美の関係や川中島での対決など、観客が感情移入しやすい要素が前面に出ています。
監督・製作を担当した角川春樹の挑戦監督・製作を担当したのは角川春樹です。脚本には角川自身のほか、鎌田敏夫、吉原勲が参加。配給は東映、製作会社は角川春樹事務所です。
角川春樹は、映画製作と出版を連動させるメディアミックス戦略でも知られた人物です。『天と地と』では、歴史小説を原作とする大作映画として、壮大なスケールと視覚的なインパクトを追求しました。
WOWOWの作品紹介では、製作費50億円を投じた超大作として紹介されています。一般的な時代劇の枠を超えた大規模な企画だったことが分かります。
ロケ地はカナダ・カルガリー周辺本作の制作背景で特に興味深いのが、カナダでの大規模ロケです。ロケ地として知られるのは、カナダ西部アルバータ州のカルガリー周辺。日本国内では再現しにくい広大な平原を利用し、川中島の合戦を思わせる戦場の映像を撮影しました。
2026年5月の映画.comによる小室哲哉への取材では、角川春樹監督の指示でカルガリーの撮影現場を訪れた当時のエピソードが紹介されています。また、太郎義信役の野村宏伸も、広大な撮影場所や大勢の外国人エキストラが参加した現場を振り返っています。
日本の史跡をそのまま再現するのではなく、海外の大自然を日本の戦国時代に見立てる発想が、この映画の映像的な特徴を生みました。
音楽は小室哲哉が担当音楽監督を務めたのは小室哲哉です。主題歌も担当し、作品の壮大な世界観を音楽面から支えています。
2026年5月11日に開催された『天と地と』の舞台挨拶と角川映画音楽祭の発表会では、小室自身が制作当時を回想しました。角川監督からカルガリーの撮影現場に来るよう求められ、実際の映像や現場の雰囲気を見ながら音楽制作に取り組んだと語っています。
加えて、当時は現在のような制作環境が整っておらず、音を打ち込みで作り、残響などの効果を工夫して録音していたことも明かされました。大規模な映画の音楽を、若い小室が試行錯誤しながら作り上げたという背景は、作品を見直す際の興味深いポイントです。
2026年には角川映画50周年プロジェクトの映画祭でもリマスター版が上映され、作品と音楽の両面から再評価される機会が生まれています。
【史実との違い】川中島の戦いは映画のような一騎打ちだったのか

映画『天と地と』を歴史好きが見る際に気になるのが、どこまでが史実で、どこからが映画上の演出なのかという点です。
実際の川中島の戦いは、上杉謙信と武田信玄が一度だけ戦った出来事ではありません。長野市立博物館や長野市の歴史資料によると、両者は1553年から1564年にかけて、北信濃をめぐり5度にわたって対陣・交戦したとされています。
史実では5度の戦いが繰り広げられた特に有名なのが、永禄4年(1561年)の第四次川中島の戦いです。武田軍と上杉軍が八幡原周辺で激突し、武田信玄の弟・武田信繁らが戦死するなど、双方に大きな犠牲が出ました。
映画のクライマックスにも、この第四次合戦を想起させる大規模な戦闘が描かれています。しかし、歴史上の合戦は複雑な軍事行動であり、映画のように二人の武将の対決だけで説明できるものではありません。
映画と史実の主な相違点特に押さえておきたいのは、次の3点です。
- 川中島の戦いの期間:映画では景虎の成長から最終決戦へと物語を整理していますが、史実では約12年間にわたり複数回の戦いが続きました。
- 信玄と謙信の一騎打ち:両者が戦場で直接刃を交えたという有名な伝説はありますが、実際に一騎打ちがあったかどうかは確定していません。
- 上杉謙信の改名時期:映画のあらすじでは永禄4年(1561年)に景虎が謙信と改名したように描かれますが、史実では1561年に上杉政虎、同年末に上杉輝虎と名乗り、謙信の名を称するのは1570年です。
特に改名時期は、映画と史実を比較すると分かりやすいポイントです。長岡市の上杉謙信に関する解説や長野市の川中島関連資料でも、政虎、輝虎、謙信という名前の変遷が紹介されています。
有名な一騎打ちは史実として確定していない川中島の戦いといえば、上杉謙信が武田信玄の本陣に切り込み、信玄が軍配で太刀を受け止めたという逸話が有名です。長野市の川中島古戦場史跡公園にも、この伝説を表現した一騎打ち像があります。
ただし、共同通信の用語解説や日本大百科全書では、この一騎打ちの真偽は不明とされています。後世の軍記物や伝承によって広く知られるようになったエピソードであり、確実な史実として断定することはできません。
この違いを理解すると、映画の見方も変わります。『天と地と』は歴史上の出来事をそのまま記録した映像ではなく、実在の武将と合戦を題材に、人物の感情や運命を描いた歴史ドラマです。
【評判・レビュー】映画『天と地と』は面白い?評価が分かれる理由
『天と地と』の評価を考える際には、公開当時の大作映画としての魅力と、現在の視聴者が感じる作品の特徴を分けて考える必要があります。
映画レビューサイトの評価2026年11月時点で確認できる映画レビューサイトの掲載数値は、次のとおりです。
KINENOTE55.0
100点満点
170人の平均評点・レビュー34件
映画.com2.9
5点満点
18件のレビュー
出典:各レビューサイトの作品掲載ページ。集計値は更新により変動します。
これらは利用者による評価であり、映画評論家による統一的な採点ではありません。また、レビュー件数にも差があるため、点数だけで作品の価値を判断するのは適切ではありません。
評価される要点は映像のスケールと音楽本作の魅力は、まず大規模な合戦シーンです。カナダの広大な風景を背景にした軍勢の描写は、国内の限られたロケーションでは実現しにくいスケール感を生み出しています。
また、赤と黒を印象的に使った美術・衣装の方向性や、小室哲哉による音楽も特徴です。2026年の映画.comによる取材でも、野村宏伸が当時の現場で色彩や美術を重視していたことを振り返っています。
加えて、榎木孝明と津川雅彦という異なる個性の俳優が、謙信と信玄という対照的な人物を演じている点も見どころです。戦国時代の人物像に興味がある人には、俳優の演技を比較する楽しみがあります。
好みが分かれやすいポイント一方で、歴史上の出来事を詳しく知っている人にとっては、物語の時間的な圧縮や人物関係の脚色が気になる可能性があります。
また、作品全体の重心は、現代的なテンポのアクション映画というより、戦国時代の人物の苦悩や大規模な戦闘を描くスペクタクル時代劇にあります。短い時間で次々と展開する娯楽作品を期待すると、演出の重厚さが好みに合わない場合もあります。
こんな人におすすめ- 上杉謙信や武田信玄など、戦国武将が好きな人
- 1990年前後の角川映画や日本映画の歴史を振り返りたい人
- 大規模な合戦シーンや海外ロケの映像に興味がある人
- 小室哲哉の初期の映画音楽を聴いてみたい人
- 原作小説と映画の表現の違いを比較したい人
反対に、史実に忠実な歴史ドキュメンタリーを求める人や、歴史上の人物の細かな年代・人間関係を正確に再現した作品を期待する人は、映画の脚色を踏まえて鑑賞するのがおすすめです。
【2026年最新】ムービープラスの放送予定は11月9日・30日
2026年11月に映画『天と地と』を視聴したい人にとって注目なのが、ムービープラスでの放送です。ワーナー・ブラザース・ディスカバリー・ジャパンの番組情報に、11月の放送スケジュールが掲載されています。
2026年11月9日(月)08:00~
ムービープラス/映画『天と地と』
2026年11月30日(月)
16:30~
ムービープラス/映画『天と地と』
出典:ムービープラス公式番組情報。放送時間・編成は変更される場合があります。
番組情報:
番組ページでは、海音寺潮五郎の同名小説を角川春樹が製作・監督・脚本を担当して映画化した作品として紹介されています。主演は榎木孝明、津川雅彦、浅野温子の3人です。
視聴する際は、景虎の越後統一から武田軍との対立、川中島での決戦という大きな流れを押さえておくと、物語を追いやすくなります。
また、2026年5月には角川映画50周年プロジェクトの一環として、リマスター版の上映も行われました。映画祭での再上映とテレビ放送が重なることで、1990年の大作を改めて見直す機会が生まれています。
【よくある質問】映画『天と地と』に関するFAQ
Q1:映画『天と地と』の公開日はいつですか?
A1:1990年6月23日です。配給は東映で、監督・製作は角川春樹が担当しました。
Q2:上杉謙信役と武田信玄役は誰ですか?
A2:上杉謙信を榎木孝明、武田信玄を津川雅彦が演じています。浅野温子は、謙信の幼なじみで宇佐美定行の娘である乃美役です。
Q3:映画『天と地と』の原作は誰の作品ですか?
A3:歴史小説家・海音寺潮五郎の同名小説です。映画では上杉謙信の成長と武田信玄との対決を中心に物語が展開します。
Q4:映画『天と地と』の製作費はいくらですか?
A4:WOWOWの作品紹介では、50億円もの製作費を投じた超大作として紹介されています。カナダでの大規模ロケも作品の特徴です。
Q5:映画『天と地と』のロケ地はどこですか?
A5:カナダのカルガリー周辺です。広大な平原を利用した撮影が行われ、川中島の戦いを思わせる壮大な戦場の映像が作られました。
Q6:映画の川中島の戦いは史実どおりですか?
A6:史実を題材にしていますが、人物の心理や恋愛、戦闘の展開には映画上の脚色があります。実際の川中島の戦いは1553年から1564年までの間に5度行われ、第四次合戦は1561年です。また、謙信と信玄の一騎打ちは伝説として知られるものの、史実としては確定していません。
Q7:2026年のムービープラスでの放送日はいつですか?
A7:公式番組情報では、2026年11月9日(月)8時と11月30日(月)16時30分の2回が予定されています。最新の編成はムービープラスの番組表で確認できます。
映画『天と地と』は、1990年6月23日に公開された角川春樹監督の歴史大作です。海音寺潮五郎の原作をもとに、榎木孝明の上杉謙信、津川雅彦の武田信玄、浅野温子の乃美を中心として、戦国時代の激動と人物の葛藤を描いています。
50億円規模の製作費、カナダ・カルガリー周辺での大規模ロケ、小室哲哉による音楽など、作品を支える制作面にも見どころがあります。
歴史的な観点では、川中島の戦いが5度にわたって行われたことや、謙信の改名時期、一騎打ち伝説の不確実性を知っておくと、映画の脚色と史実を比較しながら鑑賞できます。
2026年11月にはムービープラスで11月9日と30日の放送が予定されており、さらに同年の角川映画50周年企画ではリマスター版も上映されました。公開から36年を経た今も、戦国映画の大作として振り返る価値のある一本です。
単に上杉謙信と武田信玄の勝敗を見るのではなく、敵同士でありながら歴史に名を残した二人の生き方、そして戦乱の時代に翻弄された人々の姿に注目すること。それが『天と地と』をより深く楽しむためのポイントです。