焼き鳥店やスーパーの精肉売り場で見かける「砂ずり」。コリコリとした独特の歯ごたえが魅力の食材ですが、鶏のどこの部位なのか、砂肝とは何が違うのか、疑問に感じる人もいるのと考えられます。
砂ずりとは、鶏の胃の一部である「砂嚢(さのう)」を指す食材です。砂肝と基本的に同じ部位で、地域によって呼び方が異なります。実は、鳥類特有の消化の仕組みと深く関係しており、厚い筋肉で食べ物をすりつぶすという役割が、あの独特の食感を生み出しています。
【まず結論】砂ずりとは鶏のどこの部位?砂肝との違いも解説

砂ずりは、鶏の消化器官にある「砂嚢(さのう)」という部位です。一般的な食肉の分類では内臓肉に含まれ、胃の一部にあたります。
鶏の体内では、食べ物を消化するために胃が複数の役割を担っています。そのうち、食べ物を物理的に細かく砕く働きをするのが砂嚢です。
砂ずりの正体は「筋胃」と呼ばれる筋肉質な胃鶏の胃は、大きく分けると腺胃(せんい)と筋胃(きんい)の2つから構成されています。
腺胃は消化液を分泌する器官で、その後に続く筋胃は、発達した筋肉を使って食べ物をすりつぶす役割を担います。この筋胃が、食材として流通するときの砂肝、つまり砂ずりです。
人間には歯があり、食べ物を口の中でかみ砕いてから飲み込みます。一方、鶏には歯がないため、飲み込んだ食べ物を筋胃で細かくする仕組みが発達しています。
農林水産省の鶏肉に関する解説でも、砂肝は鶏の2つの胃のうち筋胃にあたる部位として紹介されています。焼き鳥の定番部位でありながら、実際には消化を支える重要な器官なのです。
砂ずりと砂肝に部位としての違いはある?結論からいえば、砂ずりと砂肝は基本的に同じ部位です。
違いがあるのは名称であり、砂ずりだから別の筋肉を使っている、砂肝よりも硬いといった解剖学的な区別はありません。
ただし、実際に食べたときの食感には差が出る場合があります。銀皮を残すか取り除くか、厚切りにするか薄切りにするか、焼き加減をどうするかによって、同じ砂嚢でも仕上がりが変わるためです。
また、鶏の砂ずりは肝臓でもありません。名前に「肝」という文字が入っていますが、レバーとはまったく異なる器官です。
【名前の由来と地域差】なぜ砂ずり・砂肝と呼ばれるのか
砂ずりと砂肝という2つの名称には、鶏の消化方法が関係しています。どちらも砂嚢の働きや特徴を反映した呼び名として理解できます。
砂肝の「砂」は食べ物を砕くための砂礫が由来砂肝の名前にある「砂」は、鶏が飲み込む砂や小石などの砂礫(されき)に由来します。
鶏は食べ物と一緒に小さな砂粒や小石を飲み込み、筋胃の強い収縮によって、それらと食べ物を混ぜ合わせてすりつぶします。
砂をためて食べ物を砕く胃袋という特徴が、「砂肝」という名前につながっています。
なお、「肝」という文字から肝臓を連想しがちですが、砂肝の正体はあくまでも胃の一部です。鶏レバーとは位置も働きも異なります。
砂ずりの「ずり」は食べ物をすりつぶす働きに関係砂ずりという呼び名も、砂嚢の特徴と結び付けて説明されます。
砂や小石を利用して食べ物をすりつぶす働きに着目した名称で、「砂摺り」「砂摩り」といった表記も見られます。
ただし、砂肝と砂ずりの名称がいつ、どの地域で最初に生まれたのかについては、明確な全国共通の成立年が定まっているわけではありません。
砂ずりは西日本、砂肝は東日本でよく使われる2つの名称には地域差があります。一般的には、東日本では「砂肝」、西日本では「砂ずり」という呼び方が親しまれています。
特に関西や九州では「砂ずり」が定着しており、焼き鳥店などでは「ズリ」と短く表記されることもあります。
一方、東日本ではスーパーの精肉売り場や飲食店のメニューで「砂肝」と表示されるケースが多く見られます。
ただし、県境を境に完全に呼び方が分かれるわけではありません。家庭での呼び方、飲食店の仕入れ先、全国展開するチェーン店のメニュー表記などによっても異なります。
旅行先で「ズリ」というメニューを見つけたら、砂肝と同じ部位だと考えて差し支えありません。
【鶏の胃の仕組み】砂ずりがコリコリする理由と砂嚢の働き
砂ずりの最大の特徴といえば、噛んだときに感じるコリコリとした独特の食感です。
この歯ごたえは、単に内臓だから生まれるものではありません。食べ物をすりつぶすという砂嚢本来の機能と、発達した筋肉の構造が関係しています。
腺胃から筋胃へ。鶏の消化は2段階で進む鶏が食べ物を飲み込んでから消化するまでには、それぞれ異なる働きを持つ器官が関わります。
最初に注目したいのが、腺胃と筋胃の関係です。
腺胃では消化液が分泌され、食べ物を化学的に消化しやすい状態にします。その後、食べ物は筋胃に送られ、筋肉の収縮によって細かく砕かれます。
鳥類学や家禽の消化に関する研究でも、筋胃は砂礫と食べ物を混ぜ合わせ、物理的にすりつぶす器官として説明されています。
砂嚢・腺胃・砂肝の関係を一覧で整理名称が似ていて混乱しやすい鶏の消化器官と、食材としての呼び方を整理すると次のとおりです。
| 名称・要素 | 位置・特徴 | 主な役割・関係 |
|---|---|---|
| 鶏の胃 | 腺胃と筋胃から構成 | 化学的消化と物理的消化を分担する |
| 腺胃 | 筋胃の前にある胃 | 消化液を分泌し、食べ物の消化を助ける |
| 砂嚢・筋胃 | 腺胃の後ろにある筋肉質な器官 | 砂礫と筋肉の収縮によって食べ物を砕く |
| 砂肝 | 砂嚢の食用名称 | 一般的な精肉・食材の呼び方 |
| 砂ずり・ズリ | 砂肝と同じ部位の別称 | 西日本などで親しまれる地域的な呼び方 |
このように整理すると、砂ずりと砂肝が別々の部位ではないことがわかります。砂嚢という器官を、食材としてどう呼ぶかの違いです。
砂ずりがコリコリするのは筋肉が発達しているから砂ずりの歯ごたえを生み出している大きな要因は、筋胃の厚く発達した筋肉です。
砂嚢は食べ物を砕くために繰り返し収縮する必要があります。そのため、胃壁が厚く、強い筋肉を持っています。
この筋肉質な構造が、一般的な鶏もも肉やむね肉とは異なる、しっかりとした噛み応えにつながっています。
加えて、表面にある銀皮と呼ばれる硬い結合組織も食感に影響します。銀皮を残すとより歯ごたえが強くなり、取り除けば比較的食べやすい仕上がりになります。
つまり、砂ずりのコリコリ感は、砂が残っているからではありません。筋肉と結合組織の構造によるものです。
【栄養成分とカロリー】砂ずりは高たんぱく・低脂質な食材
砂ずりは、独特の食感だけでなく栄養面でも特徴があります。
文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」に掲載されている鶏の砂肝の数値を見ると、脂質が少なく、たんぱく質を比較的多く含む食材であることがわかります。
砂ずり100gあたりのカロリーと栄養成分砂肝の生の状態における可食部100gあたりの代表的な栄養成分は次のとおりです。
- エネルギー:86kcal
- たんぱく質:18.3g
- 脂質:1.8g
- 鉄:2.5mg
- 亜鉛:2.8mg
- ビタミンB12:1.7μg
- カリウム:230mg
- リン:140mg
特に注目したいのが、100gあたり86kcalというエネルギー量と、18.3gのたんぱく質です。
脂質も1.8gと比較的少なく、食事のたんぱく質を確保したいときに取り入れやすい食材です。
鉄分・亜鉛・ビタミンB12も含まれている砂ずりには、たんぱく質以外にも鉄や亜鉛、ビタミンB12などが含まれています。
鉄は赤血球の形成に関わるミネラルであり、亜鉛は体内のさまざまな酵素の働きに関係しています。また、ビタミンB12は正常な赤血球の形成や神経機能の維持に必要な栄養素です。
ただし、砂ずりだけで必要な栄養素をすべて補えるわけではありません。野菜、魚、豆類などと組み合わせ、食事全体のバランスを整えることが大切です。
砂ずりはダイエット中にも向いている?脂質が比較的少なく、たんぱく質を摂取できることから、砂ずりは食事管理をしている人にも取り入れやすい食材です。
加えて、しっかり噛む必要があるため、少量でも食べ応えを感じやすいという特徴があります。
一方で、調理方法によってエネルギー量は変化します。油を多く使った炒め物や唐揚げにすれば、当然ながら摂取カロリーは増えます。焼き鳥でも、塩とタレでは糖分や塩分の量が異なります。
また、砂肝100gあたりのコレステロールは200mgです。低脂質だからといって無制限に食べてよいわけではなく、食事全体の内容や摂取量を考える必要があります。
なお、上記の数値は生の砂肝についてのものです。焼く、揚げる、ゆでるといった調理によって水分量が変わるため、調理後100gあたりの数値とは一致しません。
【下処理とおいしい食べ方】銀皮の取り方から人気レシピまで
砂ずりを家庭で調理する際に、最初につまずきやすいのが下処理です。
特に、青白く見える銀皮の扱い方がポイントになります。銀皮を取り除くか残すかによって、食感が大きく変わるためです。
砂ずりの銀皮とは?必ず取る必要はある?銀皮とは、砂肝の表面にある青白く硬い部分を指す料理上の呼び名です。
筋肉部分に比べて硬く、加熱しても歯ごたえが残りやすいため、柔らかく食べたい場合には取り除くのが一般的です。
ただし、銀皮は必ず除去しなければならない部分ではありません。銀皮付きのまま調理することも可能で、コリコリとした歯ごたえを強く楽しみたい人には、残す選択肢もあります。
砂ずりの銀皮を包丁で取り除く方法初めて下処理する場合は、次の手順で進めると比較的簡単です。
- 中央のくぼみに沿って切る:砂肝の中央にある谷間から包丁を入れ、2つの部分に切り分ける。
- 銀皮の位置を確認する:青白く硬い部分と、赤みのある筋肉部分を見分ける。
- 包丁で銀皮を削ぐ:銀皮と筋肉の境目に包丁を入れ、肉を切り過ぎないよう薄く取り除く。
- 反対側も同様に処理する:裏側にも硬い部分があれば、同じように取り除く。
- 食べやすい大きさに切る:必要に応じて表面に数本の切り込みを入れる。
包丁を使うのが難しい場合は、竹串を銀皮と筋肉の間に差し込み、少しずつ持ち上げる方法もあります。
日本ハムの下処理解説でも、竹串を使う方法と包丁で切り取る方法の両方が紹介されています。
なお、取り除いた銀皮も調理に活用できます。細かく切って炒め物や煮物に使えば、食材を無駄なく利用できます。
焼き鳥なら塩がおすすめ?砂ずりに合う味付け砂ずりの代表的な食べ方は焼き鳥です。
素材そのものの味を楽しみたいなら、まずは塩焼きがおすすめです。淡泊な味わいと香ばしさ、コリコリとした歯ごたえをシンプルに楽しめます。
一方、タレ焼きは甘辛い味付けが砂ずりによく絡み、濃い味が好きな人にも向いています。
焼き鳥店によっては、銀皮を残した大ぶりの串や、細かく切り込みを入れた串など、仕込みにも個性があります。
砂ずりのおいしい食べ方・人気のアレンジレシピ砂ずりは焼き鳥以外にも、炒め物、揚げ物、煮物など幅広い料理に使えます。家庭で試しやすい代表的な食べ方を紹介します。
1.砂ずりの塩焼き
下処理した砂ずりに塩、こしょうを振り、フライパンやグリルで焼きます。仕上げにレモンを絞ると、さっぱりした味わいになります。にんにくを少量加えるアレンジもおすすめです。
2.砂ずりのガーリック炒め
薄切りにした砂ずりを、にんにくと一緒に炒める料理です。ごま油やオリーブオイルを使い、最後にしょうゆを少量加えると香ばしく仕上がります。長ねぎやニラを加えれば、野菜も一緒に摂取できます。
3.砂ずりの唐揚げ
砂ずりにしょうゆ、酒、おろししょうがなどで下味を付け、片栗粉をまぶして揚げます。外側は香ばしく、中はしっかりした歯ごたえが残る一品です。大きさをそろえ、中心まで十分に火を通すことがポイントです。
4.砂ずりと野菜の中華風炒め
砂ずりとピーマン、玉ねぎ、きのこなどを組み合わせ、オイスターソースやしょうゆで味付けします。砂ずりの弾力と野菜の食感が組み合わさり、ご飯のおかずにもお酒のおつまみにも使えます。
5.砂ずりのしょうが煮
砂ずりを食べやすい大きさに切り、しょうゆ、酒、みりん、しょうがと一緒に煮込みます。炒め物とは異なる味わいになり、作り置きのおかずとしても活用できます。煮汁を煮詰め過ぎないようにすると、食べやすく仕上がります。
砂ずりの調理で注意したい食中毒対策砂ずりは鶏の内臓であり、鶏肉と同様に食中毒対策が欠かせません。
厚生労働省の2026年5月27日最終改正のカンピロバクター食中毒予防Q&Aでは、鶏肉や内臓には食中毒菌が付着している可能性があることを説明しています。
安全に食べるための基本は、中心部を75℃で1分間以上加熱することです。
また、生の砂ずりを扱った包丁やまな板を、加熱後の食材や生野菜にそのまま使用しないことも大切です。生肉用と調理済み食品用の器具を分け、作業後は手洗いと器具の洗浄・殺菌を徹底しましょう。
新鮮な砂ずりであっても、生食や加熱不十分な状態で食べることは避けてください。
【砂ずりとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:砂ずりと砂肝は同じものですか?
A1:基本的に同じものです。どちらも鶏の胃の一部である砂嚢を指します。一般的に東日本では砂肝、西日本では砂ずりという呼び方がよく使われています。
Q2:砂ずりに本当に砂が入っているのですか?
A2:鶏は消化を助けるために砂や小石などの砂礫を飲み込み、砂嚢の中で食べ物をすりつぶします。ただし、食用として販売される砂肝は通常、内容物などを処理した状態です。料理に砂を加えるわけではありません。
Q3:砂ずりの銀皮は取らないと食べられませんか?
A3:必ず取る必要はありません。銀皮は硬いため、柔らかく食べたい場合には取り除くのがおすすめです。一方、強い歯ごたえが好きな場合は残して調理する方法もあります。
砂ずりとは、鶏の胃の一部にあたる砂嚢(筋胃)を指す食材です。砂肝とは基本的に同じ部位であり、主な違いは地域による呼び方にあります。
鶏には歯がないため、筋胃の強い筋肉と飲み込んだ砂礫を利用して食べ物をすりつぶします。この仕組みが、砂ずりならではのコリコリとした食感を生み出しています。
栄養面では、可食部100gあたり86kcal、たんぱく質18.3g、脂質1.8gという特徴があり、鉄や亜鉛、ビタミンB12も含まれています。
家庭で調理するときは、銀皮を好みに合わせて処理し、切り込みを入れることで食べやすくできます。塩焼き、ガーリック炒め、唐揚げ、しょうが煮など、料理の幅も広い食材です。
【プロの結論】砂ずりをおいしく食べるための判断基準砂ずりを選ぶ際は、次の3つを意識すると、自分好みの食べ方を見つけやすくなります。
- 食感を重視する人:銀皮を残した調理や大きめのカットがおすすめ。
- 食べやすさを重視する人:銀皮を取り除き、細かい切り込みを入れた調理が向いている。
- カロリーや脂質を意識する人:油を多く使わない塩焼きや蒸し料理を選び、味付けの塩分にも配慮する。
砂ずりは、単なる焼き鳥の一品ではなく、鳥類特有の消化の仕組みが生み出した個性的な食材です。部位の正体や名前の由来、食感の理由を知れば、いつもの焼き鳥も違った視点で楽しめます。
2026年も、砂ずりは焼き鳥から家庭料理まで幅広く活躍する鶏の内臓食材です。正しい下処理と十分な加熱を心がけながら、その独特の歯ごたえと淡泊な味わいを楽しんでみてください。