英乃海の引退は、単に年齢を理由としたものではない。大きな転機となったのは、2026年3月場所での負け越しと、目標にしていた十両復帰を逃したことだった。
最後の場所は西幕下3枚目で3勝4敗2026年3月場所、英乃海は西幕下3枚目で土俵に上がった。
幕下3枚目という位置は、勝ち越せば十両復帰を狙える重要な番付だった。36歳で迎えた英乃海にとって、もう一度関取に戻ることは現役続行への大きな目標だった。
しかし、場所の結果は3勝4敗。3連敗の後に3連勝と盛り返したものの、最後の取組で敗れ、負け越しが決まった。
日刊スポーツの2026年4月3日の引退会見報道によると、英乃海は次のように説明している。
「悔いはなくホッとしています」
本人は、もう一度関取に上がる希望を持って場所に臨んでいた。ところが、最後の一番に敗れたことで引退を決意。取組後、師匠の木瀬親方に自ら引退の意思を伝えたという。
師匠・木瀬親方が明かした体の状態引退会見では、師匠の木瀬親方(元幕内・肥後ノ海)も英乃海の現役生活を振り返った。
デイリースポーツの報道によれば、木瀬親方は36歳まで相撲を続けた努力を評価する一方、体がボロボロだったことから、引退について覚悟していたと説明している。
つまり、今回の引退には次の要素が重なっていた。
- 36歳という年齢で迎えた現役生活の節目
- 幕下3枚目からの十両復帰を逃したこと
- 長年の激しい取組による身体的な負担
- 最後の場所を終え、自分自身で納得できたこと
本人が会見で語った「悔いなく終われた」という心境は、単なる敗戦による引退ではなく、長い競技生活に自ら区切りをつけた決断だったことをうかがわせる。
2022年の賭博問題が引退理由という説は正しい?英乃海を検索すると、2022年の違法賭博問題に関する情報も見つかる。
これは実際に報じられた出来事だ。2021年に埼玉県草加市の違法賭博店で賭博行為に関与したことが判明し、日本相撲協会は2022年1月、英乃海に1場所の出場停止と2か月間の報酬20%減額処分を科した。
ただし、処分を受けた後も現役を続け、2026年3月場所まで土俵に立っている。
したがって、2026年の引退を2022年の賭博問題によるものと説明するのは正確ではない。 今回の引退会見で本人が説明した直接的な理由は、最後の場所での負け越しと十両復帰を逃したことだった。
【木瀬部屋での歩み】英乃海拓也のプロフィールと力士人生

英乃海拓也(ひでのうみ・たくや)
- 本名:岩崎拓也
- 生年月日:1989年6月11日
- 出身地:東京都江戸川区
- 所属:木瀬部屋
- 得意技:右四つ・寄り
- 身長:186cm
- 最高位:東前頭6枚目
日本相撲協会の公式プロフィールによると、英乃海は2012年5月場所に初土俵を踏んだ。
埼玉栄高校から日本大学へ進み、大学相撲で経験を積んだ後、木瀬部屋に入門。右四つからの寄りを得意とし、力強い相撲で番付を上げていった。
新十両から新入幕、そして最高位へ2014年11月場所に新十両へ昇進。このタイミングで、それまでの「岩崎」から「英乃海」に改名した。
2015年7月場所には新入幕を果たす。
その後も幕内と十両を行き来しながら現役を続け、2021年3月場所には幕内で自身初の二桁勝利となる10勝を記録。同じ場所で弟の翔猿も10勝を挙げ、兄弟そろって活躍した。
続く2021年5月場所では、自己最高位となる東前頭6枚目に到達した。
英乃海の経歴・実績を時系列で整理英乃海のキャリアを語るうえで外せないのが、2016年1月場所の十両優勝だ。
西十両2枚目で迎えた同場所では、11勝4敗という好成績を残して優勝。幕内と十両を往復する厳しい番付争いのなかで、実力を示した場所だった。
日本相撲協会の公式プロフィールでも、十両優勝は1回と記録されている。ほかにも序二段優勝1回、序ノ口優勝1回を記録しており、下位から着実に番付を上げてきた力士だった。
【通算成績】541勝539敗22休が示す英乃海の実力
英乃海の現役生活を数字で振り返ると、通算成績は非常に特徴的だ。
生涯戦歴・83場所541勝539敗22休
541
勝ち星
539
負け星
22
休場数
83
在位場所数
幕内では13場所、十両では53場所
日本相撲協会の公式プロフィールに掲載された戦歴を整理すると、次のようになる。
| 項目 | 成績 |
|---|---|
| 生涯戦歴 | 541勝539敗22休 |
| 幕内戦歴 | 70勝108敗17休 |
| 幕内在位 | 13場所 |
| 十両優勝 | 1回 |
| 序二段優勝 | 1回 |
| 序ノ口優勝 | 1回 |
| 最高位 | 前頭6枚目 |
特に注目したいのは、幕内在位13場所に対して、十両在位が53場所に及んでいる点だ。
幕内で長期間上位を維持することはできなかったものの、十両で長く戦い、関取としての地位を守ってきた。
また、2023年11月場所には幕下に落ちた後、東幕下2枚目で5勝2敗を挙げて1場所で十両復帰。2025年7月場所にも21場所ぶりの幕内復帰を果たしている。
こうした経歴から見えるのは、番付が下がっても簡単には相撲を諦めなかった姿勢だ。2026年3月場所での十両復帰への挑戦も、過去に何度も番付を戻してきた経験があったからこそ、最後まで目指した目標だったと考えられる。
【翔猿との兄弟関係】英乃海と弟はなぜ別の部屋だった?
兄・英乃海
木瀬部屋所属。最高位は東前頭6枚目。
弟・翔猿
追手風部屋所属。幕内で活躍する現役力士。
英乃海と翔猿は実の兄弟で、英乃海が兄、翔猿が3歳年下の弟にあたる。
2人とも埼玉栄高校、日本大学という進路を歩んだ相撲経験者であり、兄弟そろって幕内力士になったことでも知られている。
なぜ兄弟なのに所属部屋が違う?英乃海は木瀬部屋、翔猿は追手風部屋に所属している。
2026年10月の断髪式に関する報道では、英乃海が当初、弟も自分と同じ木瀬部屋に入るものだと思っていたことが紹介された。
ところが、翔猿は追手風部屋を選択。英乃海は当初、弟が別の部屋に入ることに怒りを感じたというが、その後は弟の選択を受け入れ、活躍を応援するようになった。
兄より有名になった弟への思い2026年4月3日の引退会見で、英乃海は翔猿についても語っている。
弟は体が小さく、最初は相撲界でやっていけるのか心配していたという。しかし、いつの間にか弟のほうが強くなり、知名度でも逆転されたと振り返った。
それでも、翔猿の兄として声をかけられることはうれしかったという。
日刊スポーツやデイリースポーツの報道からも、兄としての対抗心と弟への愛情が共存していたことが伝わってくる。
英乃海と翔猿の関係・周辺人物一覧| 人物・組織 | 英乃海との関係 | 主な情報 |
|---|---|---|
| 翔猿 | 実弟 | 追手風部屋所属。幕内力士 |
| 木瀬親方 | 師匠 | 元幕内・肥後ノ海。引退会見にも同席 |
| 志摩ノ海 | 同部屋の同期 | 互いに競い合った存在 |
| 追手風部屋 | 弟の所属部屋 | 翔猿が入門した部屋 |
| 木瀬部屋 | 英乃海の所属部屋 | 2012年の初土俵から所属 |
| 中学時代の同級生 | 引退後の仕事の関係者 | 都内の不動産会社を経営 |
兄弟でありながら別々の部屋で相撲を取り、それぞれの道を歩んできた2人。共通する進路を歩んできたからこそ、弟の活躍を喜ぶ気持ちと、負けたくないという競争心の両方があったのだろう。
【引退会見と現在の仕事】英乃海は不動産営業マンに転身した?
英乃海の引退後の仕事として注目されたのが、不動産業への転身だ。
2026年4月3日、両国国技館で開かれた引退会見で、本人は今後の進路について不動産業に挑戦する意向を明かした。
中学校の同級生が経営する不動産会社へスポニチや日刊スポーツの報道によると、英乃海は中学校時代の同級生が都内で経営する不動産会社に就職する予定だった。
職種については営業職を想定しており、宅地建物取引士、いわゆる宅建の資格取得にも意欲を示していた。
相撲界で10歳から競技を続けてきた英乃海にとって、一般企業で働くことは大きな環境の変化となる。
本人も、一般社会について知らないことが多く、不安と楽しみの両方があるという心境を明かしていた。
不動産営業への転身はなぜ注目される?力士の引退後には、親方として相撲界に残る道や、飲食業・一般企業などに進む道がある。
英乃海の場合、親方として協会に残るのではなく、一般企業で新しいキャリアを築く方向を選んだ点が特徴的だ。
不動産営業には、物件や地域に関する知識だけでなく、顧客との信頼関係を築く力も求められる。
長年、相手の動きを読みながら取組を組み立ててきた経験が、どのように新しい仕事に生かされるのかも興味深い。
また、宅建の資格取得を目指すという発言からは、単に就職するだけではなく、専門知識を身につけて新しい分野に挑戦しようとする意欲も見て取れる。
2026年11月現在、実際に不動産営業をしている?ここは時系列を分けて理解する必要がある。
- 2026年4月3日: 中学校の同級生が経営する不動産会社で営業職に就く予定と発表。
- 2026年4月: 宅建資格の取得にも意欲を示す。
- 2026年10月3日: 断髪式の報道では、さまざまな活動をしながら今後のことを模索していると紹介された。
つまり、不動産営業への転身計画は本人が公表した事実だが、11月現在も同じ会社で営業職として勤務しているかどうかは、その後の報道からは確定できない。
現状は「不動産業への挑戦を表明した元力士」と捉えるのが正確だ。
【英乃海の断髪式2026】10月3日に翔猿との最後の兄弟対決が実現
英乃海の引退後の大きな節目となった断髪式は、2026年10月3日、両国国技館で行われた。
当初は引退会見の時点で断髪式の日程は未定と報じられていたが、その後、開催日が決定。公式の断髪式案内でも10月3日の日程が告知されていた。
横綱・豊昇龍ら約300人がはさみを入れるスポーツ紙各社の報道によると、断髪式には横綱・豊昇龍や大関・琴櫻らを含む約300人が参加した。
最後は師匠の木瀬親方が止めばさみを入れ、英乃海は14年間の力士生活に別れを告げた。
会場には多くの関係者やファンが集まり、現役時代を支えた人々に見送られる形で新しい人生の節目を迎えた。
弟・翔猿との最初で最後の兄弟対決断髪式で特に注目されたのが、弟の翔猿との最後の一番だ。
2人は本場所で兄弟対決をする機会がほとんどなかった。大相撲には近親者同士の取組を避ける内規があり、異なる部屋に所属する2人も本場所では対戦していなかった。
しかし、この日は引退する兄の希望もあり、特別な取組が実現した。
結果は、英乃海が翔猿を寄り切って勝利。
英乃海は弟について、現役力士の強さを感じたと振り返り、翔猿も兄の相撲の強さに笑顔を見せた。
本場所では実現しなかった兄弟対決が、引退を締めくくる特別な一番になった。
断髪式後の英乃海はどんな姿になった?断髪後は、これまでの大銀杏とは異なるヘアスタイルに整えられた。
スポーツ報知の報道では、約270人がはさみを入れ、木瀬親方が最後の一束を切ったことが紹介されている。
また、最後のあいさつでは、集まった人々への感謝を述べ、相撲を続けてきてよかったという思いを語った。
断髪式は単に髪を切る儀式ではない。力士としての名前、生活、習慣に区切りをつける大切な節目でもある。
英乃海にとっても、翔猿との最後の一番を含め、14年間の歩みを締めくくる一日になった。
【プロの結論】英乃海の引退から見える14年間の相撲人生
英乃海の力士人生を振り返ると、最高位の前頭6枚目や十両優勝だけでは語り尽くせない特徴がある。
それは、幕内と十両を行き来しながらも、何度も上を目指して土俵に戻ってきたことだ。
2023年には幕下から1場所で十両へ復帰し、2025年には21場所ぶりに幕内へ戻った。こうした経歴は、番付が下がった後も現役を続ける力士の厳しさと粘り強さを示している。
今回の引退について、特に押さえておきたい判断材料は3つある。
1. 引退の直接的な理由は2026年3月場所の負け越し。 過去の不祥事を今回の引退理由と混同しないこと。
2. 通算541勝539敗22休という実績。 幕内だけでなく、十両で長く戦ったキャリアにも注目すること。
3. 引退後は新しい職業への挑戦。 不動産営業への転身を表明したものの、現在の勤務状況は別途確認が必要であること。
力士としての実績を評価するなら、最高位だけで判断するのではなく、在位場所数、十両優勝、幕内復帰の回数なども見るべきだろう。
英乃海は横綱や大関には届かなかった。しかし、83場所にわたって土俵に立ち続け、最後まで十両復帰を目指した。その歩みには、番付だけでは測れない価値がある。
英乃海に関するよくある質問(FAQ)
Q1:英乃海はなぜ引退したのですか?
A1:2026年3月場所で西幕下3枚目から3勝4敗と負け越し、目標だった十両復帰を逃したことが直接の理由です。最後の取組後に師匠の木瀬親方へ引退を申し出ました。
Q2:英乃海の最高位と通算成績は?
A2:最高位は東前頭6枚目です。通算成績は541勝539敗22休、83場所。十両優勝1回、序二段優勝1回、序ノ口優勝1回を記録しています。
Q3:英乃海と翔猿は本当の兄弟ですか?
A3:実の兄弟です。英乃海が兄で、翔猿が3歳年下の弟です。兄は木瀬部屋、弟は追手風部屋に所属していました。
Q4:英乃海の引退後の仕事は何ですか?
A4:2026年4月の引退会見では、中学校時代の同級生が経営する都内の不動産会社で営業職に就く予定と発表しました。宅建資格の取得にも意欲を示しています。ただし、現在の勤務状況は公表情報だけでは確定できません。
Q5:英乃海の断髪式はいつ行われましたか?
A5:2026年10月3日に両国国技館で行われました。弟の翔猿との最後の一番では英乃海が勝利し、師匠の木瀬親方が止めばさみを入れました。
Q6:英乃海は十両優勝を経験していますか?
A6:はい。2016年1月場所に西十両2枚目で11勝4敗を記録し、十両優勝を果たしています。
英乃海拓也は、2012年5月場所に木瀬部屋から初土俵を踏み、2026年3月場所まで83場所にわたって相撲を取り続けた元幕内力士だ。
最高位は前頭6枚目。十両優勝1回を含む通算541勝539敗22休という記録を残した。最後の2026年3月場所では3勝4敗と負け越し、目標だった十両復帰を逃したことから引退を決断した。
引退後は不動産業への転身と宅建資格の取得を目指す意向を示し、10月3日には両国国技館で断髪式を実施。弟・翔猿との最後の一番にも勝利し、約14年間の力士生活を締めくくった。
兄弟力士としての歩み、幕内と十両を往復しながら戦い続けた実績、そして一般社会への新たな挑戦。英乃海の物語は、土俵を離れた2026年秋から、第二の人生へと舞台を移している。