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【家庭用品規制法】衣類の有害化学物質に設けられた基準を比較

伊部 拓海 伊部 拓海 • 更新: • 公開: • 読了約 13 分
目次

衣類の安全性を判断するうえで重要なのが、家庭用品規制法の存在だ。

この法律は、家庭用品に含まれる有害物質による健康被害を防ぐため、対象となる物質や製品、検査方法、基準値などを定めている。衣類についても、ホルムアルデヒドや特定芳香族アミンを生成するおそれのあるアゾ染料などが規制対象になっている。

主な基準を整理すると、次のようになる。

検査対象 対象製品・基準 規制の目的 ホルムアルデヒド 生後24か月以内の乳幼児用衣類など:16ppm以下 皮膚刺激などの健康被害を防止 ホルムアルデヒド 対象となる一般用の下着・寝衣・手袋・靴下など:75ppm以下 残留量を制限 アゾ染料 特定芳香族アミンの検出量:試料1g当たり30μg以下 発がん性が懸念される芳香族アミンへの曝露を抑制 有機水銀化合物 対象繊維製品から検出されないこと 有害な防菌・防カビ剤への曝露を防止

※数値は対象となる家庭用品と試験方法に応じた規制基準。すべての衣類に一律に適用されるものではない。

アゾ染料は直接肌に触れる部分が重要

厚生労働省が示すアゾ染料の規制では、対象となる製品のうち、通常の使用形態で直接肌に接触する部分が規制対象となる。

例えばコートの場合、襟元や袖口などが該当する。対象は衣類だけではなく、寝具、タオル、ハンカチ、革製の下着や手袋などにも及ぶ。子どもが口に含む可能性がある製品も対象に含まれている。

この仕組みから分かるのは、衣類の化学物質規制が単に「危険な成分をゼロにする」という考え方だけではないことだ。接触する場所、接触時間、製品の使用方法などを踏まえて対象を設定している。

2026年の法令・検査方法の動向

2026年4月20日、厚生労働省は「家庭用品中の有害物質試験法について」の一部改正に関する通知を掲載した。これは家庭用品の有害物質検査に関する試験法の更新であり、従来の規制値そのものが一律に変更されたという意味ではない。

衣類の安全性を調べる場合は、規制対象物質、基準値、検査方法という3つの情報を分けて確認することが大切だ。

【2026年最新】長野県の令和7年度家庭用品有害物質検査で分かったこと

服発がん性影響

衣類の化学物質問題を考えるうえで参考になるのが、自治体による実際の検査結果だ。

長野県環境保全研究所が公表した「令和7年度家庭用品の有害物質検査」は、2026年9月3日に更新された資料である。家庭用品規制法に基づき、下着類などの繊維製品を対象に検査を実施している。

公表資料によると、検査対象は47検体・59項目。結果は、確認されたすべての検査項目で基準違反なしだった。

検査項目別の結果
検査項目 検体数 基準違反
乳幼児用衣類のホルムアルデヒド 24 0件
一般用下着・靴下などのホルムアルデヒド 11 0件
有機水銀化合物 6 0件
トリブチルスズ化合物 6 0件
トリフェニルスズ化合物 6 0件
アゾ色素 6 0件
合計 59検査項目 違反なし

出典:長野県環境保全研究所「令和7年度家庭用品の有害物質検査」。47検体に対して59項目の検査を実施。検査項目別の検体数を記載。

特に注目したいのは、乳幼児用衣類のホルムアルデヒド検査が24検体、一般用下着・靴下などが11検体、アゾ色素が6検体だったことだ。いずれも基準違反は確認されていない。

検査結果が示すこと、示さないこと

この結果は、長野県が検査した対象製品について、家庭用品規制法の基準に適合していたことを示す。

一方、47検体の結果を全国のすべての衣類に当てはめることはできない。検査対象になっていない商品、別の年度に流通した商品、異なる製造工程で作られた商品まで安全性が保証されるわけではないからだ。

また、検査項目は法律で定められた有害物質が中心であり、衣類に使用されるすべての化学物質を網羅しているわけではない。

したがって、今回の検査結果は過度な不安を和らげる材料になる一方、衣類の安全性を考える際には、継続的な検査や製品管理も欠かせないことを示している。

なお、厚生労働省は都道府県・政令市などの家庭用品安全対策事業について、2025年度時点の検査状況を公表している。自治体による試買検査は、流通する家庭用品の安全性を確認する重要な仕組みだ。

【実践編】新品の服は洗濯すべき?発がん性物質の見分け方と予防策

ここまでの情報を踏まえると、消費者ができる対策はそれほど複雑ではない。特に新品の衣類、下着、乳幼児用衣類については、購入後の取り扱いを少し工夫するだけでも、ホルムアルデヒドなどへの接触を減らせる。

1. 新品の服は着用前に一度洗濯する

最も取り入れやすい対策が、購入した衣類を着用前に洗濯することだ。

ホルムアルデヒドは水に溶けやすい性質があり、洗濯によって衣類に吸着したホルムアルデヒドをほぼ取り除けると自治体の生活衛生情報でも案内されている。

特に次の衣類は、最初に洗濯してから使用する習慣をつけたい。

  • 肌に直接触れる下着や肌着
  • 赤ちゃんの肌着やロンパース
  • パジャマや寝具
  • 長時間着用する衣類

ただし、洗濯はホルムアルデヒド対策の一つであり、あらゆる有害化学物質を完全に除去できる方法ではない。洗濯表示に従って適切に洗うことが基本となる。

2. 乳幼児用衣類は包装された商品を選ぶ

赤ちゃん用の衣類では、購入時の包装にも意味がある。

ホルムアルデヒドは、ほかの製品から衣類へ移ることがある。未包装の衣類を長時間陳列している場合、周囲の製品や環境から移染する可能性があるため、ポリエチレンなどで包装された商品を選ぶことが自治体からも推奨されている。

購入時には、次の点を確認したい。

- 個別包装されているか
- 包装が破損していないか
- 商品の表示や製造者情報が確認できるか
- 乳幼児向けとして適切な製品管理がされているか

3. 赤ちゃんの衣類は大人の服と分けて保管する

意外と見落とされやすいのが、購入後の保管方法だ。

新品の木製タンスなどから発生するホルムアルデヒドが衣類に移る可能性もある。赤ちゃんの衣類を保管する際には、収納家具に直接触れさせず、ポリ袋などに入れて保管する方法が案内されている。

また、大人の衣類と乳幼児用衣類を分けて保管することも移染対策になる。

4. においや色だけで有害性を判断しない

服の発がん性を見分ける方法として、化学的なにおいや鮮やかな色に注目する人もいる。

しかし、においが強いからといって発がん性物質が含まれているとは限らず、反対に無臭だから安全とも断定できない。色の濃さや鮮やかさだけで、特定芳香族アミンの含有量を判断することもできない。

家庭で見た目や嗅覚だけを使って、ホルムアルデヒドや特定芳香族アミンの濃度を測定することはできない。正確な確認には、専門の試験機関による分析が必要になる。

購入時には、次のような判断基準を参考にしたい。

判断ポイント 確認したいこと
製造者・販売者 事業者情報や問い合わせ先が明確か
商品表示 素材、洗濯表示、使用上の注意が確認できるか
安全性の説明 化学物質管理や検査について具体的な説明があるか
乳幼児向け製品 包装や製品管理が適切か
着用後の皮膚反応 かゆみや赤みが出たら使用を中止する

特に、肌に直接触れる製品や乳幼児向け製品では、販売価格やデザインだけでなく、製品情報の透明性も判断材料にしたい。

5. 着用後に皮膚トラブルが起きたら

衣類を着用した後に、かゆみ、赤み、湿疹などが出た場合は、いったん使用を中止する。

原因はホルムアルデヒドに限らず、染料、仕上げ剤、洗剤、柔軟剤、素材そのものなど複数考えられる。症状が続く場合や悪化する場合は皮膚科を受診し、可能であれば問題が起きた衣類の素材表示や洗濯方法も伝えるとよい。

一度の皮膚トラブルだけで発がん性物質への曝露や将来のがんリスクを判断することはできない。皮膚症状と発がん性は、分けて考える必要がある。

【よくある質問】服の発がん性や有害化学物質に関するFAQ

Q1:新品の服には発がん性物質が必ず含まれていますか?
A1:いいえ。新品の服すべてに発がん性物質が含まれているわけではない。製造工程で化学物質が使用されることはあるが、完成品の残留量や使用される物質によって健康影響は異なる。日本では家庭用品規制法による基準が設けられている。

Q2:ホルムアルデヒド16ppmとはどのような基準ですか?
A2:生後24か月以内の乳幼児用繊維製品に適用される基準で、試料1g当たり16μg以下という意味だ。一般用の対象となる下着や寝衣などには75ppm以下の基準がある。

Q3:アゾ染料はすべて発がん性がありますか?
A3:いいえ。問題になるのは、分解によって特定芳香族アミンを生成するおそれのある一部のアゾ染料だ。すべてのアゾ染料が発がん性を持つわけではない。

Q4:新品の服を洗濯すれば安全になりますか?
A4:洗濯は、衣類に吸着したホルムアルデヒドを減らすために有効な対策だ。ただし、すべての化学物質を除去できるわけではない。洗濯表示に従い、適切に洗ってから着用することが望ましい。

Q5:濃い色の服や安い服は発がん性が高いのでしょうか?
A5:価格や色の濃さだけでは判断できない。特定のアゾ染料が使われているか、特定芳香族アミンがどの程度検出されるかは、専門的な検査が必要になる。

Q6:赤ちゃんの服で特に注意することは何ですか?
A6:乳幼児用衣類はホルムアルデヒド16ppm以下という厳しい基準がある。購入時は包装された製品を選び、着用前に洗濯し、大人の衣類や新しい木製家具などから離して保管することが対策になる。

服の発がん性については、「衣類には危険な化学物質が含まれているから着用しないほうがよい」という単純な話ではない。

健康への影響が問題となるのは、ホルムアルデヒドや特定芳香族アミンなど、特定の化学物質とその曝露条件だ。ホルムアルデヒドには発がん性の科学的評価がある一方、衣類の通常着用によるリスクを職業上の高濃度吸入曝露と同じように扱うことはできない。

日本では家庭用品規制法によって、乳幼児用衣類のホルムアルデヒド16ppm以下、対象となる一般用繊維製品の75ppm以下、特定芳香族アミン30μg/g以下などの基準が設けられている。

加えて、長野県の令和7年度検査では、47検体59項目について基準違反が確認されなかった。こうした公的検査の結果は、国内で流通する衣類の安全管理を考えるうえで参考になる。

日常生活では、次の3つを意識したい。

  • 新品の服は洗濯してから着用する。特に下着や乳幼児用衣類は優先する。
  • 赤ちゃんの服は包装・保管方法にも注意する。移染を防ぐため、大人の衣類などと分けて保管する。
  • 化学的なにおいや色だけで判断しない。公的な規制や検査結果、製造者の情報を参考にする。

衣類の安全性を考えるうえで大切なのは、化学物質という言葉だけに過剰反応することではない。どの物質が、どの製品に、どの程度含まれ、どのような経路で人体に影響するのかを理解することだ。

2026年以降も、厚生労働省やNITE、自治体による検査・情報公開を確認しながら、科学的な根拠に基づいて衣類を選ぶことが、日々の安心につながる。

参考にした主な公的資料

  • 厚生労働省「家庭用品、芳香族アミン、アゾ染料」
  • 厚生労働省「有害物質を含有する家庭用品の規制基準概要」
  • 製品評価技術基盤機構(NITE)「アゾ色素」
  • 長野県環境保全研究所「令和7年度家庭用品の有害物質検査」
  • 厚生労働省「家庭用品に関する法令・通知等」
  • 大阪健康安全基盤研究所「乳幼児の衣類に含まれるホルムアルデヒドについて」

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コンテンツディレクター 伊部 拓海
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映画・ドラマ担当。公開資料と一次報道を照合し、ネタバレの扱いには線引きルールを設けています。

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