ゲームには心理的なメリットがある一方、利用方法によっては深刻な問題が生じる。
特に注意したいのが、思春期のオンラインゲームの不適切利用だ。
2025年のNCNP研究が明らかにした思春期への影響2025年8月、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)、東京都医学総合研究所、東京大学などの研究グループは、思春期のオンラインゲームの不適切利用と、その後のメンタルヘルスとの関係を発表した。
研究成果は2025年8月4日に学術誌『Communications Psychology』でオンライン公開され、NCNPは同月8日に公式発表した。
分析対象は、2002~2004年生まれの思春期児童3,171人。東京ティーンコホートの追跡データを用いて、12歳、14歳、16歳の3時点を比較した。
特に注目されるのは、14歳時点でオンラインゲームを不適切に利用していた場合、16歳時点のメンタルヘルス不調のリスクが高まるという結果だ。
| 16歳時点の評価項目 | リスク比 | リスク差 |
|---|---|---|
| 抑うつ | 1.62倍 | 7.8ポイント |
| 不安 | 1.98倍 | 5.7ポイント |
| 精神症体験 | 1.72倍 | 5.9ポイント |
| 幸福度の低下 | 1.54倍 | 9.6ポイント |
ここでいうリスク比は、不適切利用の程度が高い群と低い群を比較した推定値であり、すべてのゲーム利用者に当てはまる数字ではない。
また、精神症体験とは幻覚や妄想のような体験を指す。精神疾患の診断が確定したという意味ではない。
不適切利用とは具体的にどんな状態なのかNCNPの研究では、次のような行動が不適切利用の特徴として扱われている。
- ゲームを中断すると強いイライラを感じる。
- プレイ時間を減らそうとしても実行できない。
- 嫌な気分やストレスを避けるためにゲームを続ける。
- ゲームによって学業や人間関係に支障が出ている。
- のめり込みを隠すために周囲に嘘をつく。
特に気をつけたいのは、ゲームがストレス解消の手段から、嫌な感情を処理するために手放せない手段へ変わってしまうことだ。
研究では、12歳時点の注意欠如・多動傾向と14歳時点の不適切利用にも関連が確認された。
加えて、注意欠如・多動傾向とメンタルヘルス不調の関連のうち、12.3~29.2%がオンラインゲームの不適切利用によって媒介されていた。
これは注意欠如・多動傾向がある人は必ずゲーム障害になるという意味ではない。本人の特性や生活環境に応じた支援が必要であることを示す知見だ。
ICD-11に登録されたゲーム障害とは?ゲーム障害(Gaming Disorder)は、WHOの国際疾病分類第11版(ICD-11)に位置づけられている。
2019年5月のWHO総会で採択が決定され、ゲーム行動に関する健康上の問題として正式に分類された。
診断上、特に重要な特徴は次の3つだ。
1. コントロールの障害: ゲームを始める時間、頻度、終了時刻などを自分で管理できない。
2. ゲームの優先順位の上昇: ほかの趣味や日常活動よりもゲームを優先する。
3. 問題があっても継続: 健康や家庭、仕事、学業などに悪影響が出ていてもゲームを続ける。
加えて、こうした行動によって個人生活、家庭生活、社会生活、学業、仕事などに重大な支障が生じていることが診断上重要になる。
症状は通常12か月以上続いていることが基準となる。ただし、症状が重度で診断要件を満たす場合には、期間が短縮されることもある。
ゲームのプレイ時間だけで依存症と判断できる?答えはNOだ。
1日3時間ゲームをしていても、仕事や学校、睡眠、人間関係を問題なく維持し、自分の意思で終了できる人もいる。
反対に、プレイ時間がそれほど長くなくても、ゲームを優先することで生活に重大な支障が出ている人もいる。
厚生労働省も、ゲーム障害の特徴として、時間の長さだけではなく、コントロールの障害や生活上の悪影響を重視している。
つまり、見るべきなのは「何時間遊んだか」だけではなく、「ゲームによって何が失われているか」なのだ。
ゲームとの付き合い方に不安がある場合の相談先ゲームを自分でやめられない、生活が崩れている、家族との関係が悪化しているといった場合には、早めに相談することが大切だ。
厚生労働省が案内している主な相談先は以下のとおり。
- 精神保健福祉センター
- 保健所
- 依存症相談拠点
- ゲーム障害に対応する医療機関
精神保健福祉センターでは、本人だけでなく家族からの相談にも対応している。ゲームを完全に禁止することだけが解決策ではなく、生活リズムや心理状態を整えながら適切な支援につなげることが大切だ。
【プロの結論】ゲームをストレス解消に活用するための判断基準

ここまでの研究を踏まえると、ゲームとストレスの関係は「遊ぶか、遊ばないか」という二択では整理できない。
重要なのは、ゲームを自分の生活を豊かにするための娯楽として利用できているかどうかだ。
ストレス解消に成功しているかを判断する5つの基準次の項目を、日常的に振り返ってみたい。
- ゲームを終えた後に、気持ちが落ち着いている。
- 自分で決めた時間にゲームを終了できる。
- 睡眠時間や仕事、学業に悪影響が出ていない。
- ゲーム以外にも楽しめる趣味や交流がある。
- 負けたり失敗したりしても、長時間イライラを引きずらない。
この5つをおおむね維持できているなら、ゲームは生活の中で健全な気分転換として機能している可能性が高い。
反対に、ゲームをやめると強い不安を感じる、日常生活の優先順位が崩れる、睡眠や人間関係に悪影響が出る場合は、利用方法を見直す必要がある。
ストレス解消のために避けたい3つの習慣1. 負けた直後にプレイを延長する
負けを取り返したいという気持ちから、予定していた時間を超えて遊び続けると、気分転換ではなくストレスの蓄積につながりやすい。
2. 嫌なことがあるたびにゲームだけに頼る
ゲームは気分転換の選択肢の一つとして活用したい。散歩、入浴、睡眠、友人との会話など、複数のストレス対処法を持っておくことが望ましい。
3. 睡眠を削ってまで遊ぶ
一時的に楽しくても、翌日の疲労や集中力の低下につながれば、結果的にストレスが増えてしまう。
ゲームを楽しむ時間と、身体を休める時間を分けて考えることが大切だ。
【ゲームストレス解消】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ゲームは本当にストレス解消に効果がありますか?
A1:効果が期待できる。2024年の『Nature Human Behaviour』掲載研究では、日本国内97,602人分のデータを活用し、ゲーム機の所有やプレイによる心理的苦痛の軽減、生活満足度の向上が報告された。ただし、効果には個人差があり、ゲームの種類や利用状況によっても異なる。
Q2:ストレス解消にはどんなゲームがおすすめですか?
A2:気軽に遊べるパズル、スローライフ系、シミュレーションゲームがおすすめの選択肢となる。身体を動かしたい場合はリズムゲームや運動型ゲーム、交流を楽しみたい場合は協力型ゲームもよい。ただし、自分が楽しいと感じられることが最も重要だ。
Q3:ゲームは1日何時間までなら安全ですか?
A3:すべての人に共通する医学的な安全上限は定められていない。2024年の研究では1日3時間を超えると心理的メリットが小さくなる傾向が示された。まずは20~60分程度で一区切りにし、睡眠や仕事、学業に影響しない範囲で調整するとよい。
Q4:ゲームを長時間プレイすると必ず依存症になりますか?
A4:必ずしもそうではない。WHOのICD-11では、ゲーム行動のコントロール障害、ゲームの優先順位の上昇、悪影響があっても継続すること、そして生活機能への重大な支障などを重視している。時間だけで自己判断することはできない。
Q5:思春期の子どもがオンラインゲームに夢中になるのは危険ですか?
A5:夢中になっているだけで直ちに問題とは限らない。ただし、ゲームを中断すると強く怒る、学業や人間関係に悪影響が出る、プレイ時間を自分で管理できないといった状態には注意が必要だ。2025年のNCNPなどの研究でも、思春期の不適切利用と、その後のメンタルヘルス不調との関連が示されている。
Q6:ゲームでストレスが悪化することはありますか?
A6:ある。対人戦での連敗、オンライン上のトラブル、課金への不安、ゲーム内の人間関係などが新たなストレスになる場合がある。遊んだ後に気分が悪くなるゲームは、休憩したり別のジャンルに変更したりすることも検討したい。
ゲームストレス解消に関する研究は、ゲームが単なる娯楽にとどまらず、心理的苦痛を軽減し、生活満足度を高める可能性を持つことを示している。
特に注目すべきなのは、次の3つの研究成果だ。
- 2024年: 国内97,602人の調査データを活用した研究で、ゲーム機の所有やプレイによる心理的メリットが確認された。
- 2025年: NCNPなどの研究グループが、思春期のオンラインゲームの不適切利用と抑うつ、不安、幸福度低下などの関連を報告した。
- 2026年: コロナ禍後の71,435人を対象とするプレプリント研究でも、ゲームによる心理的健康へのプラス効果が報告された。
これらの研究から見えてくるのは、ゲームそのものを悪者にする必要はない一方、どのように遊ぶかが重要だということだ。
ストレスを感じたときは、自分に合ったジャンルを選び、短時間から楽しんでみる。ゲームを終えた後に気持ちが軽くなり、翌日の生活にも余裕が生まれているなら、それは健全な娯楽の活用といえる。
ゲームは現実から逃げ続けるための場所ではなく、現実に戻るための気持ちを整える時間として活用する。
この意識こそが、2026年の研究知見から考える、ゲームと上手に付き合うための最も実践的な判断基準だ。