「キラキラネームは本当に実在するの?」「漫画やアニメのキャラクターのような名前を持つ人は、実際に日本にいる?」と気になっている人は少なくありません。愛や夢といった漢字に独特の読み方を組み合わせた名前や、外国語の発音を取り入れた名前など、一般的な読み方から離れた個性的な名前は、実際の人名研究や報道でも取り上げられてきました。
加えて、2025年5月26日には改正戸籍法が施行され、戸籍に氏名のフリガナを記載する制度が始まりました。2026年11月現在、この制度はすでに運用段階に入っており、新しく生まれた子どもの名前には読み方に関する一定のルールが適用されています。かつて話題になった名前が今後も自由に名付けられるとは限りません。法務省の公表資料や実際の人名データをもとに、実在する名前の例、読み方の特徴、名付けの基準、制度変更の影響を整理します。
【結論】キラキラネームは実在する?言葉の意味と現在の実態

結論からいえば、キラキラネームに該当すると考えられる名前は実在します。実際に日本漢字能力検定の受検者データを分析した研究・出版物には、一般的な読み方とは異なる人名が多数掲載されています。
ただし、キラキラネームという言葉には、法律上の明確な定義がありません。珍しい名前、伝統的な読み方から外れた名前、漢字から読み方を推測しにくい名前など、話す人によって意味が変わります。
キラキラネームに統一された定義はない2022年に発表された荻原祐二氏の学術論文「キラキラネームの定義とその構成要素」では、辞典や事典に掲載された定義を比較しています。
その分析によると、各定義に共通していたのは「頻度が低い名前」という特徴でした。一方、伝統から外れていることや、漢字を使った場合に読み方が難しいことなどは、すべての定義に共通するわけではありません。
つまり、珍しい名前だからといって、必ずしもキラキラネームと決めつけられるわけではないのです。珍しさと読みにくさ、社会的な印象は、それぞれ分けて考える必要があります。
また、キラキラネームという呼称には、個性的で印象に残る名前という肯定的な意味と、奇抜で読みにくい名前という否定的な意味の両方があります。名前を持つ本人の人格や能力を評価する言葉として使用するのは適切ではありません。
こうした定義の曖昧さは、荻原氏の研究でも指摘されています。キラキラネームかどうかは、単に漢字が珍しいかではなく、読み方や命名文化、社会的な受け止め方を含めて考えるテーマです。
【実例一覧】本当にいるキラキラネームと珍しい読み方を紹介
実在する名前を調べるうえで参考になるのが、早稲田大学の笹原宏之教授が2026年に刊行した『実例で読み解く日本の名前と漢字―「キラキラネーム」にもわけがある』です。
この書籍は、日本漢字能力検定の受検者データを活用しています。2013年から2023年までの受検者について、延べ約1,900万人分のデータから重複やエラーを除き、約849万人分の名前を分析したものです。
平均年齢は約23歳であり、全国民を対象にした国勢調査ではありませんが、実際に使用されている名前の漢字と読み方を調べる資料として貴重です。
実際の人名データに登場する珍しい名前同書の紹介資料には、次のような名前と読み方が掲載されています。
| 漢字表記 | 読み方 | データ上の人数 | 読み方の特徴 |
|---|---|---|---|
| 心菜 | ここな | 2,539人 | 心の部分訓を使用 |
| 心愛 | ここあ | 2,450人 | 部分訓を組み合わせた読み方 |
| 心 | ここ | 278人 | 漢字の訓読みの一部を使用 |
| 海 | まりん | 172人 | 外国語の意味・発音との関連 |
| 碧海 | まりん | 78人 | 外来語を取り入れた読み方 |
| 海鈴 | まりん | 30人 | 独自の漢字の組み合わせ |
| 真海 | まりん | 21人 | 意味を重ねた読み方 |
| 美海 | まりん | 16人 | 意味と音を組み合わせた読み方 |
※人数は同書の紹介資料に掲載された漢検受検者データの集計値であり、日本全国の人口における人数や割合を示すものではありません。
この一覧から分かるのは、珍しい名前のすべてが極端な当て字で構成されているわけではないという点です。
例えば「心菜(ここな)」や「心愛(ここあ)」では、「心」を「ここ」と読ませています。これは「心地(ここち)」という言葉にも見られる読み方との関連があります。
一方、「海(まりん)」は英語のMarineを連想させる読み方です。漢字の意味と外国語のイメージを結び付けた命名の一例といえます。
「ヒラリ」「フワリ」などの珍しい名前も存在同書では、副詞を使った名前の例も紹介されています。例えば「キラリ」「ヒラリ」「フワリ」などです。
「ヒラリ」と読む名前には、天舞(ひらり)、拓里(ひらり)、啓里(ひらり)、英里(ひらり)、舞(ひらり)、蝶(ひらり)などが挙げられています。
こうした名前は、漢字の一般的な音読み・訓読みだけでは読み方を推測しにくいものです。しかし、名前に込められた音の響きやイメージを重視した命名の実例として確認できます。
ここで注意したいのは、実際に使われている名前であることと、2025年以降に新生児の名前として届け出られることは別問題だという点です。既存の名前の実例が、そのまま新しい出生届で認められる保証にはなりません。
出典:笹原宏之著『実例で読み解く日本の名前と漢字―「キラキラネーム」にもわけがある』、大修館書店・漢字文化資料館の紹介資料。国立国会図書館にも2026年刊行資料として書誌情報が登録されています。
【実在の人物】話題になったキラキラネームと改名の実例
実際の人物に関する有名な事例として知られているのが、「王子様」という名前から改名した赤池肇さんのケースです。
「王子様」から「肇」へ改名した赤池さん2019年、山梨県在住の高校3年生だった赤池さんは、当時の本名「王子様」から「肇(はじめ)」への改名を甲府家庭裁判所に申し立て、許可を得ました。
この出来事は共同通信や各報道機関によって伝えられ、珍しい名前と本人の意思、改名制度について広く知られるきっかけになりました。
2022年には読売新聞社会部の取材をもとにした記事や文春オンラインのインタビューでも、その後の経験が紹介されています。
報道によると、元の名前は母親が息子を唯一無二の存在と考え、「王子様」のような存在になってほしいという思いを込めたものでした。しかし、本人にとっては初対面の相手に名前を説明したり、驚かれたりすることが負担になる場面があったとされています。
この事例で注目したいのは、漢字の読み方が極端に難しかったわけではないことです。「王子様」は通常「おうじさま」と読めます。問題になったのは、名前そのものが持つ意味や、日常生活での受け止められ方でした。
つまり、キラキラネームには、漢字と読み方の関係が特殊なものだけでなく、一般的な読み方でも人名として非常に珍しい言葉を使ったケースがあるのです。
ネット上の珍名ランキングには注意が必要インターネットでは「光宙」「黄熊」「泡姫」など、アニメやキャラクター、外国語を連想させる名前が、キラキラネームの代表例として紹介されることがあります。
しかし、こうした名前は、ネット上のランキングやまとめ記事に掲載されているという理由だけでは、実在する人物の名前だと断定できません。
本当にいる名前を調べるなら、本人への取材、公的な記録、実際の人名データを使った研究など、根拠の性質を確認することが大切です。
特に、ネット上で何度も転載されている名前は、最初の情報源が分からなくなっている場合があります。話題性の高さと実在性は、必ずしも一致しません。
また、実在する名前であっても、その本人が公表していない個人情報まで探し出したり、面白半分に名前を評価したりすることは避けるべきです。
【2026年最新】2025年5月26日の戸籍法改正で何が変わった?
キラキラネームをめぐる大きな転換点となったのが、2025年5月26日に施行された改正戸籍法です。
これまで戸籍には氏名のフリガナが記載されていませんでした。出生届などに記載された読み方を自治体が行政事務上の情報として利用していましたが、戸籍そのものに読み方を公証する仕組みはありませんでした。
今回の改正では、戸籍の記載事項に氏名のフリガナが追加されました。行政サービスのデジタル化や本人確認の円滑化などが制度導入の背景にあります。
2025年から2026年にかけての制度変更| 時期・対象 | 制度上の変更 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 2025年5月26日 | 改正戸籍法が施行 | 戸籍への氏名フリガナ記載が開始 |
| 2025年5月26日以降に出生した子ども | 出生届とともにフリガナを届け出る | 一般に認められる読み方であることが必要 |
| 2025年5月26日~2026年5月25日 | 既存の戸籍に記載する予定の読み方を通知し、必要に応じて届出を受け付ける | 通知された読み方の誤りや、従来使用していた読み方を確認 |
| 2026年5月25日 | 既存の氏名フリガナの届出期間が終了 | 通常の一斉届出期間は終了済み |
| 2026年5月26日以降 | 届出がなかった場合、通知されたフリガナを自治体が戸籍に記載 | 自治体による記載後の訂正・変更手続きに注意 |
法務省の制度案内によると、既存の戸籍に登録されている人には、本籍地の市区町村から戸籍に記載する予定のフリガナが通知されました。
通知された読み方が正しければ、原則として本人からの届出は必要ありません。一方、誤っている場合には、2026年5月25日までに正しい読み方を届け出る仕組みでした。
2026年11月現在、この既存の戸籍に関する通常の届出期間は終了しています。2026年5月26日以降は、届出がなかった人について、通知されたフリガナが自治体によって戸籍に順次記載される段階です。
なお、届出をしなかったこと自体に罰金や罰則はありません。通知と異なる読み方が記載された場合などには、一定の条件のもとで変更手続きが可能です。
出典:法務省「戸籍にフリガナが記載されます」「フリガナが記載されるまで」、政府広報オンライン「戸籍にフリガナが記載。2025年5月26日以降に自治体から通知が届いたら必ず確認を!」。
【判断基準】戸籍フリガナ制度で認められる読み方・認められない読み方
今回の法改正で特に注目されているのが、出生届に記載する子どもの名前の読み方です。
戸籍法では、氏名のフリガナについて、「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているもの」でなければならないという規律が設けられました。
ただし、これは珍しい名前や当て字を一律に禁止する制度ではありません。漢和辞典に載っている読み方だけに限定するものでもありません。
認められる読み方の基本的な考え方法務省や国会での政府答弁では、読み方が社会において受容され、慣用されているかという観点から判断すると説明されています。
一般的な辞書に掲載されている読み方は幅広く認められると考えられます。また、辞書に載っていない読み方でも、文字の音訓や意味との関連性、社会での使用状況などを踏まえて個別に判断されます。
名のり訓など、日本の伝統的な命名文化も尊重する方針です。
一般に認められる読み方の例として、自治体の案内では次のようなパターンが紹介されています。
- 部分音訓:心愛(ココア)、桜良(サラ)など、漢字の音読み・訓読みの一部を使うもの。
- 熟字訓:飛鳥(アスカ)、弥生(ヤヨイ)、五月(サツキ)など、漢字のまとまりで読むもの。
- 置き字:美空(ソラ)、彩夢(ユメ)など、直接発音しない漢字を含むもの。
これらは、漢字を一字ずつ機械的に読まなくても、名前としての読み方に一定の関連性があることを示しています。
認められない可能性が高い読み方法務省のFAQでは、認められないと考えられる読み方について、具体的な例を挙げています。
- 漢字と読み方の関連性がない:「太郎」を「ジョージ」「マイケル」と読む。
- 漢字に別の単語を付け加える:「健」を「ケンイチロウ」「ケンサマ」と読む。
- 漢字の意味と反対になる:「高」を「ヒクシ」と読む。
- 別人の名前と混同される:「太郎」を「ジロウ」と読む。
こうした読み方は、名前の文字と読み方の関係が認められない、または社会生活に混乱を招く可能性があるため、原則として認められないと考えられています。
ただし、実際の審査では個々の事情が考慮されます。単に珍しい、聞いたことがないという理由だけで不受理になるわけではありません。
以前から使われているキラキラネームは変更が必要?既存の名前については、新しく生まれる子どもと同じ扱いにはなりません。
法務省の制度案内では、一般的な読み方以外の読み方をすでに使用している人について、その読み方が実際に通用していることを証明できれば、従来の読み方を尊重する仕組みが設けられています。
証明資料として想定されているのは、パスポートや預貯金通帳などです。健康保険証や資格確認書なども、使用状況を示す資料として挙げられています。
したがって、2025年以前から珍しい読み方を使用している人が、法改正を理由に一律に改名しなければならないわけではありません。
一方、2025年5月26日以降に出生届で初めて戸籍に記載される子どもには、新しい読み方の基準が適用されます。ここが制度を理解するうえで最も大切な違いです。
出典:法務省「よくあるご質問」、戸籍法第13条、衆議院の国会会議録、政府広報オンライン。
【名付けの基準】キラキラネームを考えるときに確認したい5つのポイント
個性的な名前を考えること自体に問題はありません。大切なのは、名前を付ける側の思いと、実際にその名前を使い続ける子どもの生活を両方考えることです。
2026年の制度を踏まえ、名付けの際には次の5点を確認しておくと安心です。
1.漢字と読み方に関連性があるか最初に確認したいのは、漢字の意味や音訓と読み方が結び付いているかどうかです。
部分訓や名のり訓など、一般的な音訓とは異なる読み方でも、文字との関連性が認められる場合があります。反対に、親が好きな外国語の単語を、意味や音のつながりがない漢字にそのまま当てはめるような名付けは慎重に考える必要があります。
2.初対面の人にも読み方を説明できるか名前は、学校、病院、就職、各種契約など、さまざまな場面で使われます。
読み方が難しい場合、本人が何度も説明することになる可能性があります。名前の由来や読み方を短く説明できるか、本人が将来も自然に名乗れるかを考えてみましょう。
3.子どもが大人になったときにも違和感がないか赤ちゃんの時期に似合う名前でも、成人後や高齢になってから同じように受け入れられるとは限りません。
幼少期のかわいらしさだけではなく、学生、社会人、親、年齢を重ねた大人という複数のライフステージを想像することが大切です。
4.名前の由来を本人が前向きに受け止められるか名前には、親の願いや家族の思い、文化的な背景などが込められています。しかし、命名の由来がどれほど愛情に満ちていても、本人がその名前をどう受け止めるかは別の問題です。
親の理想や憧れをそのまま名前にするだけでなく、子ども自身が自分の名前を好きになれるかという視点も欠かせません。
5.出生届の読み方として認められるか確認する2025年5月26日以降の出生届では、フリガナの基準を満たす必要があります。
一般的な読み方と異なる名前を考えている場合には、自治体の戸籍担当窓口に事前相談するのも方法の一つです。判断が難しい読み方については、命名の由来や参考資料などを求められる場合があります。
珍しさを優先して決めるのではなく、漢字の意味、音、読みやすさ、本人の将来を総合的に考えることが、納得できる名付けにつながります。
キラキラネーム実在に関するよくある質問(FAQ)
Q1:キラキラネームは本当に実在するのですか?
A1:はい。笹原宏之教授が2026年に刊行した人名研究では、漢検受検者約849万人分のデータから、心菜(ここな)、心愛(ここあ)、海(まりん)など、実際に使用されている珍しい読み方が紹介されています。ただし、ネット上のランキングに掲載された名前すべてが実在するとは限りません。
Q2:2025年の戸籍法改正でキラキラネームは禁止されたのですか?
A2:一律禁止ではありません。2025年5月26日以降に出生届で初めて戸籍に記載される子どもについて、漢字との関連性や社会的な慣用などを踏まえ、一般に認められる読み方であることが必要になりました。珍しい読み方や当て字がすべて禁止されたわけではありません。
Q3:すでにキラキラネームを持っている人も読み方を変更する必要がありますか?
A3:一律に変更する必要はありません。以前から使用している一般的でない読み方については、パスポートや預貯金通帳などで実際の使用状況を証明する仕組みが設けられています。既存の戸籍の通常の届出期間は2026年5月25日に終了していますが、自治体が通知どおりにフリガナを記載した場合には、1回に限り家庭裁判所の許可なしで変更できる制度があります。
キラキラネームは、単なるネット上の都市伝説ではありません。実際の人名データには、心菜(ここな)、心愛(ここあ)、海(まりん)など、一般的な読み方とは異なる名前が多数確認されています。
また、「王子様」から「肇」へ改名した赤池さんの事例は、名前の由来に込められた親の思いと、名前を使って人生を歩む本人の気持ちが必ずしも一致しないことを示しています。
そして2025年5月26日の改正戸籍法施行によって、名前の読み方は戸籍に記載される公的な情報となりました。2026年11月現在、新生児の名付けでは「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているもの」という基準が適用されています。
ただし、制度の目的は個性的な名前をすべて排除することではありません。日本の多様な命名文化を尊重しながら、社会生活での混乱を防ぐことにあります。
本当に大切なのは、名前の珍しさではなく、漢字と読み方の関係、込められた由来、そして本人が生涯にわたって安心して使えるかどうかです。これから名付けを考える人も、珍しい名前を調べている人も、実際の人名データと公的な制度の両方を理解することが、正しい判断につながります。
主な参考資料:法務省「戸籍にフリガナが記載されます」「よくあるご質問」、政府広報オンライン「戸籍にフリガナが記載」、笹原宏之著『実例で読み解く日本の名前と漢字―「キラキラネーム」にもわけがある』、荻原祐二「キラキラネームの定義とその構成要素」、読売新聞社会部の取材記事、共同通信の2019年報道。