「みかじめ料」とは、暴力団などが飲食店や風俗店をはじめとする事業者に対し、営業を続けることを認める対価や用心棒代などの名目で、不当に金品を要求する行為に関係する言葉です。毎月一定額を請求するケースのほか、おしぼり代、広告料、看板掲載料、付き合い料など、一見すると通常の商取引に見える名目で金銭を要求するケースもあります。
2026年現在も、みかじめ料をめぐる摘発は続いています。2026年10月には山口市の湯田温泉地区で、飲食店経営者から計約43万5000円を脅し取った疑いで、工藤会系組員ら3人が逮捕されました。暴力団対策法や各都道府県の暴力団排除条例によって規制されている一方、支払いを拒否した事業者への嫌がらせや報復を心配する経営者もいます。意味や相場、違法性だけでなく、実際に要求された場合の対応を知っておくことが大切です。
【基礎知識】みかじめ料とは?意味・定義と語源や由来

みかじめ料は、一般的に暴力団が自らの縄張りとする地域で営業する飲食店や風俗店などに対して、営業を容認する対価として支払わせる金品を指します。
東京弁護士会の民事介入暴力対策特別委員会も、みかじめ料について、営業を営むことを容認する対価として支払わせる金品や、守料・用心棒代のような意味を持たせて徴収する金品と説明しています。
特徴は、通常のサービスや商品の対価とは異なり、支払う側が自由な意思で契約しているとは限らない点です。暴力団の威力や報復への恐怖を背景に、営業を続けるために仕方なく支払ってしまうケースがあります。
代表的な呼び方には、次のようなものがあります。
- みかじめ料:営業を続けることを認める対価として要求される金品。
- 用心棒代:店舗や従業員を守る、客とのトラブルを解決するなどの名目で要求される金品。
- ショバ代:特定の場所で営業することに対する場所代を装った金銭。
- 挨拶料:開店や営業継続の挨拶という名目で要求される金品。
- カスリ:暴力団などが不当に徴収する金銭を指す俗称。
これらは呼び方が異なるだけで、実態として不当な金銭要求であれば、みかじめ料と同様の問題になります。
みかじめ料の語源は「三日締め」なのか?みかじめ料の語源については、確定した説明がありません。
小学館の「デジタル大辞泉」では、語源は不詳としたうえで、主に次のような説を紹介しています。
- 毎月3日に金銭を取り立てる習慣から生まれたという説。
- 要求してから3日以内に支払わなければ締め上げるという説。
- 「見ヶ〆」という表記に関連し、管理や監督を意味する言葉から生まれたという説。
特に「三日締め」という説明は知られていますが、辞書でも確定した語源とは扱われていません。「みかじめ」という言葉の歴史と、暴力団による金銭徴収の実態は区別して理解する必要があります。
【金額と要求の実態】みかじめ料の相場はいくら?なぜ請求されるのか
みかじめ料に全国共通の相場は存在しないみかじめ料には、法律で定められた金額や全国共通の料金表はありません。要求する側の組織、地域、店舗の規模、営業形態、要求の名目などによって金額は異なります。
実際の相談事例や報道を見ると、月額数万円程度の要求から、複数の名目を組み合わせた徴収まで幅があります。
例えば、警視庁が公表している相談事例では、料理店の経営者が暴力団員を名乗る男から、付き合い料として毎月5万円を要求されたケースが紹介されています。
また、2026年10月に報道された山口市の事件では、店舗営業料と看板掲載料という名目で、それぞれ月3万円ずつ支払わせていた疑いが持たれました。13回にわたり、計約43万5000円を脅し取ったとして、工藤会系組員ら3人が逮捕されています。
これらは個別の相談・事件で確認された金額であり、飲食店が支払うべき相場を示すものではありません。金額が少額だから合法になるわけでもなく、高額だから初めて違法になるわけでもありません。
なぜ飲食店や店舗経営者が要求されるのかみかじめ料が要求される背景には、暴力団などが地域における威力や影響力を利用して、継続的な資金源を確保しようとする構造があります。
繁華街の飲食店や風俗店は、営業時間が長く、客同士のトラブルや従業員との問題などが発生することもあります。こうした事情につけ込み、営業上の不安を解消するという名目で接近するのが典型的な手口です。
要求する側が提示する理由には、次のようなものがあります。
- 地域で営業するための挨拶や付き合いが必要だと説明する。
- 客とのトラブルや店舗周辺の問題を解決すると持ちかける。
- 店の安全を守るための用心棒代だと主張する。
- 看板掲載料や広告料など、通常の営業経費に見える名目を使う。
- 開店直後の経営者や地域の事情に詳しくない事業者を狙う。
警察庁の過去の組織犯罪情勢の解説でも、戦後、暴力団が縄張り内で飲食業や風俗営業などを営む事業者に対し、営業を容認する対価として金銭を定期的に要求するようになった経緯が説明されています。
重要なのは、みかじめ料が必ずしも大きな金額である必要はないという点です。少額でも定期的に徴収すれば、長期的には暴力団などの資金源になります。また、一度支払うことで要求が継続するおそれもあります。
通常の取引とみかじめ料を見分けるポイント広告掲載やおしぼりの納品、清掃、警備など、店舗が外部業者に料金を支払うこと自体は通常の商取引です。
問題になるのは、実際のサービス内容や契約条件に見合わない金銭を要求されたり、営業を妨害しないことや暴力団の威力を利用させることの対価として金銭を要求されたりする場合です。
契約書や請求書が存在するからといって、必ずしも適法な取引とは限りません。実際のサービスの有無、金額の妥当性、要求の経緯、相手方の説明などを総合的に確認する必要があります。
【法律でどう規制される?】暴力団対策法・暴力団排除条例と罰則
暴力団対策法第9条でみかじめ料の要求は禁止されているみかじめ料の要求を規制する重要な法律が、1991年に制定された「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」、通称暴力団対策法(暴対法)です。
同法第9条では、指定暴力団等の構成員が所属する組織の威力を示して行う不当な要求行為を禁止しています。その27類型の一つに、みかじめ料要求行為が含まれています。
つまり、指定暴力団員が縄張り内で営業する事業者に対し、組織の威力を背景に、挨拶料やみかじめ料などの名目で金品を要求する行為は、暴対法による規制の対象です。
違反行為が確認され、営業の平穏などが害されている場合、公安委員会は中止命令や再発防止命令を出すことができます。
加えて、暴対法第11条に基づく中止命令に違反した場合などには、同法第46条により、3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、またはその併科の対象となる場合があります。
ただし、要求があった時点ですべてのケースに直ちにこの刑罰が科されるという意味ではありません。禁止行為の成立、行政上の命令、命令違反など、それぞれの法的要件を区別する必要があります。
暴力団排除条例は支払う側にも規制を設けているもう一つ重要なのが、各都道府県が制定している暴力団排除条例です。
暴対法が主に暴力団員による不当要求を規制するのに対し、暴力団排除条例は、事業者による暴力団への利益供与を防ぎ、社会全体で暴力団との関係を断つことを目的としています。
東京都暴力団排除条例では、事業者が暴力団の威力を利用する目的で利益を提供する行為や、暴力団の活動を助長することを知りながら利益を提供する行為などが禁止されています。
加えて、暴力団排除特別強化地域では、対象となる特定営業者が暴力団員に用心棒料やみかじめ料を渡す行為と、暴力団員がそれを受け取る行為の双方が禁止されています。
神奈川県でも、暴力団排除特別強化地域における特定営業者の支払いや暴力団員による受領を禁止しています。条例違反には、対象行為に応じて1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金などの罰則が設けられています。違反した事業者が自首した場合には、刑を減軽または免除できる規定もあります。
法律・行政機関・事業者の関係を整理| 主体・制度 | 主な役割・規制内容 | みかじめ料との関係 |
|---|---|---|
| 暴力団対策法 | 指定暴力団員による27類型の不当要求を規制 | 第9条でみかじめ料要求行為を禁止 |
| 公安委員会・警察 | 違反行為の調査や中止命令、再発防止措置 | 不当要求を止め、事業者の安全を守る |
| 暴力団排除条例 | 暴力団への利益供与や特定地域での取引を規制 | 地域・業種によって支払う側も処罰対象 |
| 飲食店・店舗経営者 | 暴力団との関係を遮断し、不当要求に応じない | 要求を受けた場合は警察などに相談する |
| 暴力追放運動推進センター | 暴力団排除の相談、助言、被害者支援 | 関係遮断や不当要求への対応を支援する |
ここで注意したいのは、みかじめ料を支払った事業者が全国どこでも一律に犯罪になるわけではないことです。
支払い側の責任は、都道府県の条例、特別強化地域の指定、営業形態、相手が暴力団員であることの認識、利益供与の目的などによって異なります。
一方、条例によっては、支払いを続けていた事業者も刑事責任を問われる可能性があります。「脅されていたから支払った」という事情があっても、必ず処罰を免れるとは限りません。被害の経緯を含めて警察や弁護士に相談することが大切です。
【要求されたらどうする?】みかじめ料の支払い拒否と正しい断り方
まずは一人で対応せず、組織的に対応するみかじめ料を要求されたときに、最も避けたいのは経営者や従業員が一人で相手と交渉することです。
相手が暴力団員を名乗っていたり、威圧的な態度を取っていたりする場合は、要求に応じるかどうかをその場で判断する必要はありません。無理に説得したり、相手の素性を問い詰めたりすることも避けてください。
神奈川県警察が公開している不当要求への対応要領では、次のような対応が示されています。
- 来訪者の氏名や所属、用件を確認する。
- 複数人で応対し、一人だけで対応しない。
- 応対場所や時間を適切に管理する。
- その場で即答したり、安易な約束をしたりしない。
- 念書や契約書などへの署名・押印をしない。
- 電話や面談の内容をメモや録音で記録する。
- 状況に応じて速やかに警察へ通報する。
すでに脅迫や暴行が発生している場合は、対応要領にこだわらず、まず安全な場所に避難して110番してください。
みかじめ料の断り方は簡潔に、曖昧な返答を避ける身の安全が確保され、警察などに相談したうえで対応できる状況であれば、不当な要求には応じない方針を明確にすることが基本です。
例えば、次のような表現が考えられます。
「当店として、そのような金銭の支払いには応じられません。今後の対応については、警察や弁護士に相談します。」
ただし、これは安全が確保された状況での対応例です。相手が激高している、暴力を振るうおそれがある、店舗から立ち去らないなどの場合は、直接断ることを優先せず警察に連絡してください。
警視庁が紹介している相談事例では、料理店経営者が毎月5万円を要求されたケースで、警察署長が暴力団員にみかじめ料の要求を禁止する中止命令を出した結果、要求や嫌がらせがなくなったとされています。
この事例からも、経営者だけで問題を抱え込むのではなく、警察の介入を早期に求めることが重要だと分かります。
支払ってしまった場合も、すぐに相談するすでに金銭を支払ってしまった場合でも、相談を諦める必要はありません。
次のような情報を可能な範囲で整理しておきましょう。
- 要求された日時と場所。
- 要求した人物の特徴や名乗った名前、所属。
- 請求された金額と支払いの名目。
- 現金を渡した日時や振込記録、領収書。
- 電話、メール、メッセージなどのやり取り。
- 脅迫や嫌がらせ、営業妨害などの有無。
記録を残すことは、警察による事実確認や事件捜査、弁護士による返還請求などを検討する際にも役立ちます。ただし、証拠を集めるために相手と接触したり、危険な場所へ出向いたりすることは避けてください。
警察相談窓口は#9110、緊急時は110番みかじめ料を要求された場合、相談先として利用できるのが警察相談専用電話「#9110」です。
9110は、全国共通の警察相談窓口です。電話をかけた地域を管轄する警察本部などの総合窓口につながり、緊急性のない警察への相談を受け付けています。
2026年3月に更新された政府広報オンラインの案内では、受付時間は原則として平日8時30分から17時15分までとされています。ただし、受付時間は都道府県によって異なり、夜間や休日は当直または音声案内による対応となる場合があります。
- #9110:みかじめ料の要求や嫌がらせについて、緊急性のない相談をしたい場合。
- 110番:脅迫、暴行、押しかけ、身の危険など、警察官の緊急対応が必要な場合。
- 最寄りの警察署:具体的な被害状況を説明し、継続的な対応を求めたい場合。
- 都道府県暴力追放運動推進センター:暴力団との関係遮断や不当要求への対応について専門的な助言を受けたい場合。
警察庁も、暴力団から被害を受けた場合は一人で悩最初に、警察や暴力追放運動推進センターなどへ早期に相談するよう呼びかけています。
【2026年最新】みかじめ料の実態と摘発事例から見える現状
2026年10月、山口市・湯田温泉で工藤会系組員ら3人を逮捕2026年の最新動向として注目されるのが、山口市の湯田温泉地区で発生したみかじめ料をめぐる事件です。
2026年10月21日、FNNプライムオンラインやテレビ西日本などは、特定危険指定暴力団「工藤会」の傘下組織に所属する組員ら3人が、飲食店経営者から現金を脅し取った疑いで逮捕されたと報じました。
福岡県警と山口県警の合同捜査本部によると、事件では2024年8月から2025年6月にかけて、山口市の湯田温泉で飲食店を経営する男性から、13回にわたり計約43万5000円を徴収した疑いが持たれています。
金銭の名目は店舗営業料と看板掲載料でした。それぞれ月3万円ずつ支払わせていたとされ、警察は受け取った現金が工藤会の資金になっていた可能性も含めて調べています。
逮捕された3人の認否について、警察は明らかにしていません。逮捕はあくまで容疑段階であり、有罪が確定したことを意味するものではありません。
この事件で注目したいのは、単純な用心棒代ではなく、店舗営業料や看板掲載料という名目が使われていた点です。通常の事業経費に見える名前を使っていても、実態が威圧を背景とした金銭徴収であれば、恐喝などの犯罪に該当する可能性があります。
2025年には兵庫県でも店舗側を含む摘発が発生2025年5月には、神戸市の三宮地域にある飲食店など4店舗から、みかじめ料として合計8万円を受け取った疑いで、六代目山口組傘下組織の組員が兵庫県暴力団排除条例違反の疑いで逮捕されました。
サンテレビの報道によると、この事件では、みかじめ料を支払った飲食店側の経営者ら3人も条例違反の疑いで逮捕されています。
この事例が示すのは、みかじめ料を受け取った側だけでなく、地域や営業形態などの条件によっては、支払った側も捜査や摘発の対象になるということです。
暴力団から要求されているからといって、支払いを継続することが必ずしも安全な選択になるわけではありません。支払いを続ける前に、警察や弁護士に相談することが必要です。
暴力団の減少と資金獲得手段の変化警察庁が2026年に公表した「令和7年における組織犯罪の情勢」によると、2025年末時点の暴力団構成員と準構成員等の合計は1万7600人でした。前年末から1200人減少し、21年連続で減少しています。
このうち、暴力団構成員は9400人、準構成員等は8200人です。暴力団の勢力が縮小していることは、統計上も明らかになっています。
しかし、構成員の減少が不当要求の消滅を意味するわけではありません。
警察庁の同報告書は、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウの資金獲得犯罪について、繁華街の飲食店などからのみかじめ料の徴収も例示しています。
これは、みかじめ料の徴収が従来型の暴力団による活動だけでなく、匿名性の高い犯罪グループによる資金獲得活動とも関連し得ることを示しています。ただし、同資料の記載は資金獲得犯罪の類型を説明したものであり、すべてのみかじめ料事件がトクリュウによるものという意味ではありません。
2026年の状況を考えるうえでは、暴力団の人数だけでなく、金銭要求の名目、実際に金銭を受け取る人物、背後にある組織や資金の流れまで注視する必要があります。
【みかじめ料の意味・対処法】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:みかじめ料を支払うこと自体も犯罪になりますか?
A1:地域や状況によって異なります。暴力団排除特別強化地域などでは、対象となる営業者が暴力団員にみかじめ料を支払う行為も条例で禁止され、刑事罰の対象となる場合があります。一方、全国一律にすべての支払いが同じ罪になるわけではありません。要求された経緯や地域の条例を踏まえ、警察や弁護士に相談してください。
Q2:みかじめ料の相場は月額いくらですか?
A2:全国共通の相場はありません。警視庁の相談事例では毎月5万円を要求されたケースがあり、2026年の山口市の事件では店舗営業料や看板掲載料として月3万円ずつ要求した疑いが報道されています。これらは個別の事例であり、一般的な料金水準を示すものではありません。
Q3:みかじめ料を要求されたら、すぐに断るべきですか?
A3:不当な要求に応じないことが基本ですが、相手が威圧的だったり、暴力の危険があったりする場合は、無理にその場で断る必要はありません。安全を確保し、警察や暴力追放運動推進センターに相談して、適切な方法で関係を遮断してください。緊急時は110番、緊急性のない相談は#9110を利用できます。
みかじめ料とは、暴力団などが縄張り内で営業する事業者に対し、営業を容認する対価や用心棒代などの名目で不当に要求する金品です。飲食店や風俗店だけでなく、地域で事業を営む経営者にとって無視できない問題となっています。
暴力団対策法第9条では、指定暴力団員によるみかじめ料要求行為が禁止されています。また、暴力団排除条例では、特定の地域や営業形態について、支払う側にも規制や罰則を設けています。
2026年10月の山口市の事件でも、店舗営業料や看板掲載料という名目を利用した徴収が疑われ、組織的な資金獲得活動の実態が改めて浮かび上がりました。
【プロの結論】みかじめ料への対応で最も大切なのは、少額だからと安易に支払わないこと、そして経営者一人で問題を解決しようとしないことです。一度支払いを始めると、継続的な要求や追加請求につながるおそれがあります。
要求を受けた場合は、記録を残し、警察、弁護士、暴力追放運動推進センターと連携してください。すでに支払っている場合でも、関係を断つための相談は可能です。
暴力団との関係を断つことは、店舗の安全だけでなく、従業員や家族、地域社会を守ることにもつながります。不当な要求を一人で抱え込最初に、早い段階で専門機関の支援を受けることが、被害を拡大させないための最も現実的な対応です。