大会終了が正式に明らかになったのは、2026年10月9日です。選抜女子駅伝北九州大会の実行委員会が、同年1月18日に開催した第37回大会を最後に、大会を終了したと発表しました。
今回の決定で注目したいのは、競技力の低下や出場チームの不足を理由とする終了ではないことです。実行委員会が示したのは、創設当初から掲げてきた目的に一定の成果が生まれ、大会としての役割を果たしたという判断でした。
終了理由はスポーツ環境の変化と大会の役割の達成月刊陸上競技の報道によると、大会は女子長距離選手の強化・育成と競技の普及を目的にスタートしました。
37年間にわたり、北九州市の都市イメージ向上、地元選手の育成、トップレベルのスポーツを観戦できる機会の創出などに貢献してきました。
一方、創設当時と現在では、北九州市を取り巻くスポーツ環境が変わっています。
サッカー、ラグビー、バレーボール、卓球など、陸上競技以外にもトップレベルの試合を市内で観戦できる機会が広がりました。特定の競技大会が担っていたスポーツ振興の役割が、地域全体に広がってきたことが背景にあります。
実行委員会の説明では、終了の判断に際して次の考え方が示されています。
「所期の目的について一定の成果を上げ、その役割を果たした」
これは大会の失敗を意味するものではありません。むしろ、女子長距離の普及や地域スポーツの発展という当初の目的を達成したうえで、一区切りをつける判断と受け取れます。
終了発表までの主な経緯| 時期 | 出来事 | 意味・背景 |
|---|---|---|
| 1990年3月 | 第1回大会開催 | 女子長距離の強化・普及を目指して開始 |
| 1991年 | 第2回大会 | 松野明美が優勝 |
| 2016年 | 第27回大会中止 | 積雪による中止 |
| 2021年 | 第32回大会中止 | 新型コロナウイルス感染拡大 |
| 2025年1月 | 第36回大会 | 京セラ、神村学園が優勝 |
| 2026年1月18日 | 第37回大会 | デンソー、大阪薫英女学院が優勝 |
| 2026年10月9日 | 大会終了を発表 | 第37回大会をもって終了 |
| 2027年2月予定 | 北九州マラソン2027 | 大会の歴史を振り返る企画を検討 |
なお、終了理由について、運営費の不足やスポンサー離れが直接の原因だったとする公式説明は確認できません。最終大会には一般8チーム、高校19チームの計27チームが参加しており、競技としての見どころも十分にありました。
したがって、経営難や人気低迷だけで説明するのは適切ではありません。大会を取り巻く環境と、地域スポーツ振興における役割の変化を踏まえた決定として理解する必要があります。
【第37回大会の結果】デンソーと大阪薫英女学院が最後の王者に

最後の第37回選抜女子駅伝北九州大会は、2026年1月18日午前10時10分にスタートしました。
一般の部には8チーム、高校の部には19チームが出場。合計27チームが、同じ27.2kmのコースで競いました。
最終大会を飾ったのは、一般の部のデンソーと高校の部の大阪薫英女学院です。
一般の部:デンソーが4年ぶり3回目の優勝
優勝:デンソー(三重)
1時間28分41秒
4大会ぶり3回目の優勝
1区で7位と出遅れながら、後半の追い上げで逆転。最終区間の中沢咲絵子が勝負を決めた。
一般の部の最終順位は次のとおりです。
| 順位 | チーム | 記録 |
|---|---|---|
| 1位 | デンソー(三重) | 1:28:41 |
| 2位 | 京セラ(鹿児島) | 1:28:47 |
| 3位 | 岩谷産業(大阪) | 1:28:58 |
| 4位 | 肥後銀行 | 1:29:41 |
| 5位 | クラフティア | 1:31:15 |
| 6位 | TOTO | 1:32:00 |
| 7位 | キヤノン | 1:32:32 |
| 8位 | 北九州市一般選抜 | 1:35:34 |
レースの最大の見せ場は、デンソーの最終5区でした。
1区終了時点で7位だったデンソーは、2区のジェシンタ・ニョカビ、4区の堀綾花らの走りで順位を上げます。そして最終5区を任された中沢咲絵子が、4位でタスキを受け取りました。
トップとの差は15秒。ここから中沢は岩谷産業、肥後銀行を追い抜き、残り約1kmでは連覇を狙う京セラもかわしました。
最終区間の記録は34分13秒。区間賞を獲得し、デンソーを頂点に押し上げました。
一般の部の区間賞は以下のとおりです。
| 区間 | 距離 | 選手 | 所属 |
|---|---|---|---|
| 1区 | 5.3km | 尾方唯莉 | 京セラ |
| 2区 | 3.8km | ジェシンタ・ニョカビ | デンソー |
| 3区 | 3.9km | 西尾咲良 | 岩谷産業 |
| 4区 | 3.8km | 堀綾花 | デンソー |
| 5区 | 10.4km | 中沢咲絵子 | デンソー |
特に3区の西尾咲良は12分36秒の区間新記録を樹立。最終大会にふさわしい好記録が生まれました。
高校の部:大阪薫英女学院が大会新記録で優勝
優勝:大阪薫英女学院(大阪)
1時間27分13秒
大会新・8年ぶり4回目の優勝
3選手が区間1位を記録。実業団を含む全チームの中でも最速タイムを記録した。
高校の部では、大阪薫英女学院が圧巻の走りを披露しました。
最終記録は1時間27分13秒。従来の大会記録1時間27分54秒を41秒更新する新記録でした。
2018年以来、8年ぶり4回目の優勝です。
| 順位 | 高校 | 記録 |
|---|---|---|
| 1位 | 大阪薫英女学院 | 1:27:13 |
| 2位 | 須磨学園 | 1:29:42 |
| 3位 | 立命館宇治 | 1:29:50 |
| 4位 | 西京 | 1:30:27 |
| 5位 | 筑紫女学園 | 1:30:29 |
| 6位 | 北九州市立 | 1:30:38 |
| 7位 | 神村学園 | 1:30:46 |
大阪薫英女学院の勝因は、区間ごとの安定した走りと終盤の強さです。
1区の福本真生が2位でタスキをつなぎ、2区の田谷玲、3区の薮谷柚芽へと流れをつなぎました。3区でトップに立つと、その後も首位を維持。アンカーの黒葛原唯夏が14分22秒の区間新記録でフィニッシュしました。
3選手が区間賞を獲得したことも、優勝を支えた大きな要素です。
須磨学園は1区でトップに立つなど序盤に存在感を見せ、立命館宇治も3位に入りました。特に立命館宇治は4区で芦田和佳が11分29秒の区間新を記録しています。
一方、前年の優勝校だった神村学園は7位。2025年の高校の部を制した同校が連覇を逃す結果となりました。
【27.2kmのコースを解説】一般5区間・高校6区間の違いとは?
選抜女子駅伝北九州大会の大きな特徴は、一般と高校が同じコースを走ることです。
通常、実業団と高校では選手の競技経験や体力、走力に違いがあります。それでも同じ総距離で競う仕組みが、この大会ならではの面白さを生み出していました。
2026年の最終大会も、両部門ともに27.2kmでした。
コースのスタートとゴールスタート・フィニッシュ地点は、北九州市小倉北区の小倉城歴史の道です。
北九州市役所西側を出発し、戸畑区を経由して八幡東区前田方面へ向かい、前田二丁目西交差点付近で折り返します。その後、再び小倉城方面へ戻るルートです。
北九州市の中心部を走るため、沿道から選手を応援できることも魅力でした。
一般の部と高校の部の区間距離| 区間 | 距離 | 主なルート |
|---|---|---|
| 1区 | 5.3km | 小倉城歴史の道〜第一警備スポーツセンター戸畑前 |
| 2区 | 3.8km | 戸畑前〜ジ・アウトレット北九州前 |
| 3区 | 3.9km | ジ・アウトレット北九州前〜八幡駅入口方面 |
| 4区 | 3.8km | 八幡駅入口方面〜九州国際大学付属高校前 |
| 一般5区 | 10.4km | 九州国際大学付属高校前〜小倉城歴史の道 |
| 高校5区 | 5.9km | 九州国際大学付属高校前〜下到津四丁目方面 |
| 高校6区 | 4.5km | 下到津四丁目方面〜小倉城歴史の道 |
一般の部は5区間、高校の部は6区間という違いがあります。
その理由は、一般の最終区間10.4kmを高校では5.9kmと4.5kmに分割しているためです。
つまり、両部門の総距離は同じでも、タスキをつなぐ回数が異なります。
この設計によって、高校生も実業団選手と同じ総距離を走りながら、各選手の特性や成長段階に応じた区間配置で競うことができました。
コースの見どころは最終区間の長さ一般の部の5区10.4kmは、レースの勝敗を左右する重要な区間でした。
2026年大会でも、デンソーの中沢咲絵子がこの最長区間で区間賞を獲得し、逆転優勝を実現しています。
高校の部では5区と6区に分けることで、複数の選手が最後の競り合いに関わります。
この違いは、単純なタイム比較だけでは分からない駅伝の戦略性を生み出していました。
【歴代優勝チーム・歴代優勝校】37回の大会を彩った名選手たち
選抜女子駅伝北九州大会は、1990年3月21日に第1回大会が開催されました。
創設時からの特徴は、実業団と高校のチームが同じ舞台で競うことです。女子長距離の強化・育成を目指し、全国から実力のあるチームが北九州に集まりました。
歴代優勝チームの代表的な記録37回にわたる大会では、時代ごとにさまざまな実業団チームや高校が優勝しています。
| 大会・時期 | 一般の部の主な優勝チーム | 高校の部の主な優勝校 |
|---|---|---|
| 1990年第1回 | 沖電気宮崎 | 第1回大会の歴史的記録 |
| 1991年第2回 | ニコニコドー | ― |
| 2003年第14回 | 京セラ | 神村学園 |
| 2025年第36回 | 京セラ | 神村学園 |
| 2026年第37回 | デンソー | 大阪薫英女学院 |
1990年の第1回大会では沖電気宮崎が優勝。翌1991年の第2回大会では、ニコニコドーの松野明美が優勝のフィニッシュテープを切りました。
2003年の第14回大会では京セラと神村学園が優勝。2025年の第36回大会でも、一般の部で京セラ、高校の部で神村学園が優勝しています。
こうした歴代優勝チームの変遷を見ると、北九州大会が実業団と高校の女子長距離界をつなぐ舞台だったことが分かります。
なお、2016年の第27回大会は積雪、2021年の第32回大会は新型コロナウイルス感染拡大によって中止されました。毎年欠かさず開催されたわけではありませんが、最終的に第37回まで歴史を重ねました。
松野明美・福士加代子・新谷仁美も出場大会の歴史を語るうえで欠かせないのが、後に日本を代表する選手となったランナーたちです。
松野明美
1991年の第2回大会で優勝のフィニッシュを飾った選手です。ソウル五輪代表として知られ、女子長距離界を代表する存在の一人でした。
福士加代子
長距離種目で活躍し、オリンピックにも出場した日本女子陸上界の代表的なランナーです。北九州大会にも出場し、実業団とトップ選手が集まる大会の歴史を彩りました。
新谷仁美
トラック競技からマラソンまで幅広く活躍した選手です。日本の女子長距離界を代表する存在として、この大会の出場経験も記録されています。
このほかにも、山口衛里、渋井陽子、尾崎好美、重友梨佐、吉川美香、小林祐梨子、伊藤舞、高島由香など、多くのオリンピアンが出場しました。
また、近年では藤井菜々子や柳井綾音も、地元の北九州市立高校時代に大会を経験しています。
特に注目したいのは、出場選手のキャリアがマラソンだけに限定されていないことです。トラック種目の選手も含め、異なる競技特性を持つランナーが同じ駅伝でタスキをつないできました。
大会が女子陸上界に果たした役割この大会の価値は、優勝チームや記録だけでは測れません。
高校生にとって、実業団の選手と同じコースを走る経験は、自分の現在地を知る機会になります。トップ選手の走りを間近で見て、競技を続ける目標を具体化することにもつながります。
実業団にとっても、高校生の有望選手や次世代のランナーが集まる大会は、女子長距離界全体の競技レベルを知る舞台でした。
加えて、地元の高校生が全国区の選手と競い合う姿は、北九州市民にとっても地域の陸上競技を身近に感じるきっかけになっていました。
こうした世代間の接点こそ、37回の歴史を通じて受け継がれてきた重要な財産です。
【大会終了後の北九州はどうなる?】地域スポーツへの影響と2027年の企画
大会が終了すると、北九州市では新春の女子駅伝を沿道で応援する機会がなくなります。
ただし、これは北九州市の陸上競技や市民ランニング文化が終わるという意味ではありません。
実行委員会の説明でも、北九州女子駅伝が担ってきた役割の一つとして、北九州マラソンにつながる市民マラソン文化の醸成が挙げられています。
北九州マラソン2027で歴史を振り返る企画を検討大会終了後の動きとして注目されているのが、2027年の北九州マラソンです。
北九州市では2014年から市民参加型の北九州マラソンを開催しています。
2026年10月27日の地域メディア「北九州ノコト」の報道によると、2027年2月に開催予定の北九州マラソンで、選抜女子駅伝北九州大会の歴史を振り返る企画が検討されています。
ここで重要なのは、現時点では企画の検討段階だという点です。具体的な展示内容や実施方法まで確定したものではありません。
地域スポーツに残された3つの課題大会の終了によって、北九州市のスポーツ振興には新たな課題も生まれます。
1. 女子長距離選手を応援する機会の継承
これまで実業団や高校の有力選手を同じ場所で応援できた機会は、地域にとって貴重なものでした。今後は別の競技大会や陸上イベントを通じて、女子長距離への関心を維持できるかが問われます。
2. 地元高校生の競技経験をどう広げるか
全国レベルの選手と同じコースを走る経験は、若い選手にとって大きな刺激でした。今後も高校生がトップレベルの競技に触れられる環境づくりが大切です。
3. 市民マラソン文化との連携
北九州マラソンは、地域住民がランナーとして参加できる市民スポーツの場です。選手を観戦する駅伝と、自ら走る市民マラソンは性格が異なりますが、両方を通じて地域のランニング文化を育てることは可能です。
大会終了は一つの区切りですが、これまでの経験や記録を地域のスポーツ振興に生かせるかどうかが、次の段階のテーマになります。
【プロの結論】北九州女子駅伝の終了は女子陸上の歴史の終わりではない
37回にわたる大会の歴史を振り返ると、選抜女子駅伝北九州大会が残したものは、単なる競技結果ではありません。
実業団と高校が同じコースを走る仕組み、全国から集まるトップランナー、地域住民が沿道から応援する光景。そして、松野明美や福士加代子、新谷仁美らの名前とともに刻まれた記録です。
こうした蓄積は、大会そのものが終了しても失われません。
今回の終了を考えるうえで、特に押さえておきたい判断基準は次の3点です。
- 大会の終了と競技の衰退を混同しないこと。 最終大会には27チームが参加し、大会新記録も生まれました。
- 終了理由は公式説明を基準に理解すること。 公表された背景は、スポーツ環境の変化と大会の当初の役割の達成です。
- 今後の継承先に注目すること。 2027年の北九州マラソンで検討されている振り返り企画は、歴史を地域に残す機会になり得ます。
特定の大会を続けることだけがスポーツ振興ではありません。そこで育った選手や文化を、次の世代にどう伝えていくかも同じくらい大切です。
北九州女子駅伝の終了は、37回の歴史に幕を下ろす出来事であると同時に、地域の女子陸上と市民スポーツの新しい関係を考える転換点でもあります。
【北九州女子駅伝に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:北九州女子駅伝はいつ終了しましたか?
2026年1月18日に開催された第37回選抜女子駅伝北九州大会が最後です。大会実行委員会は2026年10月9日に終了を発表しました。
Q2:北九州女子駅伝が終了した理由は何ですか?
大会創設時の目的である女子長距離の強化・育成や地域スポーツの振興に一定の成果があり、役割を果たしたと判断されたためです。市内でトップレベルのスポーツを観戦できる機会が広がったことも背景にあります。
Q3:第37回大会の優勝チームはどこですか?
一般の部はデンソー(三重)が1時間28分41秒で優勝しました。高校の部は大阪薫英女学院(大阪)が1時間27分13秒の大会新記録で優勝しています。
Q4:2026年のコースは何kmでしたか?
一般の部、高校の部ともに27.2kmです。一般は5区間、高校は6区間で構成されていました。
Q5:京セラと岩谷産業の順位は何位でしたか?
2026年の一般の部では、京セラが1時間28分47秒で2位、岩谷産業が1時間28分58秒で3位でした。
Q6:須磨学園と立命館宇治の順位は?
高校の部で須磨学園が1時間29分42秒の2位、立命館宇治が1時間29分50秒の3位でした。
Q7:松野明美や福士加代子、新谷仁美も出場していたのですか?
はい。松野明美は1991年の第2回大会で優勝しています。福士加代子、新谷仁美をはじめ、多くのオリンピアンや日本を代表する女子長距離選手が出場してきました。
Q8:北九州マラソン2027で大会を振り返る企画はありますか?
2026年10月時点で、北九州マラソン2027において選抜女子駅伝北九州大会の歴史を振り返る企画が検討されています。具体的な内容は今後の発表が待たれます。
選抜女子駅伝北九州大会は、2026年1月18日の第37回大会を最後に、その歴史に幕を下ろしました。
最後の大会では、一般の部でデンソー、高校の部で大阪薫英女学院が優勝。27.2kmのコースでは、実業団と高校のトップランナーが最後まで熱い戦いを繰り広げました。
10月9日に公表された終了理由は、スポーツ環境の変化と、大会が当初の役割を果たしたという判断です。松野明美、福士加代子、新谷仁美をはじめとする名選手が走った歴史は、女子陸上界にとっても北九州市にとっても貴重な財産です。
2027年の北九州マラソンで検討されている振り返り企画にも期待が集まります。
大会は終了しても、そこで生まれた記録、選手の挑戦、沿道の声援まで消えるわけではありません。 37回の歴史を次の世代に伝え、北九州のスポーツ文化につなげていくことが、これからの大切なテーマです。