事故が発生したのは、ハリウッドワールド美容専門学校が主催した学校行事のバーベキュー大会だった。参加者は生徒や教職員など約480人。会場は学校敷地内で、学生と教職員の親睦を目的とした行事だった。
福岡地方裁判所の2025年10月2日付判決によると、事故が起きたのは2023年5月24日午後0時51分ごろ。教員助手が担当していたバーベキューコンロには、すでに火のついた木炭が入っていた。
当時、教員助手は炭火の勢いを強めるため、アルコールを投入。その結果、木炭に引火して炎が一気に燃え上がり、近くにいた学生の身体や衣服に燃え移った。
被害に遭ったのは男子学生4人。うち1人は体幹部や四肢に高度の熱傷を負い、久留米市内の病院で治療を受けたが、6月6日に敗血症に基づく多臓器不全で亡くなった。残る3人も、全治約1週間から3か月程度のやけどを負った。
消毒用アルコールがなぜ大事故につながったのか事故で使用されたのは、学校側の第三者委員会報告書で手指消毒用アルコールとして記載されている製品だった。
一方、刑事判決では、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールを主成分とする洗浄用アルコールを水で希釈したものと認定されている。
重要なのは、製品の呼び方だけではない。アルコールには引火性と揮発性があり、火のある場所で使用すれば、炎が周囲に広がる危険性がある。
福岡地裁も、この危険性を明確に認定した。
つまり、事故の直接的な原因は、燃えている炭火にアルコールを投入したことだった。しかし、なぜ学校行事の現場で、そのような危険な判断が実行されたのかという疑問は残る。
ここから問題は、単なる一職員の不注意を超え、学校の安全管理や指揮命令系統へと広がっていく。
【時系列・関係者一覧】古賀英次元理事長と教員助手の関係を整理

事故をめぐる責任を理解するには、関係者それぞれの立場と、その後の処分を整理する必要がある。
特に混同されやすいのが、古賀英次氏の理事長退任と不起訴処分、そして教員助手に対する有罪判決だ。
事故から2025年の判決までの経緯主要な出来事を時系列で整理
| 時期 | 出来事 | 意味・その後 |
|---|---|---|
| 2023年5月24日 | BBQ死亡事故発生 | 学生4人が負傷 |
| 2023年6月6日 | 18歳の男子学生が死亡 | 熱傷による敗血症・多臓器不全 |
| 2023年6月9日 | 古賀英次氏が業界団体の九州地区協議会会長を辞任 | 事故を受けた役職辞任 |
| 2023年6月17日 | 保護者説明会 | 古賀氏が理事長辞任の意向を表明 |
| 2023年8月 | 第三者委員会設置 | 事故原因と学校側の対応を調査 |
| 2024年7月4日 | 第三者委員会が報告書を公表 | 組織風土や危機管理体制を問題視 |
| 2024年7月4日 | 古賀英次氏が理事長を退任 | 後任への交代が進む |
| 2024年7月8日 | 古賀大観氏が理事長に就任 | 学校法人の新体制 |
| 2025年3月31日 | 教員助手を在宅起訴 | 古賀氏ら2人は不起訴 |
| 2025年5月20日 | 福岡地裁で初公判 | 被告が起訴内容を認める |
| 2025年10月2日 | 福岡地裁が判決 | 禁錮1年6月、執行猶予3年 |
| 関係者 | 事故との関係 | 確認できる結果 |
|---|---|---|
| 古賀英次氏 | 当時の理事長。アルコール使用の発案や組織運営が調査対象となった | 2025年3月に不起訴。2024年7月に退任 |
| 元教員助手 | コンロの安全管理を担当し、アルコールを投入 | 業務上過失致死罪で有罪 |
| 学校法人 | 学校行事の主催者であり、安全管理体制が調査対象 | 第三者委員会が組織改革などを提言 |
| 第三者委員会 | 事故原因と再発防止策を調査 | 2024年7月に調査報告書を公表 |
| 被害学生 | 事故で4人が負傷し、1人が死亡 | 刑事判決で被害の重大性が認定された |
この関係を理解するうえで重要なのは、事故を直接引き起こした行為の責任と、危険な行為を許容する環境を生み出した組織の責任は、同じものではないという点だ。
【第三者委員会の調査報告書】事故原因は個人の判断だけではなかった
2023年8月、学校法人は事故原因と再発防止策を検証するため、第三者委員会を設置した。
調査委員会は、教職員や生徒などへの聞き取り、現地調査を進め、14回にわたる審議を経て2024年7月4日に報告書をまとめた。学校法人は翌5日に報告書を受領したことを公表し、概要と全文を公開した。
調査結果で特に注目されたのは、事故の発生に至った組織的な背景だった。
古賀英次理事長によるアルコール使用の発案第三者委員会の報告書は、事故の重要な要因として次の点を指摘した。
- 古賀理事長がBBQコンロの火起こしにアルコールを利用することを発案した。
- 法人や学校の職員から、その発案に対して反対意見が出なかった。
- 教員助手は理事長から直接指示されたわけではないものの、理事長の意向に沿おうとして火力を上げるためにアルコールを投入した。
ここで注意したいのは、理事長が教員助手に対して、事故につながったアルコール投入を直接命令したと第三者委員会が認定したわけではないことだ。
報告書が問題視したのは、理事長の発案によるアルコール使用が現場で行われ、職員が異議を唱えられない状況にあったことだった。
「理事長には何も言えない」という組織風土報告書は、長期間にわたる古賀氏の強権的な経営によって、教職員の間に理事長の判断へ異議を唱えにくい意識が形成されていたと分析した。
その結果、危険な行為を止めるための組織内のチェック機能が十分に働かなかったという。
調査委員会が示した提言は、単に火災防止の注意事項を増やすというものではなかった。
主な提言は以下のとおり。
1. 学校法人のガバナンス改革
2. 教職員が自由に意見を出せる職場環境の整備
3. 危機管理マニュアルの作成と遵守
4. 学校安全に関する教職員研修
5. 労働環境の改善と組織改革
6. 生徒や保護者への心理的支援体制の整備
この報告書が示した本質的な問題は、危険な判断を一人の職員が実行したことだけではない。
本来、学校行事では、教職員の誰もが危険を察知した段階で作業を止められなければならない。
仮に責任者が誤った判断をしても、別の職員が異議を唱え、危険な行為を中止させられる仕組みが必要だ。
しかし、今回の事故では、そのような組織的な歯止めが機能しなかった。
第三者委員会が学校法人の経営体質まで踏み込んだのは、事故の再発を防ぐには、個人の注意だけでは不十分だと判断したためである。
【古賀英次元理事長の現在】辞任の経緯と不起訴処分の真相
「古賀英次元理事長は現在どうしているのか」という疑問も、事故を調べる読者が関心を寄せるポイントだ。
ここでは、理事長辞任の経緯と刑事処分、現在の学校法人の体制を分けて整理する。
2023年6月に辞任の意向を表明古賀英次氏は事故後の2023年6月17日、学校で開かれた保護者説明会に出席した。
毎日新聞の報道によると、説明会には保護者ら約200人が参加。古賀氏は事故が起きた責任があるとして、理事長を辞任する意向を示した。
説明会では、事故の経緯や学校の対応について説明が行われた一方、保護者からは転校を希望する学生への補償や、PTSDなど精神的な影響を受けた学生への対応について質問が出た。
事故後の学校側の説明が遅れたことに対する疑問も報じられている。
また、古賀氏は2023年6月9日付で、日本理容美容教育センターの九州地区協議会会長も辞任していた。
理事長を正式に退任したのは2024年7月辞任の意向表明と実際の理事長退任は、同じ日ではない。
美容業界専門メディアのSHINBIYO PLUS Web NEWSによると、古賀英次氏は2024年7月4日付で理事長を退任。同月8日の理事会で、古賀大観氏が新たな理事長に就任した。
したがって、2023年6月の辞任表明後も、古賀氏は約1年間にわたって理事長の立場にあったことになる。
2026年現在の学校法人の体制2026年11月時点で確認できるハリウッドワールド美容専門学校の公式サイトでは、次の人物が掲載されている。
- 理事長:古賀大観氏
- 学園長:古賀郁氏
- 校長:丸林愛氏
公式サイトでは、美容・理容関連の各コースや入試情報、学校生活、就職支援などの案内も掲載されている。
つまり、事故当時の古賀英次氏から理事長が交代し、現在は古賀大観氏が理事長を務める体制になっている。
ただし、現在の役員体制が確認できることと、第三者委員会が求めた組織改革や安全管理上の改善がすべて完了したことは別問題だ。
古賀英次氏はなぜ不起訴になったのか2025年3月31日、福岡地方検察庁は事故に関係して書類送検されていた学校関係者3人のうち、当時25歳の男性教員助手を業務上過失致死罪で在宅起訴した。
一方、古賀英次氏ら2人は不起訴処分となった。
福岡地検が公表した処分理由について、報道各社は「諸般の事情を総合的に考慮した」と伝えている。
ここで重要なのは、不起訴の具体的な理由が詳細に公表されていないことだ。
不起訴には、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予など複数の種類がある。しかし、この事件について報道された説明だけでは、古賀氏らにどの不起訴理由が適用されたのかを断定できない。
また、不起訴処分は刑事裁判で無罪判決を受けたことと同じではない。
第三者委員会が指摘した組織運営上の問題や、民事上・法人運営上の責任まで、すべて否定されたことを意味するものでもない。
不起訴処分と第三者委員会の調査結果は、それぞれ異なる観点から判断されたものとして理解する必要がある。
【2025年10月2日・福岡地裁判決】教員助手に禁錮1年6月、執行猶予3年
事故から約2年4か月後、刑事裁判で大きな節目を迎えた。
2025年10月2日、福岡地方裁判所は、当時の教員助手だった男性に対して、業務上過失致死罪で禁錮1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡した。
この判決で注目されたのは、アルコールを投入した本人の過失だけでなく、事故が起きた職場環境にも言及したことだった。
裁判所が認定した教員助手の過失福岡地裁の判決文によれば、教員助手は担当コンロの安全管理などを担っていた。
アルコールには引火性と揮発性があり、火のある場所で使用すれば、周囲の人にやけどを負わせる危険がある。そのため、周囲に人がいる火気のある場所では使用を避ける注意義務があった。
しかし、教員助手はその義務を怠り、すでに火のついた炭火にアルコールを注入した。
さらに裁判所は、次の事情も認定している。
- 被告は理事長が着火後のコンロにアルコールを注ぎ、炎が高く上がる様子を見ていた。
- 別の教員からアルコールの使用を止められていた。
- それでも自分の判断で担当コンロにアルコールを投入した。
- 被害学生は身体の大部分にやけどを負い、約2週間にわたって苦しんだ末に亡くなった。
裁判所は、教員助手の過失の程度は大きく、刑事責任は軽視できないと判断した。
なぜ執行猶予が付いたのか一方、判決文には被告にとって有利な事情も記されている。
教員助手は通信制の学生でありながら、学校で教員助手として働いていた。
裁判所は、被告が理事長の指示や言動に疑問を差し挟みにくい環境に置かれていたと認定した。
加えて、事故の数日前には遅刻を理由として理事長から退職届を書かされるなど、行き過ぎた指導を受けていたことにも言及している。
担当するコンロの火勢が弱ければ理事長から叱責されるのではないかと恐れた事情についても、一定程度理解できるとした。
特に重要なのが、アルコール使用の発案者についての判断だ。
裁判所は、火起こしの際に理事長の発案と指示のもとでアルコールが使用され、周囲の人間がそれを止めなかったことを指摘した。
そのため、被告が冷静な判断をするのが難しい状況に陥っていたことは否定できず、事故に至る経緯を全体的に見れば、被告だけに責任があったとはいえないと判断した。
判決で考慮された被告の反省と遺族への対応裁判所は、被告が起訴内容を認め、反省の意思を示していたことも考慮した。
また、被害者遺族への謝罪や墓参を繰り返していたこと、父親が今後の監督を約束していたこと、前科前歴がなかったことも量刑上の事情となった。
最終的に、刑事責任に見合う禁錮刑を科す一方、社会内で更生する機会を与えることが相当と判断された。
2025年10月2日の判決内容
言い渡された刑1年6月
禁錮刑
執行猶予期間3年
判決確定日から
裁判所
福岡地方裁判所第3刑事部
事件番号
令和7年(わ)第259号
判決日
2025年10月2日
罪名
業務上過失致死
なお、この判決は教員助手に対する刑事裁判の結果であり、古賀英次氏に対して刑事責任を認定した判決ではない。
ただし、裁判所が理事長の影響や学校内の環境を量刑判断に取り入れた点は、事故の責任を考えるうえで非常に重要だ。
【2026年最新】事故後の学校の現状と遺族への対応
事故後、学校法人は謝罪と第三者委員会の設置、調査報告書の公表を行った。
2024年7月5日の公式発表では、調査報告書の指摘を真摯に受け止め、再発防止策を実施し、安全で安心できる学校づくりに取り組むとの方針を示している。
学校の運営は続いているのか2026年11月時点の学校公式サイトでは、ハリウッドワールド美容専門学校の学校案内、学科・コース、入試、学生生活、就職関連の情報が掲載されている。
また、理事長は古賀大観氏となっており、事故当時の古賀英次氏から経営体制が交代している。
ただし、学校が現在も運営されていることだけで、安全管理体制が十分に改善されたと判断することはできない。
第三者委員会が指摘したのは、単なる火気管理の問題だけではなく、職員の意見を反映できる仕組みや、学校法人のガバナンスそのものだった。
再発防止の実効性を評価するには、マニュアルの整備だけでなく、実際の学校行事で危険を察知した職員が作業を中止できるか、事故を報告する仕組みが機能しているかといった点が問われる。
遺族への謝罪や補償はどうなったのか事故後の2023年6月17日に行われた保護者説明会では、転校を希望する学生への補償や、精神的な影響を受けた学生への支援について質問が出た。
その後の第三者委員会の報告書でも、生徒のメンタルヘルス教育、保護者との連携、事故後の心理的支援体制などが提言されている。
一方、2025年10月の刑事判決では、教員助手による遺族への謝罪や墓参が量刑上の事情として認定された。
ただし、これは被告個人の対応についての判断であり、学校法人による遺族への損害賠償や補償の最終的な合意内容を示すものではない。
2026年11月時点で確認できる公開資料からは、学校法人と遺族の間の補償交渉や民事上の解決について、最終的な内容を確定できる情報は確認できない。
刑事裁判が終わったことと、遺族への補償や学校側の説明責任がすべて解決したことは、明確に区別する必要がある。
【よくある質問】専門学校バーベキュー死亡事故と理事長に関するFAQ
Q1:ハリウッドワールド美容専門学校のBBQ死亡事故はいつ起きた?
2023年5月24日。福岡県柳川市の学校敷地内で開催されたバーベキュー大会で、教員助手がコンロにアルコールを投入して炎上し、男子学生4人が負傷しました。そのうち当時18歳の学生が6月6日に亡くなりました。
Q2:古賀英次元理事長は逮捕された?
古賀氏は事故に関して学校関係者とともに書類送検されましたが、2025年3月31日に福岡地検は不起訴処分としました。逮捕や有罪判決を受けたという事実とは異なります。
Q3:古賀英次元理事長が不起訴になった理由は?
福岡地検が報道を通じて示した説明は「諸般の事情を総合的に考慮した」というものです。具体的な不起訴理由の詳細は公表情報から確認できません。
Q4:教員助手の判決はどうなった?
2025年10月2日、福岡地裁は業務上過失致死罪で禁錮1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡しました。
Q5:第三者委員会は事故原因をどう判断した?
アルコール使用の発案、教職員が異議を唱えにくい組織風土、学校法人の危機管理体制などを問題視しました。再発防止に向けてガバナンス改革や安全管理の見直しを提言しています。
Q6:2026年現在、学校の理事長は誰?
学校公式サイトでは、古賀大観氏が理事長として掲載されています。古賀英次氏は2024年7月4日付で退任しています。
ハリウッドワールド美容専門学校のバーベキュー死亡事故は、2023年5月24日に発生し、当時18歳の男子学生の命を奪った重大事故だった。
事故の直接的な原因は、教員助手が火のついたコンロにアルコールを投入したことにある。しかし、第三者委員会の調査報告書と2025年10月の福岡地裁判決は、それだけでは説明できない組織的な問題を浮き彫りにした。
今回の経緯から押さえておきたい要点は3つある。
1. 古賀英次氏の責任と刑事処分は区別する必要がある。 古賀氏は第三者委員会から組織運営上の問題を指摘され、2024年7月に理事長を退任した。一方、刑事事件では不起訴となっている。
2. 教員助手の有罪判決は、組織環境にも言及した。 裁判所は本人の危険な行為を認定しながら、理事長の影響や学校内の環境を考慮し、被告だけに責任があったとはいえないと判断した。
3. 学校の再発防止と遺族への対応は、刑事判決とは別に考える必要がある。 学校法人のガバナンス、危機管理、説明責任、補償などの問題は、判決が出たからといって自動的に解決するものではない。
この事故が教育機関に突きつけた教訓は明確だ。
学校行事の安全は、現場の担当者一人の注意力に依存してはならない。責任者の判断が誤っているときに、それを止められる仕組みが必要であり、教職員が立場を気にせず危険を指摘できる環境が欠かせない。
18歳の学生が亡くなった事実を、単なる過去の事故として終わらせないこと。 それこそが、学校法人に求められる再発防止と説明責任を考える出発点となる。