セルルックとは、3DCGをアニメやイラストのような平面的なビジュアルに仕上げる表現手法です。立体的な3Dモデルを使いながら、光と影を少ない色数で表現し、輪郭線や色彩を調整することで、手描きアニメに近い印象を生み出します。ゲーム、3DCGアニメーション、映像作品、バーチャルキャラクターなど、幅広い分野で活用されている技術です。
ただし、セルルックは単に3Dモデルに黒い線を付けたり、影を2色に分けたりするだけの技術ではありません。セルシェーディングの仕組み、トゥーンシェーダーによる光の制御、輪郭線の描画、キャラクターモデルの形状設計など、複数の要素が組み合わさって成立します。2026年時点のBlender、Unity、Unreal Engineの技術動向も踏まえ、リアル調CGとの違いから実際の制作工程まで解説します。
【基本解説】セルルックとは?3DCGをアニメ調に見せる表現技術

セルルックは、立体的な3DCGモデルを、平面的なアニメーションやイラストに近い見た目で描画する表現スタイルです。
英語では「Cel Look」などと表現され、セルアニメーションを思わせる色彩や陰影、輪郭線が特徴です。3D空間でキャラクターや背景を制作しながら、最終的な映像では2D作品のような印象を与えられます。
セルルックの基本的な特徴一般的なセルルック作品では、次のような特徴が見られます。
- 光が当たる部分と影になる部分を明確に分ける。
- 滑らかなグラデーションよりも、段階的な色の変化を使う。
- キャラクターや物体の輪郭線を強調する。
- 肌や髪、衣服の色をアニメーションの設定画に近づける。
- 現実の光の挙動よりも、画面としての見やすさや演出を優先する。
重要なのは、セルルックが必ずしも現実の物理法則を無視する表現ではないという点です。3Dモデルの立体構造やカメラ、ライティングを利用しながら、視覚的な印象を意図的にデザインします。
セルルックと2Dアニメーションの関係従来のセルアニメーションでは、キャラクターの線画を描き、色を塗り、必要に応じて影の色を加えることで映像を制作していました。
セルルック3DCGでは、このような2Dアニメーションの視覚的特徴を、3Dモデルとシェーダーによって再現します。
最大の違いは、キャラクターを立体的なデータとして管理できることです。カメラを回転させたり、キャラクターを別の角度から撮影したり、複雑な動きを付けたりする作業を3D空間で進められます。
一方で、3Dモデルをそのまま描画すると、通常の3DCGらしい陰影や質感が出てしまいます。そのため、アニメらしい見た目にするには、モデルだけでなくレンダリング方法そのものを調整する必要があります。
セルルックはノンフォトリアルレンダリングの一種セルルックを理解するうえで知っておきたい概念が、ノンフォトリアルレンダリング(NPR:Non-Photorealistic Rendering)です。
NPRとは、写真のような写実性を追求するのではなく、イラスト、絵画、漫画、アニメ、スケッチなどの芸術的な表現をコンピューターグラフィックスで実現する技術の総称です。
セルルックは、このNPRに含まれる代表的な表現の一つです。つまり、セルシェーディングだけがNPRなのではなく、水彩画風や油絵風、鉛筆画風なども同じ大きなカテゴリーに属します。
東京大学の戸堂英樹氏、安生健一氏、五十嵐健夫氏による2009年の研究「Stylized lighting for cartoon shader」でも、アニメ調の表現では光と影を単純な物理シミュレーションとして扱うのではなく、シーンの雰囲気や形状を伝えるために意図的にデザインすることが論じられています。
【技術の核心】セルシェーディングの仕組みとトゥーンシェーダーの役割
セルルックの見た目を実現する中心的な技術が、セルシェーディングです。英語では「Cel Shading」と呼ばれ、光の当たり方に応じて物体の色を段階的に切り替えることで、アニメのような陰影を作ります。
セルシェーディングの基本的な仕組み通常の3DCGでは、物体に当たる光の強さや表面の材質に応じて、明るさが滑らかに変化します。これに対してセルシェーディングでは、光の計算結果を一定の範囲に分類し、段階的な色に置き換えます。
例えば、キャラクターの肌を次の3色で構成する場合を考えてみましょう。
- ベースカラー:光が十分に当たる部分の基本色。
- 第1影色:光が弱くなる部分に使用する色。
- 第2影色:さらに暗い部分に使用する色。
通常のシェーディングでは、明るい部分から暗い部分へ滑らかなグラデーションが生まれます。一方、セルシェーディングでは、設定した明度の境界を超えると、ベースカラーから影色へ切り替わります。
この色の切り替えによって、手描きアニメのような明確な影の形が生まれます。
トゥーンシェーダーとは何かトゥーンシェーダーは、セルシェーディングをはじめとする漫画・アニメ調の描画を実現するためのシェーダーです。
シェーダーとは、コンピューターが画面上のピクセルや頂点の色、光、質感などを計算するプログラムを指します。
トゥーンシェーダーでは、通常のライティング計算をそのまま使うのではなく、光の強さを段階的に分類したり、特定の色を割り当てたりして、アニメ調の表現に変換します。
代表的な制御項目は次のとおりです。
- 影の境界をどの明るさに設定するか。
- 影色を何段階に分けるか。
- ハイライトをどの位置に表示するか。
- 輪郭付近を明るくするリムライトを加えるか。
- 実際の光の色をマテリアルに反映させるか。
特に重要なのが、影の境界を制御する設定です。境界が鋭ければ漫画的でシャープな印象になり、境界を少しぼかせば柔らかいアニメ調の表現になります。
セルルックにおけるライティングの考え方セルルックのライティングは、単に照明を当てて明るさを調整する作業ではありません。どこに影を作り、どの部分を強調し、キャラクターの表情やシルエットをどう見せるかという演出上の判断が含まれます。
例えば、顔に現実的な照明を適用すると、目の周辺や鼻筋に複雑な陰影が生じる場合があります。しかし、アニメ調のキャラクターでは、顔の影が目や口に重なることで表情が読みにくくなることがあります。
そのため、実際の光源の位置とは別に、顔の影を調整する専用マスクや、影の出方を制御するテクスチャを使うことがあります。
Unity Technologiesの公式Unity Toon Shaderでは、ベースカラー、第1影色、第2影色を使った色設計に加え、実際の照明色とは独立して影や光の色を調整できる機能が用意されています。アニメーション制作で指定される色彩設計を3DCGに反映するための仕組みです。
セルルックの輪郭線はどうやって描く?アニメらしい印象を作るもう一つの要素が輪郭線です。輪郭線はアウトラインとも呼ばれ、キャラクターと背景の境界や、物体の形状を視覚的に強調します。
代表的な生成方法は次の3種類です。
- 反転ハル方式:モデルの裏面を法線方向に少し膨らませ、外側に輪郭線を表示する。
- スクリーンスペース方式:画面上の深度や法線の変化を検出し、輪郭に相当する部分へ線を描画する。
- エッジ抽出方式:モデルの角度やメッシュの境界などから線を抽出する。
反転ハル方式はキャラクター単位で線を管理しやすい一方、モデルの構造によっては線が膨らみすぎたり、細かい形状で不自然な重なりが発生したりします。
スクリーンスペース方式は画面全体の輪郭を処理しやすいものの、カメラの解像度やアンチエイリアス、深度情報の扱いによって線が不安定になる場合があります。
BlenderのFreestyleも、メッシュ情報や深度情報を使って線を抽出するNPR機能です。手描き風や漫画風など、さまざまなライン表現を作れます。
なお、セルルックに輪郭線が必須というわけではありません。輪郭線を使わず、色面や影だけでアニメ調の印象を作る作品もあります。
【徹底比較】セルルックとリアルルックの違いを一覧で解説
セルルックとリアルルックの最も大きな違いは、最終的な映像で何を優先するかです。
リアルルックは現実世界の光や材質、反射、影などを再現することを目指します。一方、セルルックはアニメやイラストのような視覚的な統一感を優先します。
セルルックとリアルルックの比較表| 比較項目 | セルルック | リアルルック |
|---|---|---|
| 基本的な目的 | アニメ・イラスト風の表現 | 現実世界に近い表現 |
| 陰影 | 段階的な色分けが中心 | 滑らかな明暗変化が中心 |
| 色彩 | 作品の設定に合わせて調整 | 材質や照明に応じて変化 |
| 輪郭線 | 必要に応じて強調する | 通常は独立した線を使用しない |
| 光の扱い | 演出的な制御を重視 | 物理的な光の挙動を重視 |
| 質感 | 平面的・デザイン的 | 反射・凹凸・透明感などを再現 |
| 代表的な技術 | セルシェーディング、NPR | PBR、リアルタイムレイトレーシングなど |
| 適した作品 | アニメ、キャラクターゲーム、イラスト調映像 | 実写映画、建築ビジュアライゼーション、写実的ゲーム |
リアルルックの代表的な技術として知られているのが、PBR(Physically Based Rendering)です。
PBRは、物理的な光の挙動や表面の材質を考慮して描画する手法です。金属、木材、布、ガラスなどの素材に応じて、反射率や粗さ、金属度などを設定し、現実に近い見た目を再現します。
セルシェーディングでは、こうした滑らかな光の変化を意図的に段階化するため、一般的なPBRとは異なる描画結果になります。
ただし、両者は完全に排他的な技術ではありません。3Dモデルの一部にPBRを使用しながら、キャラクターの肌や髪にはトゥーンシェーダーを適用するなど、両方を組み合わせることも可能です。
セルルックとセルシェーディングは同じ意味?この2つは混同されやすい言葉ですが、厳密には意味が異なります。
セルルックは最終的な映像の見た目や表現スタイルを指します。それに対して、セルシェーディングはセルルックを実現するために使われる代表的な描画技術です。
例えば、セルシェーディングを使わず、手描きのテクスチャや特殊なライティング、輪郭線の加工によってアニメ調の映像を作ることもできます。その場合も、完成した映像がアニメ調であればセルルックと呼ばれることがあります。
したがって、セルルックを単一のシェーダーや特定の描画アルゴリズムと考えるのは正確ではありません。複数の技術を組み合わせた表現の総称として理解すると分かりやすくなります。
【評価・分析】セルルックのメリット・デメリットと向いている作品
セルルックには、独自の世界観を作りやすいという利点があります。一方で、制作時には独特の調整が必要になり、リアルルックとは異なる難しさも存在します。
セルルックの主なメリット1. アニメらしい世界観を統一しやすい
キャラクター、背景、衣装、小物などに共通の色彩ルールを設定することで、作品全体のビジュアルを統一できます。
特に複数のキャラクターが登場するゲームでは、同じトゥーンシェーダーや色彩設計を適用することで、画面全体に一貫性を持たせられます。
2. 3Dならではのカメラワークを活用できる
2Dアニメーションでは、キャラクターを別の角度から描くために新しい作画が必要になる場合があります。セルルック3DCGなら、基本的なモデルを維持したままカメラの位置を変更できます。
複雑なアクションや長時間の移動シーンでも、3D空間を利用して効率的に映像を構成できます。
3. 物理計算を簡略化できる場合がある
シンプルなトゥーンシェーダーは、写実的なPBR表現に比べて一部のライティング計算や反射処理を省略できる場合があります。
Unityの公式ドキュメントでも、カスタムライティングによって描画負荷を抑えながら独自の視覚表現を実現できることが説明されています。
ただし、輪郭線の抽出や追加の描画パス、複雑な影制御を導入すれば負荷が増えるため、セルルックだから必ず軽いというわけではありません。
4. キャラクターの魅力を強調できる
肌や髪の質感を写実的に表現する必要がないため、キャラクターデザインの特徴を視覚的に強調できます。目の大きさ、髪のシルエット、衣装の色など、デザイン上の重要な要素を伝えやすい点も利点です。
セルルックのデメリット・制作上の課題1. 影や光の調整に専門的な知識が必要
現実の照明に合わせるだけでは、意図したアニメ調の見た目にならないことがあります。顔の影が不自然になったり、角度によって影の形が急激に変わったりするため、専用の制御が必要です。
2. モデルの形状によって仕上がりが大きく変わる
セルルックでは、シルエットや面の向きが画面の印象を左右します。リアルな人体構造を再現したモデルでも、アニメ調の見た目に適しているとは限りません。
髪の毛や衣服の形状、顔の輪郭などをデザインに合わせて調整する必要があります。
3. 動画にすると影や輪郭線が不安定になりやすい
静止画では自然に見えても、キャラクターやカメラが動くと影の境界が急に切り替わる場合があります。輪郭線も、画面上の太さが変わったり、細かい形状でちらついたりすることがあります。
そのため、セルルックは静止画だけでなく、必ず動きを付けた状態で品質を確認することが大切です。
4. 写実的な表現との両立が難しい場合がある
現実的な水面、金属の反射、複雑な透明表現などをアニメ調のキャラクターと同じ画面に配置すると、質感の違いが目立つことがあります。
画面全体でどの程度の写実性を許容するのか、事前にルールを決めておく必要があります。
セルルックが向いている作品- アニメ調ゲーム:キャラクターのデザインや世界観を重視する作品。
- 3DCGアニメーション:2Dアニメ風の映像を3D空間で制作したい場合。
- バーチャルキャラクター:配信アバターやデジタルキャラクターの外観を統一したい場合。
- 広告・プロモーション映像:企業や商品のブランドイメージに合わせた独特のビジュアルを作りたい場合。
- モバイルゲーム:対象端末に合わせて描画処理を最適化しつつ、独自の表現を実現したい場合。
反対に、現実の人間や物体を忠実に再現することが最優先の映像、物理的な質感が作品の魅力を左右する建築・製品ビジュアライゼーションなどでは、リアルルックのほうが適している場合があります。
【実践ガイド】セルルックの作り方と基本的な制作工程
セルルック制作では、シェーダーの設定だけで完成するわけではありません。モデル制作から色彩設計、ライティング、輪郭線、最終的な映像調整まで、各工程を連携させる必要があります。
工程1:完成イメージとデザインルールを決める最初に行うのは、どのようなアニメ調の表現を目指すかを決めることです。
例えば、次のような項目を設定します。
- 影を何段階に分けるか。
- 輪郭線を黒にするか、キャラクターごとの色にするか。
- ハイライトを強くするか、控えめにするか。
- 肌や髪の色をどの程度固定するか。
- 背景とキャラクターの質感を統一するか。
この段階で参考画像やカラー設定表を用意すると、制作途中で表現がばらつくのを防ぎやすくなります。
工程2:3Dモデルと法線を調整する次にキャラクターや背景の3Dモデルを制作します。
セルルックでは、モデルのポリゴン数だけでなく、輪郭や面の向きが重要です。特に顔や髪の毛は、少しの形状の違いで影の出方が変化します。
また、法線と呼ばれる面の向きを示す情報も重要です。法線が不自然だと、光が当たったときの明暗の境界が想定と異なる場所に現れることがあります。
作品によっては、アニメ調の見た目を優先して法線を調整したり、特定の角度から見たときに美しく見えるようにモデルを変形したりします。
工程3:セルシェーディング用マテリアルを設定するモデルができたら、トゥーンシェーダーを使ってマテリアルを設定します。
基本的には、ベースカラーと影色を用意し、光の計算結果に応じて色を切り替える仕組みを作ります。
より細かな表現を目指す場合は、次の機能も追加します。
- 複数段階の影色。
- ハイライトの位置と強度の調整。
- リムライトによる輪郭付近の強調。
- 顔や髪専用の影制御マップ。
- 素材ごとの光沢や発光表現。
重要なのは、全身に同じシェーダー設定を適用するだけで済ませないことです。肌、髪、金属、布など、それぞれの素材に適した表現を設計します。
工程4:輪郭線とディテールを追加する次にアウトラインを設定します。
キャラクターの外側を強調する線と、顔のパーツや衣服の境界を示す線では、適切な太さや色が異なります。
すべての線を同じ太さにすると画面が重くなるため、重要なシルエットは太め、細かなディテールは細めに設定するなど、情報の優先順位を付けると効果的です。
線が顔の目や口に重ならないか、髪の毛の細部で不自然に途切れないかも確認します。
工程5:ライティングと影を調整するセルルックのライティングでは、光源の位置だけでなく、最終的に画面上でどのような影が見えるかを確認します。
特に顔は、アニメ調の印象を左右する重要な部分です。光の方向を変えたときに、目や鼻、口が影で隠れすぎないかをチェックします。
必要に応じて、顔専用の影マップや影の境界を制御するマスクを利用します。
工程6:アニメーションと最終レンダリングを確認する最後にキャラクターを動かし、複数のカメラアングルで映像を確認します。
静止画では目立たなかった問題も、アニメーションにすると明らかになることがあります。
- 影の境界がフレームごとに不自然に変化していないか。
- 輪郭線が細かくちらついていないか。
- 顔の影が表情の変化を邪魔していないか。
- 背景とキャラクターの色彩が調和しているか。
- 対象プラットフォームで十分な描画速度が出ているか。
この確認を繰り返しながら、必要に応じてモデル、マテリアル、ライティングを修正していきます。
【2026年最新】Blender・Unity・Unreal Engineでセルルックを作る方法
セルルックを制作できる代表的なソフトウェアには、Blender、Unity、Unreal Engineがあります。それぞれ得意分野が異なるため、静止画を作りたいのか、リアルタイムゲームを制作したいのか、映像作品を完成させたいのかによって選択が変わります。
Blender:シェーダーノードを使ったセルルック制作Blenderは、モデリングからマテリアル制作、アニメーション、レンダリングまで対応できる3DCG制作ソフトです。
セルルック制作では、Eeveeの「Shader to RGB」ノードが代表的な手段です。BSDFによって計算された光の情報をカラー情報に変換し、Color Rampなどで明暗を段階的な色に置き換えられます。
基本的な制作の流れは次のとおりです。
- キャラクターの3Dモデルを用意する。
- Eeveeをレンダリングエンジンとして設定する。
- Diffuse BSDFなどの出力をShader to RGBにつなぐ。
- Color Rampで影と明るい部分の境界を調整する。
- Freestyleなどを利用して輪郭線を追加する。
- カメラとライティングを調整してレンダリングする。
ただし、Blender 5.2の公式マニュアルでも説明されているように、Shader to RGBはEevee専用です。また、このノードを使うとPBRの描画パイプラインから外れるため、アンビエントオクルージョン、コンタクトシャドウ、ソフトシャドウ、スクリーンスペース屈折などとの組み合わせに制限が生じる場合があります。
輪郭線についてはFreestyleも利用できます。Blender 5.0の公式マニュアルでは、メッシュ情報や深度情報を利用したエッジ抽出、ラインスタイルの調整などが説明されています。
Blenderは、セルルックの基本を学びたい人や、静止画・短編アニメーションを制作したい人に適した選択肢です。
Unity:リアルタイムゲームやアニメーションに適した環境Unityは、ゲームやインタラクティブコンテンツの制作に広く使われる開発環境です。リアルタイムでキャラクターを動かしながらセルルックを表現したい場合に適しています。
代表的な選択肢がUnity Toon Shader(UTS3)です。
Unity Technologiesが公開している公式プロジェクトによると、Unity Toon Shaderはセルシェーディングを利用した3DCGアニメーション向けに設計されており、Built-in Render Pipeline、URP、HDRPに対応しています。ただし、レンダリングパイプラインによって利用できる機能には違いがあります。
主な機能には、次のようなものがあります。
- ベースカラーと複数の影色の制御。
- ハイライトの調整。
- リムライトの設定。
- マテリアルごとの色彩調整。
- アウトラインの設定。
- 顔やキャラクターのアニメ調表現を補助する各種マップ。
Unity 6系の公式ドキュメントでも、URPにおけるカスタムライティングの実装方法として、HLSLやShader Graphのカスタムファンクション、URPソースコードの変更などが紹介されています。
2026年時点ではUnity 6.6が現行ドキュメントの案内対象で、Unity 6.7はベータとして掲載されています。Unity 6.3以降では、2D URPシーンにおける3D GameObjectの描画にもUnity Toon Shaderが部分対応しています。
ゲーム制作を中心に考える場合は、使用するレンダリングパイプラインと対象プラットフォームの対応状況を事前に確認が必要です。
Unreal Engine:ポストプロセスを活用したセルルックUnreal Engineでも、マテリアルやポストプロセスを利用してセルルックを制作できます。
基本的なアプローチは、マテリアルで色やライティングを制御し、必要に応じてポストプロセスマテリアルで輪郭線などの画面全体の処理を追加する方法です。
Unreal Engine 5.8の公式ドキュメントでは、Post Process Materialを使ってSceneTextureや深度情報、Custom Depth、Custom Depth Stencilなどを利用する方法が紹介されています。
例えば、Custom Depth Stencilを利用すると、特定のオブジェクトだけを対象にした輪郭線や、通常の描画とは異なる視覚効果を実装できます。
一方、標準のシェーディングモデルにセルルック専用のプリセットが用意されていることを前提にするのは適切ではありません。トゥーン調の影を実現するには、マテリアルの設計や独自の描画処理を組み合わせることになります。
また、ポストプロセスは便利ですが、追加の描画処理や画面情報のサンプリングによって負荷が増えることがあります。特に動きのある映像では、輪郭線のちらつきやアンチエイリアスとの相性を確認する必要があります。
3つの制作環境の選び方- Blender:3Dモデリングやシェーダーノードを学びながら、静止画・映像を制作したい人向け。
- Unity:キャラクターをリアルタイムで動かすゲームやインタラクティブコンテンツを作りたい人向け。
- Unreal Engine:高度なリアルタイム描画やポストプロセスを活用した映像・ゲーム制作を目指す人向け。
どの環境でもセルルックを実現できますが、同じ設定をそのまま移植できるわけではありません。シェーダーの仕組みや描画パイプラインが異なるため、使用するエンジンに合わせて設計する必要があります。
【プロの結論】セルルックの完成度を左右する本当のポイント
セルルックの品質を左右するのは、単純に影を2色に分けることでも、輪郭線を太くすることでもありません。キャラクターデザイン、光と影、色彩、モデルの形状が、同じ表現ルールに従っているかどうかです。
特に重要なのは、静止画として美しいだけでなく、動いている状態でもアニメらしさが維持されることです。
例えば、キャラクターが横を向いた瞬間に顔の影が大きく変わったり、カメラが移動するたびに輪郭線が不安定になったりすると、セルルック特有の統一感が損なわれます。
そのため、プロの制作現場では次の3点を優先して考えると効果的です。
- 第一に、影をデザインすること。物理的に正しい影よりも、キャラクターの表情や形状を適切に伝える影を優先する。
- 第二に、モデルとシェーダーを一体で設計すること。モデルの形状や法線を、目指すアニメ調の見た目に合わせて調整する。
- 第三に、動画で品質を検証すること。複数の角度や動きで影と輪郭線が安定しているか確認する。
セルルックは、3DCGの効率性と2Dアニメーションのデザイン性を組み合わせられる表現技術です。単なるリアル調CGの代替ではなく、作品独自のビジュアルを作り出すための積極的な選択肢として捉えることが大切です。
セルルックに関するよくある質問(FAQ)
Q1:セルルックとセルシェーディングは同じ意味ですか?
A1:厳密には異なります。セルルックはアニメやイラストのような最終的な見た目を指し、セルシェーディングは光と影を段階的に分けて、その見た目を実現する代表的な描画技術です。セルシェーディング以外の方法でもセルルックは制作できます。
Q2:セルルックを作るには輪郭線が必要ですか?
A2:必須ではありません。輪郭線はアニメらしい印象を強める代表的な要素ですが、影や色面だけで立体感を表現することもできます。作品のデザインやキャラクターの形状に合わせて判断します。
Q3:初心者がセルルックを制作するなら何のソフトがおすすめですか?
A3:まず3DCGとシェーダーの基本を学びたい場合はBlenderがおすすめです。EeveeのShader to RGBとColor Rampを使うと、基本的なセルシェーディングを試せます。ゲーム開発を目指す場合はUnityとUnity Toon Shaderも有力な選択肢です。
セルルックとは、3DCGをアニメやイラストのような平面的な見た目に仕上げる表現手法です。セルシェーディングやトゥーンシェーダーによる陰影の制御、輪郭線の描画、独自のライティングや色彩設計などを組み合わせて実現します。
リアルルックが物理的な正確さを重視するのに対し、セルルックは作品の世界観やキャラクターの魅力を伝えることを重視します。どちらが優れているという関係ではなく、制作する作品の目的に応じて選択するものです。
2026年時点では、Blenderのシェーダーノード、Unityの公式Toon Shader、Unreal Engineのマテリアルとポストプロセスなど、複数の制作環境でセルルックを実現できます。
これから制作を始めるなら、まずは単純な3Dモデルにベースカラーと影色を設定し、光の方向によって色が切り替わる仕組みを試すとよいでしょう。そのうえで輪郭線や顔専用の影制御、アニメーション時の安定性へと段階的に取り組むことで、完成度の高いセルルック表現に近づけます。
大切なのは、3Dで作ったものを単に2D風に見せることではなく、3Dの立体構造を活用しながら、2Dアニメーションの魅力をどこまで意図的に再現できるかという視点です。