スターミュージック・エンタテインメントは、東京都渋谷区に本社を置くエンターテインメント企業である。2011年4月に設立され、音楽事業とデジタルマーケティング事業を中心に成長してきた。
2026年7月16日以降の正式な商号は、株式会社SBIスターミュージック・エンタテインメント。従来の社名から「SBI」が加わったのは、SBIホールディングスによる株式取得が完了したためだ。
基本情報| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現在の会社名 | 株式会社SBIスターミュージック・エンタテインメント |
| 旧社名 | 株式会社スターミュージック・エンタテインメント |
| 設立 | 2011年4月1日 |
| 代表取締役CEO | 渡邊祐平 |
| 本社所在地 | 東京都渋谷区神南1-12-16 アジアビル4F |
| 主な事業 | 音楽事業、音楽出版事業、デジタルマーケティング事業 |
| 主要ブランド | Star Creation、Star Creation Next |
| 親会社 | SBIホールディングス |
公式会社情報およびSBIホールディングスの2026年3月の開示資料を基に整理した。
代表取締役・渡邊祐平とは?同社の代表取締役CEOを務めるのが渡邊祐平だ。
渡邊氏は、音楽とデジタルマーケティングを組み合わせた事業展開を率いてきた経営者である。
同社の特徴は、単に音楽アーティストをマネジメントするだけではなく、企業の広告活動やSNSマーケティングにも事業を広げていることにある。
そのため、経営の方向性を理解するには、音楽レーベルとしての側面と、クリエイターネットワークを活用するマーケティング企業としての側面を両方見る必要がある。
会社の事業規模は?SBIホールディングスが2026年3月に公表した資料では、スターミュージックの2025年3月期の業績は次のようになっている。
- 売上高:19億6,600万円
- 営業利益:1億8,600万円
- 経常利益:2億900万円
- 当期純利益:1億3,600万円
これらは同資料に記載された未監査の財務数値である。少なくとも、単なる小規模な音楽プロダクションではなく、企業向けマーケティング事業も含めた売上基盤を持つ会社であることが分かる。
【沿革】2011年の設立から2026年のSBIグループ参画まで

同社の歴史を理解するうえで重要なのが、音楽事業からショート動画市場への進出、そしてRidge-iを経由したSBIグループへの資本移動だ。
特に2024年以降は、会社の資本関係が大きく変わっている。
主要な出来事を時系列で整理2024年6月、AI開発企業のRidge-iはスターミュージックの株式570,000株を取得した。
議決権所有割合は53.77%で、これによりスターミュージックはRidge-iの連結子会社となった。
Ridge-iが着目したのは、同社の音楽制作・ショート動画マーケティング事業と、自社のAI技術との親和性だった。
広告制作やSNSマーケティングでは、動画・音声・画像など複数の情報を扱う。これらの領域にAI技術を組み合わせることで、企業向けサービスの高度化やクリエイター支援の効率化を狙ったのである。
さらに2025年5月30日には140,000株を追加取得。保有株式は710,000株となり、議決権所有割合は66.98%に達した。
2026年のSBIへの株式譲渡で何が起きたのか2026年3月30日、SBIホールディングスはRidge-iが保有するスターミュージック株式の全部を取得することについて基本合意したと発表した。
その後、5月18日に株式譲渡契約を締結。取得対象は710,000株で、取得価額は9億2,100万円と公表された。
7月16日に譲渡が実行され、SBIホールディングスが議決権の66.98%を保有する親会社となった。
ここで押さえておきたいのは、SBIが取得したのはRidge-iの保有分であり、スターミュージックの発行済株式すべてではないという点だ。
このため、「SBIが会社を100%買収した」という理解は正確ではない。公表された取得割合は66.98%である。
【事業内容】音楽制作とショート動画マーケティングの二本柱
スターミュージックの事業は、大きく分けると音楽関連事業とソーシャルメディア関連事業に整理できる。
両者は独立しているように見えるが、実際には楽曲・動画・クリエイター・企業広告という共通の資産でつながっている。
1. 音楽事業・音楽出版事業音楽事業では、楽曲の企画・制作だけでなく、原盤の配信や音楽著作権の管理なども手がける。
具体的には次のような業務がある。
- オリジナル楽曲の企画・制作
- 音楽原盤のデジタル配信
- 音楽著作権の管理
- 音楽IPの活用・プロモーション
- テレビCMやWeb広告向けの楽曲制作
- アーティストの発掘・プロデュース
注目したいのは、楽曲を制作して納品するだけでなく、その後の配信や権利管理まで扱う点だ。
音楽ビジネスでは、制作した楽曲をどの媒体で使用するか、誰が利用できるか、どのような権利処理が必要かによって収益構造が変わる。
同社は音楽出版と原盤ビジネスを組み合わせることで、制作後の楽曲にも継続的な活用機会をつくる事業モデルを持つ。
2024年のRidge-i関連資料では、200名以上の音楽クリエイターとの提携や、原盤配信・楽曲制作・著作権管理を組み合わせた事業構造が説明されている。
2. ショート動画マーケティング事業もう一つの柱が、TikTokやYouTubeショートなどを活用した企業向けマーケティング支援だ。
同社は2018年からショート動画市場に参入しており、クリエイターとのネットワークを活用した広告・プロモーションを展開している。
主なサービスは次のとおり。
- クリエイターキャスティング: 商品やサービスに合うインフルエンサーを選定。
- PR投稿制作: クリエイターによる広告・紹介コンテンツを制作。
- アカウント運用代行: 企業のSNSアカウントの企画・投稿・運用を支援。
- 広告配信・運用: ショート動画広告の配信設計や最適化。
- クリエイティブ制作: 動画の企画、撮影、編集などを支援。
- 楽曲制作・振付監修: 動画に使用する音楽やダンスの企画をサポート。
公式サイトでは、TikTokやYouTubeショートを中心に、企業の目的や予算に応じたサービスを提供している。
3. 音楽とSNSを組み合わせる強みこの会社の特徴を理解するうえで重要なのが、音楽事業とショート動画事業の相互作用である。
例えば、企業が新商品の認知度を高めたい場合、単純に広告を出稿するだけではなく、次のような施策を組み合わせられる。
1. 商品やブランドに合わせた楽曲を制作する。
2. 商品と親和性のあるクリエイターを選ぶ。
3. TikTokなどで動画を公開する。
4. 楽曲や振付を使った投稿の広がりを促す。
5. 広告配信やアカウント運用によって認知を拡大する。
音楽制作会社と広告代理店の機能を横断できることが、同社の差別化要因だ。
特にショート動画では、音源そのものがコンテンツの一部になる。楽曲の制作・権利管理とクリエイターのネットワークを同じ事業基盤で扱えることは、企業案件の企画段階から配信まで一貫して支援できる強みにつながる。
【Star Creation】MCNの規模とStar Creation Nextの特徴
スターミュージックを語るうえで欠かせないのが、MCN事業「Star Creation(スタークリエイション)」である。
MCNとは、複数の動画クリエイターやインフルエンサーをネットワーク化し、活動支援や企業案件の仲介、コンテンツ制作などを行う仕組みだ。
Star Creationの規模は?Star Creationの公式サイトでは、次の規模を公表している。
1,000名超
所属クリエイター3億人超
総フォロワー数
Star Creation公式サイトの公表値
TikTokやYouTubeショートなどで活動するクリエイターをネットワーク化し、企業のプロモーションを支援する。
ただし、フォロワー数は各クリエイターのアカウントを合算した数値であり、実際に3億人の異なる利用者へ広告が届くという意味ではない。
複数のアカウントをフォローしているユーザーもいるため、実際の広告リーチや再生数とは区別して理解する必要がある。
Star Creation Nextとは?Star Creation Nextは、次世代のデジタルクリエイターを発掘・育成するプロジェクトだ。
公式発表によれば、2025年10月に始動し、2026年2月5日に正式に紹介された。
従来のStar Creationが培ってきたクリエイターのマネジメント実績やデータを活用し、将来性のある人材を育成・プロデュースすることを目的としている。
特徴は、単に所属先を提供するのではなく、活動を継続するための支援を組み込んでいる点だ。
具体的には次のようなサポートがある。
- SNS戦略やコンテンツ制作の指導
- 個性に合わせたブランディング
- トップクリエイターによる講義
- 企業タイアップやイベント出演の機会
- クリエイター同士の交流コミュニティ
- マネタイズに向けた活動支援
従来の芸能事務所における新人育成と、デジタルマーケティング企業のデータ活用を組み合わせた取り組みと捉えられる。
2026年の公表人数には違いがある?ここは数字を読む際に注意したいポイントだ。
Star Creationの通常の公式紹介ページでは、クリエイター1000名超・総フォロワー3億人超と掲載されている。
一方、Star Creation Nextの公式プロジェクトサイトには、クリエイター総数1,900人、総フォロワー数3億4,300万人、年間PR件数1000件以上という数字も表示されている。
この違いについては、各ページの集計対象や更新基準が明確に示されていない。したがって、単純に所属人数が1000人から1900人に増加したと断定するのは適切ではない。
企業が公表するネットワーク規模を見る場合は、所属人数、提携人数、総フォロワー数、年間案件数をそれぞれ別の指標として確認することが大切だ。
【所属アーティスト・所属クリエイター】手がクリームパンや人気インフルエンサー
スターミュージックの所属・提携人材は、音楽アーティストだけではない。
Star Creationの公式クリエイター一覧を見ると、美容、コメディ、ダンス、カップル、ライフスタイル、音楽など、幅広いジャンルの人材が掲載されている。
所属アーティスト「手がクリームパン」
シンガーソングライター
TikTokでの弾き語り動画をきっかけに活動を広げたアーティスト。実体験に基づいた恋愛ソングを中心に支持を集めている。
手がクリームパンは、2020年にTikTokでオリジナル曲の弾き語り動画を投稿し始めた。
代表的な楽曲「会いたいな」は、2021年12月のデジタルリリース後、LINE MUSICのリアルタイムランキングで最高2位を記録。Spotifyのバイラルチャートにもランクインした。
さらに2022年には、TBS系ドラマストリーム『』のオープニングテーマを担当。SNS発の音楽活動からテレビドラマの主題歌へと活動の幅を広げた。
2025年には顔出しでの活動を開始。2026年5月には3か月連続のシングルリリースを発表し、第1弾『嘘はなかったと思っていたい』を5月20日に配信した。
続く第2弾『わざとなの』は6月3日に配信開始。音楽活動を継続的に展開していることが分かる。
Star Creationに掲載されている主なクリエイター公式のクリエイター一覧には、次のような人材が掲載されている。
ライフスタイル系
大学生の日常や検証コンテンツを中心に活動。公式プロフィールでは総SNSフォロワー数200万人と紹介されている。
ダンス系
TikTokを中心に振付動画を発信。楽曲やアーティストの認知拡大につながるダンスコンテンツを手がけている。
美容・ファッション系
モデル、商品プロデュースなど幅広く活動。Star Creationの公式プロフィールでは業務提携と表示されている。
美容・トレンド系
モデル・タレントとして活動し、Star Creationのクリエイター一覧にも掲載されている。
音楽系
音楽を軸に動画コンテンツを発信するクリエイターとして公式一覧に掲載されている。
このほか、公式一覧には指男、パンナコタ、きゅん先輩、木咲桃華、ほのぴすなど、異なるジャンルのクリエイターが掲載されている。
なお、一覧への掲載と専属契約は必ずしも同じ意味ではない。業務提携など契約形態が異なる人材も含まれるため、全員を同一条件の専属所属タレントとして扱わないことが重要だ。
2026年は音楽クリエイター育成にも注力2026年の新しい動きとして注目されるのが「music Circle」という音楽活動支援プログラムだ。
公式募集ページでは、音楽未経験者も対象とし、6か月間の伴走支援を提供する仕組みが紹介されている。
具体的な内容は次のとおり。
- プロデューサーとの面談
- オリジナル楽曲の制作
- 全6回のボイストレーニング
- スタジオレコーディング
- AIを活用した活動用ビジュアル制作
- 音楽配信サービスへの楽曲配信
- SNS発信のサポート
プロデューサーとして手がクリームパンの名前も掲載されている。
この取り組みは、すでに活動している人気クリエイターのマネジメントにとどまらず、音楽を始めたい人の発掘から作品制作までを支援する方向性を示している。
ただし、公式ページでもプロデビューやタイアップ獲得などの成果は保証されていない。育成支援とデビュー保証を混同しないようにしたい。
【SBIグループ参画】今後の事業はどう変わる?Ridge-iとの関係も解説
2026年7月のSBIグループ参画は、スターミュージックにとって単なる親会社の変更ではない。
音楽・広告・クリエイター支援を展開してきた企業が、金融・メディア・マーケティングなどの事業基盤を持つグループに加わったという意味がある。
なぜSBIホールディングスは取得したのかSBIホールディングスの2026年3月30日付発表では、今回の株式取得について、グループ各社との事業シナジー創出、経営資源の効率的な活用、競争力の強化が理由として説明されている。
SBIグループは、メディア・エンターテインメント・マーケティング関連事業を統括するSBIネオメディアホールディングスを中核に、関連事業の拡大を進めていた。
その事業領域とスターミュージックの音楽・SNSマーケティング事業には接点がある。
特に期待できるのは次の3点だ。
1. 企業ネットワークの活用
SBIグループの顧客基盤や企業ネットワークを活用すれば、スターミュージックの広告・マーケティング事業が新たな企業案件に接する機会が広がる可能性がある。
2. メディア・エンターテインメント事業との連携
音楽制作、インフルエンサー、広告配信を組み合わせた企画をグループ内で展開しやすくなる。
3. 事業投資・経営基盤の強化
クリエイター育成や音楽IPの開発には継続的な投資が必要だ。グループの経営資源を活用できれば、中長期的な事業展開の選択肢が広がる。
Ridge-iが株式を譲渡した理由もう一つ重要なのが、売却側であるRidge-iの事情だ。
Ridge-iはAI技術を活用したカスタムAIソリューション事業を主力としており、スターミュージックを子会社化した当初は、AIとデジタルマーケティングの相乗効果を狙っていた。
しかし、その後、AI関連の大型案件や既存顧客からの継続受注が拡大。経営資源、とりわけマネジメント人材やAI人材を本業のAI事業に集中させる必要性が高まった。
SBIへの譲渡は、こうした経営資源の再配分という側面も持っている。
つまり、スターミュージックの事業が不振になったため売却された、という単純な構図ではない。Ridge-i側の事業戦略の変化と、SBI側のエンターテインメント領域への投資方針が重なった取引と見ることができる。
SBI傘下入りで確認すべき3つのポイント今後の動向を判断する際には、次の点が重要になる。
- クリエイターの活動環境: 従来のマネジメント方針や契約条件にどのような変化があるか。
- 音楽IPの展開: グループ内のメディアや企業との連携によって、楽曲の利用機会が増えるか。
- 企業向けマーケティング: Star Creationのネットワークを活用した大型案件や新サービスが生まれるか。
現時点で確認できるのは、株式取得と商号変更が完了したこと、そしてSBIグループが事業シナジーを取得理由に挙げていることだ。
具体的な組織再編やサービス統合、所属クリエイターの契約変更などについては、個別の発表と実施状況を見て判断する必要がある。
【スターミュージック・エンタテインメント】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:スターミュージック・エンタテインメントは現在どこの会社ですか?
A1:2026年7月16日から株式会社SBIスターミュージック・エンタテインメントとなっている。SBIホールディングスが議決権の66.98%を取得し、連結子会社化した。
Q2:スターミュージックの代表取締役は誰ですか?
A2:代表取締役CEOは渡邊祐平。SBIグループ参画後の公式会社情報でも代表者として掲載されている。
Q3:所属アーティストには誰がいますか?
A3:代表的なアーティストとして手がクリームパンが挙げられる。また、Star Creationには修一朗、ローカルカンピオーネ、MELOGAPPAなど、多ジャンルのクリエイターが掲載されている。
Q4:Star Creationはどれくらいの規模ですか?
A4:公式サイトでは、クリエイター1000名超、総フォロワー3億人超と公表されている。別のStar Creation Next公式ページには異なる集計数値も掲載されているため、集計範囲には注意が必要だ。
Q5:スターミュージックは音楽事業だけの会社ですか?
A5:音楽事業だけではない。楽曲制作や著作権管理に加え、TikTok・YouTubeショートを活用した企業向けマーケティング、クリエイターキャスティング、広告運用なども展開している。
Q6:Star Creation Nextとは何ですか?
A6:2025年10月に始動したクリエイター育成プロジェクト。SNS戦略、動画制作、ブランディング、企業案件などを通じて、次世代のデジタルクリエイターを育てる取り組みだ。
スターミュージック・エンタテインメントは、2011年の設立以来、音楽制作とデジタルマーケティングを組み合わせながら事業を拡大してきた企業である。
特に2018年から参入したショート動画市場では、MCN「Star Creation」を成長させ、1000名を超えるクリエイターと総フォロワー3億人超のネットワークを構築している。
音楽事業では手がクリームパンのようなSNS発アーティストを支援し、楽曲制作・配信・著作権管理までを展開。Star Creation Nextやmusic Circleを通じて、次世代のクリエイターや音楽人材の育成にも取り組んでいる。
そして2026年7月16日、SBIグループへの参画が正式に実現した。
【プロの結論】
同社を理解するうえで最も重要なのは、単なる芸能事務所や音楽レーベルとして捉えないことだ。
本質的な強みは、次の3つを一つの事業基盤でつなげている点にある。
1. 楽曲や音楽IPを生み出す音楽制作力
2. 多数のクリエイターを活用できるネットワーク
3. 企業の広告・SNSマーケティングを実行するノウハウ
SBIグループへの参画によって、この3つの資産をより大きな企業ネットワークと結び付けられる可能性が生まれた。
今後の評価を左右するのは、単純な所属人数やフォロワー数の増加ではない。音楽IPの収益化、クリエイターの持続的な育成、企業向けマーケティングの受注拡大という、実際の事業成果が伴うかどうかだ。
2026年は、スターミュージック・エンタテインメントが独立系のエンターテインメント企業からSBIグループの一員へと移行した重要な節目である。今後の成長を見極めるには、SBIグループとの連携によってどのような新しい音楽・広告・クリエイター事業が生まれるかに注目したい。