ホーム 芸能ニュース・ゴシップ 【3】劇団側が認めたパワーハラスメントとは?合意書に記された具体的な行為

【3】劇団側が認めたパワーハラスメントとは?合意書に記された具体的な行為

滑原 圭介 滑原 圭介 • 更新: • 公開: • 読了約 19 分
目次

2024年3月28日の合意書で特に注目されたのは、パワーハラスメントに該当する行為が具体的に整理されたことだ。単に「上下関係が厳しかった」という抽象的な説明ではなく、2021年から2023年にかけて発生した複数の出来事が合意内容の別紙に記載されている。

① ヘアアイロンによる火傷と、その後の対応

合意書によると、2021年8月14日、宙組の上級生が、本人が自分で髪を巻くことを望んでいたにもかかわらず、ヘアアイロンで髪を巻こうとし、額に火傷を負わせた。

その火傷は、1か月を超えて痕が残るほどだった。加えて、本人の気持ちをくみ取った十分な気遣いや謝罪がなかったことも、合意内容に記されている。

この出来事については、2023年2月1日に劇団が公式サイトで「全く事実無根」とする見解を発表していたことも、2024年の合意書で問題として取り上げられた。後の合意で劇団側がパワーハラスメントに該当する行為を認めたことは、当初の対応との大きな違いである。

② 新人公演の準備に伴う深夜作業と過重負担

2021年7月20日には、新人公演直前の2日間、上級生の指示によって髪飾りを作り直す作業が深夜に及んだことが記載されている。

また、新人公演の準備では、振り写しや下級生への声掛けなど、本来必須ではなかった作業が本人に集中したことや、演出担当者が担うべき業務を本人が肩代わりせざるを得なかったことも問題として挙げられた。

つまり、舞台に出演するための稽古だけでなく、周辺業務や慣習的な作業まで特定の団員に集中していたという構造的な問題があった。

③ 2023年2月の呼び出しと精神的負担

2023年2月3日には、宙組幹部4人が本人を会議室に呼び出し、その後、宙組の団員全員が集まる場も設けられた。合意書では、この一連の出来事によって本人が過呼吸になるほど大きな精神的負担を受けたと整理されている。

加えて、本人が組替えを求めたにもかかわらず、当時のプロデューサーがその要望を無視したことも記載された。現場の人間関係に問題が生じた際、管理する立場の人間が適切に対応できていたのかという疑問を残す内容だ。

④ 亡くなる直前の2023年9月にも続いた指導・叱責

合意書では、2023年9月2日の新人公演の配役表をめぐる指導にも言及している。午後10時以降に指導・叱責が行われ、本人は午後11時50分になっても帰宅できない状況だった。

加えて、9月27日には下級生の衣装の取り扱いに関する問題で、本人に落ち度がないにもかかわらず、上級生から指導・叱責を受けたことが記載されている。

9月28日または29日にも、「お声がけ」をめぐって大きな声で叱責され、その後、複数の上級生がいる場で繰り返し詰問されたことが合意内容に含まれた。

これらは、亡くなる直前の時期にも心理的負荷につながる出来事が続いていたことを示している。

パワーハラスメント問題の本質は個人間のトラブルだけではない

一連の出来事で見逃せないのは、上級生による行為だけでなく、プロデューサーや幹部による管理上の対応も合意書に記載されたことだ。

問題が発生しても適切な対応がなされない、本人の負担が大きくなっても業務分担が見直されない、本人からの組替えの要望が受け止められない。こうした問題が重なれば、個人の努力だけで環境を改善することは難しい。

合意書が経営陣の怠慢や長年の運営体制にまで言及した理由も、ここにある。必要なのは、特定の人間関係を改善するだけではなく、問題を把握して是正する管理体制そのものを作り直すことだった。

【4】宝塚歌劇団の再発防止策は?公演回数・労働時間・組織改革の全容

宝塚歌劇団宙組死亡

宝塚歌劇団と阪急阪神ホールディングス、阪急電鉄は、2024年3月28日の合意を踏まえ、再発防止に向けた改革を進めてきた。

改革の中心は、公演スケジュールの見直し、稽古運営の改善、労働時間の管理、健康相談体制の強化、雇用制度の変更、組織の透明性向上という複数の分野にまたがっている。

① 年間興行数と週間公演回数を削減

大きな変更の一つが、興行計画の見直しである。

宝塚歌劇団は従来、観劇需要の拡大に対応するため、年間の興行数や公演回数を増やしてきた。公式資料では、1990年代後半以降、新劇場の開場や観劇人口の拡大に伴って興行数・公演回数の最大化に努めた一方、過密な日程によって出演者やスタッフの負担が増大していたと説明している。

その反省を踏まえ、2024年1月から次の変更が実施された。

年間9興行から8興行へ変更。

1週間あたり10公演から9公演へ変更。

加えて、公演間のインターバルを約2週間延長し、千秋楽から次の公演の稽古開始までに休暇を確保できるようにした。

これは単に公演数を減らすという経営判断ではない。舞台の完成度を維持しながら、出演者とスタッフが十分な休養を取れる環境を整えるための変更である。

② 稽古時間と劇場への入退館管理を改善

稽古運営についても具体的な変更が行われた。

宝塚大劇場では楽屋口にセキュリティゲートを設置し、入退館時間を記録する仕組みを導入。入館時間を遅らせ、退館時間を早めることで、施設内に滞在できる時間を約3時間短縮した。

また、稽古期間を延長し、舞台稽古の日数も増やした。公式資料に示された目安は次のとおりである。

  • 宝塚大劇場公演の稽古日数:45日から50日を目安に変更。
  • その他の公演の稽古日数:35日から38〜40日を目安に変更。
  • 宝塚大劇場の新人公演:初日から18営業日目安だった実施時期を23営業日目安に変更。
  • 新人公演の稽古開始時期も、本公演初日後の休演日翌日からに変更。

加えて、演技者が担当していた稽古用小道具の製作を廃止し、スタッフが購入・保管して各組で共有する方式に変更した。新人公演の稽古準備などについても、演技者と制作スタッフの役割分担を見直している。

③ 劇団員の雇用制度と労働時間管理を見直し

今回の改革で重要なのが、劇団員の雇用関係の変更だ。

従来は、入団5年目までは雇用契約、6年目以降はタレント契約(業務委託契約)という区分があった。改革では、専科所属者を除き、6年目以降の演技者についても雇用契約に移行する方針が示された。

また、施設内にタイムレコーダーを設置し、演技者やスタッフの労働時間を客観的に把握する体制を整備。演出助手やプロデューサー補に適用していた裁量労働制についても見直し、実際の勤務状況に即した時間管理を進めている。

自己研鑽を目的とするものを除き、参加が必要な稽古については、一定の管理の下で労働時間として扱う方針も公表された。

④ カウンセリングルームと外部相談窓口を設置

心身の健康を守るための支援体制も拡充された。

  • 公認心理師などの資格を持つカウンセラー2名が週3日駐在。
  • 2024年8月から、カウンセリング予約にWEB受付を追加。
  • 2024年6月から診療所の医師を1名増員。
  • 専門医への相談ルートを拡充。
  • 劇団専用の外部相談窓口を開設。
  • 匿名アンケートや意見箱を通じて現場の声を把握。

特に外部弁護士への相談窓口は、劇団内部の上下関係に左右されずに相談できる環境を整えるという点で意味がある。相談内容に応じて事実関係を確認・調査できる体制も整備された。

⑤ 慣習や指導方法を見直し、組織文化を変える

宝塚歌劇団では、伝統的な舞台芸術や技術の継承を重視する一方、時代に合わなくなった慣習や過剰なルールについて廃止・変更を進めている。

具体的には、ハラスメント研修、コーチング研修、リスペクト研修などを実施。匿名で意見を投稿できる意見箱や専用WEBフォームも設置された。

また、演技者やスタッフの業務効率化のため、タブレット端末や情報共有ツールを導入。制作スタッフの増員や業務分担の見直しも進めている。

待遇面では、2024年4月の一部手当の増額とベースアップ、2025年1月の住宅補助手当の導入などが公表された。

【5】2026年最新|宝塚歌劇団の改革はどこまで進んだ?株式会社化と宙組の新体制

2026年11月現在、宝塚歌劇団の改革は、勤務環境の改善から組織統治の仕組みづくりへと段階を進めている。

特に大きな節目となったのが、2025年7月1日の株式会社化である。2026年には法人化から1年を迎え、劇団側が改革の進捗について公式コメントを発表した。

2025年7月1日、株式会社宝塚歌劇団が発足

2025年7月1日、宝塚歌劇団は「株式会社宝塚歌劇団」として新たなスタートを切った。阪急電鉄の一部門として運営されていた従来の体制から、独立した法人として組織運営を行う形へ移行したのである。

この法人化の目的は、単に会社の名称や組織形態を変更することではない。経営判断の透明性を高め、内部統制を強化し、現場の運営と管理・監査を分離することにある。

導入されたのが、次の3つの部門から成る「3線モデル」だ。

- 第1線・事業部門: 公演企画、制作、出演など、現場の実務を担う。
- 第2線・管理部門: 人事、総務、経理など、組織管理と支援を担う。
- 第3線・内部監査部門: 組織運営を客観的に評価し、監査する。

加えて、取締役の過半数を社外出身者で構成する仕組みを整備し、外部の視点を経営に取り入れる体制を構築した。

これは、2024年3月の合意書で指摘された「現場任せ」の運営や、阪急阪神ホールディングス・阪急電鉄による管理監督の不備に対応するための組織改革と位置づけられる。

2026年7月、法人化から1年の公式報告

2026年7月1日、株式会社宝塚歌劇団の村上浩爾代表取締役社長は、法人化から1年を迎えたことを受けて公式コメントを発表した。

このコメントでは、3線モデルによる複層的なリスク管理体制を構築したこと、社外出身の取締役と監査役を招聘したこと、取締役会を原則月1回開催していることが説明された。

また、改革の進捗や議論の内容について、親会社である阪急電鉄と阪急阪神ホールディングスの取締役会へ定期的に報告し、グループ全体で監督する体制を維持しているという。

村上社長は、最優先で取り組むべき課題について一定の目途が立ちつつあると説明する一方、今後も継続して改革を進める考えを示した。

ここで重要なのは、法人化から1年が経過したことと、改革が完全に終了したことは別だという点である。会社側も、組織体制の移行は改革の一過程であり、今後も改善を続ける姿勢を明らかにしている。

2026年3月、宙組を含む全5組で副組長2名制を導入

2026年2月25日には、宝塚歌劇団が全5組で副組長2名制を導入すると発表した。実施日は2026年3月1日付である。

従来よりも組織運営を支える役割を増やし、各組の運営を円滑にすることが目的とされている。

宙組の新体制は次のとおりだ。

宙組の2026年3月1日付体制

  • 組長:松風輝
  • 副組長:愛すみれ(新任)
  • 副組長:秋奈るい

ほかの花組、月組、雪組、星組についても副組長が1名ずつ新たに就任し、全組で2名体制となった。

副組長を増やすことは、組内の情報共有や管理業務を分担するための組織的な対応と考えられる。ただし、副組長の人数を増やすことだけで、過去に問題となった上下関係やハラスメントがなくなるわけではない。相談体制や管理責任と連動して機能するかどうかが重要になる。

2026年11月時点で確認できる改革の進捗

2026年11月5日時点で確認できる公式情報を整理すると、改革は次のような段階にある。

- 公演数と週間公演回数の削減は2024年1月から実施済み。
- 入退館時間の管理、稽古日程の見直し、相談窓口や健康支援体制の拡充を実施。
- 2025年7月に株式会社宝塚歌劇団として法人化。
- 3線モデルと社外出身者を含む経営監督体制を構築。
- 2026年3月から全5組で副組長2名制を導入。
- 2026年7月には法人化1年間の改革状況を公式発表。
- 2026年10月15日付の阪急阪神ホールディングス統合報告書にも、宝塚歌劇団の改革に関する情報が掲載されている。

なお、2024年9月5日には西宮労働基準監督署から是正勧告書を受領したことも、阪急電鉄と宝塚歌劇団が公表している。これは労働環境の問題が、劇団内部の自主的な改革だけでなく、労働行政による調査・是正の対象にもなっていたことを示す。

2026年の最新状況を見る際には、改革の実施項目と、実際に職場環境が改善したかどうかを分けて評価する必要がある。会社組織の整備や新しい役職の設置は進んでいるが、それだけで全ての問題が解消したと判断することはできない。

【6】【プロの結論】宝塚歌劇団の死亡問題から考えるべき組織改革の本質

この問題を振り返ると、最も重要なのは、舞台の完成度や伝統を守ることと、出演者の健康や尊厳を守ることを対立させてはならないという点である。

宝塚歌劇団は、長い歴史の中で独自の舞台文化や技術を育ててきた。一方、観劇需要の拡大や舞台の高度化に伴い、出演者とスタッフの負担も増加していた。公式資料でも、興行数の最大化に対して、現場の負担を軽減する仕組みや支援体制の整備が追いついていなかったと説明されている。

この構造を変えずに、個人の努力や精神力だけに依存する運営を続ければ、同様の問題が再び発生する危険性は残る。

改革の成果を判断するための3つの基準

1. 労働時間と休養が客観的に管理されているか。

公演回数を削減しただけでは不十分だ。自主稽古、準備作業、周辺業務も含め、実際にどれだけの時間を活動に費やしているのかを把握する必要がある。タイムレコーダーや入退館記録が形だけの仕組みになっていないかも重要な確認点だ。

2. 上下関係に左右されずに相談できるか。

外部相談窓口やカウンセリングルームの設置は前進である。しかし、相談したことで不利益を受ける不安があれば、制度は十分に機能しない。相談者のプライバシー保護、調査の独立性、問題発生後の対応まで確認する必要がある。

3. 経営陣が現場の問題を把握し、是正できるか。

法人化や社外取締役の招聘、内部監査部門の設置は、組織運営の透明性を高めるための仕組みだ。実際に現場の声が経営判断へ反映され、問題を放置しない体制になっているかが改革の成否を左右する。

伝統を守ることと、過剰な慣習を守ることは違う

宝塚歌劇団のような舞台芸術の組織では、先輩から後輩へ技術や知識を伝えることが不可欠である。厳しい指導や高い技術水準を求めること自体が問題なのではない。

問題となるのは、指導の名の下に人格を否定したり、必要性のない作業を押しつけたり、特定の団員に負担を集中させたりすることだ。

舞台の質を高めるための指導と、相手の尊厳を損なう行為は明確に区別されなければならない。伝統を継承するためにも、変えるべき慣習を変える必要がある。

宝塚歌劇団の改革が本当に成功したかどうかは、法人化や組織変更の実績だけでは測れない。劇団員が安心して働き、問題が起きた際に声を上げられ、経営陣が責任を持って対応できる組織になったかどうかが、最終的な評価基準となる。

【宝塚歌劇団宙組の死亡問題】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:宝塚歌劇団の宙組団員が亡くなったのはいつですか?

A1:2023年9月30日です。25歳の宙組女性劇団員が亡くなり、翌10月1日に宝塚歌劇団が公式サイトで逝去を公表しました。

Q2:宝塚歌劇団はパワーハラスメントを認めたのですか?

A2:はい。2024年3月28日の遺族との合意で、劇団側は、厚生労働省の指針に示された職場のパワーハラスメントに該当する行為が複数あったことを認めました。長時間活動による過重負担や、安全配慮義務違反についても認めています。

Q3:2024年3月28日の合意書で何が決まりましたか?

A3:阪急阪神ホールディングス、阪急電鉄、宝塚歌劇団が遺族と合意し、過重負担やパワーハラスメント、安全配慮義務違反などについて謝罪しました。また、慰謝料などの解決金の支払いと、再発防止に向けた職場環境の改善を約束しました。

Q4:宝塚歌劇団の公演回数は減りましたか?

A4:はい。2024年1月から年間9興行を8興行に、1週間あたりの公演数を10回から9回に変更しました。公演間の休養期間も延長されています。

Q5:宝塚歌劇団は2026年現在、株式会社になっていますか?

A5:はい。2025年7月1日に株式会社宝塚歌劇団として新たなスタートを切りました。事業部門・管理部門・内部監査部門による3線モデルを導入し、社外出身者を含む経営監督体制を整備しています。

Q6:2026年の宙組の組織体制はどう変わりましたか?

A6:2026年3月1日から副組長2名制が導入されました。宙組では松風輝が組長を務め、愛すみれと秋奈るいが副組長を務める体制となっています。

宝塚歌劇団宙組の死亡問題は、2023年9月30日の逝去をきっかけに、長時間活動、過重負担、パワーハラスメント、管理体制の不備という組織全体の問題を明らかにした。

2023年11月の外部弁護士による調査報告書の公表を経て、2024年3月28日には遺族との合意が成立。劇団側はパワーハラスメントに該当する行為、安全配慮義務違反、経営陣の怠慢による運営上の問題を認めた。

その後、年間興行数と公演回数の削減、稽古時間の管理、雇用制度の見直し、カウンセリング体制の拡充などが進められ、2025年7月には株式会社宝塚歌劇団が発足した。2026年には法人化1年の公式報告や全5組の副組長2名制導入など、組織面の改革も進んでいる。

ただし、改革の実施と問題の根本的な解決は同じではない。今後も労働環境の改善、ハラスメントの防止、現場の意見を経営に反映する仕組みが継続して機能するかが問われる。

宝塚歌劇団にとって本当に必要なのは、歴史や伝統を否定することではなく、劇団員一人ひとりの尊厳と安全を守りながら、その伝統を次の世代へ継承できる組織へ変わることだ。2026年以降の改革の実効性こそ、今後も注視すべき最大のポイントである。

同じカテゴリの記事

滑原 圭介
コンテンツディレクター 滑原 圭介
プロフィールを見る →

旅行・観光を担当。現地の公式観光資料と営業情報を確認してから記事にします。

おすすめの関連記事