竹島をめぐる国際社会の認識を理解するには、日本と韓国の主張だけでなく、第三国が実際にどのような外交文書や公式声明を出してきたかを確認する必要がある。
まず押さえておきたいのは、次の3つの事実だ。
- 日本と韓国は、それぞれ異なる歴史的・法的根拠から領有権を主張している。
- 韓国は島を実効支配しているが、実効支配と国際法上の領有権の確定は同じ意味ではない。
- 第三国の過去の見解と現在の外交方針は必ずしも一致しない。
特に米国の対応は、時代による違いを理解するうえで重要だ。1951年にはラスク書簡で韓国側の要求を退けた一方、現在の米国は領有権の帰属について立場を取らないとの説明をしている。
したがって、「世界は竹島を日本領と認めている」「世界は独島を韓国領と認めている」という二者択一の説明では、実際の国際情勢を正確に表せない。
【公式見解を比較】日本と韓国は竹島の領有権をどう主張している?

両国の対立は、単に島をどちらの国が管理しているかという問題ではない。歴史的な領有の根拠、近代国家による行政措置、第二次世界大戦後の処理、国際法上の権原という複数の論点が重なっている。
日本政府の基本的立場日本外務省は、竹島について、歴史的事実と国際法に照らして日本固有の領土であると主張している。
日本側の主な論拠は、次のとおりだ。
- 歴史的認識:日本は江戸時代から竹島を認識し、利用してきたと説明している。
- 1905年の行政措置:日本政府は1905年1月の閣議決定を経て、竹島を島根県に編入したとする。
- サンフランシスコ平和条約:第2条a項に竹島が放棄対象として記載されていないことを、日本領として扱われた根拠の一つに挙げる。
- 現在の韓国による管理:国際法上の根拠がない占拠であるとして、韓国側に抗議を続けている。
日本外務省の2026年版外交青書でも、竹島を日本固有の領土とする立場が改めて示された。韓国による警備要員の常駐などを不法占拠と位置付け、2025年に実施された軍事演習などについても抗議したと記載している。
また、日本政府は領有権問題を平和的に解決するため、国際司法裁判所(ICJ)への付託を繰り返し提案している。
韓国政府の基本的立場韓国政府は、竹島を独島と呼び、歴史的・地理的・国際法的に韓国固有の領土であると主張している。
韓国外務省の公式サイトでは、独島について領有権紛争そのものが存在しないという立場を明示している。日本との外交交渉や国際司法機関による解決の対象ではないという考え方だ。
韓国側の主な論拠は次のとおりである。
- 歴史的根拠:古代から朝鮮半島側が独島を認識していたとする歴史資料を重視する。
- 1900年の大韓帝国勅令第41号:鬱島郡の管轄区域に石島を含めたことを領有権の根拠として挙げる。
- 第二次世界大戦後の処理:SCAPIN第677号など、連合国軍総司令部による日本の行政範囲の指定を重視する。
- 実効支配:警察の常駐、施設の設置、行政権の行使などを韓国の主権行使の根拠として示す。
韓国側にとって独島は、領土問題だけでなく、日本による植民地支配の歴史と結び付いた国家主権の象徴でもある。そのため、外交的な妥協や国際裁判への付託に慎重な姿勢を取っている。
この立場は2026年も変わっていない。韓国外務省は2026年8月5日、日本の「防衛白書2026」に竹島に関する領有権の主張が記載されたことに対し、正式に抗議した。
日韓の主張を一覧で比較| 比較項目 | 日本政府 | 韓国政府 |
|---|---|---|
| 島の名称 | 竹島 | 独島 |
| 領有権の主張 | 日本固有の領土 | 韓国固有の領土 |
| 1905年 | 島根県への編入を重視 | 日本の植民地支配過程での編入と主張 |
| サンフランシスコ平和条約 | 放棄対象に含まれないことを重視 | 記載がないことだけで日本領とはならないと主張 |
| SCAPIN第677号 | 最終的な領土処分ではないと主張 | 戦後の日本の行政範囲から除外されたことを重視 |
| 現在の管理 | 韓国による不法占拠と主張 | 韓国の主権行使と主張 |
| ICJへの対応 | 付託を提案 | 領有権紛争は存在しないとして拒否 |
両国の見解は、出発点となる歴史認識から異なっている。どちらか一方の政府の説明だけを読んでも、相手国がなぜその主張を続けているのかは理解しにくい。
【歴史資料で検証】サンフランシスコ平和条約とラスク書簡の重要な関係
竹島の世界的な認識を考えるうえで、最も重要な歴史的資料の一つが1951年9月8日に署名されたサンフランシスコ平和条約だ。
この条約は第二次世界大戦後の日本の国際的な地位と領土処理を定めたもので、1952年4月28日に発効した。
第2条a項には何が書かれている?第2条a項は、日本が朝鮮の独立を承認し、朝鮮に対するすべての権利・権原・請求権を放棄することを定めている。その対象として、済州島、巨文島、鬱陵島が明記されている。
一方、竹島や独島という名称は、条文に記載されていない。
この記載の有無が、日韓の主張を分ける重要な争点になっている。
日本側の解釈:韓国側が条約案の修正を求めて独島を放棄対象に加えるよう要求したにもかかわらず、最終条文には採用されなかった。したがって、竹島は日本が放棄した領土には含まれないという考え方だ。
韓国側の解釈:条約に独島の名前がないことは、独島が日本領であることを意味しない。戦後の連合国による処理や歴史的な領有関係を合わせて判断すべきだという立場だ。
つまり、条文の文言自体は確認できても、その沈黙が領有権について何を意味するのかについて両国の解釈が異なっている。
なお、この条約は多国間の平和条約であり、ラスク書簡は米国政府と韓国政府の間で交わされた外交文書である。両者を同じ法的性質の資料として扱うことはできない。
1951年の重要な出来事を時系列で整理| 年月日 | 出来事 | 国際的な意味 |
|---|---|---|
| 1951年7月19日 | 韓国が条約案の修正を米国に要求 | 独島を日本の放棄対象に加えるよう要請 |
| 1951年8月10日 | ラスク書簡を送付 | 米国が韓国側の修正要求を拒否 |
| 1951年9月8日 | サンフランシスコ平和条約に署名 | 第2条a項に竹島・独島の名称は記載されず |
| 1952年1月18日 | 李承晩ラインを宣言 | 韓国が竹島を含む海域を設定 |
| 1952年4月28日 | 平和条約が発効 | 日本の戦後主権回復 |
| 1954年 | 日本がICJへの付託を提案 | 韓国が受け入れず |
| 1962年 | 日本が再びICJ付託を提案 | 韓国は受け入れず |
| 2012年 | 日本が3度目のICJ付託を提案 | 韓国が再び拒否 |
| 2026年 | 日韓両政府が公式見解を維持 | 領有権問題は未解決のまま |
この時系列から分かるのは、1951年の条約交渉だけで問題が完結したわけではないという点だ。条約締結後の海洋政策、現地の管理、外交交渉が重なり、現在の状況が形成されている。
【米国の本当の見解】1951年のラスク書簡は日本の領有権を認めたのか?
竹島問題で第三国の見解を調べる際、特に注目されるのが米国だ。サンフランシスコ平和条約の起草に深く関与した国であり、ラスク書簡という具体的な外交文書も残している。
ラスク書簡とは何かラスク書簡は、1951年8月10日、米国務次官補ディーン・ラスク(Dean Rusk)が、駐米韓国大使の梁裕燦(ヤン・ユチャン)に送った外交文書である。
当時、韓国政府はサンフランシスコ平和条約の草案について、日本が放棄する朝鮮の領土に独島などを追加するよう要求していた。
これに対し、ラスク書簡は米国が修正要求に同意できないと回答した。
同書簡では、竹島について、米国の把握する情報では韓国の一部として扱われたことがなく、1905年ごろから島根県隠岐支庁の管轄下にあったと説明されている。
「この島は、これまで韓国によって領有権を主張されたことがないように見受けられる」
※ラスク書簡の英語原文の趣旨を日本語に要約したもの。
この文書は日本側の主張を支える重要な外交史料である。米国が条約交渉時に韓国側の要求を退け、竹島を日本側の行政管轄と認識していたことが読み取れる。
ただし、ラスク書簡は米国政府の当時の認識を示す外交文書であり、国際裁判所の判決でも、全連合国が共同で採択した領土確定文書でもない。
1952年の米国務省内部文書も重要ラスク書簡だけでなく、1952年11月14日付の米国務省内部文書も注目される。
米国務省のケネス・ヤングは、韓国側の竹島に関する主張をめぐり、米国務省が同島は日本に属するとの立場を取っており、駐米韓国大使にも伝えていたと記録した。
一方、同年11月26日の米国務省電報には、韓国の領有権主張から生じる紛争に米国が関与すべきではないとの方針も記されている。
ここから読み取れるのは、米国が1951~1952年当時、竹島について日本側に有利な見解を内部文書などに残していた一方、日韓間の領土紛争に直接巻き込まれない外交姿勢も重視していたということだ。
現在の米国政府はどちらを支持している?ここが、ラスク書簡をめぐる議論で誤解されやすいポイントだ。
2021年7月、韓国の聯合ニュースが米国務省関係者の説明として報じた内容によれば、米国はリアンクール岩礁(Liancourt Rocks)の主権について立場を取らず、日韓両国が平和的に解決すべき問題としている。
つまり、1951年のラスク書簡に示された米国の認識と、現在の米国が公に説明している外交方針は区別しなければならない。
米国がかつて日本側に有利な認識を示したことは史料上確認できる。しかし、それを根拠に「2026年現在、米国が日本の領有権を正式に承認している」と断定することはできない。
米国の対応を正確に整理すると、1951年の外交文書では日本側に有利な認識、1952年の内部文書では日本領との認識と紛争への不関与方針、そして近年の公的説明では主権の帰属について立場を取らない姿勢が確認できる。
【韓国の実効支配】李承晩ラインから現在まで何が変わった?
国際社会の認識を考えるうえで、もう一つ見逃せないのが韓国による実効支配だ。
領有権の法的根拠をめぐる争いとは別に、現在、島を実際に管理しているのは韓国である。この現実が竹島問題の解決を難しくしている。
1952年に宣言された李承晩ライン1952年1月18日、韓国の李承晩(イ・スンマン)大統領は「海洋主権に関する宣言」を発表した。
これによって設定された海洋境界線が、李承晩ライン、または平和線と呼ばれるものだ。
この線は韓国周辺の広い海域を対象とし、竹島もその内側に含まれていた。韓国政府は漁業資源の保護や周辺海域の安全確保を目的として説明している。
一方、日本政府は、国際法上の根拠がない一方的な海洋境界線だと反発した。
また、1952年4月28日にサンフランシスコ平和条約が発効する前に宣言されていた点も、歴史的な争点となっている。
韓国の国家記録院によれば、李承晩ラインは1965年6月22日の日韓漁業協定締結によって事実上置き換えられた。
韓国はどのように実効支配しているのか韓国は現在、独島に対して警察の配置、行政管理、施設の運用などを行っている。
韓国外務省が公表する説明では、具体的に次のような主権行使が挙げられている。
- 警察部隊の常駐と島内の警備活動。
- 韓国軍による周辺海域・空域の防衛。
- 独島に関する法律や行政規則の適用。
- 灯台など政府施設の設置と運用。
- 韓国民間人の居住。
日本政府はこれらの措置に対して抗議を続けているが、現地の行政・警備体制そのものは韓国側が維持している。
ここで重要なのは、実効支配が存在することと、国際法上の領有権が最終的に確定したことは別問題だという点だ。
国際法上、実際の行政行為や警備活動は領有権を判断する際の資料になり得る。しかし、それだけで歴史的な権原や条約の解釈など、ほかの争点がすべて解決するわけではない。
【国際司法裁判所の可能性】なぜ竹島問題は解決していないのか
竹島問題が長期間解決していない理由の一つは、日韓両国が問題の存在自体について異なる認識を持っていることにある。
日本がICJへの付託を提案した3つの時期日本政府は、国際法に基づく平和的解決を目指し、これまで3回にわたり国際司法裁判所への付託を提案している。
- 1954年:日本が最初の付託を提案したが、韓国が拒否。
- 1962年:日韓外相会談で再び提案したが、韓国は受け入れず。
- 2012年:李明博大統領の竹島訪問後、日本が3度目の提案を行ったが、韓国が拒否。
日本政府は、これらの経緯を現在も公式資料に掲載している。
韓国がICJへの付託を拒否する理由韓国側は、独島はもともと韓国の領土であり、そもそも解決すべき領有権紛争が存在しないと説明している。
そのため、国際裁判に持ち込むことは、日本の領有権主張を争うべき問題として認めることにつながるという考え方がある。
韓国外務省の公式説明でも、独島は外交交渉や司法的解決の対象ではないとされている。
韓国が同意しなければICJで裁判はできない?原則として、国家間の争訟事件についてICJが管轄権を行使するには、当事国の同意に基づく管轄権の根拠が必要となる。
日本が一方的に提訴を表明したとしても、韓国が管轄権を受け入れる根拠がなければ、裁判所が当然に領有権の判断を下せるわけではない。
この点は国際司法裁判所自身が繰り返し確認してきた基本原則である。
したがって、ICJへの付託が実現しない限り、第三者の裁判所による最終的な領有権判断が出ない状態が続くことになる。
【プロの結論】竹島の世界の認識を判断するときに見るべき5つの基準
ここまでの歴史資料と2026年の公式発表を踏まえると、竹島の国際的な認識を判断する際には、単純な国別の賛否よりも、どの資料が何を証明しているのかを見極めることが大切だ。
特に次の5点は、報道やインターネット上の解説を読む際にも役立つ。
- 条約本文と外交書簡を区別する。サンフランシスコ平和条約は多国間条約、ラスク書簡は米国と韓国の外交文書であり、法的な性質が異なる。
- 歴史的認識と現在の管理を分ける。韓国の実効支配は現実の事実だが、それだけで領有権が国際的に確定したことにはならない。
- 第三国の見解は時期を確認する。1951年の米国の外交文書と2021年の米国務省関係者の説明を混同しない。
- 両国の公式見解を対照する。日本外務省と韓国外務省の説明には、同じ史料について異なる解釈がある。
- 国際司法判断の有無を確認する。政府による主張や外交上の抗議と、国際裁判所による確定判断は区別する。
また、2026年の動きを見ると、領土問題が外交関係の中で依然として重要な争点であることも分かる。
日本の2026年版外交青書は、韓国による実効支配や軍事演習などを取り上げ、日本側の抗議と国際法に基づく解決方針を記載している。これに対し、韓国政府も同年2月、3月、4月、8月と、日本の外交演説、教科書、外交青書、防衛白書に含まれる竹島の領有権主張に対して抗議を行った。
2026年10月22日に公表された日本の外交青書も、竹島をめぐる基本的立場を維持している。日韓の外交関係が改善や協力を模索する局面にあっても、領土問題については双方の主張が変わっていない。
【竹島の世界の認識】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:竹島は世界では日本領と認識されていますか?
A1:世界各国の統一的な領土認定が存在するわけではない。日本は自国固有の領土と主張しており、1951年のラスク書簡には米国が韓国側の条約修正要求を拒否した記録がある。ただし、現在の米国は主権の帰属について立場を取らないと説明している。
Q2:韓国はなぜ独島を自国領だと主張しているのですか?
A2:韓国は歴史的・地理的・国際法的な根拠に加え、1900年の大韓帝国勅令第41号、第二次世界大戦後のSCAPIN第677号、現在の実効支配などを根拠にしている。また、日本による植民地支配の歴史とも結び付けている。
Q3:サンフランシスコ平和条約は竹島を日本領と認めたのですか?
A3:条約第2条a項には済州島、巨文島、鬱陵島が記載されているが、竹島は明記されていない。日本は放棄対象から除外されたことを重視し、韓国は記載がないことだけでは日本領と確定しないと主張している。
Q4:ラスク書簡は米国が日本の領有権を認めた証拠ですか?
A4:1951年当時の米国政府が、韓国側の条約修正要求を拒否し、竹島を韓国領として扱っていなかったとの認識を示した外交文書である。ただし、国際裁判所の判決や多国間の領土確定文書ではない。現在の米国の立場とも区別する必要がある。
Q5:現在、竹島を実効支配しているのはどちらの国ですか?
A5:韓国である。韓国は警察を常駐させ、灯台や行政施設を運用し、周辺の警備を行っている。一方、日本政府は韓国の管理を不法占拠と位置付け、抗議を続けている。
Q6:竹島問題は国際司法裁判所で解決できますか?
A6:両国がICJの管轄権を認めるなど、裁判所が管轄権を持つための条件が満たされれば可能だ。日本は1954年、1962年、2012年に付託を提案したが、韓国はいずれも受け入れていない。そのため、現在までICJによる最終判断は出ていない。
竹島の世界の認識を検証すると、日本と韓国の主張だけでは見えてこない、第三国の外交文書や戦後の国際秩序が大きく関係していることが分かる。
特に重要なのは、1951年のサンフランシスコ平和条約とラスク書簡だ。日本側は韓国の条約修正要求が米国によって拒否された経緯を重視し、韓国側は条約に竹島が明記されなかったことや戦後の行政措置を重視している。
米国についても、1951年当時の見解と現在の外交姿勢を分けて理解する必要がある。過去の文書には日本側に有利な認識が記されている一方、近年の米国は領有権の帰属について立場を取らないと説明している。
2026年11月現在の状況を整理すると、次の3点に集約できる。
- 日本と韓国は、それぞれ異なる歴史的・国際法的根拠から領有権を主張している。
- 韓国による実効支配が続いているが、ICJによる最終的な領有権判断は存在しない。
- 第三国の過去の外交文書と現在の公式方針を区別しなければ、国際社会の認識を正確に把握できない。
竹島問題を理解するために必要なのは、「世界は日本側なのか、韓国側なのか」という単純な問いだけではない。条約本文、外交書簡、戦後の行政措置、実効支配、国際司法制度という異なる証拠を組み合わせて判断することだ。
今後も日韓両政府の外交青書、防衛白書、外務省声明、米国政府の公式説明に注目することで、竹島をめぐる国際的な議論の変化をより正確に把握できる。