2026年11月5日現在、トランプ大統領が主導する対イラン軍事作戦は、開戦から約8か月が経過しても終結していない。2026年2月28日に始まった米国・イスラエルによるイラン共同攻撃は、最高指導者アリ・ハメネイ師の死亡、イランによる中東各地への報復攻撃、ホルムズ海峡を巡る海上対立へと発展した。4月には停戦が成立したものの、6月の米国・イラン覚書は数週間で崩れ、7月以降は軍事衝突と経済制裁が再び激化している。
加えて、11月3日の米国中間選挙では共和党が上下両院の主導権を失い、トランプ政権の対イラン政策は新たな政治的局面に入った。11月4日にはトランプ大統領が戦争継続の正当性を主張する一方、JD・バンス副大統領は戦争が共和党の選挙敗北を招いたと公然と指摘。米軍による再攻撃の可能性も取り沙汰されている。現在の戦争はなぜ始まり、何を目指し、どこへ向かうのか。開戦から最新情勢までを時系列と関係者の動きから整理する。
【トランプ大統領の戦争とは何か】2026年2月28日の対イラン共同攻撃から始まった紛争

「トランプ大統領戦争」という検索ワードで注目されているのは、主に2026年2月28日に始まった米国・イスラエルとイランの軍事衝突である。
この戦争は、米国がイスラエルと連携してイラン国内の軍事施設などを攻撃し、イランがイスラエルや中東地域の米軍関連施設、商業船舶などに報復したことで広域紛争へ発展したものだ。
米国側の作戦名は「オペレーション・エピック・フューリー(Operation Epic Fury)」。イスラエル側は「オペレーション・ライオン・ロア(Operation Roaring Lion)」と呼んでいる。
開戦の引き金となった米国・イスラエルの攻撃2025年末から2026年2月にかけて、トランプ政権はイラン周辺への米軍戦力の増強を進めていた。米国とイランは核問題を巡る外交交渉を続けていたが、最終的な合意には至らなかった。
2月28日、米国とイスラエルはイラン国内への大規模攻撃を開始。標的には弾道ミサイル関連施設、防空システム、海軍関連施設、軍事産業施設、イスラム革命防衛隊の指揮・統制施設などが含まれた。
この攻撃では、1989年から最高指導者を務めていたアリ・ハメネイ師が死亡。イランの軍事・政治指導部にも大きな打撃が及んだ。
その後、イランはイスラエルや湾岸諸国にある米軍関連施設、エネルギー施設などにミサイルや無人機による報復攻撃を実施。ホルムズ海峡を通過する商業船舶にも危険が及び、世界のエネルギー市場が揺れた。
米議会調査局(CRS)の2026年9月報告書によると、米国とイスラエルは開戦後、数千回規模のミサイル攻撃や空爆を実施した。一方、イランも多数のミサイルと無人機を投入し、戦闘は中東全域に波及した。
トランプ大統領は何を目指していたのかトランプ大統領は開戦時、米国民をイラン政権の差し迫った脅威から守ることを攻撃の目的として説明した。
具体的には、核兵器の取得阻止、弾道ミサイル能力の破壊、イラン海軍の無力化、地域の武装組織への支援停止などを掲げている。
加えて、イラン国民に対して政権を転覆させるよう呼びかける発言も行った。したがって、今回の軍事作戦は単なる軍事施設の破壊にとどまらず、イランの政治体制そのものを弱体化させる狙いも含んでいた。
ただし、軍事的に優位に立つことと、イランの政治体制を安定的に変えることは別問題である。米議会調査局も、2026年9月時点でイラン政権が差し迫って崩壊する状況にはないと分析している。
【なぜトランプ大統領はイラン攻撃に踏み切ったのか】核問題とイスラエルの安全保障
今回の戦争を理解するには、核開発問題だけでなく、米国とイスラエルの安全保障、イランのミサイル能力、中東における地域的な勢力争いを合わせて考える必要がある。
1.イランの核開発を阻止するという米国の主張トランプ政権が繰り返し強調してきたのが、イランに核兵器を保有させないという方針である。
イランは長年、ウラン濃縮活動を進めてきた。イラン政府は核開発を平和利用目的と説明しているが、濃縮度の高いウランの保有や国際原子力機関(IAEA)の査察を巡って、欧米諸国との対立が続いていた。
2025年6月には米国とイスラエルがイランの主要核施設を攻撃。トランプ大統領は当時、核関連施設の能力を壊滅させたと主張した。
しかし、2026年の攻撃でも核問題は主要な理由として掲げられた。米議会調査局の2026年10月20日更新資料によると、2月28日以降の攻撃ではミサイルや軍事施設が主な標的となり、ナタンズ濃縮施設では出入口部分などに損傷が確認された一方、IAEAは核物質を含む施設そのものへの損傷を確認していないと報告した。
つまり、2025年6月の核施設への大規模攻撃と、2026年2月以降の軍事作戦は区別する必要がある。2026年の攻撃がイランの核開発能力をどこまで低下させたかは、査察の制約もあり、全面的には確認できていない。
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は10月28日、2025年と2026年の軍事攻撃で損傷した核施設について、イランが修復・再建を試みた兆候は確認されていないと説明した。一方、核物質の在庫状況を検証するには査察官のアクセス回復が必要となる。
2.イスラエルの安全保障とネタニヤフ首相の判断イスラエルにとってイランは、核開発だけでなく弾道ミサイルや地域の武装組織を通じた安全保障上の脅威とみなされてきた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イランの軍事能力を長期的な脅威と位置づけてきた。今回の共同攻撃では、イスラエル側の作戦がイラン政権の中枢や軍事指導部に大きな打撃を与えた。
米国とイスラエルの利害は重なる部分が多いが、完全に同一ではない。米国は中東全域の安定や米軍の安全、世界のエネルギー供給も考慮する必要がある。一方、イスラエルは自国に対する直接的な軍事的脅威の排除を重視する。
この優先順位の違いは、停戦交渉や再攻撃の判断にも影響している。
3.イランのミサイルと地域武装組織への対応イランは弾道ミサイルや無人機のほか、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派など、地域の武装組織と関係を維持してきた。
米国にとって、こうした組織への支援は中東の米軍基地や同盟国の安全を脅かす要因となる。
ただし、各組織はそれぞれ独自の政治的・軍事的基盤を持っており、イランの指示だけで一律に動く存在ではない。イランへの攻撃が地域の武装組織による報復を誘発すれば、戦争の終結はさらに難しくなる。
【イラン戦争の経緯と現在】停戦合意の崩壊から11月の最新情勢まで
2026年の対イラン戦争は、2月の開戦、4月の停戦、6月の覚書、7月の戦闘再開という段階をたどった。11月に入ってもホルムズ海峡周辺では軍事的緊張が続いている。
開戦から停戦崩壊までの時系列| 時期 | 主体・出来事 | 関係と意味 |
|---|---|---|
| 2026年2月28日 | 米国・イスラエル共同攻撃 | トランプ政権とネタニヤフ政権が対イラン軍事作戦を開始。アリ・ハメネイ師が死亡。 |
| 2026年3月 | イランの報復攻撃 | イランがイスラエルや湾岸諸国の米軍関連施設、商業船舶などを攻撃。ホルムズ海峡の航行が大きく混乱。 |
| 2026年4月7日 | 米国・イラン停戦 | 2週間の停戦に合意。JD・バンス副大統領がパキスタンのイスラマバードで交渉に参加するも、包括合意には至らず。 |
| 2026年4月13日 | 米国の対イラン海上封鎖 | イランの港に出入りする船舶を対象とした米国の封鎖措置が開始。 |
| 2026年6月17日 | 米国・イラン覚書(MoU) | トランプ大統領とマスード・ペゼシュキアン大統領が覚書に署名。停戦の定着と核問題の協議を目指す。 |
| 2026年6月26日〜7月8日 | 軍事衝突の再燃 | 米国による攻撃再開、イランの船舶攻撃などが相次ぎ、トランプ大統領が覚書の終了を表明。 |
| 2026年7月14日 | 米国の海上封鎖再開 | イランの港を対象とする米国の海上封鎖が再び実施される。 |
| 2026年8月17日 | 覚書の交渉期限終了 | 恒久的な合意を目指した60日間の交渉期限が終了。外交的解決は実現せず。 |
| 2026年9月 | 軍事衝突と経済制裁の継続 | 米国とイランの攻撃が再び活発化。米国は追加制裁を強化。 |
| 2026年11月2〜5日 | ホルムズ海峡の緊張と米中間選挙 | 米軍の限定攻撃、イラン側の船舶関連の主張、共和党の選挙敗北を受けた再攻撃論が焦点に。 |
この時系列で重要なのは、4月の停戦が戦争終結を意味していたわけではないという点だ。
4月7日の停戦は2週間の暫定措置として始まり、その後、期限が事実上延長された。しかし、ホルムズ海峡の航行条件やイランの核開発、米国による経済制裁を巡る対立は残った。
6月17日の覚書では、米国による海上封鎖の終了、イラン産原油の輸出に関する制裁緩和、凍結資産の利用、ホルムズ海峡での商船の安全通航などが盛り込まれた。
ところが、海峡の管理権限や船舶の通航方法を巡って両国の認識が一致せず、6月26日に米国の攻撃が再開。7月7日には大規模な空爆が行われ、翌8日にはトランプ大統領が覚書の終了を表明した。
米国は7月14日に海上封鎖を再開し、8月17日には覚書で定められた最終合意の交渉期限も終了した。米議会調査局は、こうした経緯を踏まえ、9月時点の紛争を消耗戦に近い状態と分析している。
2026年11月5日現在、戦争は終わったのか答えはまだ終わっていないである。
10月23日に更新された米外交問題評議会(CFR)の分析では、米国とイランの間では限定的な攻撃の応酬が続き、恒久的な和平合意は実現していない。
11月2日には米軍がイランのケシュム島にある防空ミサイル関連施設を攻撃したと報じられた。米軍は、同施設が米軍航空機を標的にしたことへの対応として説明している。
11月3日には、イラン革命防衛隊(IRGC)が米国の無人機2機を撃墜したと主張し、ホルムズ海峡を通過しようとしたタンカー3隻が機雷に接触したとも発表した。これらはイラン側の主張を含む情報であり、すべてが独立して確認された事実ではない。
また、商船への攻撃によってインド人1人が死亡したとのインド外務省の発表も伝えられた。海峡周辺の危険は、軍事関係者だけでなく一般の船員や国際物流にも及んでいる。
つまり、現在は全面的な大規模空爆が連日続く段階とは異なるものの、限定攻撃、海上での衝突、経済制裁が続く不安定な状態にある。
【ホルムズ海峡封鎖と原油価格への影響】米国の海上封鎖は何を意味するのか
今回の戦争で世界経済に最も直接的な影響を与えているのが、ホルムズ海峡を巡る対立である。
ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ重要な海上交通路であり、中東産の原油や液化天然ガス(LNG)を世界各地に運ぶための要衝だ。ここで航行が妨げられれば、エネルギー供給だけでなく、海上運賃や保険料、物流コストにも影響する。
イランの海峡封鎖と米国の対抗措置は別物混同されやすいのが、イランによるホルムズ海峡の航行妨害と、米国によるイランの港湾を対象とした海上封鎖である。
イランは軍事的な圧力手段として、商船への攻撃や機雷の脅威などを利用し、海峡の通航を制限しようとしてきた。一方、米国はイランの港に出入りする船舶を対象に封鎖措置を実施している。
この2つは同じ意味ではない。海峡全体を物理的に完全封鎖しているという理解も正確ではない。
2026年8月の英国下院図書館の報告では、イランの航行制限と米国の対イラン港湾封鎖がともに続き、海峡を通過する船舶は限定的な状態だったと整理されている。
ただし、11月5日のロイター通信は、ホルムズ海峡を通る原油輸送量が戦争前に近い水準まで回復していると報道した。もっとも、航行に伴う費用は高止まりしており、正常化したとは言い切れない。
原油価格はどう変化したのか米議会調査局が整理したブレント原油の先物価格を見ると、戦争による供給不安が市場に与えた影響が分かる。
- 2026年1月1日:1バレル60.85ドル
- 2026年2月27日:1バレル72.48ドル
- 2026年3月31日:1バレル118.35ドル
- 2026年4月29日:1バレル118.03ドル
- 2026年9月10日:1バレル107.63ドル
開戦後、原油価格は一時1バレル118ドル台まで上昇した。海峡の通航リスクが原油供給の不安を増幅させたためだ。
一方、11月5日のロイター通信によると、ブレント原油先物は同日早朝の取引で1バレル93.82ドル、米国産WTI原油は86.92ドルまで下落した。前日の取引でも両指標は8%超下落している。
市場では、中間選挙で共和党が敗北したことによって、トランプ大統領が軍事行動の拡大よりも外交交渉を選ぶ可能性が意識された。
ただし、原油価格の下落は戦争終結を意味しない。ロイター通信が紹介したEurasia Groupの分析では、米国の再攻撃の可能性は60%、合意成立は10%、長期的な対立継続は30%と見積もられている。これは民間調査機関によるシナリオ予測であり、実際の軍事判断を確定する数字ではない。
日本への影響も無視できない日本は中東地域からの原油輸入への依存度が高く、ホルムズ海峡の混乱はエネルギー安全保障に直結する。
原油価格が上昇すれば、ガソリンや軽油だけでなく、電力、都市ガス、化学製品、輸送費などにも価格上昇圧力がかかる。
特に重要なのは、原油価格だけを見て安心しないことだ。海上輸送の保険料、タンカーの迂回、港湾の稼働状況、LNGの調達価格なども、日本のエネルギーコストを左右する。
【トランプ政権の軍事作戦費用と戦争権限】米国議会との対立はどうなる
対イラン戦争は、米国にとって軍事面だけでなく、財政面でも大きな負担になっている。
軍事作戦費用は約380億ドルに到達米議会調査局が紹介した米議会予算局(CBO)の2026年9月推計によると、米軍の対イラン軍事作戦費用は2026年8月1日時点で約380億ドルに達した。
6月29日時点の内訳では、軍事作戦費用は約334億ドルで、そのうち約223億ドルが使用した弾薬、約74億ドルが通常作戦を超える追加費用、約37億ドルが装備の損失に関連する費用とされた。
加えて、ホワイトハウスは2026年6月、追加予算として弾薬に210億ドル、作戦経費に173億ドルを求める予算案を議会に提出している。
この数字が示すのは、空爆を実施するための費用だけではない。迎撃ミサイルの補充、艦艇の長期展開、基地の修復、兵站の維持など、戦争が長期化するほど追加負担が発生するということだ。
米軍の弾薬消費についても、米国の監察総監報告書は戦略備蓄の不足や、弾薬を再補充するための産業基盤のボトルネックを指摘している。
米国の戦争権限と議会承認の問題もう一つの大きな争点が、トランプ大統領が議会の正式な承認を得ずに軍事作戦を開始したことだ。
米国憲法では、議会に宣戦布告の権限が与えられている。一方、大統領には軍の最高司令官としての権限がある。このため、国家の安全保障を理由とする軍事行動を大統領がどこまで単独で実施できるかが問題となった。
1973年の戦争権限法(War Powers Resolution)は、大統領に議会との協議や報告を求め、米軍が敵対行為に参加する場合の議会による監督手続きを定めている。
トランプ政権は2026年3月2日に議会へ軍事作戦に関する報告を提出したが、攻撃開始前の正式な武力行使授権を得ていたわけではない。
その後、議会では軍事行動の制限や米軍撤収を求める決議が繰り返し議論された。政権側と反対派の間では、戦争権限法の適用や停戦後の軍事行動を巡る解釈も対立している。
特に問題となるのは、4月の停戦を理由に、60日間の戦争権限法上の期限に関する政権側の義務がどう扱われるのかという点だ。ブルッキングス研究所の2026年7月の分析でも、停戦によって敵対行為が終了したとする政権側の説明と、継続中の軍事作戦をどう評価するかが法的な論点として取り上げられた。
11月3日の選挙結果によって、2027年1月からは民主党が議会の主導権を握る見通しとなった。追加予算や軍事行動への監督が強化されれば、トランプ大統領が自由に戦争を拡大することは政治的に難しくなる。
【2026年中間選挙後の再攻撃はあるのか】JD・バンス副大統領との政策対立
2026年11月5日現在、最大の焦点は中間選挙後にトランプ大統領がイランへの大規模攻撃を再開するかどうかである。
選挙前から、ホワイトハウス内部では戦争を拡大することへの懸念が強まっていた。戦争の長期化によるガソリン価格の上昇や生活費の負担が、有権者の不満を高めていたためだ。
11月3日の中間選挙で共和党が敗北2026年11月3日に実施された米国中間選挙では、民主党が上下両院で主導権を獲得した。
AP通信によると、民主党は下院で共和党の議席を大きく奪い、上院でも少なくとも54議席を確保する見通しとなった。トランプ政権にとっては、残りの任期における政策運営を大きく制約される結果である。
有権者の不満はイラン戦争だけが原因ではない。物価高、生活費、政権運営への不信など複数の要素が重なっていた。しかし、戦争によるガソリン価格の上昇は、共和党の敗北に影響した重要な要因として報じられている。
バンス副大統領が戦争の責任を公然と指摘選挙結果を受け、注目を集めたのがJD・バンス副大統領の発言だ。
ロイター通信によると、バンス氏は11月4日にSNSへ投稿し、共和党の敗北について「敗因は戦争だ」という趣旨の見解を示した。加えて、戦争を終わらせるべきだとする以前の助言が正しかったと述べた。
バンス氏はトランプ政権の副大統領でありながら、対イラン戦争の費用対効果や政治的な損失について、大統領とは異なる問題意識を公にしたことになる。
一方、トランプ大統領は11月4日、戦争が共和党の選挙敗北に影響したことを認めながらも、イランの核兵器保有を阻止するために必要だったと主張。戦争について「何も違うことはしなかった」という趣旨の発言も行い、作戦の正当性を維持した。
この違いは単なる意見の相違ではない。今後の米国外交や共和党の政治戦略、2028年大統領選挙を巡る党内の主導権争いにも影響する可能性がある。
トランプ大統領が選べる3つのシナリオ11月5日のAxiosの報道では、トランプ政権が直面する選択肢は大きく3つに整理されている。
第一は、軍事攻撃の再開である。
米軍は大規模な戦闘作戦を再開するための準備を進めていると米政府関係者が説明している。トランプ大統領は米中央軍のブラッド・クーパー司令官から、攻撃再開に関する選択肢について説明を受けたとロイター通信も報じた。
ただし、米情報機関の評価では、新たな攻撃を実施してもイランの交渉姿勢を根本的に変えたり、政権交代を実現したりする効果は限定的とみられている。軍事的な成果と政治的な解決が一致する保証はない。
第二は、外交交渉による停戦と合意の再構築である。
カタールの仲介者らは、米国とイランが再び戦闘に戻らないよう、新たな合意案への支持を取り付けようとしている。今後の直接交渉につながる可能性もある。
ただし、米国はイランに対してウラン濃縮の停止など厳しい条件を求めており、イラン側がその要求を受け入れるかは不透明だ。
第三は、海上封鎖と経済制裁を継続することである。
軍事攻撃を拡大せず、イランの港湾や経済活動への圧力を維持する方法だ。米政権内部には、海上封鎖と経済制裁を通じてイラン政府に譲歩を迫るべきだという意見もある。
この方法は全面戦争への再突入を避けられる一方、効果が表れるまで時間がかかり、イラン国民の生活や周辺国の経済にも負担が及ぶ。
イエメンのフーシ派が新たな火種になる可能性中東情勢を複雑にしているのが、イランと関係の深いイエメンのフーシ派である。
フーシ派は紅海やバブ・エル・マンデブ海峡周辺の船舶航行に影響を与える能力を持つ。ホルムズ海峡がペルシャ湾側のエネルギー輸送の要衝であるのに対し、紅海側の海上交通も国際物流にとって重要だ。
2026年10月27日には、サウジアラビア主導の連合軍が、フーシ派から発射されたとする弾道ミサイル3発と無人機4機を迎撃したと発表した。
11月初旬にもサウジアラビア周辺でフーシ派による攻撃の主張が報じられている。イラン本土への再攻撃が実施されれば、こうした地域武装組織が別の戦線で活動を活発化させる可能性もある。
米議会調査局は、イランへの軍事作戦が拡大した場合、レバノン、イラク、イエメンなどの親イラン勢力が、それぞれ異なる形で反応する可能性を指摘している。
米国がイランだけを攻撃すれば戦争が終わるという単純な構図ではなく、複数の地域紛争が連動する危険が残されている。
【プロの結論】トランプ大統領の戦争政策の真相と今後の焦点
2026年の対イラン戦争を評価するうえで重要なのは、軍事的な勝利、政治的な目標達成、経済的な負担、外交的な出口を別々に考えることだ。
軍事的に優勢でも戦争に勝ったとは限らない米国とイスラエルはイランの軍事施設やミサイル関連設備に大きな損害を与えた。しかし、イランは報復能力を完全に失ったわけではない。
米議会調査局の資料では、イランが戦前のミサイル戦力の一部を維持し、地下施設で生産能力を再構築している可能性も指摘されている。
また、イラン政権は最高指導者を失った後も存続している。軍事施設を破壊することと、国家の統治体制を変えることの間には大きな隔たりがある。
トランプ政権にとって最大の課題は出口戦略トランプ大統領は、核兵器を保有するイランを阻止することが戦争の目的だと繰り返している。しかし、その目的を達成したと判断する具体的な基準は明確ではない。
仮に再攻撃を実施しても、イランが核開発を完全に放棄する保証はない。反対に、軍事行動を止めれば、これまでの犠牲や費用に対する政治的な説明が求められる。
外交交渉を選んだとしても、イラン側が核開発や海峡の管理を巡って譲歩しなければ、再び交渉が行き詰まる可能性がある。
11月3日の選挙で共和党が議会の主導権を失ったことは、トランプ政権にとって大きな転換点だ。しかし、選挙結果だけで大統領の軍事指揮権が直ちに消えるわけではない。2027年1月に新議会が発足するまでの期間も、政治的に重要な局面となる。
今後の動きを見極める5つの判断基準- 米軍の展開状況:中東への追加戦力の派遣や、米中央軍による軍事作戦準備の具体的な動き。
- 米国とイランの交渉:カタールやパキスタンの仲介による協議再開と、核開発・制裁解除を巡る条件の変化。
- ホルムズ海峡の通航量:タンカーの航行状況、機雷の危険、船舶保険料、米国による港湾封鎖の動向。
- 議会と政権の関係:民主党主導の議会による追加予算、戦争権限、軍事行動への監督強化。
- 周辺武装組織の動き:フーシ派やヒズボラなどによる攻撃と、サウジアラビアなど湾岸諸国の対応。
これらを継続的に確認することで、単なる政治家の発言や一時的な原油価格の変動に振り回されず、戦争の本当の方向性を判断できる。
【トランプ大統領のイラン戦争】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:トランプ大統領のイラン戦争はいつ始まった?
A1:2026年2月28日、米国とイスラエルによるイランへの共同軍事攻撃によって始まった。米国の作戦名は「エピック・フューリー」、イスラエルの作戦名は「ライオン・ロア」である。
Q2:2026年11月現在、米国とイランは停戦している?
A2:4月に停戦し、6月には覚書も締結したが、戦闘が再開して覚書は事実上崩壊した。11月5日時点では限定的な軍事衝突や海上での緊張が続いており、恒久的な和平は成立していない。
Q3:トランプ大統領がイランを攻撃した最大の理由は?
A3:政権が公式に掲げた主要な理由は、イランの核兵器保有阻止、弾道ミサイル能力の破壊、海軍の無力化、地域の武装組織への支援停止である。イスラエルの安全保障とイランの政治体制への圧力も重要な背景となっている。
Q4:ホルムズ海峡の封鎖で日本にも影響がある?
A4:ある。日本が中東から輸入する原油やエネルギーの輸送に影響するため、ガソリン価格、電気料金、物流費などが上昇する可能性がある。海峡の通航状況と原油価格の両方を確認する必要がある。
Q5:トランプ大統領は中間選挙後にイランを再攻撃する?
A5:2026年11月5日時点で再攻撃の正式決定は確認されていない。ただし、米軍は作戦再開の準備を進めていると報じられており、トランプ大統領には軍事攻撃、外交交渉、経済制裁の継続という複数の選択肢が残されている。
2026年のトランプ大統領による対イラン戦争は、2月28日の米国・イスラエル共同攻撃から始まり、4月の停戦、6月の覚書締結、7月の戦闘再開を経て、11月現在も終結していない。
戦争の目的として掲げられているのは、イランの核兵器保有阻止と軍事能力の弱体化だ。しかし、最高指導者の死亡や軍事施設への大規模攻撃を経ても、イランの政治体制は存続し、ホルムズ海峡を巡る対立も解消されていない。
米国側では約380億ドルの軍事費用、原油価格の上昇、議会との戦争権限を巡る対立が重くのしかかる。加えて、11月3日の中間選挙で共和党が敗北し、バンス副大統領が戦争の政治的損失を公然と指摘したことで、政権内部の意見の違いも表面化した。
今後の最大の焦点は、トランプ大統領が再攻撃に踏み切るのか、それとも外交交渉によって戦争の出口を探るのかという点にある。
ただし、再攻撃が実施されればイランの報復や周辺武装組織の参戦によって戦線が広がる危険がある。一方、交渉を選んでも核問題や海峡の管理権限、経済制裁を巡る対立が解決しなければ、長期的な緊張は残る。
トランプ大統領の戦争政策を評価する本当の基準は、何カ所の軍事施設を破壊したかではなく、核問題を解決し、中東の安定と国際的なエネルギー供給を回復できるかどうかにある。2026年11月以降の米国政治、JD・バンス副大統領の動き、ホルムズ海峡の航行状況、米国とイランの外交交渉。この4つが、戦争の行方を左右する重要な指標となる。