人工内耳を使っている有名人は誰なのか。日本の芸能界や音楽業界、海外の俳優・アーティストまで調べると、実際に人工内耳の装用を公表している人物が複数確認できる。日本では、両耳の聴力を失ったジャズベーシストの吉本信行、海外では映画・テレビ俳優のルー・フェリグノやミュージシャンのヒューイ・ルイスなどが代表的な例だ。
一方、堂本剛、浜崎あゆみ、大森元貴、スガシカオなど、難聴や突発性難聴を公表した芸能人もいる。しかし、難聴を公表したことと人工内耳を装着していることは別の話である。2026年11月現在の公開情報をもとに、本人や公的な番組・医療機関が確認できる実名、装用後の活動、噂の真相を整理する。加えて、補聴器との違い、手術費用、健康保険の適用範囲、術後のリハビリまで解説する。
- 実名で確認できる人物: 日本の吉本信行、海外のルー・フェリグノ、ヒューイ・ルイス、J.P.ジュリオッティなど。
- 芸能人の難聴との違い: 堂本剛や大森元貴らは突発性難聴を公表しているが、それだけで人工内耳の使用者とは判断できない。
- 2026年の医療制度: 3月1日から一側性高度難聴・非対称性難聴にも人工内耳の保険適用が拡大した。
- 装用後の現実: 手術だけで終わりではなく、音入れ、マッピング、聴覚リハビリを継続する必要がある。
- 最も大切な点: 人工内耳は自然な聴力を完全に再現する装置ではなく、聞こえ方や音楽の認識には個人差がある。
【2026年最新】人工内耳を使う有名人は誰?公表されている実名一覧

人工内耳の装用を公表している著名人の中でも、特に注目したいのが日本の音楽家と海外の俳優・ミュージシャンだ。
人工内耳は、外見から装着の有無を推測できる場合もあるが、体内に埋め込まれた装置だけでは外から分からないこともある。本人の証言や公式インタビュー、放送局のドキュメンタリーなどで確認できる人物を紹介する。
1. 吉本信行:両耳の聴力を失った日本人ジャズベーシスト
吉本信行(よしもと・のぶゆき)
1957年生まれ・福岡県出身
ジャズベーシスト。2015年に人工内耳の手術を受け、聴力を失った後も演奏活動を続けてきた。
日本人の人工内耳使用者として特に注目したいのが、ジャズベーシストの吉本信行だ。
吉本は大学時代にジャズと出会い、コントラバスやギターを始めた。講師紹介のプロフィールによると、2008年に右耳の聴力を完全に失い、左耳も補聴器でわずかに聞こえる状態になった。その後、2013年には左耳の聴力も失い、両耳とも聞こえない状態になった。
2015年に人工内耳の手術を受けたことが大きな転換点となった。
特筆すべきは、人工内耳によって音を認識できるようになった後も、音楽のメロディーや自分が演奏する音を通常の聴覚と同じように認識できるわけではなかった点だ。
2020年9月、NHK総合のドキュメンタリー番組「ノーナレ あるジャズマンの物語」で吉本の活動が取り上げられた。
番組では、人工内耳を使用していてもメロディーの認識には限界があり、過去に身体で覚えた音の記憶を引き出しながら演奏する姿が紹介された。
これは、人工内耳が単純に元の聴力を取り戻す装置ではないことを示す興味深い事例だ。
2020年には山口新聞も吉本の演奏活動を報道している。講師紹介プロフィールでも人工内耳を使用するジャズベーシストとして紹介されている。
2. ルー・フェリグノ:『超人ハルク』で知られる俳優
ルー・フェリグノ(Lou Ferrigno)
アメリカの俳優・元ボディビルダー
テレビドラマ『超人ハルク』で知られる俳優。2021年に人工内耳手術を受けた。
海外の著名人では、ルー・フェリグノが分かりやすい事例だ。
テレビドラマ『The Incredible Hulk(超人ハルク)』で知られ、ボディビルダーとしても世界的に有名な人物である。
フェリグノは幼少期から耳の感染症などによる重度の難聴を抱えていた。4歳から補聴器を使用していたが、長年にわたって補聴器を使っても十分な聞き取りが得られなかったという。
転機となったのは、2021年2月の人工内耳手術だ。当時69歳だった。
人工内耳のメーカーであるコクレア社の2021年の発表では、手術後に外部装置のサウンドプロセッサーを使用し、聴覚トレーニングにも取り組んでいることが紹介された。
本人は、補聴器を使っていた頃と比べ、会話の明瞭さが改善したことを説明している。
また、人工内耳を通して、それまで気づかなかった生活音を認識できるようになった経験も紹介されている。
注目したいのは、長年補聴器を使用してきた人物でも、人工内耳という別の選択肢によって聞き取りの可能性が広がった点だ。
3. ヒューイ・ルイス:人工内耳を使用する世界的ミュージシャン
ヒューイ・ルイス(Huey Lewis)
アメリカの歌手・ミュージシャン
Huey Lewis and the Newsの元リードボーカル。メニエール病による重度の聴力低下を経験している。
音楽業界で人工内耳の現実を伝える人物として重要なのが、ヒューイ・ルイスだ。
彼は長年にわたって聴力の問題を抱えており、2018年にはメニエール病による聴覚の悪化から、ライブ活動の継続が困難になった。
2026年のサンフランシスコ・クロニクルやロサンゼルス・タイムズによる報道では、片耳に人工内耳、反対側に補聴器を使用していることが伝えられた。
ここで注目すべきなのは、人工内耳によって会話の理解は改善しても、音楽の音程やメロディーを以前と同じように楽しめるとは限らないという点である。
ルイス自身も、人工内耳を通じた聞こえでは音楽の音程を認識することが難しいと説明している。
音楽家にとって、声や会話が聞こえることと、楽器の音色や複雑な音程を正確に聞き分けられることは同じではない。
この事例は、人工内耳の性能を評価する際に、単に「聞こえるようになった」という一言では語れないことを示している。
4. J.P.ジュリオッティ:人工内耳を装着してハリウッドで活動する俳優
J.P.ジュリオッティ(J.P. Giuliotti)
アメリカの俳優
『Criminal Minds』やHBOの『Room 104』に出演。
J.P.ジュリオッティは、人工内耳を装着しながら俳優として活動しているアメリカの人物だ。
本人が2020年に人工内耳メーカーのAdvanced Bionicsに掲載した体験談によると、原因が特定されなかった突発性感音難聴を経験し、右耳の聴力を完全に失い、左耳も悪化したことから人工内耳を選択した。
2015年に人工内耳の使用を開始し、音入れからわずか2週間後にテレビドラマ『Criminal Minds』の出演が決まったという。
その後、HBOの『Room 104』では、人工内耳が画面に映る状態で出演した。
本人は、装置を隠すことなく俳優として活動することを選択した経緯を紹介している。
人工内耳を使用することが、必ずしも表現活動や芸能活動を諦める理由にはならないことを示す事例である。
【噂と事実を切り分け】突発性難聴を公表した芸能人は人工内耳を使っている?
「人工内耳を使用している有名人」を調べると、堂本剛、浜崎あゆみ、スガシカオ、大森元貴といった名前が検索結果に登場する。
ただし、ここには大きな情報の混同がある。
難聴を公表した人物と、人工内耳の手術を受けた人物は同じカテゴリーではない。
突発性難聴を経験しても、治療によって聴力が回復する場合や、残った聴力を活用しながら活動を続ける場合がある。人工内耳は、その後の聴力や補聴器の効果などを総合的に評価して検討する医療機器だ。
堂本剛:2017年に左耳の突発性難聴を公表KinKi Kids(現DOMOTO)の堂本剛は、2017年6月に左耳の突発性難聴と診断されたことが所属事務所を通じて公表された。
入院治療を受け、同年7月には退院したものの、聴力は完全には回復しなかった。
2022年にはテレビ番組で、聴力が戻っていないことや、ライブでの音の聞き取りに苦労していることを説明している。
さらに2026年8月のフジテレビ系「ぽかぽか」出演時には、ライブでヘッドフォンを着用する理由について、音が大きいと音響障害によって音が割れてしまうことなどを説明した。
こうした公表情報から確認できるのは、突発性難聴の後遺症と向き合いながら音楽活動を続けているという事実だ。
一方、これらの報道や本人の説明は人工内耳の装用を示すものではない。
大森元貴:Mrs. GREEN APPLEのボーカルMrs. GREEN APPLEの大森元貴も、2024年1月に左耳の突発性難聴と診断されたことがグループの公式サイトで公表された。
所属側の発表では、医師の診断と適切な治療を受けながら活動を続ける方針が示された。
その後もテレビ出演などで活動を継続している。
しかし、突発性難聴の診断と人工内耳の装用は別の情報である。大森の公表内容を人工内耳手術の証拠として扱うことはできない。
スガシカオ:難聴の再発を公表シンガーソングライターのスガシカオは、2012年10月に右耳の突発性難聴を公表した。
2025年10月には、自身のXで難聴が再発したことを報告。全国ツアーについても、体調に配慮しながら実施する意向を示したと報じられている。
難聴を繰り返しながらも音楽活動を続ける人物として知られているが、難聴の公表は人工内耳の装用を意味しない。
浜崎あゆみ:左耳の聴力を失ったことを公表浜崎あゆみは2008年1月、自身の公式ブログで左耳の聴力を失ったことを公表した。
当時のAFPBB Newsなどの報道によると、本人は左耳が完全に機能していないと診断されたことを説明し、歌手活動を続ける意向を示していた。
このエピソードは人工内耳に関する検索で取り上げられることもあるが、左耳の聴力を失ったという発表だけでは人工内耳を装着している証拠にはならない。
【人物・関係性を比較】人工内耳の有名人と難聴を公表した芸能人一覧
ここまで紹介した人物について、人工内耳の装用事実と難聴の公表内容を整理すると、情報の違いが分かりやすくなる。
| 人物 | 職業・活動 | 公表・報道された内容 | 人工内耳の確認状況 |
|---|---|---|---|
| 吉本信行 | ジャズベーシスト | 2013年に両耳の聴力を失い、2015年に手術 | 装用を確認 |
| ルー・フェリグノ | 俳優・元ボディビルダー | 2021年2月に手術 | 装用を確認 |
| ヒューイ・ルイス | 歌手 | メニエール病による重度難聴 | 本人の装用を確認 |
| J.P.ジュリオッティ | 俳優 | 突発性感音難聴を経験 | 本人の装用を確認 |
| 堂本剛 | 歌手・俳優 | 2017年に左耳の突発性難聴 | 公表情報では装用を確認できない |
| 大森元貴 | 歌手 | 2024年に左耳の突発性難聴 | 公表情報では装用を確認できない |
| スガシカオ | シンガーソングライター | 2012年に突発性難聴を公表 | 公表情報では装用を確認できない |
| 浜崎あゆみ | 歌手 | 2008年に左耳の聴力喪失を公表 | 公表情報では装用を確認できない |
この比較から見えてくるのは、人工内耳の使用を確認するには、単なる難聴の発表ではなく、手術や装置の使用についての本人の説明、医療機関や放送局による具体的な記録が必要だということだ。
特に音楽家の場合、難聴の状態や残存聴力、活動方法によって選択する医療的支援は異なる。人工内耳を使用しているからといって、全員が同じ聞こえ方になるわけではない。
【人工内耳と補聴器の違い】仕組み・適応基準・聞こえ方を比較
人工内耳を使用する有名人について理解するには、装置そのものの仕組みを知っておく必要がある。
人工内耳と補聴器は、どちらも聞こえを支援する機器だが、音を届ける方法が根本的に違う。
人工内耳の仕組みとは?人工内耳は、耳の奥にある蝸牛(かぎゅう)に電極を埋め込み、聴神経を電気刺激することで音の情報を脳へ伝える装置だ。
通常の聴覚では、音の振動が外耳道、鼓膜、耳小骨を通って蝸牛に届く。蝸牛の有毛細胞が振動を電気信号に変換し、その情報が聴神経を通って脳に伝わることで音として認識される。
ところが、蝸牛の有毛細胞に大きな障害がある場合、音の振動を十分に電気信号へ変換できなくなる。
人工内耳は、この部分を補うために開発された。
基本的な動作は次のとおり。
1. 耳の外側にあるマイクで音を集める。
2. スピーチプロセッサーが音を電気信号に変換する。
3. 送信コイルを通じて、頭部に埋め込まれた受信装置に信号を送る。
4. 蝸牛内の電極が聴神経を刺激する。
5. 脳がその信号を音として認識する。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、この仕組みを公式に説明している。
人工内耳と補聴器は何が違う?補聴器
音を増幅して耳に届ける。
人工内耳
音を電気信号に変換し聴神経を刺激する。
| 比較項目 | 補聴器 | 人工内耳 |
|---|---|---|
| 基本原理 | 音を増幅する | 電気刺激で聴神経に情報を送る |
| 手術 | 原則不要 | 必要 |
| 体内への埋め込み | なし | あり |
| 主な対象 | 補聴器で聞き取りの改善が期待できる人 | 補聴器でも十分な聞き取りが得られない高度・重度難聴の人 |
| 音の聞こえ方 | 残っている聴力を活用 | 人工内耳特有の音に慣れる必要がある |
| リハビリ | 調整や聞き取り訓練など | マッピングと聴覚リハビリが必要 |
重要なのは、人工内耳が補聴器の上位機種というわけではないことだ。
それぞれに異なる適応があり、補聴器で十分に言葉を聞き取れる人が、必ず人工内耳に変更する必要はない。
また、人工内耳と補聴器を反対側の耳に併用する方法もある。聞き取りの改善効果には個人差があるため、医師による評価が欠かせない。
人工内耳の適応基準は?人工内耳は、難聴の程度だけでなく、補聴器を使用した場合の言葉の聞き取り、蝸牛や聴神経の状態、画像検査、全身状態などを総合的に評価して適応が決められる。
成人では、重度難聴や高度難聴で補聴器を使っても十分な言葉の聞き取りが得られないケースが主な対象となる。
小児の場合は、原則として体重8kg以上または年齢1歳以上で、重度難聴や補聴器による聞き取りが不十分な場合などに検討される。
さらに2026年には、日本耳科学会が成人人工内耳適応基準を更新している。
従来の両耳の高度難聴だけでなく、一側性高度難聴や非対称性難聴にも医療制度上の選択肢が広がったことは、大きな変化だ。
ただし、聴力検査の結果だけで手術が決まるわけではない。患者の生活状況や期待できる効果、手術後のリハビリへの取り組みも考慮される。
【手術費用・保険適用】人工内耳はいくらかかる?2026年の制度と術後リハビリ
人工内耳について調べる人が気になるのが、手術費用と健康保険の適用範囲だ。
人工内耳は高額な医療機器を使用する手術だが、対象となる場合には公的医療保険が適用される。
人工内耳の手術費用は約400万円?人工内耳は、手術費用や埋め込み装置などを含めると、保険適用前の医療費が約400万円になるケースがある。
日本財団ジャーナルに掲載された専門家への取材でも、装置と手術を含めた費用の目安として約400万円が紹介されている。
ただし、これは保険適用前の費用の参考値であり、患者が実際に400万円を支払うという意味ではない。
保険診療の対象となる場合、年齢や所得などに応じた自己負担割合が適用される。さらに高額療養費制度を利用できる場合は、月ごとの自己負担上限額を超えた分について払い戻しを受けられる。
自治体によっては、自立支援医療や障害者医療費助成などの制度も利用できる場合がある。
したがって、実際の支払額は患者の状況によって異なる。
2026年3月から片耳の高度難聴にも保険適用が拡大2026年の大きな変化として押さえておきたいのが、一側性高度難聴・非対称性難聴への人工内耳の保険適用だ。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の2026年2月20日の理事会報告によると、一側性高度難聴および非対称性難聴への適応拡大について、2026年2月3日に対象製品が薬事承認され、2026年3月1日から保険収載されることが報告された。
これは、片耳だけが極めて聞こえにくい人にとっても重要な変化となる。
日本耳科学会の2024年版適応基準では、後天性の一側性高度・重度感音難聴について、次のような条件が示されている。
- 難聴の発症から6カ月以上経過していること
- 他の治療で聴力の改善が見込めないこと
- 言語習得後の症例であること
- 原則として5歳以上であること
- 補聴器など既存の聴覚補償方法も含めて総合的に評価すること
ただし、片耳の聴力が低下している人全員が対象になるわけではない。適応条件や使用可能な製品、医療機関の対応を確認する必要がある。
人工内耳の術後リハビリとマッピングとは?人工内耳は、手術が成功すれば直ちに通常の聴力が戻るという装置ではない。
術後には、人工内耳から入る音に脳が慣れるためのリハビリテーションが必要になる。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のQ&Aによると、一般的な流れは次のとおりだ。
手術
全身麻酔で行われ、通常の手術時間は2〜3時間程度。
音入れ
術後1〜2週間前後で、初めて人工内耳を通じた音を聞く。
マッピング
電極ごとの刺激の強さなどを調整し、聞き取りやすい状態に近づける。
聴覚リハビリ
術後1〜2カ月程度は週1回ほどの調整・訓練を行うことが一般的。
長期的なメンテナンス
聞こえが安定した後も、半年から1年に1回程度の定期的な確認が必要。
特に小児では、言葉を習得する段階にあるため、成人より頻繁なリハビリが必要になることもある。
マッピングとは、人工内耳の電極から送る電気刺激の設定を調整する作業だ。聞こえ方や不快感には個人差があるため、装用者の状態を確認しながら設定を調整していく。
【人工内耳の専門病院】琉球大学病院・金沢大学附属病院の診療体制
人工内耳を検討する場合、手術を行う病院だけでなく、術後のマッピングや聴覚リハビリを継続できる医療体制も重要になる。
日本国内では大学病院などに人工内耳を扱う専門診療体制が整備されている。
琉球大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科
小児・成人の人工聴覚器手術や聴覚リハビリテーションに対応。
琉球大学病院の耳鼻咽喉・頭頸部外科では、小児難聴、突発性難聴、人工内耳などを診療対象としている。
公式診療科案内では、小児・成人人工聴覚器手術(人工内耳・人工中耳)と、聴能・言語訓練、聴覚リハビリテーションを得意分野として掲載している。
また、人工内耳の専門外来も設けられており、難聴の診断から手術後の支援までを視野に入れた診療体制が確認できる。
新患については紹介状や予約などの条件があるため、受診前に確認したい。
金沢大学附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
人工内耳を含む難聴の専門診療に対応。
金沢大学附属病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科も、人工内耳を診療対象として公表している。
同院の人工内耳診療は、先天性難聴の子どもから成人の中途失聴者まで、幅広い年代の聞こえを支える医療として紹介されてきた。
FNNプライムオンラインが2022年に報じた取材では、金沢大学附属病院の杉本寿史准教授が人工内耳の仕組みや手術について説明している。
同報道では、両耳の重度難聴を経験した患者が手術を受け、会話の聞き取りが改善した事例も紹介された。
また、同院では先天性難聴の乳幼児への早期対応や、術後の言語発達支援にも取り組んでいることが伝えられている。
病院を選ぶときの判断基準人工内耳の相談先を選ぶ際には、次の点を確認するとよい。
- 人工内耳の手術実績と専門医の診療体制
- 術前の聴力検査・語音聴取検査の内容
- 使用可能な人工内耳メーカーと機種
- 術後のマッピングや聴覚リハビリの体制
- 通院の頻度と自宅からのアクセス
- 高額療養費制度や自治体の助成についての相談体制
手術を受ける病院と、その後に定期的な調整を受ける施設の連携も大切だ。
【プロの結論】人工内耳を使う有名人から分かる、本当の聞こえと音楽活動の可能性
人工内耳を装用している有名人の事例から見えてくるのは、聞こえの回復には一つの正解がないということだ。
特に吉本信行とヒューイ・ルイスの事例は、人工内耳を理解するうえで示唆に富んでいる。
吉本は、両耳の聴力を失った後も、身体に蓄積された音楽の記憶を頼りに演奏を続けた。一方、ヒューイ・ルイスは人工内耳によって会話の理解が改善したものの、音楽の音程を以前のように認識することは難しいと語っている。
この2人に共通しているのは、人工内耳の効果を単純な「聞こえる・聞こえない」の二択では説明できないという点だ。
人工内耳を検討する人が知っておきたい3つの判断基準1. 補聴器で十分な聞き取りが得られているか
人工内耳は、補聴器では十分な聞き取りが難しい人にとって重要な選択肢だ。補聴器の効果を適切に評価したうえで検討する必要がある。
2. 手術後もリハビリを続けられるか
人工内耳は手術で完成する医療ではない。音入れやマッピングを繰り返しながら、新しい音の情報に慣れていく必要がある。
3. 何を改善したいのかが明確になっているか
会話の聞き取り、職場でのコミュニケーション、騒音下での会話、音の方向感など、改善を期待する内容を明確にすることが大切だ。
一方、人工内耳によって自然な音質や音楽の細かな表現が完全に戻ると期待することは適切ではない。音楽を楽しめる程度にも個人差がある。
グレアム・クラークの開発が変えた聴覚医療の歴史オーストラリアの医学者。多チャンネル型人工内耳の開発を主導した人物。
人工内耳の歴史を語るうえで欠かせないのが、オーストラリアの医学者グレアム・クラーク教授だ。
クラーク教授は1967年に難聴治療の研究を始め、1978年に多チャンネル型人工内耳の移植に成功した。
この技術は、単一の刺激ではなく、複数の電極を使って蝸牛の異なる部位を刺激するという考え方に基づいている。
オーストラリア国立博物館の資料でも、1978年に最初の多チャンネル型人工内耳の試作品がロッド・サンダースに埋め込まれたことが紹介されている。
つまり、グレアム・クラークは人工内耳の著名な開発者であり、装用を公表した芸能人とは異なる立場の人物だ。
現在の人工内耳医療は、こうした研究と技術開発の積み重ねによって発展してきた。
人工内耳を使用する有名人の存在は、難聴を抱えながら仕事や表現活動を続ける人々にとって、一つの具体的な参考事例になる。
ただし、著名人の成功体験をそのまま自分の治療結果に当てはめることはできない。医学的な適応と本人の生活環境に合わせた選択が何より重要だ。
【人工内耳の有名人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本で人工内耳を使用している有名人は誰ですか?
吉本信行が代表的な公表事例だ。両耳の聴力を失った後、2015年に人工内耳手術を受けたジャズベーシストで、2020年にはNHKのドキュメンタリー「あるジャズマンの物語」で紹介された。
Q2:堂本剛や浜崎あゆみは人工内耳を使っていますか?
堂本剛は2017年に左耳の突発性難聴を公表し、浜崎あゆみは2008年に左耳の聴力を失ったことを公表している。ただし、それぞれの公表内容や報道から人工内耳の装用を確認することはできない。難聴の公表と人工内耳の装用は区別する必要がある。
Q3:人工内耳を使えば普通の人と同じように聞こえますか?
必ずしも同じようには聞こえない。人工内耳は電気刺激によって聴神経に音の情報を伝える装置であり、自然な聴覚とは聞こえ方が異なる。会話の理解が改善する人もいる一方、音楽のメロディーや音程の認識には限界がある場合もある。
Q4:人工内耳の手術費用は保険適用になりますか?
医学的な適応基準を満たす場合、公的医療保険が適用される。2026年3月1日からは一側性高度難聴・非対称性難聴にも保険適用が拡大した。高額療養費制度なども利用できる場合があるため、具体的な自己負担額は病院や加入する保険に確認したい。
Q5:人工内耳の手術後はリハビリが必要ですか?
必要だ。一般的には術後1〜2週間前後に音入れを行い、その後マッピングや聴覚リハビリを続ける。聞こえが安定した後も定期的な機器調整や検査が必要になる。
Q6:人工内耳を使って音楽活動や歌手活動はできますか?
可能な場合がある。吉本信行は人工内耳を使用しながらジャズベーシストとして活動を続けてきた。一方、ヒューイ・ルイスのように会話の聞き取りが改善しても音程の認識が難しいケースもある。音楽活動への影響には個人差がある。
2026年11月現在、人工内耳の装用を公表している有名人として、日本の吉本信行、海外のルー・フェリグノ、ヒューイ・ルイス、J.P.ジュリオッティなどが確認できる。
一方、堂本剛、浜崎あゆみ、大森元貴、スガシカオは難聴に関する公表事例として知られているが、難聴を公表したことだけで人工内耳の使用者とは判断できない。
また、2026年3月1日から一側性高度難聴・非対称性難聴にも保険適用が広がったことは、人工内耳医療における大きな制度変更だ。
人工内耳は、補聴器では十分な聞き取りが難しい人にとって、新しい可能性を広げる医療機器である。しかし、手術を受ければすべての音が自然に聞こえるわけではなく、マッピングやリハビリを継続することが欠かせない。
有名人の事例から学べる最大の要点は、難聴があっても仕事や音楽、社会活動を続ける道は一つではないということだ。
人工内耳を検討している場合は、著名人の体験談だけで判断せず、人工内耳を扱う耳鼻咽喉科で聴力検査や補聴器の効果を評価してもらい、自分に合った治療方法を選ぶことが大切だ。