有志の会の政策を理解するうえで重要なのが、「中道・新保守」という独自の立ち位置です。
この言葉は、単純に保守政党とリベラル政党の中間に位置するという意味ではありません。吉良州司氏の公式説明によると、米国のネオコン(新保守主義)とは異なり、生活者の利益を重視しながら、国家運営では現実的な判断を尊重する政治思想です。
「生活者主権の政治」「将来世代優先の政治」
この2つが、有志の会の理念を理解するための中心的なキーワードです。
1.生活者主権:業界や団体よりも個人の暮らしを優先生活者主権とは、政治や経済の仕組みを業界団体や特定の組織の利益から考えるのではなく、国民一人ひとりの生活を起点に組み立てる考え方です。
吉良氏の説明では、自民党の「業界主権政治」に対する対立軸として位置づけられています。
具体的な政策の方向性は次のとおりです。
- 物価高に対応し、家計の可処分所得を増やす。
- 賃金上昇と個人消費の拡大を通じて経済成長を目指す。
- 子育て世帯への支援を拡充する。
- 中間層の所得と生活基盤を強化する。
- 災害や感染症などの危機に強い医療・社会保障制度を構築する。
注目したいのは、経済成長の成果を企業や産業の数字だけで評価するのではなく、個人の所得や生活の豊かさにつなげようとしている点です。
2.将来世代優先:子どもと教育への投資を重視もう一つの柱が、将来世代を優先する政治です。
吉良氏の基本政策では、人口減少が進む日本において、目先の経済指標だけを追うのではなく、次の世代が豊かに暮らせる社会をつくることが重視されています。
主な方向性は、教育の充実、子どもへの投資、子育て家計への支援です。
また、幼児教育から学校教育、社会人の学び直しまで、生涯にわたる教育機会の確保も政策課題として挙げられています。
これは、少子化対策を出生数の改善だけに限定せず、子どもを育てやすい家計環境や、将来の所得につながる教育投資まで含めて考える発想です。
3.外交・安全保障は現実主義を重視有志の会の特徴は、生活や分配を重視する一方、国家の安全保障については現実的な政策判断を求めていることです。
吉良氏の公式説明では、憲法論議、外交・安全保障、エネルギー政策、経済安全保障などについて、政権党と政権を担おうとする野党の間に大きな方向性の違いがなくてもよいという考えが示されています。
具体的には、次のような政策分野が重視されています。
- 国防と外交における現実的な対応。
- エネルギー安全保障の確立。
- 食料安全保障の強化。
- 防災・減災と国民の生命・健康の保護。
- 国際協調と日本の自主的な外交姿勢の両立。
ここには、野党だから政府の政策に反対するという姿勢ではなく、国家運営に必要な政策では継続性を重視するという考え方があります。
4.中道・新保守は右派なのか、左派なのか?この疑問に対する答えは、左右の分類だけでは有志の会の立場を十分に説明できない、ということです。
子育て支援、教育投資、中間層の強化という政策は、一般にリベラル寄りと受け取られる場合があります。一方、外交・安全保障やエネルギー政策での現実主義は、保守的な政策姿勢とも重なります。
有志の会が目指したのは、こうした政策を左右の対立に押し込めず、国家運営に必要な政策と生活者に必要な政策を組み合わせることでした。
ただし、これらは会派の理念や基本方針を示したものであり、5人全員があらゆる政策で同じ意見だったことを意味するものではありません。
【会派再編の全経緯】2021年の結成から2026年1月の衆院解散まで

有志の会は、結成時の5人から所属議員が変化し、2026年1月の衆議院解散を迎えました。途中には自民党への移籍や、他の小規模会派との共同会派結成もありました。
2021年11月4日:5人で会派を結成第49回衆院選後、吉良氏、緒方氏、北神氏、福島氏、仁木氏が集まり、有志の会を結成しました。
衆議院の会派別所属議員数を記録した資料でも、2021年11月10日時点で5人の会派として掲載されています。
当初は、政党の公認を受けずに当選した議員が、国会内で政策活動を継続するための受け皿という意味合いが強いものでした。
2023年10月:仁木博文氏が自民党へ移籍最初の大きな変化は2023年10月4日です。
仁木博文氏が自民党の徳島1区支部長に選任され、自民党に入党しました。これに伴って有志の会を離脱し、会派は5人から4人に減少しました。
仁木氏の公式プロフィールにも、2023年の自民党入党と徳島県第一選挙区支部長への就任が記録されています。
2025年10月:改革の会との共同会派を結成2025年には、会派の再編をめぐる動きがありました。
9月に結成された改革の会は、阿部弘樹氏、斉木武志氏、守島正氏の3人で構成されていました。この3人と有志の会の4人が、2025年10月6日に共同会派「有志・改革の会」を結成します。
所属議員は合計7人となり、一時的に有志の会の活動範囲が広がりました。
しかし、この共同会派は長続きしませんでした。2025年10月20日に会派を解消し、有志の会4人と改革の会3人に分かれています。
その後、改革の会は2025年11月に会派を解消して自民党会派に合流しました。有志の会は元の4人体制で活動を続けました。
2026年1月21日:北神圭朗氏が離脱2026年1月には、さらに大きな転換が起きます。
北神圭朗氏が自民党公認で次期衆院選に立候補する決断を表明し、1月21日に有志の会を離脱しました。
北神氏は自身の公式サイトで、無所属として活動してきた経験を踏まえ、今後は自民党の中で政策を実現したいという趣旨を説明しています。
これにより、会派は緒方氏、吉良氏、福島氏の3人となりました。2026年1月22日現在の院内会派所属議員数の記録でも、この3人が有志の会の所属議員として確認できます。
2026年1月23日:衆議院解散2026年1月23日、高市早苗首相の判断で衆議院が解散されました。
首相官邸が公開した解散に関する記者会見では、政権の重要政策転換について国民の判断を求める考えが説明されています。
この解散によって、当時の衆議院議員で構成されていた有志の会は、院内会派としての活動を終えることになりました。
2026年2月8日:総選挙でメンバーの明暗が分かれる第51回衆議院議員総選挙は2026年2月8日に投開票されました。結成メンバーのうち、緒方氏は当選しましたが、吉良氏と福島氏は議席を失いました。
選挙結果は次のとおりです。
- 緒方林太郎氏:福岡9区で100,800票を獲得し当選。
- 吉良州司氏:大分1区で71,151票を獲得したものの落選。
- 福島伸享氏:茨城1区で84,703票を獲得したものの落選。
- 北神圭朗氏:自民党公認で京都4区から出馬し、142,149票で当選。
この結果、結成時の5人は、それぞれ異なる政治的な立場に移ることになりました。
2026年9月28日:緒方氏は新会派「志士の会」を結成2026年の現在を考えるうえで、もう一つ押さえておきたい動きがあります。
2026年9月28日、緒方林太郎氏は、元立憲民主党代表の泉健太氏と新しい衆議院会派「志士の会」を結成しました。
これは衆議院への新たな会派届の提出を伴うもので、TBS NEWS DIGやFNNプライムオンラインも報じています。
重要なのは、「志士の会」と「有志の会」は別の会派だということです。名称が似ているものの、2021年に結成された有志の会がそのまま名称変更して存続したわけではありません。
衆議院の2026年9月28日現在の公式会派一覧にも、「志士の会」は2人の会派として掲載されていますが、「有志の会」の名称はありません。
【他会派との違い】有志の会は自民党・立憲民主党・維新と何が違った?
有志の会を理解するには、単に政策の左右を比較するよりも、組織の成り立ちと国会での立場を比較が必要です。
1.自民党との違い自民党は、全国的な組織、地方組織、党員制度、候補者公認制度などを持つ政党です。政権を担う組織として、政策の立案から実行までを党全体で進めます。
これに対し、有志の会は5人の無所属議員を中心とした院内会派でした。
自民党の業界団体を重視する政治に対して、吉良氏は生活者主権を対立軸として提示していました。一方、外交・安全保障などでは現実的な政策判断を重視しており、保守的な政策分野で自民党と共通する考え方もありました。
2.立憲民主党との違い結成メンバーには、民主党政権時代に活動していた議員が含まれていました。しかし、2021年の結成時に立憲民主党へ合流する道を選んだわけではありません。
吉良氏の説明では、野党が自民党との違いを強調しすぎることに疑問が示されています。特に外交や安全保障などでは、政権交代が起きても国家としての基本方針を維持できることが重要だという考えです。
そのため、従来の野党の対立構造にそのまま加わるのではなく、独自の政策軸を持つことを目指しました。
3.日本維新の会との違い日本維新の会も既存の政治構造の改革や行政改革を重視してきた政党ですが、有志の会とは組織の規模も政策の形成過程も異なります。
有志の会は、大規模な政党組織を形成するより、少数の無所属議員が専門性と選挙区での支持を生かして活動することを選択しました。
特に生活者主権、将来世代への投資、教育や子育て支援を中心に据えた政策理念は、会派を特徴づけるものでした。
4.比較すると見えてくる有志の会の特徴整理すると、次の3点が他会派との大きな違いです。
- 組織:政党の公認候補ではなく、無所属で当選した議員を中心に構成。
- 政策:左右の対立よりも、生活者主権と将来世代優先を重視。
- 国会活動:少数会派として、独自の政策発信と議会活動を行う。
ただし、小規模会派だからこそ、所属議員の移動や選挙結果が組織の存続に大きく影響します。有志の会の歩みは、無所属議員が独自の政治的な立場を維持する難しさも示しています。
【有志の会に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:有志の会は政党ですか?
A1:政党ではなく、衆議院の院内会派です。2021年11月4日に無所属議員5人が結成届を提出しました。
Q2:有志の会の結成メンバー5人は誰ですか?
A2:吉良州司氏、緒方林太郎氏、北神圭朗氏、福島伸享氏、仁木博文氏です。
Q3:有志の会はなぜ結成されたのですか?
A3:既存政党の枠組みにとらわれず、無所属議員が独自の政策を掲げて政治の刷新を目指すためです。民主党政権への評価や、従来の与野党対立に対する問題意識も背景にありました。
Q4:「中道・新保守」とはどのような政策ですか?
A4:生活者主権と将来世代優先を基本に、教育投資、子育て支援、中間層の強化を目指す考え方です。外交・安全保障やエネルギー政策では現実的な対応を重視しています。
Q5:有志の会は2026年1月に解散したのですか?
A5:2026年1月23日の衆議院解散により、従来の院内会派としての活動は区切りを迎えました。2月の総選挙後は旧会派として再結成されていません。政党の解散と同じ意味ではありません。
Q6:2026年現在、有志の会のメンバーは誰ですか?
A6:2026年11月時点で、2021年に結成された有志の会は現存する衆議院会派として確認できません。緒方林太郎氏は2026年9月28日に泉健太氏と新会派「志士の会」を結成していますが、これは別の会派です。
Q7:仁木博文氏と北神圭朗氏は現在も有志の会に所属していますか?
A7:所属していません。仁木氏は2023年に自民党へ入党し、北神氏は2026年1月21日に会派を離脱して自民党公認で衆院選に出馬しました。両氏とも2026年の衆院選で当選しています。
有志の会は、2021年11月4日に吉良州司氏、緒方林太郎氏、北神圭朗氏、福島伸享氏、仁木博文氏の5人で結成された衆議院会派です。
その根底にあったのは、既存政党の枠組みを超え、生活者主権と将来世代優先を実現する政治を目指すという理念でした。「中道・新保守」という言葉には、生活者の利益を重視しながら、国家運営では現実的な判断を尊重する姿勢が表れています。
しかし、2023年の仁木氏の自民党入り、2025年の改革の会との共同会派、2026年1月の北神氏の離脱と衆議院解散を経て、組織としての形は大きく変わりました。
2026年2月の総選挙では緒方氏だけが再選し、吉良氏と福島氏は落選。さらに9月28日には、緒方氏が泉健太氏と「志士の会」を結成しました。
したがって、2026年の有志の会を調べる際には、次の3つを区別することが大切です。
- 2021年の有志の会:無所属議員5人によって結成された当初の会派。
- 2026年1月までの有志の会:所属議員の移動を経て3人となり、衆議院解散で活動に区切りがついた会派。
- 2026年9月以降の志士の会:緒方林太郎氏と泉健太氏が新たに結成した別の会派。
有志の会の歴史から読み取れるのは、政治家個人の政策理念と、政党・会派という組織の存続は必ずしも一致しないということです。今後の政治動向を見る際も、会派名だけで判断せず、所属議員、本人の政策発信、衆議院の公式会派一覧を照合することが、正確な理解につながります。