マイクロプラスチックは、血液や肺、胎盤、さらには生殖器官など、人間の体内からも検出されています。かつては海洋汚染や食品への混入といった環境問題として語られることが中心でしたが、2026年には人体への取り込みや組織への蓄積、心血管疾患や生殖機能との関連を調べるヒト研究が相次いで報告されています。
特に注目されるのが、2026年2月に学術誌『Environmental Health』で発表されたヒト研究のシステマティックレビューです。加えて、同年10月には肺組織を対象とした比較研究や、生殖器官に関する新たなレビューも公表されました。ただし、体内から検出されたことと、特定の病気を引き起こしたことは同じではありません。現在の研究で確認された事実と、まだ証明されていない健康リスクを分けて考える必要があります。
【まず知っておきたい】マイクロプラスチックとは?人体に入る3つの経路

マイクロプラスチックとは、一般的に直径や長さなどの大きさが5mm未満のプラスチック粒子を指します。
ペットボトルや食品包装、合成繊維、タイヤなどのプラスチック製品が、紫外線や摩擦、熱、風化などによって細かく砕けることで発生します。
さらに小さいものがナノプラスチックです。一般的には1μm未満の粒子を指すことが多いものの、研究によって定義には違いがあります。
両者の違いは、単に大きさだけではありません。粒子が小さくなるほど、細胞や組織との相互作用、生体内での移動などが異なる可能性があります。
特にナノプラスチックは、細胞膜や生体のバリアを通過する可能性が指摘されています。ただし、人間の体内でどの程度移動し、どの臓器にどれほど残留するのかについては、まだ十分なデータがありません。
人体に取り込まれる主な3つの経路人間がマイクロプラスチックに接触する経路は、大きく分けて経口摂取、吸入、皮膚接触です。
1.食品・飲料水からの経口摂取
食品や飲料水は、日常生活における主要な曝露経路の一つです。
研究では、以下のような食品・飲料からマイクロプラスチックが検出されています。
- 飲料水やペットボトル入りの水
- 魚介類や貝類
- 食塩
- 食品包装に接触する食品
- 一部の加工食品
ただし、食品から検出された粒子が、そのまま人体に吸収されるわけではありません。消化管での移動、排出、腸管からの取り込みなど、複数の過程を経るためです。
2.空気中の粒子を吸い込む吸入経路
合成繊維の衣類やカーペット、家具、タイヤの摩耗などから生じる微細なプラスチック粒子は、室内外の空気中に存在します。
呼吸によって取り込まれた粒子の一部は気道に沈着する可能性があります。
2022年に発表された英国の研究では、手術などで採取された13人の肺組織を調べ、11人の検体から計39個のマイクロプラスチックを確認しました。
この研究は、空気中のマイクロプラスチックが肺に到達し得ることを示す重要な報告です。
3.皮膚との接触
化粧品や日用品、繊維製品などを通じて、プラスチック由来の成分や粒子が皮膚に接触することもあります。
ただし、通常の皮膚からマイクロプラスチック粒子そのものがどの程度体内に吸収されるかは、経口摂取や吸入と比べて研究が限られています。
したがって、人体への影響を考える際には、食品・飲料水と空気からの曝露を中心に評価する必要があります。
【血液・胎盤・肺で検出】人体への蓄積はどこまで確認された?
マイクロプラスチック研究の大きな転換点は、環境中だけでなく、人間の血液や臓器からもプラスチック由来の粒子が検出されるようになったことです。
血液から検出された2022年の研究2022年3月、学術誌『Environment International』に、健康な成人22人の血液を分析した研究が発表されました。
研究チームは、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(Py-GC/MS)を利用し、血液中のプラスチック由来ポリマーを測定しました。
結果として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、スチレン系ポリマーなどが確認されました。
測定対象は700nm以上の粒子で、定量可能だったポリマーの合計濃度は平均1.6μg/mLでした。
この研究の重要な点は、プラスチック由来の成分が人間の血流に到達していることを示した点です。
ただし、1.6μg/mLはポリマー成分の質量濃度であり、血液1mLあたりの粒子数ではありません。また、22人という小規模な研究であり、この数値を一般人口全体の平均値として扱うことはできません。
胎盤からの検出は母体と胎児への影響を意味するのか胎盤についても、重要な報告があります。
2020年に発表され、2021年に学術誌『Environment International』に掲載された研究「Plasticenta」では、6人の妊婦から採取した胎盤を分析しました。
その結果、6検体中4検体から合計12個のマイクロプラスチック粒子が確認されました。
粒子の大きさは5〜10μmで、母体側、胎児側、絨毛膜羊膜部分のそれぞれから検出されています。
分析にはラマン顕微分光法が使われ、粒子の形状や化学的特徴が調べられました。
この報告が注目された理由は、胎盤という母体と胎児の間にある重要な組織からプラスチック粒子が見つかったためです。
一方、胎盤から検出されたことだけで、胎児の健康被害や発達への影響が証明されたわけではありません。胎児への移行量や出生後の健康状態との関係については、継続的な調査が必要です。
2026年の研究で肺への蓄積を比較2026年10月に『The Lancet Regional Health – Europe』で公表された研究では、1991年と2024年に採取された肺組織を比較しました。
対象は1991年に死亡した42人と、2024年に死亡した57人の剖検検体です。
レーザー直接赤外線イメージング(LDIR)による分析では、以下の結果が示されました。
- 1991年の検体:42人中8人、約19%で検出
- 2024年の検体:57人中44人、約77%で検出
加えて、検出された検体における粒子数の中央値は、1991年の12.9個/gから2024年の19.9個/gへ増加していました。
2024年の検体では、粒子の種類が多様化し、より小さい粒子が確認されたことも報告されています。
また、粒子が検出された肺組織では、炎症に関係するCD68と、線維化に関係するコラーゲンIの量が多い傾向も見られました。
ただし、この研究は異なる年代の剖検検体を比較した観察研究です。マイクロプラスチックが肺の炎症や線維化を直接引き起こしたと証明するものではありません。
2026年に確認された人体検出研究の全体像2026年には、人体試料に関する研究をまとめたレビューも複数発表されています。
特に注目したいのが、人体の血液、尿、便、胎盤、母乳、精液、肺、心臓などを対象にした40研究をまとめたシステマティックレビューです。
このレビューでは、多くの研究でポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PETなどが検出されていました。
ただし、研究間で分析方法や検出限界が異なり、対象研究の52.5%は中程度の質と評価されています。
つまり、人体からの検出は複数の研究で報告されているものの、どの程度の量が体内に存在するのかを正確に比較するには、まだ課題が残っています。
【心血管疾患との関連】血管内のマイクロプラスチック研究で分かったこと
人体への影響をめぐる研究の中で、特に大きな注目を集めたのが心血管疾患との関連です。
2024年3月、医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に、頸動脈のプラークとマイクロプラスチック・ナノプラスチックの関係を調べた研究が掲載されました。
頸動脈プラーク257人を対象にした研究この研究では、無症候性の頸動脈疾患があり、頸動脈内膜剥離術を受けた257人を対象に、血管内のプラークを分析しました。
プラークとは、血管壁にコレステロールなどが蓄積して形成される病変です。進行すると血管が狭くなり、脳梗塞などのリスクにつながります。
研究チームは、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法などを用いて、プラスチック由来の成分を調べました。
その結果、以下のことが確認されました。
- 257人中150人のプラークからポリエチレンを検出
- 150人のうち31人ではポリ塩化ビニル(PVC)も確認
- 一部の検体では、マクロファージと呼ばれる免疫細胞内に粒子が存在
加えて、追跡調査で心筋梗塞、脳卒中、全死亡を合わせた複合評価項目を調べたところ、マイクロプラスチック・ナノプラスチックが検出されたグループでは、検出されなかったグループよりもイベント発生率が高い結果となりました。
| 比較項目 | 粒子検出あり | 粒子検出なし |
|---|---|---|
| 対象者数 | 150人 | 107人 |
| 心筋梗塞・脳卒中・全死亡の複合イベント | 30人 | 8人 |
| イベント発生割合 | 20.0% | 7.5% |
| 調整ハザード比 | 約4.53 | 基準 |
追跡期間は約34か月です。
この結果は、血管内のプラスチック粒子と心血管イベントの間に、無視できない関連があることを示しています。
なぜ心臓や血管への影響が懸念されるのか研究者が注目しているのは、マイクロプラスチックと炎症反応の関係です。
血管内に異物が存在すると、免疫細胞が反応する可能性があります。実験研究では、マイクロプラスチックやナノプラスチックによる酸化ストレス、炎症性反応、細胞機能への影響などが報告されています。
こうした反応が血管内皮やプラークの安定性に関係する可能性が考えられています。
ただし、NEJMの研究は観察研究です。
対象者はもともと頸動脈疾患があり、手術を受けた患者に限られています。一般の健康な人に同じリスクが当てはまるわけではありません。
また、喫煙、食生活、年齢、生活環境など、心血管疾患に影響する別の要因を完全に取り除くことは困難です。
マイクロプラスチックが心筋梗塞や脳卒中の直接原因だと確定したわけではないという点が重要です。
【生殖機能・精子・胎盤への影響】2026年の最新レビューが示した懸念
生殖機能も、マイクロプラスチック研究で重要なテーマになっています。
特に、精液や精巣、卵胞液、胎盤などから粒子が検出されていることから、男性・女性の生殖機能や妊娠への影響が調べられています。
精液からの検出と精子の運動性2025年7月に学術誌『Toxics』で発表された研究では、生殖医療機関を受診した男性45人の精液を分析しました。
その結果、45人中34人の検体からマイクロプラスチックが確認され、15種類のポリマーが識別されました。
研究では、PET由来の粒子への曝露と、精子の前進運動率の低下との関連が報告されています。
精子の前進運動率は、精子が前方へ移動する能力を示す指標です。受精能力を考えるうえで重要な評価項目の一つとなります。
ただし、この研究には対象者数が少ないこと、生活習慣や他の環境汚染物質などの影響を十分に調整できていないことなどの制約があります。
したがって、精液から粒子が検出されたことだけで不妊の原因と判断することはできません。
2024年の中国の複数施設研究2024年には、中国の複数施設で113人の男性を対象にした研究も発表されました。
精液や尿の分析が成功した100人について、複数種類のマイクロプラスチックへの曝露と精子の状態との関係が調べられています。
研究では、検出されたプラスチックの種類が増えるほど、精子濃度や総精子数、前進運動率、正常形態率などが低くなる傾向が報告されました。
これは混合曝露の影響を考えるうえで興味深い結果です。
ただし、複数のプラスチックへの曝露と精子の状態に統計的な関連が見つかったことと、プラスチックが精子の機能低下を引き起こしたことは区別する必要があります。
2026年10月の生殖組織レビュー2026年10月16日には、学術誌『Reproductive Toxicology』に、人体の生殖組織におけるマイクロプラスチックとナノプラスチックの存在や生殖機能への影響をまとめたレビューが発表されました。
この研究では、41件の研究が対象となっています。
内訳は以下のとおりです。
- 女性の生殖組織:7研究
- 男性の生殖組織:9研究
- 男女双方の組織:1研究
- 胎盤組織:24研究
卵胞液、精巣、精巣上体、精液、胎盤などからプラスチック粒子が確認されていました。
また、複数の研究で精子の運動性低下との関連が報告されています。
一方、卵巣予備能を示す指標や、実際の妊娠・出産結果との関連については、一貫した結果が得られていません。
このレビューでは、酸化ストレスや代謝機能の変化、アポトーシス(細胞の計画的な死)なども生物学的な作用機序として取り上げられています。
ただし、細胞や組織で確認された変化を、そのまま人間の不妊や妊娠合併症の発生に結び付けることはできません。
現段階では、生殖機能への影響が懸念される一方、実際の臨床リスクを判断するには、さらに大規模なヒト研究が必要です。
【腸内細菌叢・炎症・酸化ストレス】人体への影響はどこまで分かっている?
心血管や生殖機能以外にも、消化器官や免疫系への影響が調べられています。
特に注目されているのが、腸内細菌叢の変化と、炎症・酸化ストレスです。
腸内細菌叢への影響2025年8月に『BMC Gastroenterology』に掲載されたシステマティックレビューでは、マイクロプラスチックと腸内細菌叢の関係を扱った12研究がまとめられました。
研究では、ポリエチレン、ポリスチレン、PET、PVCなどの粒子と、腸内細菌の構成や代謝機能の変化が検討されています。
主な論点は次のとおりです。
- 腸内細菌の多様性や構成の変化
- 有益な細菌群の減少
- 一部の細菌群の増加
- 短鎖脂肪酸の産生への影響
- 免疫反応や代謝経路の変化
短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維などを発酵する過程で作り出す物質です。腸管の健康や免疫機能、代謝などに関係しています。
マイクロプラスチックが腸内環境に影響する可能性は、重要な研究テーマになっています。
ただし、この分野では動物実験や実験系の知見も多く、日常的な曝露によって人間の腸内細菌叢がどの程度変化するのかは、まだ十分に分かっていません。
炎症と酸化ストレスの仕組みマイクロプラスチックの健康影響を説明する際に、頻繁に登場するのが酸化ストレスです。
酸化ストレスとは、体内で発生する活性酸素と、それを抑える抗酸化防御機構のバランスが崩れた状態を指します。
細胞が過剰な酸化ストレスにさらされると、細胞膜やDNA、タンパク質などに影響が及ぶ可能性があります。
実験研究では、マイクロプラスチックやナノプラスチックへの曝露によって、次のような反応が確認されています。
- 炎症性サイトカインの変化
- 活性酸素の増加
- 細胞膜やミトコンドリアへの影響
- DNA損傷に関係する反応
- 細胞死や免疫反応の変化
ただし、これらは主に動物実験や細胞実験で明らかになったメカニズムです。
人間の体内で同じ反応がどの程度起きるのか、日常的な曝露量で臨床的な病気につながるのかは、まだ検証が必要です。
2026年のヒト研究レビューが示した臓器別の状況2026年2月27日、学術誌『Environmental Health』に、マイクロプラスチックとナノプラスチックの人体への影響をまとめたシステマティックレビューが発表されました。
著者らは5,522件の記録を調べ、条件を満たした25研究を分析しています。
重要なのは、このレビューが動物実験や細胞実験だけではなく、生きている人間から採取された生体試料を対象にした研究をまとめている点です。
| 研究領域 | 対象研究数・人数 | 主な報告内容 |
|---|---|---|
| 心血管系 | 5研究・454人 | 血漿や血栓中の粒子量と炎症指標、心血管イベントとの関連 |
| 生殖器系 | 7研究・327人 | 精液や組織からの検出、精子の質との関連 |
| 消化器系 | 9研究・537人 | 便中の粒子と肝酵素、腸内細菌叢との関連 |
| 呼吸器系 | 3研究・171人 | 気道関連試料からの検出と炎症との関連 |
| 眼 | 1研究・49人 | 眼内試料からの検出と眼圧との関連 |
なお、これらの研究領域は、研究ごとに対象者や分析方法が異なります。人数を単純に合算して、一般人口のリスクに換算することはできません。
このレビューでは、研究の質や測定方法にばらつきがあり、交絡因子の影響を十分に除外できていない点も指摘されています。
また、研究間の異質性が大きいため、メタ分析による統合的なリスク推定は実施されていません。
つまり、2026年には人体への影響を示唆するヒト研究が増えているものの、医学的な因果関係を確定するための証拠はまだ不足しているという状況です。
マイクロプラスチック研究を評価するうえで、見落とされがちなのが検出方法の違いです。
同じ血液や組織を分析しても、使う機器や試料の処理方法によって、検出できる粒子の大きさや種類、測定結果が変わる可能性があります。
ラマン分光法とは?微細な粒子を識別する分析技術ラマン分光法は、試料にレーザー光を照射し、散乱光の波長変化から物質の分子構造を調べる分析技術です。
プラスチックにはポリマーごとに異なる分子振動の特徴があるため、得られたスペクトルを標準データと比較することで、粒子の材質を識別できます。
特にラマン顕微分光法は、微小な粒子の化学的特徴を調べる際に利用されています。
一方、蛍光による妨害や試料中の有機物の影響を受けることがあり、すべての粒子を正確に識別できるわけではありません。
主な検出方法の違い現在の人体試料研究では、複数の分析技術が使われています。
ラマン分光法
微小な粒子の化学組成を調べられます。粒子を個別に識別する用途に適していますが、蛍光などの干渉が課題です。
FTIR(フーリエ変換赤外分光法)
赤外光の吸収特性を利用して、ポリマーの種類を識別します。比較的大きな粒子の分析に広く利用されています。
Py-GC/MS(熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法)
試料を加熱分解し、発生した成分を質量分析する方法です。プラスチックのポリマー成分を定量できますが、粒子そのものの形状や個数を直接調べる方法ではありません。
LDIR(レーザー直接赤外線イメージング)
赤外線を利用して粒子を画像化し、材質や分布を分析します。複数の粒子を効率的に調べられる方法として利用されています。
2026年に発表された人体試料の分析手法に関するレビューでは、2000〜2024年の218研究が検討されました。
その結果、FTIRが広く利用されている一方、ラマン分光法やPy-GC/MSにも、それぞれ異なる長所と短所があることが示されています。
なぜ研究結果にばらつきが生まれるのか大きな問題の一つが、試料採取や分析中の外部汚染です。
プラスチックは実験室の器具や衣類、空気中にも存在する可能性があります。
そのため、試料を採取した段階で粒子が混入したり、実験操作の途中で汚染されたりする可能性を考慮しなければなりません。
信頼性の高い研究には、次のような品質管理が必要です。
- プラスチック由来の汚染を避ける採取・保存手順
- ブランク試料によるバックグラウンド汚染の確認
- 既知量の粒子を加える回収率試験
- 検出限界と定量限界の明示
- 分析結果の再現性の確認
2026年の分析手法レビューでも、ブランク対照や回収率試験などの品質管理が十分でない研究が存在することが問題として挙げられています。
【最重要】検出されたことと健康被害の因果関係は違うここが、マイクロプラスチック研究を読むうえで最も要点です。
例えば、血管のプラークからマイクロプラスチックが検出され、心血管イベントが多かったとしても、それだけで粒子が心血管疾患を引き起こしたとは証明できません。
原因と結果を判断するには、少なくとも以下のような情報が必要です。
1. 曝露量が多い人ほど健康リスクが高くなるか。
2. 年齢や喫煙、食生活などの交絡因子を調整しても関連が残るか。
3. 長期間にわたって曝露と健康状態を追跡できるか。
4. 粒子の大きさや材質によって影響に違いがあるか。
5. 実験で確認された作用機序が、人間の体内でも再現されるか。
特に重要なのが、長期間にわたる前向きコホート研究です。
同じ人を継続的に調べることで、曝露の変化と健康状態の変化を比較し、因果関係に関する証拠を強化できます。
現状では、マイクロプラスチックの体内検出、炎症指標との関連、特定の疾患との統計的な関連は報告されていますが、一般人口における具体的な発症リスクや安全な曝露量は確立されていません。
日常生活でできる曝露を減らす工夫現時点で、マイクロプラスチックを体内から確実に排出する方法や、特定の食品・サプリメントによって健康被害を防げるという医学的根拠は確立されていません。
そのため、過度に恐れるのではなく、日常生活で不要な曝露を減らすことが現実的です。
食品・飲料水に関する対策
- プラスチック容器のまま高温加熱することを避ける。
- 熱い食品や飲料には、ガラスや陶器などの容器を活用する。
- 傷や劣化が目立つプラスチック容器は交換する。
- 食品を適切に保存し、容器の使用方法を守る。
- 飲料水は地域の水質情報を確認し、適切に管理する。
室内環境に関する対策
- 定期的に換気する。
- 床や家具のほこりを湿らせた布などで清掃する。
- カーペットや布製品にたまったほこりを適切に除去する。
- 必要に応じて適切な空気清浄機を利用する。
これらは一般的な曝露低減策であり、実施によって将来の病気がどれだけ減るかを示す臨床試験の結果ではありません。
また、マイクロプラスチックの排出をうたう高額なデトックス商品や、医学的に確立されていない検査サービスを安易に利用する必要はありません。
【プロの結論】2026年時点で注目すべき研究の判断基準2026年の研究を総合すると、マイクロプラスチックが人体に入り、血液や肺、生殖組織などから検出されるという事実は、複数の研究によって裏付けられています。
特に、心血管疾患と血管内プラークの関連、精子の運動性と生殖組織への曝露、肺組織における年代別の検出状況は、今後の研究を方向付ける重要な知見です。
一方、次の3つは明確に区別する必要があります。
- 人体への侵入: 複数の生体試料から検出されており、ヒトで確認された事実。
- 人体への生物学的影響: 炎症、酸化ストレス、細胞機能の変化などが示唆されている段階。
- 具体的な病気の発症: 心血管疾患や不妊などとの関連は報告されているが、一般人口における因果関係は未確立。
研究を評価するときは、動物実験なのかヒト研究なのか、検出だけなのか疾患との関連まで調べたのか、対象人数や分析方法は適切なのかを確認することが大切です。
センセーショナルな見出しよりも、研究デザインと実際の数値に注目することが、健康情報に振り回されないための判断基準になります。
【マイクロプラスチックの人体への影響】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マイクロプラスチックは人間の血液から本当に検出されていますか?
A1:はい。2022年の22人を対象にした研究で、血液中からポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどのプラスチック由来ポリマーが検出されています。2026年にも人体試料の検出研究が複数まとめられています。
Q2:マイクロプラスチックは人体に蓄積し続けるのでしょうか?
A2:血液、肺、胎盤、生殖組織などから検出された報告はあります。ただし、体内での滞留期間や排出速度、臓器ごとの蓄積量が時間とともにどう変化するのかは、まだ十分に分かっていません。
Q3:マイクロプラスチックは心筋梗塞や脳卒中の原因になりますか?
A3:2024年のNEJM掲載研究では、頸動脈プラークから粒子が検出された患者で心血管イベントの発生割合が高い結果が報告されました。ただし、観察研究であり、直接的な原因だと証明されたわけではありません。
Q4:マイクロプラスチックは精子や妊娠に影響しますか?
A4:精液や生殖組織、胎盤から粒子が検出され、精子の運動性低下などとの関連も報告されています。ただし、不妊や流産、胎児の発達への影響を直接証明するには、さらに大規模なヒト研究が必要です。
Q5:マイクロプラスチックは飲料水からも摂取しますか?
A5:はい。水道水やボトル入り飲料水から検出された報告があります。ただし、検出量や粒子の大きさは分析方法によって異なり、通常の飲料水摂取による具体的な健康リスクは十分に確定していません。
Q6:マイクロプラスチックを体内から排出する方法はありますか?
A6:便などを通じて消化管内の粒子が排出される可能性はありますが、血液や臓器に取り込まれた粒子を確実に除去する方法は確立されていません。デトックスをうたう商品にも慎重な判断が必要です。
Q7:2026年時点でマイクロプラスチックの健康被害は証明されていますか?
A7:人体への侵入や組織からの検出は確認されています。また、心血管疾患や生殖機能などとの関連も報告されています。しかし、特定の病気を引き起こすという因果関係や、一般人口における具体的な発症リスクは、まだ確立されていません。
2026年現在、マイクロプラスチックやナノプラスチックが人間の血液、肺、胎盤、精液などから検出されていることは、複数のヒト研究で確認されています。
特に注目すべきなのは、頸動脈プラークと心血管イベントの関連、精子の運動性と生殖組織への曝露、そして肺組織における年代別の検出状況です。
一方で、マイクロプラスチックが心血管疾患、不妊、胎児の健康問題などを直接引き起こすという因果関係は、まだ確定していません。
2026年に発表されたヒト研究レビューも、人体への曝露が広く確認されつつある一方、研究方法のばらつきや対象者数の少なさ、交絡因子の影響が残されていることを指摘しています。
今後は、長期的な人体への蓄積量、ナノプラスチックの臓器移行、炎症や酸化ストレスとの関係、実際の疾患発症リスクを明らかにする研究が大切です。
読者にとって大切なのは、マイクロプラスチックの存在を軽視しないことと、検出されたというニュースだけで過度に不安にならないことです。
科学的な証拠を見極めながら、食品の加熱方法や室内環境など、日常的に取り組める曝露低減策を実践することが、現時点で合理的な対応といえます。
主な参照研究・資料
- 2026年2月『Environmental Health』ヒト研究システマティックレビュー。
- 2026年10月『The Lancet Regional Health – Europe』肺組織の年代別比較研究。
- 2026年10月『Reproductive Toxicology』生殖組織のシステマティックレビュー。
- 2024年『The New England Journal of Medicine』頸動脈プラークと心血管イベントの研究。
- 2022年『Environment International』血液中のプラスチック粒子検出研究。
- 2025年『BMC Gastroenterology』腸内細菌叢に関するレビュー。
- 世界保健機関(WHO)2022年、食品・飲料水・吸入による曝露と健康影響に関する報告書。