不妊治療を受けて授かった子どもに障害や先天性疾患が見つかったら、治療を選択したことを後悔するのではないか。体外受精や顕微授精を検討している人にとって、これは簡単には口に出せない深刻な不安の一つだ。特に高齢での妊娠を考えている場合、染色体異常や発達障害との関連性が気になる人も少なくない。
2026年11月時点の医学研究を確認すると、不妊治療と先天異常には統計的な関連を示す研究がある一方、治療そのものが障害の原因になると断定できる医学的証拠は確立していない。日本産科婦人科学会のART登録では、2023年に85,048人の子どもが生まれたことが報告されているが、この数字は障害のある子どもの人数を示したものではない。年齢、治療方法、もともとの不妊原因などを分けて考える必要がある。
【最初に結論】不妊治療で障害のある子が生まれる可能性はある?

結論からいえば、不妊治療によって障害のある子どもが生まれる可能性はある。しかし、それは自然妊娠でも同様であり、不妊治療を受けたという理由だけで障害の発生を説明することはできない。
ここで区別したいのが、先天異常、染色体異常、知的障害、発達障害という言葉だ。これらは同じ意味ではない。
先天異常と発達障害は別の医学的概念先天異常とは、生まれつきの身体的な形態や機能の違いを含む幅広い概念である。心臓の構造異常、口唇口蓋裂、染色体疾患などが代表例として挙げられる。
一方、発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などが含まれる。これらは神経発達に関係するもので、妊娠中の検査だけで将来の発症をすべて予測することはできない。
こども家庭庁の妊娠中の検査に関する情報サイトでは、生まれつきの病気がある赤ちゃんの割合は約3~5%と説明されている。この割合は自然妊娠と不妊治療を区別した数値ではなく、出生全体についての目安だ。
また、先天性疾患の原因は一つではない。染色体や遺伝子の変化、母体の感染症、薬剤への曝露、栄養状態、環境要因、複数の遺伝的・環境的要素の組み合わせなどが関係する。
つまり、子どもに先天性疾患が見つかった場合でも、その原因を直ちに体外受精や顕微授精に求めることはできない。不妊治療を受けたことと、障害のある子どもが生まれたことは、医学的には分けて検証すべき問題なのである。
2026年の研究が示す先天異常リスク2026年6月13日、医学誌「BMC Pregnancy and Childbirth」に、体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)で生まれた子どもの先天異常や出生後の健康状態を分析したシステマティックレビュー・ネットワークメタ解析が掲載された。
この研究は24研究を対象とし、自然妊娠4,048,050例、IVF妊娠105,152例、ICSI妊娠254,538例を分析している。
単胎児について、自然妊娠と比較した先天異常のハザード比(HR)は、IVFで1.32(95%信頼区間1.19~1.48)、ICSIで1.47(95%信頼区間1.35~1.62)だった。
また、ICSIによる単胎児では循環器系の形態異常について、自然妊娠との比較でHR1.47、IVFとの比較でHR1.41という結果が報告された。
これは無視できない研究結果だ。ただし、ハザード比1.32は先天異常が32%の確率で発生するという意味ではない。相対的な統計指標であり、個人の絶対的な発症確率を直接示すものでもない。
加えて、この研究は観察研究を統合したもので、対象研究のデータには1990~2016年に公表されたものが含まれる。親の年齢、不妊の原因、男性側の遺伝的要因など、十分に取り除けない交絡因子も残る。
研究者自身も、結果は因果関係ではなく関連性として慎重に解釈する必要があると指摘している。したがって、2026年時点での医学的な理解は「ARTには一部の先天異常との関連が示されているが、治療が直接の原因と確定したわけではない」というものだ。
【2026年最新データ】日本産科婦人科学会のART出生統計から見る実態
日本の不妊治療の実態を把握するうえで重要な資料が、日本産科婦人科学会のART登録である。
ARTとはAssisted Reproductive Technologyの略称で、生殖補助医療を意味する。体外受精や顕微授精、凍結融解胚移植などが含まれる。
2023年は85,048人の新生児が誕生2026年11月時点で確認できる最新の全国ART登録報告は、2023年の治療実績をまとめたものだ。論文は2025年12月23日に初公開され、2026年の「Reproductive Medicine and Biology」に掲載された。
日本産科婦人科学会の登録データによると、2023年には登録された638施設のうち625施設が調査に参加し、合計561,664周期の治療が記録された。そこから85,048人の新生児が誕生している。
主な数字は以下のとおりだ。
- ART治療周期数:561,664周期
- 登録施設:638施設
- 調査参加施設:625施設
- 女性の平均年齢:37.3歳
- 40歳以上の治療周期:205,986周期(36.7%)
- 新生児数:85,048人
2023年の国内出生数727,288人と単純比較すると、ARTによる出生児は全体の約11.7%に相当する。日本では、不妊治療が出生を支える重要な医療となっていることが分かる。
体外受精・顕微授精・凍結融解胚移植の違い2023年の報告では、新鮮胚を用いたIVF-ETによる新生児が1,772人、ICSIによる新生児が2,502人だった。凍結融解胚移植による新生児は80,774人と報告されている。
ここで注意したいのは、これらの数字は治療方法別の出生実績であり、先天異常や障害の発生数を表していないことだ。
ART登録報告は治療周期、妊娠、流産、出生、母体年齢、多胎妊娠などを集計しているが、2023年の公表資料からART出生児の障害発生率を算出することはできない。
したがって、85,048人という数字を根拠に「不妊治療で障害のある子どもが何人誕生した」と推定することは適切ではない。
2026年から始まるART登録システムの改善同報告では、日本産科婦人科学会が2026年から登録システムの改善を進める方針も紹介されている。
一括登録機能の導入に加え、AMH(抗ミュラー管ホルモン)などの卵巣予備能に関する情報やPGTに関する詳細なデータ項目を拡充する計画だ。
これにより、治療成績の予測や年齢別の結果、着床前遺伝学的検査の実態などについて、より詳しい分析が期待されている。
【リスク比較】体外受精・顕微授精・高齢出産と先天異常の関係
不妊治療によるリスクを考える際には、治療方法だけでなく、妊娠する女性の年齢や不妊の原因も重要になる。
2026年までの研究を整理すると、それぞれの要素は次のように理解できる。
| 対象・要因 | 研究・統計で確認された内容 | 医学的な解釈 |
|---|---|---|
| 体外受精(IVF) | 2026年メタ解析で自然妊娠との先天異常HR1.32 | 統計的な関連があるが、直接的な因果関係は未確定 |
| 顕微授精(ICSI) | 自然妊娠との先天異常HR1.47 | 男性不妊の原因なども考慮する必要がある |
| ICSIと心血管系異常 | IVFとの比較でHR1.41 | 特定の異常との関連を示すが、確定的な因果関係ではない |
| 女性の高年齢 | 染色体数的異常や流産のリスクが上昇する傾向 | 母体年齢そのものが重要な評価要素 |
| 発達障害 | ICSIとASDの関連を示す研究がある一方、証拠の確実性は低い | 不妊原因や遺伝的背景などを含めた研究が必要 |
| ART出生統計 | 2023年に85,048人が出生 | 障害児の発生率を示す統計ではない |
2025年に公表された別のシステマティックレビュー・メタ解析では、113研究、ART出生児768,929人、自然妊娠出生児40,709,337人が分析対象となった。
その結果、ARTで生まれた子どもには、自然妊娠と比べて先天異常の発生リスクがわずかに高い傾向が認められた。
治療方法別ではICSI、妊娠初期の胚移植、凍結していない新鮮胚移植などで、比較的高いリスクが報告されている。
ただし、これは複数の研究を統合した結果であり、すべての患者に同じリスクが当てはまるわけではない。母体年齢や不妊の原因などの影響も考慮する必要がある。
顕微授精は染色体異常を引き起こすのか顕微授精(ICSI)は、顕微鏡で確認しながら1個の精子を卵子に直接注入する方法だ。精子の数が少ない場合や、通常の体外受精では受精が難しい場合などに用いられる。
ここで大切なのは、ICSIの操作自体によって、子どもに遺伝性疾患が必ず発生するわけではないという点である。
一方、顕微授精を必要とする男性不妊の背景に、染色体異常や遺伝子の変化が存在するケースがある。
例えば、無精子症や重度の乏精子症では、クラインフェルター症候群などの染色体異常や、Y染色体上のAZF領域の微小欠失が関係することがある。
Y染色体上の特定の欠失が男性不妊の原因になっている場合、妊娠が成立して男児が生まれたときに、その遺伝的要因が引き継がれる可能性がある。
日本産科婦人科学会の婦人科外来診療ガイドラインでも、重度の男性不妊では、染色体検査や遺伝子検査について説明し、臨床遺伝専門医などによる遺伝カウンセリングを受けることの重要性が示されている。
つまり、顕微授精を受けるかどうかだけでなく、なぜ顕微授精が必要なのか、その原因に遺伝的な背景がないかを確認することが重要だ。
高齢出産では何が変わるのか女性の年齢が上がると、卵子の染色体分配に関するエラーが起こりやすくなる。その結果、染色体数的異常を持つ胚が増え、着床しにくくなったり、流産につながったりする可能性が高まる。
日本産科婦人科学会の2023年ART登録報告では、40歳以上の女性による治療周期が36.7%を占めていた。
年齢別の治療成績では、胚移植あたりの妊娠率は25~31歳で50%を超える一方、41歳以上では30%を下回り、43歳を超えると20%未満、45歳を超えると10%未満となった。
また、流産率は34歳以下では概ね20%未満だったのに対し、40歳代前半では35.6~49.9%程度、40歳代半ばでは55%を超える水準だった。
登録周期あたりの出生率も29歳で最も高い23.8%となり、39歳では15%未満、41歳以上では10%未満に低下している。
これらは先天異常の発生率ではなく、ARTの妊娠・流産・出生に関する成績だ。高齢になるほど障害のある子どもが必ず生まれるという意味ではないが、年齢によって妊娠経過のリスクが変わることを示している。
【誤解を検証】不妊治療と発達障害・自閉スペクトラム症の関連性
不妊治療と発達障害の関連については、先天異常の研究とは別に検討する必要がある。特に検索されることが多いのが、自閉スペクトラム症(ASD)と顕微授精の関係だ。
2025年のメタ解析で示されたICSIとASDの関連2025年8月に医学誌「Pakistan Journal of Medical Sciences」に掲載されたメタ解析では、ARTによって生まれた単胎児の神経発達に関する13研究が分析された。
その結果、ICSIで生まれた子どもは、通常のIVFで生まれた子どもと比較して、ASDの発生率が高い傾向を示した。相対リスクは1.36(95%信頼区間1.05~1.75)だった。
ただし、同研究では、ADHD、知的障害、脳性麻痺、その他の発達障害については、ICSIとIVFの間で有意な差が確認されなかった。
加えて、研究全体のエビデンスの確実性はGRADE評価で低いとされた。
この数字を「顕微授精をするとASDになる確率が36%増える」と単純に解釈することはできない。比較対象は自然妊娠ではなく通常のIVFであり、男性不妊の原因や遺伝的背景なども結果に影響する可能性がある。
不妊そのものと治療方法を分けて考えるARTで生まれた子どもの発達については、治療を受けたこと自体よりも、不妊の背景や妊娠・出産時の状況が関係する可能性も指摘されている。
2024年に「Archives of Disease in Childhood」に掲載された研究レビューでは、ART出生児の神経発達に関する既存研究を検討し、研究方法の違いや交絡因子の影響によって結論が一定していないことを説明している。
同レビューでは、不妊のあるカップルから自然妊娠で生まれた子どもと、ARTで生まれた子どもを区別して検討する必要性も示されている。
例えば、もともと親が持っている遺伝的な要因、妊娠中の合併症、早産、低出生体重、多胎妊娠などが子どもの発達に関係する可能性がある。
このため、現在の研究から「不妊治療を受けると発達障害になりやすい」と一般化することはできない。
ASDなどの神経発達症は、単一の原因で説明できるものではない。妊娠中の出生前検査で、将来の発達障害の有無を完全に判定することもできない。
【出生前検査で何が分かる?】NIPT・PGT-A・遺伝カウンセリングの役割
先天異常や染色体異常が心配な場合、妊娠前から妊娠中にかけて利用できる検査や相談制度がある。
ただし、検査によって分かることは異なり、すべての障害を予測できるわけではない。
NIPTは何を調べる検査なのかNIPTは非侵襲性出生前遺伝学的検査のことで、妊婦の血液に含まれる胎児由来のDNA断片を調べる検査だ。
日本医学会の出生前検査認証制度における基本的な検査対象は、次の3種類の染色体数的異常である。
- 21トリソミー:ダウン症候群
- 18トリソミー:エドワーズ症候群
- 13トリソミー:パトウ症候群
NIPTは精度の高いスクリーニング検査だが、確定診断ではない。陽性という結果が出ても、実際に染色体異常があると確定したわけではない。
必要に応じて羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を検討することになる。
NIPTで発達障害まで分かるのか答えは、分からない。
NIPTは主に特定の染色体数的異常の可能性を調べるもので、ASDやADHDなどの発達障害を判定する検査ではない。
また、染色体異常以外にも、遺伝子の変化、臓器の形態異常、聴覚や視覚の問題など、出生前検査では分からない病気や特徴が存在する。
こども家庭庁の妊娠中の検査に関する情報サイトでも、出生前検査によってすべての生まれつきの病気を発見できるわけではないと説明されている。
胎児超音波検査では脳、心臓、臓器、手足などの形態を確認できるが、すべての異常を見つけられるわけではない。検査結果が正常でも、将来の健康や発達を完全に保証するものではない。
PGT-Aは染色体異常を防ぐ検査なのかPGT-Aは着床前胚染色体異数性検査のことだ。体外受精で作られた胚の細胞を一部採取し、染色体の数的異常がないかを調べる。
染色体数に異常がある胚は、着床しなかったり流産につながったりすることがあるため、PGT-Aによって移植する胚を選ぶことが検討される。
2025年には日本産科婦人科学会によるPGT-Aの適応拡大が報告され、高年齢の女性を対象とした初回ART周期も検討対象に含まれるようになった。
ただし、PGT-Aはすべての遺伝性疾患を調べる検査ではない。遺伝子の細かな変化や、染色体数的異常以外のすべての問題を発見できるわけでもない。
PGT-Aで異常がないと判定された胚から生まれた子どもであっても、先天性疾患や発達上の問題が起こらないと保証されるわけではない。
遺伝カウンセリングを受ける意味出生前検査や着床前遺伝学的検査を検討する際には、遺伝カウンセリングが重要になる。
遺伝カウンセリングでは、親の遺伝的背景、家族歴、検査の対象、検査結果の意味、陽性だった場合の選択肢などを専門家と整理できる。
特に男性不妊が原因で顕微授精を行う場合や、家族に遺伝性疾患がある場合には、治療前に相談しておく意味がある。
相談先としては、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが在籍する医療機関が挙げられる。
日本医学会の出生前検査認証制度に基づく認証施設では、NIPTだけでなく出生前検査全般について相談できる。NIPTを受けると決めていない人でも遺伝カウンセリングを利用できる。
検査を受けることも、受けないことも、本人や家族の価値観に基づいて決めることができる。検査を受けることを妊婦に一律に求めるものではない。
【不妊治療を後悔する理由】体験談だけでは見えない心理的・経済的負担
「不妊治療をして障害のある子どもが生まれたら後悔するのではないか」という検索の背景には、医学的な不安だけでなく、治療に伴う精神的・経済的負担もある。
ただし、障害のある子どもを出産したART経験者の後悔率について、全国的に代表性のある公的統計は確認できない。インターネット上の体験談だけで、治療を後悔する人が多い、あるいは少ないと判断することはできない。
後悔につながりやすいと考えられる4つの要素1.治療前に想像していた結果とのギャップ
不妊治療を始めるときには、妊娠や出産を目標にする人が多い。しかし、治療が成功する保証はなく、妊娠しても流産や合併症が起きる可能性がある。出産後に子どもの病気が判明する場合もある。
期待していた将来と現実との違いが大きいほど、治療を選んだ当時の判断について悩むことがある。
2.経済的な負担
2022年4月から体外受精などの生殖補助医療に公的医療保険が適用されるようになったが、治療のすべてが無条件で保険対象になるわけではない。
年齢や回数の要件、先進医療、自費診療、追加検査などによって費用負担は変わる。治療期間が長くなると、家計への影響も大きくなる。
3.精神的・身体的な負担
排卵誘発剤の使用、採卵、胚移植、通院、妊娠判定など、治療には複数の段階がある。期待と落胆を繰り返すことが精神的な負担につながる場合もある。
治療を続けるか、休むか、別の方法を選ぶかという判断そのものが大きなストレスになることもある。
4.仕事や家族生活との両立
不妊治療では、通院日や採卵日が直前に決まることもある。仕事の調整が難しく、周囲に治療を伝えられない人もいる。
厚生労働省が2023年度に実施した労働者調査では、不妊治療の経験がある人のうち、治療と仕事を両立できずに仕事を辞めた人は10.9%だった。
また、厚生労働省の2026年度の両立支援情報では、治療経験者の26.1%が、両立できずに離職、雇用形態の変更、治療中止のいずれかを経験したと整理されている。これは仕事を辞めた人だけを数えた数字ではないため、10.9%とは意味が異なる。
こうした現実は、不妊治療を後悔する理由を考えるうえで重要だ。子どもの健康に関する不安だけでなく、治療中の生活環境や支援不足も、本人の気持ちに影響する。
不妊治療を後悔したという体験談をどう読むべきかインターネットには、不妊治療を受けた人のさまざまな体験談がある。治療を続けて子どもを授かった人、妊娠に至らなかった人、治療を途中で中断した人など、状況は一人ひとり異なる。
子どもに先天性疾患や障害が見つかった家庭では、診断時の戸惑い、将来の療育や医療費、仕事との両立、きょうだいや家族への影響など、複数の課題に直面する場合がある。
そのときに「治療しなければよかった」「別の選択をしていれば」と考えることがあっても、それだけで親子への愛情や本人の人間性を評価することはできない。
一方で、障害があること自体を不妊治療の失敗と決めつけることも適切ではない。子どもの病気や特性と、親が治療を選んだことへの感情は、別々に考える必要がある。
体験談を読むときは、その人の治療開始年齢、治療方法、家族の遺伝的背景、出産後の支援体制などが自分と同じとは限らないことを理解しておきたい。
治療を始める前に確認したい判断基準不妊治療を続けるかどうかを考える際には、妊娠率だけを比較するのではなく、以下の点も医師に確認しておきたい。
- 自分の年齢における採卵あたり・胚移植あたりの出生率と流産率
- 体外受精ではなく顕微授精を選ぶ医学的な理由
- 男性不妊に染色体異常や遺伝的要因が関係していないか
- 多胎妊娠を避けるための単一胚移植の方針
- PGT-Aなどの検査で分かることと分からないこと
- 出生前検査や遺伝カウンセリングを利用できる体制
- 治療を休止・中断する場合の選択肢と経済的な負担
特に大切なのは、妊娠率と出生率を混同しないことだ。妊娠したことと、健康状態を含めて出産まで至ることは異なる。医療機関の実績を見る際には、年齢別の出生率や流産率も確認する必要がある。
【よくある質問】不妊治療と障害のある子ども・後悔に関するFAQ
Q1:不妊治療をすると障害のある子どもが生まれやすくなりますか?
A1:一部の研究では、ART出生児の先天異常リスクが自然妊娠より高い傾向が報告されている。ただし、母体年齢、不妊の原因、遺伝的背景などの影響を完全には除けず、治療が直接の原因と確定しているわけではない。
Q2:体外受精と自然妊娠では先天異常のリスクが違いますか?
A2:2026年のメタ解析では、単胎児の先天異常についてIVFと自然妊娠の間に統計的な関連が報告された。ただし、相対的な指標であり、個人の絶対的な発症確率を示すものではない。
Q3:顕微授精をすると染色体異常やダウン症が増えますか?
A3:顕微授精そのものが染色体異常を必ず引き起こすわけではない。特に男性不妊が原因の場合には、親が持つ染色体や遺伝子の変化が関係する可能性があるため、必要に応じて検査や遺伝カウンセリングを検討する。
Q4:不妊治療で生まれた子どもは発達障害になりやすいですか?
A4:現時点では、不妊治療によって発達障害が増えると断定できる証拠はない。ICSIとASDの関連を示す研究はあるが、証拠の確実性は低く、不妊原因などの交絡因子も考慮する必要がある。
Q5:40歳以上で不妊治療をすると障害のリスクは高くなりますか?
A5:母体年齢が上がると、染色体数的異常や流産のリスクは上昇する傾向がある。ただし、40歳以上だから必ず障害のある子どもが生まれるわけではない。年齢に応じた妊娠・出産リスクを医師と確認することが大切だ。
Q6:NIPTを受ければ障害の有無がすべて分かりますか?
A6:分からない。NIPTは主に13・18・21トリソミーの可能性を調べる非確定的検査で、発達障害やすべての先天性疾患を判定するものではない。陽性の場合には確定的検査を検討する必要がある。
Q7:不妊治療を受けたことを後悔する人は多いのでしょうか?
A7:障害のある子どもを出産したART経験者の後悔率について、全国的な信頼性の高い統計は確認できない。治療の経済的・精神的負担や出産後の生活環境など、後悔の理由は個人によって異なる。
不妊治療と障害のある子どもの出生について、2026年までの医学研究と日本のART登録統計を確認すると、治療方法によって一部の先天異常との統計的な関連が示されていることは事実だ。
しかし、関連性と因果関係は同じではない。体外受精や顕微授精を受けたことだけを理由に、子どもの障害を説明することはできない。
日本産科婦人科学会の2023年ART登録では85,048人の新生児が誕生し、40歳以上の女性による治療周期も全体の36.7%を占めた。一方、年齢が高くなるにつれて出生率が低下し、流産率が上昇することも示されている。
また、2026年の研究ではIVFやICSIと先天異常の関連が報告されたものの、観察研究である以上、個々の妊娠にそのまま当てはめることはできない。発達障害についても、現段階では不妊治療との直接的な因果関係は明らかになっていない。
治療を検討する人に必要なのは、リスクを過小評価することでも、過度に恐れることでもない。自分の年齢や不妊の原因に応じた治療成績を確認し、必要に応じて染色体検査、NIPT、PGT-A、遺伝カウンセリングなどを利用することだ。
そして、検査を受けるかどうか、治療を続けるかどうかは、本人とパートナーが十分な情報を得たうえで決めてよい。どのような選択をしたとしても、妊娠や出産の結果だけで、その判断や家族の価値を評価することはできない。
不妊治療における本当の意味での納得は、リスクがゼロだと信じることではなく、分かっていることと分かっていないことを理解し、自分たちの価値観に沿った選択をすることにある。
主な参考資料・研究
- 日本産科婦人科学会「Assisted Reproductive Technology in Japan: A Summary Report for 2023」(Reproductive Medicine and Biology、2026年掲載)
- Yuanら「The risk of congenital malformations and neonatal outcomes among singletons and twins born after IVF/ICSI」(BMC Pregnancy and Childbirth、2026年6月)
- Liら「Does the risk of neurodevelopment disorders in children differ with different ART treatments?」(Pakistan Journal of Medical Sciences、2025年8月)
- Schottlerら「Children born to subfertile couples, how are they doing? Evidence from research」(Archives of Disease in Childhood、2024年)
- こども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」
- 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立に係る諸問題についての総合的調査」
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」
- 厚生労働科学研究「本邦の先天異常に係る発生動向調査及び影響要因検討の在り方に関する研究」