「不妊治療をすると、障害のある子どもが生まれる確率が高くなるのではないか」——体外受精や顕微授精を検討している人にとって、決して軽く扱えない不安です。実際、海外の大規模研究では、生殖補助医療(ART)によって生まれた子どもの先天異常リスクが自然妊娠より高いという結果も報告されています。しかし、その差をすべて不妊治療そのものの影響と考えることはできません。母体年齢、不妊の原因、多胎妊娠、早産など、複数の要因が関係しているためです。
2026年には、日本産科婦人科学会の「2024年ARTデータブック」が公表されたほか、カナダ・オンタリオ州から不妊そのものと治療の影響を切り分けた大規模研究も発表されました。これらの最新データを照らし合わせると、見えてくるのは「不妊治療で障害児が多く生まれる」という単純な図式ではありません。先天異常の発生率、染色体異常、自閉スペクトラム症(ASD)、母体年齢などを区別して考える必要があります。
【結論】不妊治療で障害のある子どもは本当に多く生まれるのか?

最初に結論を示すと、不妊治療で生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて、一部の先天異常や健康上の問題の発生率が高いとする研究が存在します。ただし、その差には不妊の原因や親の年齢、妊娠・出産時の状況などが影響しており、治療そのものが障害を引き起こすと断定できる医学的根拠はありません。
ここで注意したいのが、「障害」と「先天異常」は同じ意味ではないという点です。
先天異常とは、生まれつき存在する身体の構造や機能の異常を指します。心臓の形態異常、口唇口蓋裂、染色体異常などが代表例です。一方、知的障害や発達障害、自閉スペクトラム症などは異なる診断概念であり、すべてが出生時に確認できるわけではありません。
例えば、心室中隔欠損が見つかった子どもが、必ずしも知的障害や発達障害を伴うわけではありません。反対に、出生時に明らかな身体的異常がなくても、成長後に発達上の特性が確認される場合があります。
そのため、「不妊治療による障害児の確率」という数字を一つにまとめることは医学的に適切ではありません。先天異常、染色体異常、発達障害、早産や低出生体重を、それぞれ別の指標として見る必要があります。
2024年に発表された先天異常に関するシステマティックレビュー・メタ解析では、2,700万人を超える出生児を対象とした研究群が検討されました。ART出生児では自然妊娠児より主要な先天異常の相対リスクが高い傾向が示され、ART全体で約33%の相対的な増加が報告されています。
ただし、この分析には研究間のばらつきが非常に大きいという問題があります。異常の定義、対象集団、母体年齢、不妊原因などが研究ごとに異なっており、この数字をそのまま個々の妊娠の確率として使うことはできません。
つまり、リスク上昇を示す研究はあるものの、「不妊治療を受ければ障害のある子どもが生まれやすい」と一般化するのは正確ではありません。
【2026年最新データ】日本産科婦人科学会の2024年ARTデータブックで分かったこと
2026年に公表された日本産科婦人科学会の「2024年ARTデータブック」は、日本国内の生殖補助医療の実施状況を把握するための重要な資料です。
同データを専門的に整理した生殖医療関連の解説によると、2024年の日本のART治療周期数は55万265周期でした。一方、ARTによって生まれた子どもは8万6,473人に達し、過去最多を更新しています。
厚生労働省の2024年人口動態統計による出生数68万6,173人と比較すると、ART出生児は約12.6%に相当します。単純計算では、およそ8人に1人がARTによって生まれたことになります。
注目すべきなのは、多胎妊娠の状況です。
2024年のART統計では、多胎は4,857件で、多胎率は4.15%でした。また、年齢別では34歳以下が3.78%、35~39歳が4.33%、40歳以上が4.61%となっています。
高年齢層で多胎率が高くなっている背景には、複数胚移植の選択状況などが関係しています。
一方、凍結融解胚移植では単一胚移植率が83.8%に達しています。日本の生殖医療では、多胎妊娠を抑えるための単一胚移植が広く実施されていることも分かります。
ただし、ここで重要な注意点があります。ARTデータブックは治療件数や妊娠・出産成績を示す資料であり、ART出生児の障害発生率を直接示した調査ではありません。出生児数が増加したことを、そのまま先天異常や障害の増加と結び付けることはできません。
2024年の主なデータを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 2024年のデータ | 読み取れること |
|---|---|---|
| ART治療周期数 | 550,265周期 | 前年から約2%減少 |
| ART出生児数 | 86,473人 | 過去最多を更新 |
| ART出生児の割合 | 約12.6% | 国内出生数との単純比較 |
| 多胎件数 | 4,857件 | 多胎率は4.15% |
| 凍結胚移植の単一胚移植率 | 83.8% | 多胎妊娠を抑える取り組み |
| 凍結胚(卵)由来の出生児 | 83,088人 | ART出生児全体の96.1% |
出典:日本産科婦人科学会「2024年ARTデータブック」、厚生労働省「2024年人口動態統計」。データブックの数値は2026年公表資料の専門的解説に基づきます。
このデータから分かるのは、日本でARTによる出生が一般的な選択肢の一つになっていること、そして多胎妊娠を抑制する取り組みが進められていることです。障害の発生率については、別の先天異常調査や疫学研究を参照する必要があります。
【2026年の重要研究】カナダ・オンタリオ州の大規模調査が明らかにした不妊そのもののリスク
2026年の研究で特に重要なのが、カナダ・オンタリオ州の出生記録と医療データを活用した大規模コホート研究です。
従来の研究には、体外受精などで生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どもを比較するものが多くありました。しかし、この比較では、不妊という背景そのものが持つ影響と治療による影響を区別しにくいという問題があります。
そこで研究者たちは、不妊治療を受けずに妊娠した不妊経験者を比較対象に含め、治療の影響を詳しく分析しました。
研究1:治療を受けていない不妊経験者にもリスク上昇が見られた2026年8月4日にオンライン公表されたBailey Milne氏らの研究「Infertility and Risk of Congenital Anomalies: A Population-Based Cohort Study」は、2006~2021年にオンタリオ州で発生した141万5,324件の分娩を対象としています。
研究では、自然妊娠と不妊治療を受けていない不妊経験者を比較しました。
- 自然妊娠:先天異常の発生割合5.3%
- 不妊経験があり治療を受けていない場合:5.9%
- 調整後の相対リスク:1.12(95%信頼区間1.09~1.14)
つまり、不妊治療を受けていない場合でも、先天異常の発生割合には小さな差が確認されたのです。
研究では母体年齢、所得、居住地域、糖尿病や高血圧などの持病、妊娠中の喫煙・飲酒などを調整しています。
この結果は、不妊の原因となる身体的・遺伝的背景なども、子どもの先天異常リスクに関係する可能性を示しています。
研究2:体外受精・顕微授精でも相対リスクの上昇を確認加えて、2026年7月31日に医学誌「Human Reproduction」で公表された別のオンタリオ州の研究では、27万4,893件の出生を分析しました。
比較対象は、不妊と診断されながら生殖補助医療を受けていない女性です。研究結果は次のとおりです。
- 不妊治療なし:先天異常の発生割合5.9%
- 排卵誘発・人工授精:6.7%
- 体外受精・顕微授精:7.6%
体外受精・顕微授精のグループでは、治療なしの不妊経験者と比較した調整後の相対リスクが1.28(95%信頼区間1.22~1.34)となりました。
ただし、これは相対リスクであり、先天異常が28ポイント増えるという意味ではありません。また、観察研究であるため、治療そのものが原因であると証明したものでもありません。
さらに研究では、多胎妊娠が先天異常リスクの上昇に占める割合を分析しています。その結果、体外受精・顕微授精後の先天異常リスク上昇のうち、多胎妊娠によって説明される割合は約19.7%と推定されました。
つまり、多胎妊娠は重要な要因ですが、それだけですべてを説明できるわけではありません。
この2つの研究を合わせると、2026年時点では、不妊そのものと治療の両方が先天異常リスクに関連している可能性があるものの、それぞれの寄与を完全に切り分けることはまだ難しいというのが妥当な理解です。
【原因を徹底分析】母体年齢・顕微授精・多胎妊娠はどの程度影響するのか?
不妊治療後の妊娠で注意したい要因は、一つではありません。特に母体年齢、男性不妊の背景、受精方法、多胎妊娠という4つの観点が重要です。
1.母体年齢と高齢妊娠による染色体異常先天異常や染色体異常を考えるうえで、母体年齢は非常に重要な要素です。
卵子は女性の年齢とともに変化し、加齢によって染色体の分配エラーが起こる可能性が高くなります。その結果、21トリソミー(ダウン症候群)などの染色体異常が生じるリスクも上昇します。
日本の循環器関連学会による2024年の遺伝学的検査・カウンセリングのガイドラインでは、ダウン症候群の出生頻度について、母体年齢別の目安が示されています。
- 15~29歳:約1,500人に1人
- 30~34歳:約800人に1人
- 35~39歳:約270人に1人
- 40~44歳:約100人に1人
- 45歳以上:約50人に1人
これはダウン症候群という特定の染色体異常についての目安であり、すべての先天異常や障害の発生確率を示した数字ではありません。
重要なのは、不妊治療を受ける人の中には、自然妊娠を目指す場合よりも妊娠時の年齢が高い人が含まれることです。
そのため、ART出生児と自然妊娠児を単純に比較すると、治療の影響と年齢の影響が混在する可能性があります。
2.顕微授精(ICSI)による染色体異常のリスク顕微授精は、精子を卵子の細胞質内に直接注入する方法です。通常の体外受精では精子と卵子を同じ培養環境に置いて受精させますが、顕微授精では胚培養士が精子を選び、直接注入します。
この技術については、染色体異常や遺伝的な問題が増えるのではないかという懸念が以前からあります。
その背景には、顕微授精が男性不妊、特に精子の数や運動率などに問題があるケースで選択されることが多いという事情があります。
男性不妊の原因によっては、精子の染色体や遺伝的な特徴が子どもに受け継がれる可能性もあります。そのため、顕微授精を受けた子どものリスクを評価するときは、手技そのものだけでなく、治療が必要になった理由も考慮しなければなりません。
2021年に医学誌「Human Reproduction Update」に掲載された系統的レビュー・メタ解析では、顕微授精と染色体異常の関連が検討されました。
調整済みデータを用いた分析では、通常の体外受精と比較して、顕微授精による出生児の染色体異常が有意に増えるという証拠は確認されませんでした。
ただし、対象研究の数や質に限界があり、研究者も証拠の確実性は非常に低いと評価しています。
したがって、顕微授精で染色体異常が必ず増えるという説明も、リスクが完全にないという説明も適切ではありません。
3.多胎妊娠と早産・低出生体重不妊治療で特に注意したいのが、多胎妊娠です。
複数の胚を同時に移植した場合、双子や三つ子を妊娠する可能性が高まります。多胎妊娠では子宮への負担が大きくなり、早産や低出生体重のリスクが高まります。
厚生労働省の低出生体重児に関する資料でも、双胎・多胎妊娠では子宮が大きくなることなどから早産につながる場合があると説明されています。
早産や出生時の低体重は、新生児期の医療的な問題だけでなく、成長や神経発達にも影響する可能性があります。
ただし、早産で生まれた子どもが必ず発達障害になるわけではありません。出生後の状態、在胎週数、医療的なケアなどによって経過は異なります。
2026年のオンタリオ州研究では、体外受精・顕微授精を受けたグループの多胎率は13.3%でした。これは2006~2021年のカナダの医療環境における数値であり、2024年の日本のART統計の4.15%とは集計条件や医療環境が異なります。
日本では単一胚移植が広く行われており、多胎妊娠を減らす取り組みが続いています。
4.不妊そのものに関係する背景要因不妊の原因は女性側だけにあるわけではありません。男性因子、排卵障害、子宮内膜症、卵管因子など、さまざまな原因が関係します。
例えば、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群などの疾患は、妊娠の成立だけでなく、母体の代謝・炎症状態などとも関係する可能性があります。
また、男性不妊では遺伝的な要因が関係しているケースもあります。
したがって、不妊治療後の子どもの健康を考える際には、治療方法だけを見るのではなく、夫婦双方の健康状態や不妊の原因を含めて評価する必要があります。
【自閉症・発達障害】不妊治療と子どもの発達に関連性はあるのか?
先天異常とは別に、検索されることが多いのが「体外受精や顕微授精で生まれた子どもは自閉症になりやすいのか」という疑問です。
このテーマについては、2023年11月20日に医学誌「JAMA Network Open」で発表されたカナダ・オンタリオ州の大規模コホート研究が参考になります。
この研究では、2006~2018年に生まれた約137万人の子どもを対象に、不妊と治療方法、自閉スペクトラム症(ASD)の診断との関係を分析しました。
自然妊娠と比較した調整後のASD発生ハザード比は、次のような結果でした。
- 不妊傾向があるが治療なし:1.20
- 排卵誘発・人工授精:1.21
- 体外受精・顕微授精:1.16
一見すると、ART出生児ではASDのリスクが16%高いように見えます。しかし、この数字だけで治療が自閉症を引き起こすと判断することはできません。
重要なのは、不妊経験がある人同士で比較した場合です。
治療を受けていない不妊経験者を基準にすると、体外受精・顕微授精後のASD発生ハザード比は0.94(95%信頼区間0.84~1.05)でした。
統計的に有意なリスク上昇は確認されていません。
加えて、単胎出生に限定した分析では、体外受精・顕微授精と自然妊娠の比較における調整後ハザード比は1.03(95%信頼区間0.91~1.17)となり、関連は弱まりました。
研究では、妊娠中の合併症、多胎妊娠、早産、新生児期の重い疾患などが、ASDとの関連の一部を説明する可能性も示されています。
特に体外受精・顕微授精後のASDとの関連について、多胎妊娠によって説明される割合は78%と推定されました。
この結果から考えられるのは、不妊治療の手技そのものよりも、不妊の背景や妊娠・出産時の条件が、子どもの発達と関係している可能性です。
もちろん、これは一つの観察研究の結果です。自閉症には遺伝的要因を含む多様な背景があり、単一の原因で説明できるものではありません。
また、この研究結果を知的障害やすべての発達障害にそのまま当てはめることもできません。
【日本の先天異常発生率】自然妊娠と不妊治療を比較するときの注意点
国内の先天異常の発生状況を確認するうえで重要なのが、日本産婦人科医会による先天異常モニタリングです。
この調査は1972年に始まり、全国の産科医療機関の協力を得て、出生児の先天異常の状況を継続的に把握しています。
厚生労働科学研究の2026年公表資料では、2024年の調査結果として、210施設、出生児9万6,956人のうち、先天異常児は3,264人と報告されています。
先天異常児の出生頻度は3.37%でした。
発生数が多かったものには、心室中隔欠損、耳瘻孔、心房中隔欠損、動脈管開存、口唇口蓋裂、ダウン症候群などがあります。
ただし、この3.37%という数字を自然妊娠における発生率、あるいは不妊治療における発生率として直接利用することはできません。
この調査はARTと自然妊娠を分けた比較研究ではなく、全国の出生全体を完全に網羅する調査でもないからです。
加えて、妊娠22週未満の出生児や、明らかに外表奇形ではないと判断されたものなどは対象から除外されています。
つまり、日本のモニタリングで確認された3.37%は、一定の調査条件のもとで把握された先天異常児の頻度です。
ART出生児の3.37%が障害を持つという意味ではありません。
自然妊娠と不妊治療を比較するときは、次のような違いを理解が必要です。
- 一般出生の調査:国内で出生した子どもの先天異常の発生状況を把握する。
- ARTデータブック:体外受精や顕微授精などの治療件数・妊娠・出産成績を把握する。
- 海外コホート研究:不妊経験者と自然妊娠、不妊治療の有無などを比較して関連性を分析する。
これらは目的も対象者も異なる資料です。それぞれの数字を同じ条件の統計として比較しないことが、正しい理解につながります。
【プロの結論】不妊治療を検討するときに知っておきたいリスクと判断基準
ここまでの国内外のデータを整理すると、不妊治療と子どもの健康については、次の3点が重要です。
第一に、不妊治療後の出生児で一部の先天異常リスクが高いという研究結果は存在するものの、治療そのものがすべての原因ではありません。
不妊そのもの、母体年齢、男性不妊の背景、妊娠経過などが複雑に関係しています。特に2026年のオンタリオ州研究は、不妊治療を受けていない人との比較を通じて、治療の影響をより詳しく検討した点に意義があります。
第二に、母体年齢と多胎妊娠への対策は重要です。
年齢に伴う染色体異常のリスクは、自然妊娠でも不妊治療でも存在します。また、多胎妊娠は早産や低出生体重につながる可能性があるため、移植する胚の数や妊娠管理について医師と十分に相談する必要があります。
第三に、先天異常と発達障害を一つの確率で評価しないことです。
先天異常の発生率が高いという研究結果が、そのまま自閉症や知的障害の発生率が高いことを意味するわけではありません。異なる診断や健康上の問題には、それぞれ異なる研究データが必要です。
治療前に確認したい5つのポイント- 夫婦双方の既往歴や不妊の原因を把握しているか。
- 母体年齢に応じた染色体異常のリスクについて説明を受けているか。
- 顕微授精を選択する医学的な理由が明確になっているか。
- 単一胚移植を含め、多胎妊娠を抑える方法について相談しているか。
- 妊娠成立後の出生前検査や遺伝カウンセリングについて情報を得ているか。
出生前検査については、NIPTなどのスクリーニング検査と、羊水検査などの確定的検査を区別する必要があります。検査にはそれぞれ対象となる疾患や限界があるため、検査を受けるかどうかも含めて、専門家から説明を受けることが大切です。
また、着床前遺伝学的検査(PGT)も、すべての先天異常や発達障害を防げる検査ではありません。検査の対象、適応、限界を理解したうえで判断する必要があります。
【不妊治療と障害児】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:不妊治療をすると障害児が生まれる確率は高くなりますか?
A1:一部の研究では、ART出生児の先天異常リスクが自然妊娠児より高いという結果が報告されています。ただし、不妊そのものや母体年齢、多胎妊娠などの影響も含まれています。治療を受ければ障害のある子どもが生まれやすくなると一律に判断することはできません。
Q2:体外受精と自然妊娠では先天異常の発生率に差がありますか?
A2:2024年のメタ解析や2026年のオンタリオ州研究では、体外受精などのART出生児に先天異常リスクの上昇が報告されています。ただし、研究によって対象者や先天異常の定義が異なり、不妊の背景も影響するため、数字をそのまま個人の確率として使用することはできません。
Q3:顕微授精は染色体異常やダウン症のリスクを高めますか?
A3:顕微授精と染色体異常の関連を調べた研究はありますが、調整済みデータでは明確なリスク上昇は確認されていません。ダウン症候群などの染色体異常では、母体年齢が重要な要因です。男性不妊の原因によっては遺伝的な検査や相談が役立つ場合もあります。
Q4:不妊治療で生まれた子どもは自閉症になりやすいのでしょうか?
A4:2023年のカナダの約137万人を対象とした研究では、自然妊娠と比較してART出生児のASD発生ハザード比は1.16でした。しかし、不妊経験者同士で比較すると0.94となり、有意な増加は認められていません。治療そのものが自閉症の原因であるとは証明されていません。
Q5:不妊治療で双子が生まれると障害のリスクも高くなりますか?
A5:多胎妊娠では早産や低出生体重のリスクが高くなり、それに伴って新生児期や神経発達上の問題が生じる可能性があります。ただし、双子として生まれた子どもが必ず障害を持つわけではありません。多胎妊娠を防ぐ単一胚移植などの方法について医師と相談することが大切です。
Q6:2026年時点で不妊治療と先天異常の因果関係は証明されていますか?
A6:一部の先天異常とARTの関連は研究で確認されていますが、治療そのものが原因だと一律に証明されたわけではありません。2026年のカナダの研究では、不妊治療を受けていない不妊経験者にもリスク上昇が認められました。今後も不妊の原因と治療の影響を分けた研究が必要です。
「不妊治療で障害のある子どもが多く生まれる」という疑問に対する2026年時点の答えは、単純な肯定でも否定でもありません。
日本産科婦人科学会の2024年ARTデータブックでは、ART出生児が8万6,473人に達し、日本の出生全体に占める割合も約8人に1人となりました。一方、国内の先天異常モニタリングでは2024年の発生頻度が3.37%と報告されています。ただし、両者は別の調査であり、ART出生児における障害や先天異常の確率を直接比較できるものではありません。
加えて、2026年に発表されたカナダ・オンタリオ州の大規模研究は、不妊そのものにも先天異常リスクとの関連があること、そして体外受精・顕微授精後には不妊治療を受けていない人と比較して一定のリスク上昇が見られることを示しました。
しかし、これらの研究は不妊治療が障害の原因になると断定するものではありません。母体年齢、染色体の状態、多胎妊娠、早産、遺伝的背景などを含めた総合的な評価が必要です。
不妊治療を検討する際に大切なのは、漠然とした不安から治療を避けることでも、リスクを過小評価することでもありません。自分たちの不妊原因や年齢、治療方法ごとの特徴を理解し、必要に応じて遺伝カウンセリングや出生前検査について相談することです。
生殖医療の進歩によって、子どもを持つ選択肢は広がっています。最新の研究結果を正しく理解し、個々の状況に合った医療を選択することが、納得できる妊娠・出産につながります。