大人になってから水疱瘡(水ぼうそう)に感染すると、子どもの場合よりも重症化するリスクが高く、肺炎や脳炎などの合併症にも注意が必要です。水疱瘡は子どもの病気という印象がありますが、過去に感染したことがなく、ワクチンによる免疫も十分でない成人は、年齢にかかわらず感染する可能性があります。
2026年11月現在、厚生労働省が公開している水痘に関する情報では、潜伏期間は通常10~21日で、発熱や倦怠感の後に赤い発疹、水ぶくれへと症状が進むとされています。加えて、発疹が出る1~2日前から感染力があるため、本人が水疱瘡だと気づく前に周囲へ感染を広げてしまうこともあります。大人の水疱瘡の初期症状、発疹の特徴、感染期間、治療薬アシクロビル、妊婦への影響、ワクチンによる予防まで、公的情報をもとに整理します。
【大人の水疱瘡は子どもより危険?】初期症状と重症化する理由

水疱瘡は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)への初感染によって発症する感染症です。正式には水痘と呼ばれ、強いかゆみを伴う発疹や発熱が主な症状です。
厚生労働省の2026年3月10日版の情報によると、水痘の発症者は9歳以下が90%以上を占めています。一方、成人の発症は比較的まれであるものの、成人が感染した場合は重症化するリスクが高いとされています。
大人の水疱瘡で最初に現れる症状成人の場合、発疹が出る前に発熱や全身の倦怠感が現れることがあります。CDC(米国疾病予防管理センター)も、成人では発疹に先立って1~2日程度の発熱や体調不良が生じることがあると説明しています。
初期症状として注意したいのは、次のような変化です。
- 38度前後の発熱や悪寒
- 全身の倦怠感、強い疲労感
- 頭痛や食欲不振
- 筋肉痛や体のだるさ
- 皮膚に現れる赤い発疹やかゆみ
最初は風邪やインフルエンザに似た症状だけの場合もあり、発疹が出るまでは水疱瘡だと判断しにくいことがあります。
発疹・水ぶくれはどのように変化する?水疱瘡の特徴は、皮膚に現れた発疹が短期間で異なる段階へ変化していくことです。
典型的には、赤い斑点から始まり、盛り上がった丘疹、水疱、膿疱へと進み、最後に乾燥してかさぶたになります。
発疹は頭皮や顔、胸、背中などに現れ、その後、手足を含む全身へ広がることがあります。口の中などの粘膜にできるケースもあります。
また、水疱瘡には、赤い発疹、水ぶくれ、膿疱、かさぶたが同時に存在するという特徴があります。新しい発疹が次々と出現するため、すべての皮膚症状が同じ状態になるわけではありません。
なぜ成人は重症化しやすいのか成人の水疱瘡が問題になる理由は、発疹の数やかゆみだけではありません。肺炎などの内臓に関係する合併症を起こすリスクがあるためです。
CDCによると、子どもでは皮膚や軟部組織の細菌感染が代表的な合併症である一方、成人では肺炎が重要な合併症として挙げられています。
また、免疫機能が低下している人では、ウイルスが内臓に広がり、肺炎、肝炎、脳炎などを引き起こす可能性があります。
特に注意が必要なのは、次のような人です。
- 水疱瘡にかかったことがなく、ワクチン接種歴もない成人
- 免疫抑制剤や長期のステロイド治療を受けている人
- がん治療中など、免疫機能が低下している人
- 妊娠中で水痘に対する免疫がない人
成人だから必ず重症になるわけではありません。しかし、年齢だけでなく免疫状態や妊娠の有無によっても危険性が変わるため、発疹が現れた段階で早めに医療機関へ相談することが大切です。
出典:厚生労働省「水痘」、CDC「Clinical Overview of Chickenpox」。
【潜伏期間は10~21日】水疱瘡の感染力とうつる期間を解説
水疱瘡の厄介な特徴の一つが、潜伏期間の長さと強い感染力です。感染者と接触してすぐに症状が出るわけではなく、しばらく経過してから発熱や発疹が現れます。
潜伏期間は平均14~16日程度水痘・帯状疱疹ウイルスに感染してから発症するまでの期間は、一般的に10~21日です。平均的には14~16日程度とされています。
例えば、11月1日に感染者と接触した場合、発症する可能性がある期間は11月11日から11月22日ごろまでです。ただし、これは潜伏期間の目安であり、特定の日に必ず発症するという意味ではありません。
接触した当日に症状がないからといって、感染していないとは判断できない点に注意が必要です。
いつからいつまで他人にうつる?水疱瘡は、発疹が現れる前から感染力を持っています。
国立健康危機管理研究機構(JIHS)やCDCの情報では、感染力がある期間は、一般的に発疹出現の1~2日前から、すべての発疹がかさぶたになるまでとされています。
つまり、本人がまだ水疱瘡だと認識していない段階でも、家族や職場の人に感染させる可能性があります。
感染経路は主に次の3つです。
- 空気感染:ウイルスを含む微粒子を吸い込むことで感染する。
- 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみなどによる飛沫を介して感染する。
- 接触感染:水疱の内容物などに触れることで感染する。
特に家庭内では感染が広がりやすく、厚生労働省が紹介する情報では、免疫のない家庭内接触者の発症率は約90%と報告されています。
家族や職場に感染者がいる場合の注意点家族に水疱瘡の患者が出た場合、過去の罹患歴やワクチン接種歴を確認が必要です。
感染した可能性がある人は、発症するまでの間も体調の変化に注意してください。特に妊婦や免疫機能が低下している人が接触した場合は、症状が出るのを待たず、速やかに医療機関へ相談する必要があります。
発症した人は、すべての発疹がかさぶたになるまで他人との接触を避けることが基本です。仕事や外出についても、医療機関の指示に従いましょう。
出典:国立健康危機管理研究機構「水痘」、厚生労働省「水痘」、CDC「Clinical Overview of Chickenpox」。
【水疱瘡と帯状疱疹は別の病気?】VZVの関係と見分け方
水疱瘡と帯状疱疹は、どちらも水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因です。しかし、発症の仕組みは異なります。
この違いを理解するには、ウイルスが体内に入ってからどのような経過をたどるのかを知る必要があります。
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の特徴VZVはヘルペスウイルス科に属するウイルスです。初めて感染したときに水疱瘡を発症し、症状が治まった後も、ウイルスは体内の神経節に潜伏します。
その後、加齢や免疫機能の低下などをきっかけにウイルスが再活性化すると、帯状疱疹を発症することがあります。
つまり、水疱瘡と帯状疱疹は同じウイルスに関連するものの、初感染と再活性化という違いがあります。
水疱瘡と帯状疱疹の違いを比較| 比較項目 | 水疱瘡(水痘) | 帯状疱疹 |
|---|---|---|
| 原因 | VZVへの初感染 | 潜伏していたVZVの再活性化 |
| 主な発症要因 | 感染者からのウイルス伝播 | 体内のウイルスの再活性化 |
| 発疹の特徴 | 全身に広がることが多い | 体の左右どちらかに帯状に現れやすい |
| 主な症状 | 発熱、倦怠感、かゆみ、水疱 | 神経に沿った痛み、赤い発疹、水疱 |
| 皮膚症状 | 異なる段階の発疹が混在する | 局所的に集まった水疱が特徴 |
| 他人への感染 | 空気・飛沫・接触感染 | 水疱などを介して、免疫のない人に水痘を感染させる可能性がある |
帯状疱疹は、他人から帯状疱疹そのものがうつる病気ではありません。しかし、帯状疱疹の患者が持つウイルスに免疫のない人が接触すると、水疱瘡を発症する可能性があります。
公益社団法人日本皮膚科学会も、帯状疱疹は潜伏していたVZVが再活性化することで発症し、他人から帯状疱疹として感染するわけではないと説明しています。
したがって、全身に発疹が広がっている場合は水疱瘡、体の片側に沿って痛みを伴う発疹が出ている場合は帯状疱疹が疑われます。ただし、見た目だけで確定診断することはできません。
出典:公益社団法人日本皮膚科学会「帯状疱疹とは何ですか?」、国立健康危機管理研究機構「水痘」。
【治療薬アシクロビルとは?】大人の水疱瘡の治療期間と受診の目安
大人の水疱瘡では、早期に診断を受け、必要に応じて抗ウイルス薬を使用が必要です。
治療方法は症状の程度や年齢、基礎疾患、免疫状態などによって異なります。軽症の場合と肺炎などの合併症がある場合では、必要な医療対応も変わります。
アシクロビルなどの抗ウイルス薬水疱瘡の治療に使用される代表的な薬が、抗ウイルス薬のアシクロビルです。
アシクロビルはウイルスの増殖を抑える薬で、重症水痘や重症化するリスクが高い患者に使用されます。厚生労働省も、重症水痘や免疫不全など重症化リスクのある患者に対する治療薬として紹介しています。
CDCでは、12歳を超える健康な人も中等症から重症化するリスクがある対象として挙げられており、抗ウイルス薬は発疹が出てからできるだけ早く、特に24時間以内に開始すると効果が期待できるとしています。
ただし、すべての成人患者に同じ薬が処方されるわけではありません。内服薬で対応するのか、重症例として点滴による治療が必要なのかは、医師が判断します。
肺炎や脳炎などの重い合併症がある場合には、入院のうえで点滴によるアシクロビル治療などが検討されます。
大人の水疱瘡は何日で治る?水疱瘡の経過には個人差があります。
一般的には、発疹が出てから数日間にわたって新しい水疱が現れ、その後、徐々に乾燥してかさぶたになります。CDCによると、典型的な水疱瘡の症状は通常4~7日程度続きます。
ただし、これは一般的な症状の持続期間であり、成人のすべてが同じ日数で回復するわけではありません。重症例や免疫機能が低下している場合には、症状が長引くこともあります。
また、感染力がなくなる目安は、すべての発疹がかさぶたになった時点です。発熱が下がったからといって、すぐに職場や学校へ戻れるとは限りません。
水疱瘡を疑ったら病院へ行く前に電話する水疱瘡は感染力が強いため、疑わしい症状が出た場合には、一般の患者と同じ待合室で長時間過ごさないようにする必要があります。
厚生労働省は、水痘を疑う発疹などの症状が出た場合、医療機関に電話などで事前に伝え、受診方法について指示を仰ぐよう案内しています。
特に次のような症状がある場合は、重症化や合併症の可能性を考えて速やかに医療機関へ相談してください。
- 咳がひどくなる、息苦しい、呼吸が速い
- 強い頭痛や首の硬さがある
- 意識がぼんやりする、混乱する
- 歩きにくい、ふらつく
- 繰り返し嘔吐する
- 高熱が続く、全身状態が急激に悪化する
- 発疹が赤く腫れて強い痛みや膿を伴う
呼吸困難や意識障害などがある場合は、救急対応が必要になることがあります。
自宅で療養するときに気をつけたいこと医師から自宅療養の指示を受けた場合は、十分な休養と水分補給を心がけます。かゆみが強くても水疱をつぶしたり、無理にかきむしったりしないことが大切です。
皮膚を清潔に保ち、爪を短くしておくことで、掻き傷からの細菌感染を防ぎやすくなります。
また、タオルなどの共用を避け、家族との接触をできるだけ減らしてください。特に妊婦、乳児、免疫不全の人との接触は避ける必要があります。
出典:厚生労働省「水痘」、CDC「How to Treat Chickenpox」「Clinical Guidance for People at Risk for Severe Varicella」。
【妊婦は特に注意】胎児への影響と成人の水痘ワクチン予防
大人の水疱瘡で特に慎重な対応が必要なのが、妊娠中の感染です。妊婦本人の重症化だけでなく、胎児や出生直後の新生児にも影響する可能性があります。
妊娠中に水疱瘡へ感染するとどうなる?妊婦が水疱瘡に感染すると、肺炎などの重い合併症を起こすリスクがあります。また、妊娠中の感染時期によっては、胎児に影響が生じることもあります。
CDCによると、妊娠初期から妊娠初期に続く妊娠中期の早い時期に水疱瘡を発症した場合、胎児が先天性水痘症候群を発症するリスクは約0.4~2.0%とされています。
先天性水痘症候群では、次のような異常が起こる可能性があります。
- 皮膚に瘢痕が残る
- 手足の発育異常や低形成
- 小眼球症などの眼の異常
- 脳や神経系の発達異常
- 出生時の低体重
また、出産予定日の直前にも注意が必要です。CDCは、母親に分娩の5日前から分娩後2日までの間に水疱瘡の発疹が現れた場合、新生児が新生児水痘を発症するリスクがあると説明しています。
この時期は母親から胎児へ移行する抗体が十分でない可能性があり、新生児に重い感染症が起こることがあります。
妊婦が感染者と接触した場合の対応妊婦が水疱瘡患者と接触した場合、過去の罹患歴やワクチン接種歴を確認し、免疫があるかどうかを医師に相談が必要です。
感染歴が不明な場合は、必要に応じて抗体検査などで免疫状態を確認します。免疫がない妊婦が濃厚接触した場合は、症状が出るまで待つのではなく、速やかに産婦人科へ連絡してください。
状況によっては、水痘に対する免疫グロブリンなどの曝露後対応が検討されます。発症した場合には、母体の状態に応じてアシクロビルなどの治療が必要になることもあります。
なお、水痘ワクチンは生ワクチンであるため、妊娠中の接種はできません。
成人も水痘ワクチンで予防できる?水疱瘡はワクチンによって予防できる感染症です。
日本では2014年10月から水痘ワクチンの定期接種が始まり、現在の定期接種対象は生後12か月から生後36か月に至るまでの子どもです。基本的に2回接種する仕組みになっています。
厚生労働省によると、水痘ワクチンは1回の接種でも重症の水痘をほぼ100%予防できると考えられており、2回接種することで軽症の水痘も含めた発症予防が期待されています。
成人については、子どもの定期接種と同じ制度の対象ではありません。水疱瘡にかかったことがなく、接種歴も不明な場合は、医療機関で抗体検査や任意接種について相談する方法があります。
ただし、水痘ワクチンは生ワクチンのため、妊娠中の人や免疫機能に異常がある人、免疫抑制治療を受けている人などは接種できない場合があります。接種前に必ず医師の判断を受けてください。
感染者と接触した後でも予防できる可能性がある水疱瘡患者と接触した場合でも、状況によっては発症を防いだり、症状を軽くしたりできる可能性があります。
厚生労働省は、家庭内や施設内での感染予防において、接触後72時間以内の水痘ワクチンの緊急接種による発症予防や軽症化が期待できると説明しています。
ただし、ワクチンを接種できない人や重症化リスクの高い人では対応が異なります。免疫グロブリンなどの使用を含め、接触した時点で医師に相談が必要です。
出典:厚生労働省「水痘ワクチン」、CDC「Clinical Guidance for People at Risk for Severe Varicella」、日本感染症学会「水痘」。
【大人の水疱瘡】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:大人の水疱瘡は子どもより重症化しやすいですか?
A1:はい。厚生労働省や国立健康危機管理研究機構は、成人の水痘は重症化するリスクが高いと説明しています。特に肺炎や脳炎などの合併症に注意が必要です。ただし、成人全員が重症になるわけではありません。
Q2:水疱瘡は発疹が出る前から他人にうつりますか?
A2:うつる可能性があります。一般的には発疹が現れる1~2日前から感染力があり、すべての発疹がかさぶたになるまで感染性が続きます。そのため、発疹が出る前に家族などへ感染させてしまう場合があります。
Q3:大人の水疱瘡は何日くらいで治りますか?
A3:典型的な水疱瘡の症状は4~7日程度続くとされています。ただし、発疹の乾燥やかさぶたになるまでの期間には個人差があり、成人や免疫機能が低下している人では長引くことがあります。
Q4:子どもの頃に水疱瘡にかかった人も再び感染しますか?
A4:自然感染によって通常は長期的な免疫が得られるため、再び水疱瘡を発症することはまれです。ただし、免疫機能が低下している場合などには再感染が起こる可能性があります。また、潜伏していたウイルスが再活性化すると帯状疱疹を発症することがあります。
Q5:妊婦が水疱瘡患者と接触したらどうすればよいですか?
A5:過去の罹患歴やワクチン接種歴にかかわらず、免疫の有無が不明な場合は速やかに産婦人科へ連絡してください。胎児や母体への影響を考慮し、抗体検査や曝露後の予防措置が必要かどうかを医師に判断してもらうことが大切です。
Q6:大人でも水痘ワクチンを接種できますか?
A6:成人でも医師の判断のもとで任意接種を検討できます。特に罹患歴や接種歴がなく、免疫を持っていない可能性がある人は相談する価値があります。ただし、生ワクチンのため妊娠中や免疫抑制状態では接種できない場合があります。
大人の水疱瘡は、子どもの感染症というイメージだけで判断してはいけない病気です。発熱や倦怠感から始まり、全身に赤い発疹や水ぶくれが広がることがあり、成人では肺炎や脳炎などの合併症を起こす可能性もあります。
特に覚えておきたいのは、潜伏期間が10~21日と長いこと、発疹が出る1~2日前から感染力があること、そして成人では早期の医療相談が重要になることです。
発疹が現れた場合は、自己判断で市販薬だけに頼らず、受診前に医療機関へ電話して水疱瘡の疑いがあることを伝えましょう。必要に応じてアシクロビルなどの抗ウイルス薬による治療が検討されます。
また、妊娠中の感染は母体だけでなく胎児や新生児にも影響する可能性があります。妊婦が感染者と接触した場合は、症状がなくても速やかな相談が必要です。
2026年現在、水痘ワクチンは予防の有効な手段として位置づけられています。過去の罹患歴や接種歴を確認し、免疫が不明な成人は医療機関で抗体検査や任意接種について相談するとよいでしょう。
大切なのは、発症してから慌てるのではなく、感染の仕組みと重症化のサインを知り、早い段階で適切な医療につなげることです。
編集・医療情報上の主な参照資料
- 厚生労働省「水痘」「水痘ワクチン」(2026年3月10日版)
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「水痘」(2025年8月28日更新)
- 米国疾病予防管理センター(CDC)「Clinical Overview of Chickenpox」「Clinical Guidance for People at Risk for Severe Varicella」
- 公益社団法人日本皮膚科学会「帯状疱疹とは何ですか?」
- 日本感染症学会「水痘」
※医療情報として公開する際は、抗ウイルス薬の使用や妊婦の曝露後対応について、国内の最新の診療指針・添付文書との最終照合を推奨します。