大相撲の懸賞金記録を語るうえで欠かせないのが、元横綱・白鵬です。
白鵬は2010年代の大相撲を代表する横綱であり、2015年初場所には15戦全勝で優勝。1場所545本という驚異的な懸賞獲得本数を残しました。
当時の記録を現在の大の里と比較すると、次の違いがあります。
白鵬と大の里の懸賞金記録比較| 比較項目 | 白鵬 | 大の里 |
|---|---|---|
| 記録した場所 | 2015年初場所 | 2026年9月場所 |
| 懸賞獲得本数 | 545本 | 698本 |
| 1本当たりの力士取り分 | 5万6,700円 | 6万円 |
| 獲得金額 | 3,090万1,500円 | 4,188万円 |
| 場所の成績 | 15戦全勝 | 12勝3敗 |
白鵬の545本は、当時の懸賞金制度のもとで達成された記録です。大の里は本数で153本、金額では約1,098万円上回りました。
ここで見落とせないのが、懸賞金の単価変更です。
2015年当時は1本当たりの力士取り分が5万6,700円でしたが、現在は6万円です。同じ本数でも、時代によって獲得金額が変わります。
したがって、歴代記録を比較するときには、次の2つを分けて考える必要があります。
- 本数の記録: 何本の懸賞を獲得したか。
- 金額の記録: 当時の懸賞単価を反映して、いくら獲得したか。
単純な金額比較だけでは、力士がどれほど多くの懸賞を集めたかまでは分かりません。
2025年の大の里も年間トップだった2025年の年間獲得本数ランキングでは、大の里が2,432本で1位でした。
2位の豊昇龍は1,657本。両者の差は775本です。
大の里は2025年に大関から横綱へ昇進し、上位力士として注目される取組が増えました。懸賞金の獲得本数にも、その活躍と人気が反映されています。
白鵬が長年築いてきた記録に対して、大の里が新たな基準を作り始めたことは、近年の大相撲における大きな変化です。
【懸賞金の仕組み】1本7万円の配分と力士の本当の手取り

懸賞金について多くの人が疑問に感じるのが、「1本7万円なら、勝った力士は7万円をそのまま受け取れるのか」という点です。
答えは違います。
日本相撲協会の公式案内によると、懸賞1本の提供金額は7万円。このうち1万円は協会の事務経費に充てられ、残り6万円が勝利力士の取り分になります。
懸賞金7万円の内訳2025年5月場所からは、力士が土俵上で受け取る現金の額も変更されています。
70,000円
懸賞1本の提供金額
協会の事務経費10,000円
勝った力士の取り分:60,000円
土俵上で渡される現金
10,000円
銀行口座への振込分
20,000円
納税充当金としての預り金
30,000円
※2025年5月場所以降の配分。合計7万円。
この変更は、大量の現金を持ち歩くことによる盗難リスクを減らすために行われました。
従来は、勝った力士が土俵上で現金3万円を受け取り、3万円が納税充当金として預けられていました。
2025年5月場所からは、土俵上の現金が3万円から1万円に減り、差額2万円は銀行口座への振込となりました。納税充当金3万円は引き続き本人名義で管理されます。
6万円は税金を差し引いた後の純利益ではないここは誤解しやすい部分です。
懸賞1本につき6万円というのは、勝利力士に配分される金額です。最終的な税金などをすべて差し引いた後の自由に使える純利益を意味するわけではありません。
例えば、大の里が2026年9月場所に獲得した4,188万円を配分に当てはめると、次のようになります。
| 項目 | 698本分 |
|---|---|
| 懸賞提供総額 | 4,886万円 |
| 協会の事務経費 | 698万円 |
| 力士の獲得分 | 4,188万円 |
| 土俵上の現金 | 698万円 |
| 銀行振込分 | 1,396万円 |
| 納税充当金 | 2,094万円 |
したがって、ニュースで報じられる4,188万円は、懸賞金の力士取り分の合計です。
土俵上で実際に受け取る現金と、銀行振込分、納税充当金を区別すると、懸賞金の仕組みがより正確に理解できます。
【1取組の上限は60本】森永賞と懸賞旗の知られざるルール
懸賞金は、スポンサー企業が自由に無制限の本数を設定できるわけではありません。
日本相撲協会は、1つの取組にかけられる懸賞を原則60本までと定めています。
2006年から上限制度が設けられた懸賞金の申込数が増加したことを背景に、2006年1月場所から1取組当たり原則50本までという制限が設けられました。
その後、2015年1月場所の白鵬の優勝や、2017年1月場所の稀勢の里の初優勝などで懸賞の申し込みが集中。
2017年3月場所からは原則60本に変更されました。日本相撲協会の公式クイズでも、この上限が説明されています。
森永賞とは?通常の懸賞とは別枠の特別な存在
が提供する伝統的な懸賞
森永賞は1951年1月場所から続く歴史ある懸賞です。一般の懸賞とは異なり、ファン投票によって対象の取組が決定される独自の仕組みがあります。
森永製菓の公式説明によると、森永賞は1951年1月場所に始まり、1954年春場所から現在につながるファン投票方式になりました。
また、森永製菓は懸賞掲出企業の中でも最も古い企業とされています。
森永賞の特徴は次の3点です。
- ファン投票によって対象の取組が決まる。
- 通常の懸賞60本の上限には含まれない。
- 懸賞旗が通常の旗とは少し異なるタイミングで登場する。
つまり、通常の懸賞60本に森永賞1本が加わる場合、合計61本となります。
ただし、前述した2024年1月場所の63本は、休場による懸賞の懸け替えが発生した特殊なケースです。
通常の上限が63本に変更されたわけではありません。
なぜ企業は懸賞金を出すのか懸賞金は力士への賞金であると同時に、企業にとっては広告宣伝の手段です。
日本相撲協会の案内によると、懸賞を出す企業名などは観客に配布される取組表に掲載され、取組前には場内放送で読み上げられます。加えて、懸賞旗が土俵の周囲を回ることで、会場内の観客にも企業名が伝わります。
人気力士の取組には観客の注目が集まるため、スポンサー企業にとっても広告効果を期待できる機会になります。
そのため、懸賞本数は単純に勝利数だけで決まるものではありません。
番付、対戦カード、力士の知名度、企業の広告戦略など、複数の要素が関係しています。
【プロの結論】懸賞金記録を見るなら金額・本数・年間成績を分ける
大相撲の懸賞金最高額を正確に理解するには、3つの判断基準が必要です。
1. 金額で比較するなら、懸賞単価の変更を確認する
白鵬の2015年の545本と大の里の2026年の698本では、懸賞1本当たりの力士取り分が異なります。金額だけでなく、当時の単価も確認する必要があります。
2. 本数で比較するなら、実際の獲得本数を見る
懸賞旗の本数はスポンサーの関心や力士の人気を反映します。ただし、懸賞がかかっていても負ければ獲得できません。
3. 年間で比較するなら、集計期間をそろえる
2026年の年間ランキングは9月場所終了時点の数字です。2025年の年間確定値と、そのまま同じ条件で比較することはできません。
なお、年間の懸賞獲得本数については、月刊『相撲』に掲載された日本相撲協会広報部発表の数値をもとに集計したランキングが参考になります。十両と幕内をまたぐ場合など、集計対象に注意が必要です。
懸賞金は、力士の強さだけを示す数字ではありません。勝利を積み重ねる実力と、スポンサーや観客から注目される人気、その両方が重なって生まれる記録です。
【相撲の懸賞金最高額】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:相撲の懸賞金最高額はいくらですか?
A1:2026年11月5日時点で、1場所の個人獲得金額の最高記録は、大の里が2026年9月場所に獲得した4,188万円です。698本の懸賞を獲得しました。
Q2:懸賞金1本はいくらですか?
A2:企業や団体が提供する懸賞金は1本7万円です。協会の事務経費1万円を除いた6万円が勝った力士の取り分になります。
Q3:懸賞金1本で力士が受け取る現金はいくらですか?
A3:2025年5月場所以降は、土俵上で受け取る現金が1万円です。残りの力士取り分5万円は、2万円の口座振込と3万円の納税充当金に分けられます。
Q4:白鵬の懸賞金545本は現在も歴代最多ですか?
A4:いいえ。白鵬は2015年初場所に545本を獲得しましたが、2026年9月場所に大の里が698本を獲得し、記録を更新しました。
Q5:1取組にかけられる懸賞金の上限は何本ですか?
A5:通常の懸賞は原則60本です。森永賞は別枠で加算されます。例外的な懸け替えによって、2024年1月場所には63本を記録した取組もありました。
Q6:森永賞は普通の懸賞金と何が違いますか?
A6:森永賞は1951年に始まった伝統的な懸賞で、ファン投票によって対象の取組が決まる点が特徴です。通常の懸賞本数60本の上限には含まれません。
2026年11月時点の大相撲懸賞金記録を整理すると、歴史的な変化がはっきり見えてきます。
- 1場所の最高獲得額: 大の里の4,188万円(2026年9月場所)
- 1場所の最多獲得本数: 大の里の698本(2026年9月場所)
- 1取組の最多本数: 63本(2024年1月場所・琴ノ若対霧島)
- 2026年の年間最多: 大の里の1,541本(9月場所まで)
- 懸賞1本の提供金額: 7万円
- 力士の取り分: 1本当たり6万円
白鵬が2015年に残した545本、そして大の里が2025年に達成した3,114万円は、大相撲の懸賞金史に残る重要な記録です。しかし、2026年9月場所の大の里は698本、4,188万円という新たな最高記録を樹立しました。
今後の注目点は、大の里がこの記録をさらに伸ばすのか、あるいは霧島や豊昇龍、熱海富士などの力士が年間ランキングで追い上げるのかという点です。
懸賞旗が土俵を回る光景には、勝負の迫力だけでなく、力士の実績、企業の期待、長年受け継がれてきた大相撲の文化が詰まっています。金額と本数の両方に注目すれば、取組を観戦する楽しみもさらに広がります。