大相撲の懸賞金は、企業や団体が特定の取組に提供する賞金制度だ。懸賞が付いた取組で勝った力士が、懸賞金を獲得する。
日本相撲協会の公式案内によると、現在の懸賞金は1本7万円(税込)。そのうち6万円が勝ち力士に配分され、残り1万円は協会の手数料となる。
手数料には、取組表への提供者名の掲載や場内放送などの費用が含まれる。現在の金額は2019年6月に改定され、同年9月場所から適用されたものだ。
懸賞金7万円の内訳70,000円

スポンサー企業が支払う懸賞金1本の金額(税込)
勝ち力士の取り分
60,000円
日本相撲協会の手数料
10,000円
勝ち力士の取り分6万円は、2025年5月場所から現金1万円と口座振込5万円に分けて支給。
例えば、1つの取組に懸賞が10本付いていた場合、スポンサー企業が支払う金額は70万円。勝ち力士の取り分は60万円、協会の手数料は10万円となる。
懸賞が30本なら、勝ち力士の取り分は180万円。50本なら300万円に達する。
ただし、懸賞金は勝った力士だけが受け取る。負けた力士には支給されず、勝利数が多くても懸賞の付いていない取組で勝った場合は賞金を得られない。
なお、日本相撲協会の公式クイズでは、現在の懸賞金制度につながる賞金形式は昭和30年(1955年)から始まったと説明されている。長い歴史を持つ制度が、企業広告と力士への報酬を結び付けている。
【2025年から変更】懸賞金の現金1万円・積立金5万円になった理由
懸賞金の受け取り方は、2025年5月場所から大きく変わった。
従来は1本6万円の力士取り分のうち、土俵上で現金3万円を受け取り、残る3万円を給与とは別の口座に振り込む仕組みだった。
変更後は、土俵上の現金が1万円に減り、口座への振込額が5万円になった。力士の取り分6万円そのものは変更されていない。
変更前と変更後の比較| 項目 | 変更前 | 2025年5月以降 |
|---|---|---|
| 懸賞金総額 | 7万円 | 7万円 |
| 協会手数料 | 1万円 | 1万円 |
| 土俵上の現金 | 3万円 | 1万円 |
| 別口座への振込 | 3万円 | 5万円 |
| 力士の取り分 | 6万円 | 6万円 |
この変更を発表したのは日本相撲協会。2025年5月9日の日刊スポーツの報道によると、主な理由は現金管理の安全性と事務作業の負担軽減だった。
なぜ現金支給を減らしたのか背景には、懸賞本数の増加がある。
懸賞金が多い取組では、勝った力士が大量の現金を持ち歩くことになる。協会側も懸賞金だけで約7,000万円もの現金を管理していたと報じられた。
また、懸賞袋に3万円ずつ現金を詰める作業も、懸賞本数の増加に伴って煩雑になっていた。
そこで、現金の持ち運びに伴う盗難リスクを抑え、担当者の作業負担も軽くするため、現金支給額を一律1万円に変更したのである。
5万円は税金として没収されるのか?ここは誤解されやすいポイントだ。
5万円がそのまま税金として国に納められるわけではない。
もともと旧制度の3万円は、納税充当金として協会が力士本人名義の預り金として管理していた。2025年の変更では、現金支給を減らした2万円も同じ別口座への振込に回され、合計5万円となった。
日刊スポーツによれば、この口座は引退後に支払いが発生する税金などへの備えとして設けられたものとされ、所定の手続きを踏めば引き出すことも可能だ。
つまり、5万円は単純な税金の天引きではなく、将来の納税や引退後の生活に備える性格を持った資金である。
【企業スポンサーの仕組み】懸賞旗の申し込み方法と必要費用
土俵上を回る色鮮やかな懸賞旗は、企業が懸賞を提供していることを観客に知らせる広告媒体でもある。
懸賞を出す企業は、賞金を提供するだけではない。懸賞旗、取組表への社名掲載、場内放送を通じて、自社の名前を相撲ファンに届けられる。
企業が懸賞を出すための費用日本相撲協会の公式案内に記載されている基本条件は次のとおり。
- 懸賞金は1本7万円(税込)。
- 1日につき1本以上の申し込みが必要。
- 1場所15本以上が基本条件。
- 追加申し込みは1本単位で受け付ける。
したがって、15日間の本場所で最低15本を申し込む場合、必要な懸賞金は105万円(税込)となる。
企業スポンサーの費用例105万円
1場所15本の場合・税込
1本あたり
7万円
申し込み本数
15本
協会手数料の合計
15万円
勝ち力士への配分総額
90万円
この105万円とは別に、懸賞旗の制作費などが必要になる。旗の制作費は公式案内に一律の金額が示されていないため、制作業者への確認が必要だ。
懸賞旗のサイズと広告ルール日本相撲協会が公表している懸賞旗のサイズは次のとおり。
- 横幅:70cm
- 縦幅:120cm
懸賞旗はスポンサー側で制作し、持ち込む方式だ。ただし、土俵上で掲げるため、デザインには一定の制限がある。
また、提供者名は15文字以内で作成する。社名などを織り込んだ原稿は、その日の取組表に掲載され、取組直前には場内放送でも読み上げられる。
懸賞金の申し込み方法申し込みを検討する企業は、日本相撲協会の懸賞係に問い合わせる。
公式案内に掲載されている問い合わせ先は次のとおり。
- 窓口:公益財団法人日本相撲協会・懸賞係
- 電話:03-3623-5111
- 住所:東京都墨田区横網1-3-28
特定の力士の取組や、結びの一番など、希望する取組に懸賞を付けることができる。企業の広告戦略に合わせて対象を検討できる点が特徴だ。
懸賞金を支える企業・協会・力士の関係懸賞制度は、スポンサー企業だけで成立しているわけではない。広告の提供、協会による運営、力士の勝利という複数の関係者が関わっている。
懸賞旗が何本も続く取組は、それだけ企業の広告需要が集中しているということでもある。力士の人気と企業の宣伝活動が結び付く、相撲独特の光景だ。
【2026年最新記録】大の里が9月場所で698本を獲得!
2026年の懸賞金獲得記録で最大の話題となったのが、横綱・大の里の活躍だ。
2026年9月場所で大の里は、698本、金額にして4,188万円の懸賞金を獲得した。
日刊スポーツが掲載した秋場所千秋楽の懸賞金獲得ランキングでも、大の里がトップとなっている。場所の成績は12勝3敗だった。
大の里698本の金額を計算すると?現在の制度で698本を計算すると、次のようになる。
2026年9月場所・大の里の懸賞金4,188万円
698本 × 6万円(勝ち力士の取り分)
土俵上で受け取る現金
698万円
別口座への振込
3,490万円
スポンサーの支払総額
4,886万円
日本相撲協会の手数料
698万円
計算式は以下のとおり。
- 698本 × 7万円 = 4,886万円
- 698本 × 6万円 = 4,188万円
- 698本 × 1万円 = 698万円(現金)
- 698本 × 5万円 = 3,490万円(口座振込)
この4,188万円は懸賞金の力士取り分の合計であり、税金などを差し引いた後の最終的な手取り年収ではない。
2026年9月場所の獲得ランキング大の里だけでなく、ほかの力士も相当数の懸賞を獲得している。
日刊スポーツの千秋楽時点のランキングは次のとおり。
| 順位 | 力士 | 獲得本数 | 力士取り分 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 大の里 | 698本 | 4,188万円 |
| 2位 | 安青錦 | 365本 | 2,190万円 |
| 3位 | 霧島 | 259本 | 1,554万円 |
| 4位 | 藤ノ川 | 239本 | 1,434万円 |
| 5位 | 琴櫻 | 225本 | 1,350万円 |
| 6位 | 熱海富士 | 193本 | 1,158万円 |
注目すべきは、大の里が2位の安青錦に333本もの差を付けたことだ。
懸賞金は単純に勝ち星だけで決まらない。人気力士の対戦、上位同士の好取組、優勝争いなど、企業が広告を出したい場面に懸賞が集まる。
横綱として注目を集める大の里の取組には、多くの企業スポンサーの期待が集まったと考えられる。
【歴代記録を比較】白鵬の545本を超えた大の里の実力
懸賞金の歴代記録を語るうえで欠かせないのが、元横綱・白鵬だ。
白鵬は2015年1月場所で1場所545本という記録を残していた。長く大相撲の懸賞本数を代表する数字だったが、2025年以降は大の里が記録を塗り替え、2026年9月場所にはさらに698本まで伸ばした。
1場所の懸賞金獲得本数ランキング| 順位 | 力士 | 場所 | 本数 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 大の里 | 2026年9月 | 698本 |
| 2位 | 白鵬 | 2015年1月 | 545本 |
| 3位 | 大の里 | 2025年9月 | 519本 |
| 4位 | 大の里 | 2025年5月 | 509本 |
| 5位 | 霧島 | 2026年5月 | 508本 |
| 6位 | 大の里 | 2026年1月 | 498本 |
特に興味深いのは、大の里が2025年5月、2025年9月、2026年1月、2026年9月と、複数の場所で上位記録を残していることだ。
単発の記録ではなく、継続的にスポンサーを集める力士として存在感を強めている。
金額では白鵬と大の里のどちらが上?ここで注意したいのが、懸賞金の単価は時代によって異なる点だ。
2015年当時、懸賞1本の提供額は6万2,000円。勝ち力士の取り分は5万6,700円だった。
白鵬の545本を当時の単価で計算すると、約3,090万1,500円となる。
一方、2025年9月場所の大の里は519本で、現在の取り分6万円を掛けると3,114万円。さらに2026年9月場所は4,188万円に達した。
つまり、歴代記録を比較するときには、次の2つを分けて見る必要がある。
- 本数の記録: 何本の懸賞を獲得したか。
- 金額の記録: 当時の1本当たりの配分額を反映した獲得額はいくらか。
単純に昔の金額と現在の金額を比べると、懸賞金の制度変更による差が混ざってしまう。
2018年以降の通算記録にも注目懸賞本数の通算ランキングについては、集計期間にも注意が必要だ。
大相撲観戦ガイドが月刊『相撲』などのデータをもとにまとめた2018年以降の通算集計では、2026年9月場所までの上位は次のようになっている。
| 順位 | 力士 | 通算本数 |
|---|---|---|
| 1位 | 貴景勝 | 5,205本 |
| 2位 | 豊昇龍 | 5,003本 |
| 3位 | 大の里 | 4,889本 |
| 4位 | 琴櫻 | 4,207本 |
大の里は2025年に年間2,432本を獲得しており、年間ランキングでも大きな実績を残した。
ただし、この通算ランキングは2018年以降の集計であり、全時代の力士を網羅した公式の生涯ランキングではない。
【税金と手取りの真相】懸賞金4,188万円はそのまま自由に使える?
懸賞金の金額が大きくなるほど、気になるのが税金の問題だ。
大の里の2026年9月場所の懸賞金4,188万円という数字は、確かに大きい。しかし、この金額をそのまま自由に使える現金と考えるのは正確ではない。
懸賞金の積立金と税金は別に考える現在の制度では、勝ち力士の取り分6万円のうち5万円が別口座への振込となる。
この口座は、引退後に必要となる税金や諸費用への備えという性格を持つ。したがって、口座に振り込まれたからといって納税が完了しているわけではない。
また、懸賞金の受け取り額は、力士の給与やほかの収入とは区別して考える必要がある。
税金の最終的な負担は、年間の所得や必要経費などを踏まえて計算される。懸賞金の本数だけで税引き後の金額を確定することはできない。
懸賞金と年収は同じではない力士の収入には、懸賞金以外にも番付に応じた給与、賞金、褒賞金、各種手当などがある。
したがって、懸賞金4,188万円を獲得したからといって、それがそのまま年収になるわけではない。
懸賞金ランキングは、あくまで本場所の取組で獲得した懸賞金の比較として見るのが適切だ。
【プロの結論】懸賞金は力士の実力だけでなく人気と広告価値を映す
懸賞金制度を理解するうえで大切なのは、懸賞の本数と力士の強さを同一視しないことだ。
懸賞が多い取組には、複数の要素が重なっている。
1. 力士の知名度: 横綱や大関など、注目度の高い力士にスポンサーが集まりやすい。
2. 取組の注目度: 優勝争いや上位同士の対戦は広告価値が高い。
3. 企業の宣伝戦略: 特定の力士を応援する企業や団体が懸賞を提供する。
4. 勝負の結果: 最終的に懸賞を獲得できるのは勝った力士だけ。
同じ10勝を挙げた力士でも、懸賞の多い取組に勝ったかどうかで獲得額は大きく変わる。
その意味で懸賞金は、勝負の結果だけでなく、相撲界における人気や企業からの期待を映す数字でもある。
大の里の698本という記録は、横綱としての存在感と企業スポンサーの関心が結び付いた象徴的な数字だ。
一方、企業にとっては懸賞金が単なる賞金提供ではなく、会場の観客やテレビ視聴者に社名を届ける広告投資となる。勝負の緊張感と広告の存在が自然に共存する点に、大相撲の懸賞制度ならではの特徴がある。
【大相撲の懸賞金に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:大相撲の懸賞金は1本いくらですか?
A1:現在は1本7万円(税込)です。勝ち力士の取り分が6万円、日本相撲協会の手数料が1万円となっています。
Q2:力士が懸賞金の袋で受け取る現金はいくらですか?
A2:2025年5月場所から1本につき1万円です。残りの5万円は別口座に振り込まれます。以前は現金3万円、口座振込3万円でした。
Q3:懸賞金が50本付いたら力士はいくらもらえますか?
A3:勝ち力士の取り分は合計300万円です。内訳は現金50万円、別口座への振込250万円です。協会の手数料は50万円となります。
Q4:2026年9月場所で懸賞金を最も多く獲得した力士は誰ですか?
A4:横綱・大の里です。698本を獲得し、力士の取り分は合計4,188万円でした。
Q5:企業が懸賞金を出すにはいくら必要ですか?
A5:1本7万円(税込)です。1場所15本を申し込む場合は105万円が必要です。懸賞旗の制作費などは別途確認が必要です。
Q6:懸賞金はすべて税金として差し引かれますか?
A6:いいえ。5万円の口座振込分は納税や引退後の費用に備える資金ですが、全額が税金として徴収されるわけではありません。最終的な税負担は個人の所得状況などによって異なります。
大相撲の懸賞金は、1本7万円。そのうち6万円が勝ち力士の取り分となり、2025年5月場所からは現金1万円と別口座への振込5万円という受け取り方式に変更された。
企業スポンサーにとっては、懸賞旗や場内放送、取組表への社名掲載を通じて広告効果を得られる制度でもある。
2026年9月場所には大の里が698本、4,188万円という1場所の歴代最多記録を達成した。白鵬が築いた545本という記録を大きく更新したことは、近年の大相撲における懸賞需要の高まりを象徴している。
今後の注目点は、大の里がこの記録をさらに伸ばすのか、豊昇龍や安青錦、霧島らがどこまで迫るのかという点だ。
懸賞旗の数に注目して取組を見ると、勝負の面白さに加え、企業と力士、そして相撲文化を支える仕組みまで見えてくる。
主な情報源:日本相撲協会公式「懸賞について」、日本相撲協会公式クイズ、日刊スポーツ(2025年5月9日・2026年秋場所懸賞金獲得ランキング)、大相撲観戦ガイドの懸賞本数集計。