ラジオ第2放送の終了は、単なる番組改編ではありません。NHKが進めてきた中期的な経営改革の一環であり、放送設備の維持費、番組制作体制、リスナーの視聴環境の変化など、複数の事情が重なった結果です。
主な理由は次の3つです。
1. 3波体制を2波体制に集約する経営改革NHKは、従来のラジオ第1・第2・FMという3つの放送波を、AMとFMの2つに集約する方針を打ち出しました。
背景にあるのは、限られた経営資源をNHKならではの番組制作や取材に集中させるという考え方です。
2025年3月18日の衆議院総務委員会では、NHK側から音声波の再編について説明がありました。
その際に示された設備面の削減効果は、次のとおりです。
- 老朽化したラジオ送信所設備の更新を見直し、今後の設備投資を100億円規模で抑制。
- 全国の送信所の補修費、回線費、電気代などについて、年間約8億円の経費削減を見込む。
つまり、放送波を1つ減らすことによって、番組制作だけでなく、全国に設置された送信設備の維持管理も効率化する狙いがありました。
2. ラジオを聴く環境が変化したもう1つの背景は、インターネットを利用した音声コンテンツの普及です。
以前は、AMラジオを受信できる機器が、NHKの語学講座や教育番組を聴くための主要な手段でした。
しかし、現在はスマートフォンやパソコンからもラジオ番組を聴けます。
NHKには「らじるらじる」などのインターネットサービスがあり、従来の放送波だけに依存しない利用環境が整ってきました。
2026年3月31日の衆議院総務委員会でも、NHK側はインターネットを利用するリスナーの増加を再編の背景として説明しています。
教育番組や語学講座を残しながら、放送波とインターネットを組み合わせる方向へ進んだわけです。
3. 老朽化した送信設備の維持負担ラジオ第2は全国を対象にしたAM放送でした。
全国の広い範囲へ放送を届けるには、送信所やアンテナなどの設備を維持する必要があります。
長期間使用してきた設備については、修繕だけでなく更新も必要です。
第2放送を廃止してAM1波とFM1波に整理すれば、送信設備の更新や維持に必要な資源を再配分できます。
ただし、NHKは2026年3月の会長会見で、再編について単純な支出削減が目的なのではなく、合理的なコストで質の高い番組を制作し、公共メディアとしての役割を果たすための見直しだと説明しています。
井上樹彦会長は、質の高いコンテンツを安定して生み出すことがNHKの価値につながるとの考えも示しました。
ここで押さえておきたいのは、ラジオ第2の放送終了と、教育放送そのものの廃止は別の話だということです。
放送波を減らしても、教育・語学コンテンツを別のチャンネルに移して提供する。その方針が今回の再編の中心にあります。
【95年の歴史】NHKラジオ第2放送の誕生から終了までの経緯

NHKラジオ第2放送は、1931年に始まった歴史ある放送サービスです。
日本のラジオ放送そのものは1925年に始まりましたが、当初は現在のような複数の放送波が存在していたわけではありません。
1931年に第2放送が加わったことで、同じ時間帯に異なる番組を提供できるようになりました。
NHK放送文化研究所の研究論文「ラジオ第2放送90年 生涯学習波への広がりとインターネット展開」でも、第2放送が教育放送を目的として設けられた経緯や、聴取者の番組選択の幅を広げた役割が紹介されています。
ラジオ第2の主な歴史と再編スケジュール| 時期 | 出来事 | 意味・背景 |
|---|---|---|
| 1925年 | 日本のラジオ放送開始 | 東京放送局などによる放送の始まり |
| 1931年 | ラジオ第2放送開始 | 教育・教養番組などを提供 |
| 1933年 | 大阪・名古屋でも第2放送開始 | 放送網が拡大 |
| 2021年 | ラジオ第2開局90周年 | 生涯学習メディアとしての役割を継続 |
| 2025年1月 | NHK経営委員会で再編方針を決定 | 2026年3月末の音声波再編を正式決定 |
| 2025年9月30日 | NHK経営委員会で廃止申請を議決 | 第2放送の廃止手続きへ |
| 2025年10月 | 廃止申請 | 対象となる放送局の廃止手続きを実施 |
| 2025年11月28日 | 総務省が廃止を認可 | 法的な手続きが進展 |
| 2026年2月12日 | 新しい番組編成を発表 | AM・FMの2波体制を具体化 |
| 2026年3月30日午前0時5分 | 第2放送の通常放送終了 | 95年の歴史に幕 |
NHKの経営判断だけで放送局の廃止が完結したわけではありません。
2025年10月1日から3日にかけて、NHKはラジオ第2放送を行う特定地上基幹放送局146局の廃止を申請しました。
これに対し、総務省は2025年11月28日付で廃止を認可しました。
放送法第86条第1項に基づく手続きで、電波監理審議会への諮問と答申を経たものです。
したがって、ラジオ第2の終了は、単なるNHK内部の番組改編ではなく、行政上の認可を伴う放送局の再編でもありました。
最後の放送では何が流れた?95年の歴史を締めくくった2026年3月29日深夜には、語学講座などの最終放送が行われました。
その中でも印象的だったのが、終了直前に放送された「アラビア語講座」です。
マイナビニュースの2026年3月30日付報道によると、最後のレッスンで伝えられたアラビア語は「また会いましょう」という意味の言葉でした。
日々の学習を支えてきた語学番組の最後にふさわしい締めくくりとなりました。
その後、24時から5分間の案内番組「らじるの時間 NHKラジオ 音声波再編」が放送され、午前0時5分に通常放送が終了しました。
【新旧比較】NHK AMとNHK FMの違いは?ラジオ第2の番組はどこへ移った?
2026年3月30日からのNHKラジオは、AMとFMの2波体制です。
従来のラジオ第1とFM放送を引き継ぎながら、それぞれの役割を明確にしています。
NHK AMとNHK FMの基本的な違い| 比較項目 | NHK AM | NHK FM |
|---|---|---|
| 旧名称 | ラジオ第1放送 | NHK FM放送 |
| 主な役割 | ニュース・生活情報 | 音楽・芸能・学習 |
| 災害情報 | 重要な情報伝達を担う | 放送を継続し情報を提供 |
| 教育番組 | 一部の教養番組など | 語学・高校講座など |
| 音質 | AM特有の音質 | 高音質な音楽放送に適する |
| 周波数 | 旧ラジオ第1と同じ | 旧NHK FMと同じ |
NHK AMは、旧ラジオ第1放送を引き継ぐ放送波です。
新しいテーマは「暮らしと、ご一緒に」。
ニュース、気象情報、災害情報、生活に関係する情報などを中心に、幅広い番組を提供します。
特に災害時には、迅速で正確な情報を届ける音声メディアとしての役割が期待されています。
NHK FMは音楽と学びを中心にNHK FMのテーマは「毎日の生活に、彩りを」。
音楽番組や芸能番組に加えて、旧ラジオ第2で放送していた語学講座や教育番組なども担います。
従来は音楽を中心とする放送波という印象が強かったNHK FMですが、2026年度からは教育・学習コンテンツの受け皿としての性格も強まりました。
AMとFMでは電波の届き方も違う番組の移行先を考えるうえで、もう1つ知っておきたいのが電波の特性です。
- AM放送: 比較的遠くまで電波が届きやすく、広域への情報伝達に適している。
- FM放送: 音質に優れ、音楽や音声の細かな表現に向いている一方、地形や建物による受信環境の影響を受ける場合がある。
2026年3月31日の国会審議では、NHK側もAMとFMのカバーエリアの大半は一致すると説明する一方、電波の特性の違いによって聞こえにくくなる地域が生じる可能性に触れています。
つまり、教育番組がFMに移ったからといって、すべての地域で従来と同じように受信できるとは限りません。
【番組移行先一覧】NHK語学番組・高校講座は2026年からどこで聴ける?
今回の再編で、ラジオ第2の利用者が最も気になるのは、これまで聴いていた番組がどこに移ったのかという点でしょう。
NHKは第2放送で提供していた番組の大部分をAMまたはFMに移行しました。
特に教育・語学番組については、FMを中心に再編されています。
主要な語学番組の移行先2026年度のNHK FMでは、以下のような語学講座が編成されています。
| 番組名 | 2026年度の主な放送先 | 内容 |
|---|---|---|
| ラジオ英会話 | NHK FM | 英会話の実践学習 |
| 基礎英語 レベル1 | NHK FM | 英語の基礎学習 |
| 基礎英語 レベル2 | NHK FM | 中級へのステップアップ |
| 小学生の基礎英語 | NHK FM | 小学生向け英語 |
| ラジオビジネス英語 | NHK FM | ビジネス英語 |
| 英会話タイムトライアル | NHK FM | 会話の瞬発力を鍛える |
| ニュースで学ぶ「現代英語」 | NHK FM | ニュースを使った英語学習 |
| まいにち中国語 | NHK FM | 中国語 |
| まいにちハングル講座 | NHK FM | 韓国語 |
| まいにちドイツ語 | NHK FM | ドイツ語 |
| まいにちフランス語 | NHK FM | フランス語 |
| まいにちイタリア語 | NHK FM | イタリア語 |
| まいにちスペイン語 | NHK FM | スペイン語 |
| まいにちロシア語 | NHK FM | ロシア語 |
| ポルトガル語講座 | NHK FM | ポルトガル語 |
※番組名や放送時刻は年度ごとの改編で変わる場合があります。最新の放送日時はNHKの番組表で確認してください。
NHK語学番組の放送時間はどう変わった?注意したいのが、放送波だけでなく放送時間も変更されたことです。
従来のラジオ第2では、朝の時間帯に語学講座が多く編成され、通勤・通学前に学習するリスナーにも利用されていました。
2026年度はNHK FMに集約された結果、早朝や深夜に放送される講座が増えています。
特に英語以外の外国語講座では、深夜から未明にかけての放送枠が目立ちます。
そのため、以前と同じ時刻にラジオをつけても、目的の講座が流れてこない場合があります。
番組が残っていることと、従来と同じ時間に聴けることは別です。
毎朝の学習習慣として利用していた人は、番組名だけでなく、放送曜日と時間も確認しておく必要があります。
NHK高校講座はFMへ移行した?テレビ放送も続いている?NHK高校講座についても、ラジオ第2終了後の行き先が気になる人は多いはずです。
2026年度もNHK高校講座は継続しており、FMで聴くことができます。
NHKエデュケーショナルが掲載する番組情報では、次の放送枠が案内されています。
NHK高校講座の2026年度放送時間
NHK FM3:00〜4:00
火曜日〜日曜日
Eテレ
10:00〜11:00
月曜日〜木曜日
Eテレの金曜日は10:00〜11:30。放送枠はNHKエデュケーショナルの番組情報に基づく。
ここで重要なのは、NHK高校講座がラジオだけの番組ではないということです。
FMの放送枠に加えてEテレのテレビ放送も継続しているため、学習者は自分の生活スタイルに合わせて利用できます。
終了した番組もある?すべてが移行したわけではないラジオ第2の番組がすべて新しい放送波へ引き継がれたわけではありません。
代表例として挙げられるのが「株式市況」と「アラビア語講座」です。
「株式市況」は1925年に始まった長い歴史を持つ番組で、2026年3月27日に放送を終了しました。ラジオ第2の終了よりも先に、101年の歴史に幕を下ろしたことになります。
また、「アラビア語講座」も3月29日深夜の最終放送をもって終了しました。
これらの事例からも、今回の再編は単純なチャンネル変更ではなく、番組の継続・終了を含む編成全体の見直しだったことが分かります。
【現在の聴き方】NHKラジオ第2の周波数はどうなった?らじるらじるも解説
2026年11月現在、NHKラジオ第2の通常放送は終了しています。
そのため、以前のラジオ第2の周波数に合わせても、従来の語学講座や教育番組を聴くことはできません。
NHKラジオ第2の周波数は変更されたのか?よくある誤解が、「ラジオ第2の周波数が変更され、新しいNHK FMになった」というものです。
実際には、そうではありません。
- NHK AMは、旧ラジオ第1の周波数を引き継ぐ。
- NHK FMは、従来のNHK FMの周波数を引き継ぐ。
- 旧ラジオ第2の放送周波数は、放送終了に伴い通常放送に使用されなくなる。
つまり、ラジオ第2の周波数が一斉に新しいAMやFMへ移動したわけではありません。
受信機で聴く場合は、旧第2の周波数ではなく、NHK FMなどの移行先を選ぶ必要があります。
NHK AMとNHK FMの周波数自体は、再編前のラジオ第1とFMから変更されていません。
NHK ONE らじるらじるで聴ける?
NHKのインターネットラジオサービス
もちろん、インターネットを通じてNHKラジオを聴く方法は継続しています。
2026年3月30日から、従来の「らじるらじる」は「NHK ONE らじるらじる」という名称になりました。
この変更はサービス名称の変更が中心で、従来のサービス内容は基本的に変わらず、NHK ONEへのログインも必要ないとNHKの案内を紹介したAV Watchが報じています。
利用する際は、次のような方法があります。
1. NHK ONE らじるらじるを開く。
2. 聴きたいNHK AMまたはNHK FMを選ぶ。
3. 放送中の番組を聴く。
4. 聞き逃し配信の対象番組は、配信期間内に再生する。
特に語学学習を続けたい人は、放送時間に生活を合わせるだけでなく、インターネットで利用できる音声コンテンツも活用すると便利です。
ラジオ第2がまだ聴こえるという情報は本当?放送終了後、一部の周波数では終了告知放送が流れました。
ASCII.jpの2026年3月31日付報道によると、3月30日午前5時55分ごろから31日夜にかけて、ラジオ第2の終了と番組移行先を案内する放送が実施されました。
このため、3月30日の放送終了後に旧周波数から音声が聞こえたとしても、それは従来の番組放送が続いていたという意味ではありません。
通常番組の終了と、終了告知の終了・送信設備の停波は、区別して考える必要があります。
【よくある質問】NHKラジオ第2放送に関するFAQ
Q1:NHKラジオ第2放送はいつ終了しましたか?
2026年3月30日午前0時5分に通常放送が終了しました。3月29日深夜の最終番組をもって、1931年から続いた95年の歴史に幕を下ろしています。
Q2:NHKラジオ第2が終了した理由は何ですか?
NHKの経営計画に基づく音声波の再編が主な理由です。送信設備の維持・更新費用を抑え、番組制作などに経営資源を集中させる狙いがあります。
Q3:NHKラジオ第2の番組はどこへ移行しましたか?
語学講座やNHK高校講座などの教育番組は、原則としてNHK FMへ移行しています。一部の教養番組などはNHK AMで扱われます。終了した番組もあります。
Q4:NHK高校講座は2026年も聴けますか?
はい。NHK高校講座はFMでも放送されています。また、Eテレでのテレビ放送も続いています。
Q5:NHK AMとNHK FMの周波数は変わりましたか?
再編による周波数の変更はありません。NHK AMは旧ラジオ第1、NHK FMは従来のFM放送の周波数を引き継いでいます。
Q6:NHKの語学番組は今後も聴けますか?
はい。ラジオ英会話、まいにち中国語、まいにちハングル講座、まいにちドイツ語など、多くの講座がNHK FMで継続しています。ただし、放送時間や番組名が変更されたものもあります。
Q7:NHKラジオ第2はインターネットでも終了しましたか?
旧ラジオ第2という独立した放送波は終了しましたが、NHK AM・NHK FMのインターネット配信は継続しています。「NHK ONE らじるらじる」を利用できます。
NHKラジオ第2放送は、2026年3月30日午前0時5分に通常放送を終了しました。
1931年に始まった95年の歴史を振り返ると、第2放送は単なるAMラジオの1チャンネルではありませんでした。学校教育、外国語学習、生涯学習、教養番組などを長年にわたって支えてきた公共放送の重要な存在でした。
今回の再編によって変わったのは、主に放送波の構成と番組の配置です。
今後のNHKラジオは、次の2つの役割を軸に展開されます。
- NHK AM: ニュース、災害情報、生活情報などを重視。
- NHK FM: 音楽、芸能、語学、教育番組などを重視。
語学番組や高校講座はFMを中心に継続していますが、放送時間が深夜や早朝に移った番組もあり、以前と同じ感覚で利用できるとは限りません。
これまでラジオ第2を日課にしていた人は、番組表を確認し、FM放送やインターネット配信を組み合わせることが現実的な対応になります。
【プロの結論】
今回のNHKラジオ再編で注目すべきなのは、95年続いた放送波がなくなったことだけではありません。公共放送が、限られた設備と制作資源をどのように配分し、教育や語学という公共的価値をどう維持するのかという問題です。
放送波の削減によって経営効率が改善されても、学習者が番組を聴きにくくなれば、教育メディアとしての価値は損なわれます。
今後の評価基準は、単純な放送局数ではなく、必要な番組に、必要な人が、無理なくアクセスできる環境を維持できるかにあります。
NHKラジオ第2の終了は、長い歴史の幕引きであると同時に、日本の公共ラジオが新しい提供方法へ移行する節目でもあります。
主な参照資料:NHK放送文化研究所、NHKエデュケーショナル、総務省関連資料、衆議院総務委員会会議録、AV Watch、ITmedia、マイナビニュース、電波タイムズ。