「絆創膏を取って」と言われたら、あなたは何と答えるだろうか。「バンドエイド」「カットバン」「サビオ」「リバテープ」「キズバン」など、実は日本では同じ傷口に貼るものでも、地域によって呼び方が大きく異なる。北海道では「サビオ」、熊本県では「リバテープ」、富山県では「キズバン」が地域に根付いた呼び名として知られている。
この違いは単なる方言ではない。各メーカーの商品が特定の地域で広く流通し、商品名そのものが一般名称のように使われるようになった歴史が背景にある。2022年にニチバンが実施した全国2,820人の調査では、北海道の35.0%が「サビオ」、熊本県の70.0%が「リバテープ」、富山県の50.0%が「キズバン」と回答。さらに2026年には、阿蘇製薬が新しい「ばんそうこうの呼び方マップ」を公開している。
【全国の呼び方一覧】絆創膏は地域によってどう違う?

絆創膏の呼び方は、大きく分けると一般名称の「絆創膏」と、メーカーの商品名に由来する呼び方に分類できる。
全国的には「絆創膏」「バンドエイド」が広く使われている一方、地域によっては「カットバン」「サビオ」「リバテープ」などが日常会話に定着している。
北海道は「サビオ」が代表的北海道で特徴的なのが「サビオ」という呼び方だ。
2022年にニチバンが公表した調査では、北海道で絆創膏を「サビオ」と呼ぶ人は35.0%。全国的に見ても突出した割合だった。
サビオはもともとスウェーデンのセデロース社のブランドで、1963年に日本市場へ進出した。その後、ライオン歯磨(現・ライオン)がブランドを引き継ぎ、全国で販売した経緯がある。
2002年にサビオブランドの絆創膏は販売終了となったが、北海道では商品が店頭から姿を消した後も呼び名が残った。2020年4月には阿蘇製薬がブランドを復活させ、北海道で販売を開始している。
東北・中国・四国では「カットバン」東北地方や中国地方、四国地方では「カットバン」が比較的よく使われる。
カットバンは佐賀県に本社を置く祐徳薬品工業の登録商標で、1961年から販売されているブランドだ。
2022年のニチバン調査でも、東北・北陸・中国・四国地方でカットバンと呼ぶ傾向が確認された。2026年の阿蘇製薬のマップでも、東北地方や中国・四国地方を中心に認知されている。
熊本県を中心とする九州では「リバテープ」熊本県で特に有名なのが「リバテープ」だ。
2022年の調査では、熊本県でリバテープと呼ぶ人が70.0%に達した。九州地方全体でも特徴的な呼び方として紹介されている。
リバテープは熊本県に本社を置くリバテープ製薬の商品ブランド。熊本を中心に広がった販売網が、地域での呼び名の定着につながったと考えられている。
富山県では「キズバン」富山県で知られているのは「キズバン」という呼び方だ。
2022年の調査では、富山県でキズバンと呼ぶ人が50.0%を占めた。
阿蘇製薬の2026年版マップでも、キズバンは富山県を中心とする呼び名として紹介されている。ほかの地域ではあまり聞かれないため、県外の人にとっては珍しい表現かもしれない。
【2022年全国調査と2026年最新マップ】地域別の分布を比較
絆創膏の呼び方を比較するうえで重要なのが、2022年のニチバンによる全国調査と、2026年に阿蘇製薬が公開した呼び方マップだ。
最初に、2022年の調査は、2022年6月21日から27日まで実施されたインターネット調査である。調査会社はアスマーク。対象は全国の10~60代の男女2,820人だった。
ニチバンが2022年7月28日に公表した結果では、地域ごとに次のような傾向が示されている。
| 呼び方 | 2022年の調査結果 | 2026年マップの主な掲載地域 | ブランド・特徴 |
|---|---|---|---|
| 絆創膏・ばんそうこう | 全国的に広く使用 | 関東・中部の一部など | 一般名称 |
| バンドエイド | 関西地方で比較的多い | 東京・東海・近畿・香川など | ケンビューのブランド |
| カットバン | 東北・北陸・中国・四国で比較的多い | 東北・山梨・中国・四国・九州の一部 | 祐徳薬品工業のブランド |
| サビオ | 北海道で35.0% | 北海道・和歌山・広島など | スウェーデン発祥のブランド |
| リバテープ | 熊本県で70.0% | 大分・熊本・宮崎・沖縄など | リバテープ製薬のブランド |
| キズバン | 富山県で50.0% | 富山県など | 由来には複数の説がある |
※2022年の割合は各地域における回答結果。2026年の掲載地域は阿蘇製薬のマップに示された主な地域であり、すべての住民が同じ呼び方をするという意味ではない。
2022年調査で注目された3つの数字特に目を引くのは、次の3つの数字だ。
- 北海道:サビオ35.0%
- 熊本県:リバテープ70.0%
- 富山県:キズバン50.0%
いずれも、その地域に特有の商品名が強く認知されていることを示している。特に熊本県のリバテープは70%という高い割合で、地域に深く根付いた呼び方であることが分かる。
全国ランキングは2022年の調査だけでは決められない「絆創膏の呼び名で全国1位は何か」という疑問も多いが、2022年のニチバン調査は地域ごとの特徴を紹介したもので、全回答者を対象とした呼び名別の全国総合ランキングを公表したものではない。
参考となる過去の調査として、2015年のマイナビニュースによる400人のアンケートがある。同調査では、出身地での呼び方について、バンドエイド63.2%、カットバン18.2%、サビオ7.0%、リバテープ3.0%、キズバン1.2%という結果だった。
ただし、これは2015年の特定の調査対象者400人による結果であり、2022年の2,820人調査とは対象や調査時期が異なる。2026年の全国民の呼び方ランキングとして、そのまま扱うことはできない。
阿蘇製薬の2026年版マップで分かること阿蘇製薬は2026年1月に公式サイトを全面リニューアルし、「新ばんそうこうの呼び方マップ」を公開した。
同マップでは、一般名称の「ばんそうこう」に加え、バンドエイド、カットバン、サビオ、リバテープ、キズバンという呼び方を地域別に紹介している。
特徴的なのは、北海道だけでなく和歌山県や広島県にもサビオの呼び方が見られること、またカットバンが東北・中国・四国だけでなく九州の一部にも分布していることだ。
同社のアンケートは、回答者の出身地と年齢層を尋ね、1人1回の回答を受け付ける形式。継続的に情報を集めてマップを更新する仕組みになっている。
したがって、2022年の調査は一定の対象者数を持つ全国調査、2026年版は継続的な回答を反映する地域マップとして、役割を分けて見ると理解しやすい。
【商品名が方言になった理由】メーカーの歴史と流通網が鍵
なぜ絆創膏には、これほど多くの地域名のような呼び方があるのだろうか。
その理由は、各メーカーの商品が特定地域で広く販売され、消費者の生活に浸透したことにある。
阿蘇製薬の公式マップでも、「ばんそうこう」以外の呼び方は、基本的に絆創膏の商品名・商標名に由来すると説明されている。
商品名が一般名称のように使われる現象この現象は、絆創膏だけに見られるものではない。
例えば、電子オルガンを「エレクトーン」、食品用ラップを「サランラップ」と呼ぶケースがある。特定の商品名が広く認知された結果、同じ種類の商品全体を指す言葉として使われるようになるのだ。
絆創膏の場合も、最初に家庭で使われるようになった商品や、薬局・薬店で頻繁に目にしたブランドが、地域の標準的な呼び方になったと考えられる。
地域の販売網が呼び名を定着させたメーカーの所在地や販売ルートも大きな要因だ。
熊本県のリバテープ製薬、佐賀県の祐徳薬品工業など、地域に根差したメーカーが製品を販売し、薬局や家庭に商品が広まることで、ブランド名が日常語として定着していった。
特に家庭用の配置薬や地域の薬局を通じた販売は、商品を繰り返し目にする機会を生み出す。こうした積み重ねが、隣接する県でも異なる呼び方が残る背景になっている。
つまり、絆創膏の地域差は、単純な東日本・西日本の方言の違いだけでは説明できない。メーカーの歴史、商品の流通、家庭での使用経験が重なって形成された生活文化なのだ。
【商品名の由来を解説】バンドエイド・カットバン・サビオ・リバテープ
それぞれの呼び名には、ブランドが誕生した背景やメーカーの歴史がある。代表的な5つを整理しておこう。
バンドエイド:1920年に開発された世界的ブランドバンドエイドは、現在のケンビュー(旧ジョンソン・エンド・ジョンソン)のブランドだ。
阿蘇製薬の公式説明によると、絆創膏は1920年にジョンソン・エンド・ジョンソンの社員だったアール・E・ディクソンによって考案・開発されたとされる。
ディクソンが家事に不慣れだった妻のために、簡単に傷を保護できるものを考えたというエピソードで知られている。
日本ではテレビCMなどを通じて全国的に認知され、都市部を中心に広く使われる呼び名になった。
カットバン:祐徳薬品工業が1961年に発売カットバンは、佐賀県鹿島市に本社を置く祐徳薬品工業の商品ブランドだ。
同社の公式沿革には、1961年にカットバンを発売した記録が残されている。その後もカットバンA、防水カットバン、カットバンソフトなど、さまざまな製品を展開してきた。
地域に根付いたブランドであると同時に、長年にわたって製品の改良を重ねてきた歴史がある。
サビオ:2002年の販売終了から2020年に復活サビオは、スウェーデンのセデロース社から日本に導入されたブランドだ。
1963年にニチバンを通じて日本市場に入り、その後、ライオン歯磨にブランドが譲渡され、全国で販売された。製造会社は阿蘇製薬だった。
しかし、2002年にブランドの絆創膏は販売終了となる。それでも北海道を中心に「サビオ」という呼び方は残り続けた。
転機となったのは2020年だ。
阿蘇製薬は2020年3月4日、サビオブランドの復活を発表。北海道の消費者から寄せられた再発売の要望を受け、同年4月1日から北海道エリアで6アイテムの販売を開始した。
復活に際しては、2019年3月に北海道在住の約500人を対象に商品購入時の重視点を調査。約5,000人のスクリーニング調査から対象者を抽出し、「快適」「便利」「安心」を重視した製品を開発した。
一度販売が終了しても、ブランド名が地域の記憶として残り、消費者の要望によって復活につながった点は興味深い。
リバテープ:熊本発祥のブランドと名前の由来リバテープ製薬は熊本県に本社を置くメーカーだ。
同社の公式沿革では、1956年に薬液付き救急絆創膏を開発し、リバテープの商品名で販売を開始したと説明している。
名前の由来は、消毒薬の「リバノール」にある。当時、製薬大手の三共がアクリノールをリバノールという商標名で販売しており、そのリバノールを付けたテープという意味から「リバテープ」という名称が生まれた。
家庭用の配置薬への導入などをきっかけに、九州を中心として普及した。熊本県で70.0%という高い割合を記録した背景には、こうした地元メーカーの歴史がある。
キズバン:富山県に定着した理由は複数の説があるキズバンは富山県を代表する特徴的な呼び方だが、ほかのブランドと比べて由来がはっきりしていない。
阿蘇製薬の公式マップでは、富山県を中心に広がった配置薬に「〇〇キズバン」「キズバン〇〇」といった商品名の絆創膏が存在した記録があることを紹介している。
もう一つの説は、「キズに貼るばんそうこう」を短くした表現というものだ。
ただし、同社も明確な由来は分かっていないとしている。2022年の調査では富山県の50.0%がキズバンと回答しており、由来が完全に解明されていなくても地域の呼び名として根付いていることが分かる。
【よくある誤解を検証】絆創膏の呼び方は本当に方言なのか?
地域ごとに違う呼び方を聞くと、すべてが昔から存在する方言のように感じるかもしれない。しかし、実際には商品名に由来するものが多い。
誤解1:サビオやカットバンは北海道だけの言葉?サビオは北海道で特に知られているが、2026年の阿蘇製薬のマップでは和歌山県や広島県も対象地域に挙げられている。
カットバンも東北・中国・四国地方だけではなく、九州の一部に分布している。地域の特徴はあっても、県境で呼び方が完全に区切られているわけではない。
誤解2:バンドエイドは絆創膏全体の正式名称?バンドエイドは一般名称ではなく、ケンビューが展開するブランド名だ。
そのため、別メーカーの製品を購入した場合でも、日常会話でバンドエイドと呼ぶことはあっても、製品としては異なるブランドである可能性がある。
誤解3:同じ県に住んでいれば呼び方は全員同じ?これも正しくない。
阿蘇製薬自身も、マップに掲載された呼び方は地域で比較的多いものを示しており、すべての住民が同じ言葉を使うわけではないと説明している。
家庭で使っていた商品、親や祖父母の出身地、転居や進学などによって、同じ県内でも呼び方が異なる場合がある。
実際、2026年のマップには、祖母がカットバンと呼んでいたという回答や、北海道出身の母親がサビオという言葉を使うという回答も掲載されている。
誤解4:2022年の数字が2026年の最新割合でもある?2022年のニチバン調査は、当時の2,820人を対象とした調査結果だ。北海道35.0%、熊本県70.0%、富山県50.0%という数字は、2022年時点の結果である。
一方、2026年版の阿蘇製薬のマップは、継続的なアンケート回答を反映する仕組みであり、同じ調査条件による全国一斉の再調査とは異なる。
したがって、2026年の地域マップで呼び方の分布を確認することはできても、2022年の割合がそのまま現在の割合になっていると考えるのは適切ではない。
【プロの結論】絆創膏の呼び方は地域の歴史と暮らしを映す文化
絆創膏の呼び方の違いは、単なる言葉遊びではない。メーカーの創業地、商品の販売網、家庭での使用経験、世代を超えた言葉の継承が重なって生まれた生活文化だ。
特に注目したいのは、商品が販売終了になっても呼び名が残るという点である。
サビオは2002年に販売終了となった後も、北海道を中心に名前が使われ続けた。そして2020年には、地域の消費者からの要望を受けてブランドが復活した。
これは、商品名が単なる販売上の名称を超え、地域の人々の記憶や生活習慣にまで入り込んでいたことを示す事例だ。
呼び方を知るときの3つの判断基準- 地域の傾向と個人の使用習慣を区別する:北海道でサビオが有名でも、北海道民全員がサビオと呼ぶわけではない。
- 調査年と調査方法を確認する:2022年の全国調査と2026年の継続型マップは、同じ基準の統計ではない。
- 商品名と一般名称を区別する:バンドエイドやカットバンはブランド名であり、絆創膏という一般名称とは異なる。
呼び方を知りたい人には、2026年の阿蘇製薬マップが地域ごとの特徴を調べるうえで参考になる。一方、全国の割合を比較したい場合には、対象者数と調査期間が明記された2022年のニチバン調査を確認するとよい。
どちらも見ることで、単なる地域差だけでなく、商品ブランドがどのように日本の暮らしに根付いてきたのかまで理解できる。
絆創膏の呼び方に関するよくある質問(FAQ)
Q1:絆創膏をサビオと呼ぶのはどこの地域?
A1:北海道が代表的。2022年のニチバン調査では北海道の35.0%がサビオと回答した。2026年の阿蘇製薬マップでは、和歌山県や広島県も主な使用地域として紹介されている。
Q2:カットバンと呼ぶのはどこの地域?
A2:東北地方、中国地方、四国地方などが代表的。2022年の調査でもこれらの地域でカットバンと呼ぶ傾向が見られた。カットバンは佐賀県の祐徳薬品工業の商品ブランドである。
Q3:リバテープと呼ぶのはどこの県?
A3:特に熊本県で有名。2022年の調査では熊本県の70.0%がリバテープと回答した。大分県、宮崎県、沖縄県なども2026年のマップに掲載されている。
Q4:キズバンと呼ぶのは富山県だけ?
A4:富山県が代表的な地域。2022年の調査では50.0%がキズバンと回答した。阿蘇製薬の2026年マップでも富山県などが掲載されている。名称の正確な由来は明らかになっていない。
Q5:サビオは現在も販売されている?
A5:販売されている。2002年に旧ブランドの販売が終了したが、阿蘇製薬が2020年4月1日に北海道で新しいサビオブランドの絆創膏を発売した。現在も同社がブランドを展開している。
Q6:絆創膏の全国呼び名ランキングで1位は何?
A6:調査対象や調査年によって結果が異なる。2015年のマイナビニュースによる400人調査ではバンドエイドが63.2%で1位だった。一方、2022年のニチバン調査は地域別の特徴を公表したもので、全国総合ランキングとは異なる。
Q7:バンドエイドと絆創膏は何が違う?
A7:絆創膏は一般名称で、バンドエイドはケンビューのブランド名。日常会話では同じ意味で使われることがあるが、製品としては区別される。
Q8:2026年最新の絆創膏呼び方マップはどこが公開している?
A8:熊本県に本社を置く阿蘇製薬株式会社が公式サイトで公開している。2026年1月のサイトリニューアルに伴い、新しい呼び方マップが掲載された。
絆創膏の呼び方は、北海道のサビオ、東北・中国・四国のカットバン、熊本のリバテープ、富山のキズバンなど、地域によって個性豊かだ。
2022年の全国2,820人調査では、北海道のサビオ35.0%、熊本県のリバテープ70.0%、富山県のキズバン50.0%という特徴的な数字が明らかになった。
2026年には阿蘇製薬が新しい呼び方マップを公開し、地域ごとの分布を確認できるようになっている。
こうした違いを生み出したのは、単なる方言ではなく、各メーカーの商品が地域に広がり、家庭の中で長く使われてきた歴史だ。
次に誰かが「サビオ持ってる?」「カットバンある?」と尋ねてきたら、その言葉の背景にある地域やブランドの歴史にも目を向けてみたい。何気ない日用品の呼び方にも、日本各地の暮らしと文化が刻まれている。
主な事実確認資料
- ニチバン「全国比較!絆創膏・キズの意識調査」(2022年)
- 阿蘇製薬「ばんそうこうの呼び方マップ」(2026年版)
- 阿蘇製薬「サビオブランド絆創膏を復活。北海道エリアで発売開始」(2020年)
- 祐徳薬品工業・リバテープ製薬の公式沿革
- マイナビニュース「ばんそうこうのこと、何て呼んでた?」(2015年)