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【BCGハンコ注射とは】9本の針を使う独特な接種方法と跡が残る理由

倉持 玲奈 倉持 玲奈 • 更新: • 公開: • 読了約 20 分
目次

BCGハンコ注射とは、結核を予防するために行うBCGワクチンの経皮接種です。正式には「管針法」と呼ばれ、一般的な注射器で薬液を注入する方法とは異なり、複数の細い針を備えた器具を皮膚に押し当てて接種します。

BCGワクチンは、牛型結核菌を弱毒化した生ワクチンです。フランスのパスツール研究所で開発され、カルメットとゲランの名前に由来する「Bacille Calmette-Guérin」の頭文字からBCGと名付けられました。

なぜハンコのような跡が残るのか

跡が残る最大の理由は、管針に取り付けられた複数の針で皮膚に小さな傷をつける接種方式にあります。

厚生労働省の資料によると、一般的な管針の構造は次のとおりです。

- 針の数:9本
- 配列:3列×3列
- 接種する場所:上腕の外側の2か所
- 針痕の合計:18個

つまり、9本の針が並んだ器具を2回押し当てるため、18個の小さな針痕が形成される仕組みです。

接種後に赤くなったり、小さな傷になったりする理由

BCGは弱毒化した生きた菌を利用するワクチンです。接種すると皮膚の局所で免疫反応が起こり、針痕に沿って赤みや小さな膿疱が形成されることがあります。

この反応が落ち着く過程でかさぶたができ、最終的に小さな瘢痕(傷痕)が残ります。

一般的な注射と違って、BCGは皮膚に特徴的な反応を起こすため、接種したことが腕の跡から分かる場合があります。

なお、跡を目立たなくする目的で肩や別の部位に接種することはできません。厚生労働省は上腕外側のほぼ中央部を接種部位として定めています。肩付近への接種はケロイドが生じやすくなる可能性も指摘されています。

BCG接種跡はいつ消える?18個すべてが残るとは限らない

保護者が気になるのが、接種跡がいつまで目立つのかという問題です。

ここでは、皮膚の炎症が治まる時期と、瘢痕そのものが見えにくくなる時期を区別する必要があります。

日本ビーシージー製造株式会社の説明では、接種後3~4か月ほどで局所の反応が落ち着き、小さな傷跡が残る経過が紹介されています。

ただし、傷跡が完全に消えるまでの期間は一律ではありません。皮膚の状態や体質によって差があり、長期間にわたって薄い跡が残る人もいます。

また、18個すべてが同じ濃さで残るわけではありません。

知っておきたいポイント
- 18個の針痕が基本的な構造。
- 時間の経過とともに目立たなくなる場合がある。
- 針痕の数や濃さには個人差がある。
- 赤い反応が弱くても、必ずしも免疫がついていないわけではない。

日本ビーシージー製造株式会社も、接種後の反応には個人差があり、反応が弱い場合でも適切に接種されていれば免疫が得られると説明しています。

【接種後の赤み・腫れ・膿】正常な皮膚反応はいつまで続く?

bcgハンコ注射

BCG接種後に赤みや膿が見られると、ワクチンによる異常な副作用ではないかと不安になる保護者もいます。

しかし、接種後しばらくして現れる発赤や小さな膿疱は、一般的な免疫反応の一部です。

厚生労働省によると、通常は接種後5~6週ごろに皮膚反応が最も強くなります。

接種後の経過を時系列で確認

一般的な皮膚反応を整理すると、次のようになります。




接種直後~数日

大きな変化が見られないことが多い時期。少量の出血が見られる場合もあります。


接種後10日~2週間

針痕に沿って小さな赤いポツポツが現れ始めます。


接種後4~6週間

赤みや硬い盛り上がりが強くなり、小さな膿が出る場合もあります。


接種後1~2か月

皮膚反応が強い時期。針痕にかさぶたができることがあります。


接種後3~4か月

炎症が徐々に治まり、かさぶたが取れて小さな瘢痕が残ります。


出典:厚生労働省、日本ビーシージー製造株式会社の接種後経過に関する資料

膿が出ても大丈夫?自宅でのケア方法

通常の経過であれば、針痕に小さな膿ができても、過度に心配する必要はありません。

大切なのは、患部を清潔に保ち、自然に治るのを待つことです。

接種後のケアでは、次の点を意識してください。

- 入浴は基本的に可能。
- 接種部位を強くこすらない。
- 針痕を無理につぶしたり、かさぶたを剥がしたりしない。
- 包帯や絆創膏で覆わず、清潔に保つ。
- 赤みや腫れの変化を観察する。

接種後3~4か月を過ぎても傷口がジクジクしている場合や、複数の針痕が融合して大きな潰瘍になった場合は、医療機関に相談してください。

【コッホ現象とは】通常の赤みと何が違う?見分け方と受診のタイミング

BCG接種後に注意したい反応の一つが「コッホ現象」です。

これは、すでに結核菌に感染している人にBCGワクチンを接種した場合、通常よりも早く、強い局所反応が現れる現象です。

一般的な接種後の皮膚反応と混同しやすいため、発症する時期を知っておくことが大切です。

コッホ現象と通常反応の違い
比較項目 通常の反応 コッホ現象
発症時期 接種後10日~2週間ごろ 接種後1週間~10日以内
反応の強さ 徐々に強くなる 比較的早く強くなる
赤み・腫れ 時間をかけて出現 接種直後から早期に出現する場合がある
膿 1~2か月ごろに見られることがある 早い段階で現れる場合がある
対応 清潔に保ち経過観察 速やかに接種医療機関を受診

コッホ現象が疑われる症状

特に注意したいのは、接種後数日以内に急激な変化が現れるケースです。

具体的には、次のような症状が挙げられます。

- 接種した翌日から赤みが強くなる。
- 針痕の一つ一つが早期に腫れる。
- 通常より早い段階で膿が形成される。
- 接種部位全体が急激に腫れる。

厚生労働省の説明では、コッホ現象は結核菌への既感染による免疫反応と考えられています。

ただし、非結核性抗酸菌への感染でも同様の反応が起こる場合があり、コッホ現象だけで結核感染が確定するわけではありません。

コッホ現象が出たらどうする?

速やかに医療機関へ相談

コッホ現象が疑われる場合は、接種を受けた医療機関に速やかに連絡してください。

必要に応じて、結核感染の有無や発病していないかを確認する検査が行われます。

厚生労働省の2025年3月31日付の定期接種実施要領でも、コッホ現象が見られた場合には接種医療機関を受診するよう、保護者への周知が求められています。

また、コッホ現象が起きた場合でも、接種部位を清潔に保つことが基本です。びらんや潰瘍が長引き、おおむね4週間を超えて治癒が遷延する場合は、混合感染の可能性もあるため再受診が必要です。

【BCGワクチンの接種時期・回数】生後5~8か月が標準なのはなぜ?

BCGの予防接種は、子どもの成長に合わせて適切な時期に行うことが大切です。

2026年11月現在、厚生労働省が示す標準的な接種期間は生後5~8か月です。

BCG予防接種の回数は原則1回

日本の定期接種では、BCGワクチンは原則1回接種します。

以前はツベルクリン反応検査を行ってからBCGを接種する方式や、学童期などに再接種する制度がありました。

現在は乳児期に直接接種する方式となっており、一般的な定期接種として複数回受けるものではありません。

2026年最新の接種対象とスケジュール
項目 2026年11月現在の制度
対象年齢 生後1歳に至るまで
標準的な接種期間 生後5~8か月
接種回数 1回
使用ワクチン BCGワクチン
接種方法 経皮接種・管針法
接種部位 上腕外側のほぼ中央部
実施主体 市区町村

標準期間と接種対象年齢は異なります。生後5~8か月は推奨される標準的な期間であり、定期接種の対象となる期間は原則として1歳に至るまでです。

また、地域の結核発生状況によっては、標準期間より早く接種する場合もあります。

なぜ接種時期が変更されたのか?歴史と経緯

BCGの接種時期は、結核の予防効果と副反応、乳児期の予防接種スケジュールの変化を踏まえて見直されてきました。

主な制度変更を整理すると、次のようになります。

年代 制度・出来事 変更の背景
1921年 新生児へのBCG投与が初めて行われる フランスでワクチンが開発された
1924年 日本にBCG菌が導入される 国内での結核予防の歴史が始まる
1967年 管針による経皮接種へ移行 皮内接種から現在につながる方式へ
2005年 生後6か月までの接種に変更 乳幼児の結核予防を強化
2013年 接種対象を生後1歳までに拡大 他の乳児予防接種との日程調整
2026年 生後5~8か月を標準とする制度を継続 乳児の安全性と結核予防の両立

特に重要なのが、2005年と2013年の変更です。

2005年以前は4歳未満を対象としていましたが、WHOの勧告などを受け、乳幼児の結核予防効果を高める目的で接種時期が早められました。

その後、乳児期に受ける予防接種の種類が増えたことから、すべてのワクチンを適切な間隔で接種できるよう、2013年に対象期間が生後1歳までに拡大されました。

加えて、2005年以降に生後3~4か月で接種するケースが増えた時期には、BCGによる骨炎・骨髄炎の副反応報告も増加しました。

厚生労働省の資料では、骨炎・骨髄炎の副反応報告は2001~2004年の年間平均1.25件から、2005~2011年には年間平均4.14件となっています。

このような経緯を踏まえ、現在の標準的な接種期間は生後5~8か月となっています。

BCGワクチンの結核予防効果はどれくらい?

BCGの目的は、結核菌への感染を完全に防ぐことだけではありません。

特に重要なのは、乳幼児が発症した場合に重症化しやすい結核性髄膜炎や全身性結核を予防することです。

厚生労働省が紹介する研究文献の総合評価では、乳幼児期のBCG接種による予防効果は次のように報告されています。


52~74%


結核の発症予防効果

64~78%


重篤な髄膜炎・全身性結核の予防効果

10~15年


期待される効果の持続期間
出典:厚生労働省「BCGワクチン」。研究文献の総合評価に基づく推定値です。

BCGを接種しても結核を完全に防げるわけではありません。しかし、特に乳幼児の重篤な結核を防ぐという点で重要な役割を担っています。

【BCGワクチンの副反応】リンパ節の腫れや受診すべき症状を解説

BCGは長年使用されているワクチンですが、副反応が起こる可能性はあります。

厚生労働省は、比較的軽い局所反応として、接種部位の潰瘍やリンパ節の腫脹などを挙げています。

その一方、骨炎・骨髄炎や全身播種性BCG感染症、アナフィラキシーなどの重大な副反応はまれと説明しています。

リンパ節腫脹とは?わきの下が腫れる理由

BCG接種後には、接種した側のわきの下などのリンパ節が腫れることがあります。

これはワクチンに対する免疫反応に伴って起こることがある症状です。

厚生労働省の資料では、接種後の局所潰瘍やリンパ節の腫脹について、1%以下の頻度で報告されています。

小さな腫れが見られたからといって、直ちに重大な異常とは限りません。

ただし、次のような場合には医師に相談してください。

- リンパ節が大きく腫れている。
- 腫れた部分に膿がたまっている。
- 腫れが長期間続いている。
- 発熱など、ほかの症状を伴っている。

まれに報告される重大な副反応

BCGは生ワクチンであるため、非常にまれですが、弱毒化された菌に関連する重い副反応が報告されています。

主なものは次のとおりです。

副反応 主な特徴
骨炎・骨髄炎 骨の痛みや腫れなどが現れる
全身播種性BCG感染症 BCG菌による全身性の感染症
アナフィラキシー 急激なアレルギー反応
皮膚結核様病変 接種部位以外にも皮膚病変が生じる場合がある

特に免疫機能に異常がある場合や、免疫を抑える治療を受けている場合には、接種前の確認が欠かせません。

厚生労働省は、免疫不全のある人や先天性免疫不全症の家族歴がある人などについて、接種前に医師への相談が必要としています。

BCG接種後に病院を受診する目安

保護者が判断するときは、単に赤みや膿の有無を見るのではなく、接種から何日経過しているか、症状が強くなっているかを確認することが大切です。



通常の経過
自宅で観察できることが多い症状

- 接種後10日ほどで小さな赤い点が出る。
- 4~6週間ごろに赤みや小さな膿が強くなる。
- その後、徐々に乾燥してかさぶたになる。


医療機関へ相談
早めの受診が必要な症状

- 接種後数日以内に急激な発赤・腫脹が出る。
- 接種後3~4か月を過ぎても傷がジクジクする。
- 針痕が融合して大きな潰瘍になる。
- リンパ節が大きく腫れたり、膿が出たりする。


速やかな診察
緊急性を考える症状

- 高熱やけいれんなど、全身状態に異常がある。
- 呼吸困難や意識の異常など、急激な全身症状がある。

コッホ現象が疑われる場合は、症状が軽く見えても早めに接種医療機関へ連絡してください。

なお、呼吸困難や意識障害などがある場合は、通常の予防接種相談ではなく救急対応が必要です。

【プロの結論】BCGハンコ注射の跡だけで接種の成功・失敗は判断できない

BCGハンコ注射について、特に誤解されやすいのが「跡が濃いほど効果が高い」「跡が少ないと接種に失敗した」という考え方です。

実際には、接種後の皮膚反応には個人差があります。

日本ビーシージー製造株式会社は、赤いポツポツが少ない場合や反応が弱い場合でも、適切に接種されていれば免疫が得られると説明しています。

つまり、腕の跡の数や濃さだけで、ワクチンの効果を判断することはできません。

保護者が覚えておきたい3つの判断基準

1.跡の見た目より接種記録を重視する

針痕が少ない、あるいは薄くなっているからといって、追加接種が必要になるわけではありません。接種歴は母子健康手帳などの記録で確認しましょう。

2.赤みや膿は発症時期で判断する

接種後1~2か月にかけて赤みや膿が強くなるのは一般的な経過です。一方、接種直後から数日以内に強い反応が出た場合は、コッホ現象を疑って医療機関に相談する必要があります。

3.標準接種期間を逃さない

BCGは原則1回の定期接種です。生後5~8か月を目安に、自治体からの案内に従って接種を受けることが大切です。

BCGの跡は、単なる美容上の問題ではありません。乳幼児の結核予防という目的と、接種後の皮膚反応の意味を理解することで、必要以上に心配せず、異常が疑われる場合には適切に対応できます。

【BCGハンコ注射】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:BCGハンコ注射の跡は一生消えないのでしょうか?

A1:必ずしも一生目立つわけではありません。接種後3~4か月ほどで炎症が治まり、小さな瘢痕が残ります。その後、時間とともに目立たなくなる場合もありますが、薄い跡が長期間残ることもあります。

Q2:BCGの針痕はなぜ18個あるのですか?

A2:管針に9本の針が3×3の配置で取り付けられており、上腕の2か所に押し当てるためです。9本×2か所で合計18個の針痕ができます。

Q3:BCG接種後に膿が出たら病院に行くべきですか?

A3:接種後1~2か月ごろに針痕から小さな膿が出るのは一般的な反応です。ただし、接種後数日以内に急激に腫れたり、数か月以上ジクジクしたりする場合は受診してください。

Q4:BCGワクチンは何回接種するのでしょうか?

A4:現在の日本の定期接種では原則1回です。通常、乳児期に生後5~8か月を標準期間として接種します。

Q5:BCG接種後に赤みがほとんど出ない場合、失敗でしょうか?

A5:必ずしも失敗ではありません。接種後の反応には個人差があり、反応が弱くても適切に接種されていれば免疫が得られるとされています。心配な場合は接種医療機関や自治体に相談してください。

Q6:コッホ現象が起きると結核に感染しているのでしょうか?

A6:結核菌への既感染が疑われますが、非結核性抗酸菌によっても同様の反応が起こる場合があります。確定には医療機関での検査が必要です。疑わしい症状があれば速やかに受診してください。

Q7:BCG接種後にわきの下が腫れるのは異常ですか?

A7:接種した側のリンパ節が腫れることは副反応の一つとして報告されています。小さな腫れだけで重大な異常とは限りませんが、大きく腫れたり、化膿したり、発熱を伴ったりする場合は医師に相談してください。

BCGハンコ注射は、乳幼児の結核予防に欠かせない予防接種です。

腕に特徴的な跡が残るのは、9本の針が付いた管針を2か所に押し当てる経皮接種方式を採用しているためです。

2026年11月現在の基本的な制度は、次のとおりです。

- 接種回数は原則1回。
- 標準的な接種期間は生後5~8か月。
- 定期接種の対象期間は生後1歳に至るまで。
- 通常の皮膚反応は接種後4~6週間ごろに強くなる。
- 3~4か月ほどで炎症が落ち着き、小さな傷痕が残る。
- 接種後早期の急激な腫れはコッホ現象の可能性がある。

特に重要なのは、通常の免疫反応と注意すべき副反応を区別することです。

赤みや小さな膿が出たからといって、すぐに異常と判断する必要はありません。一方、接種直後から強い反応が出る場合や、傷が長期間治らない場合には、医療機関で確認することが大切です。

BCGの接種跡の見た目だけにとらわれず、接種時期、皮膚反応の経過、子どもの全身状態を合わせて確認することが、保護者に求められる適切な判断につながります。

主な参考資料・公的情報

- 厚生労働省「BCGワクチン」(2026年3月10日版Q&Aを掲載)
- 厚生労働省「予防接種法第5条第1項の規定による予防接種の実施について」(2025年3月31日改正)
- 厚生労働省「結核とBCGワクチンに関するQ&A」
- 日本ビーシージー製造株式会社「一般の皆さまへ」
- 公益財団法人結核予防会「BCG接種後の注意事項」

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倉持 玲奈

テクノロジー分野を担当。一次情報(公式発表・公式サイト)と発表日を必ず確認し、推測は推測と明記する編集方針に従っています。

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