「運の尽き(うんのつき)」とは、それまで続いていた運が尽き、悪い結果や逃れにくい結末を迎えることを表す慣用表現です。「ここで見つかったのが運の尽き」「あの一言が運の尽きだった」のように、ある出来事を境に状況が悪い方向へ進んだときに使われます。
似た表現には「年貢の納め時」「命運が尽きる」「万事休す」などがありますが、それぞれ意味や使う場面には違いがあります。また、英語では「one's luck runs out」や「seal one's fate」など、文脈に応じた表現が使われます。
【まず意味を確認】「運の尽き」とは?運が尽きるとの違いも解説

「運の尽き」は、読み方を「うんのつき」といいます。
小学館の『デジタル大辞泉』では、命運が尽きて最後の時が来たことを意味する言葉として説明されています。単に運が悪いというだけではなく、状況が決定的な結末へ向かうニュアンスを含んでいます。
「運の尽き」が表す3つの意味日常的な使用では、主に次の3つのニュアンスがあります。
1.幸運が終わり、不運な状況に変わること
それまで順調だった状況が一変し、悪い結果を招くことです。偶然の出来事や予想外の失敗によって、運に見放されたような状態を表します。
2.取り返しのつかない結果を招くきっかけ
ある行動や判断が、その後の失敗を決定づけた場合にも使います。「あのとき逃げなかったのが運の尽きだった」のように、結果が明らかになった後で原因を振り返る表現です。
3.逃れられない結末を迎えること
それまで保たれていた立場や状況が崩れ、もう後戻りできない状態を指します。人の命運だけでなく、仕事、勝負、計画などにも使用できます。
「運の尽き」と「運が尽きる」はどう違う?この2つは基本的に同じ方向の意味を持っていますが、文法上の役割が異なります。
「運の尽き」は名詞的な表現で、運が尽きたという状態や、その結果を決定づけた出来事を指します。一方、「運が尽きる」は、運がなくなるという変化そのものを表す動詞表現です。
例えば、次のように使い分けます。
- あの失言が、彼にとって運の尽きだった。
- 長年続いた幸運も、ついに運が尽きた。
- 最後の勝負で負けたことで、彼の運は尽きた。
「運の尽き」は結果や転機を強調し、「運が尽きる」は運がなくなる過程や状態を強調すると覚えると理解しやすくなります。
【語源・由来を解説】「運の尽き」はどこから生まれた言葉?
「運の尽き」の語源は、構成する2つの言葉を理解すると明確になります。
「運」は人の力では左右できない巡り合わせ「運」は、幸運や不運をもたらす巡り合わせ、あるいは人の力だけではどうにもならない運命的な作用を意味します。
小学館の『精選版 日本国語大辞典』でも、「運」には幸・不幸をもたらす作用や、幸運という意味が記されています。
例えば、「運がいい」「運が悪い」「運が向いてきた」などの表現では、物事の成り行きや偶然の巡り合わせを表しています。
「尽き」は終わり・限界・残りがなくなること「尽き」は、動詞「尽きる」の連用形が名詞化した言葉です。
「尽きる」には、物事が終わる、残りがなくなる、限界に達するという意味があります。
そのため、「運」と「尽き」を組み合わせた「運の尽き」は、文字どおり運命や運が終わりを迎えることを表しています。
江戸時代以前から確認できる古い表現「運の尽き」は、現代になって生まれた流行語ではありません。
『精選版 日本国語大辞典』では、1638年刊の俳諧集『鷹筑波』に関係する用例が初出の実例として記録されています。少なくとも近世初期にさかのぼる古い言葉として辞書に収録されていることが分かります。
ただし、辞書に記録された初出例は、現存する資料から確認できる使用例です。言葉が生まれた瞬間や、特定の人物が考案したことまで示すものではありません。
つまり、「運の尽き」の由来は、運命を意味する「運」と、終わりを意味する「尽き」が結び付いた日本語の表現にあります。
【使い方・例文】「運の尽き」を自然に使う場面と誤用
「運の尽き」は、日常会話から小説、ニュース記事、ビジネス上の比喩表現まで幅広く使われます。
特に多いのが、「~したのが運の尽き」という形です。ある行動が悪い結末につながったことを、後から振り返って表現できます。
日常会話での例文例文1:思いがけない失敗
「財布を忘れて出かけたうえに、電車にも乗り遅れた。朝からついていなかったが、スマートフォンまで落としたのが運の尽きだった」
不運が重なり、状況がさらに悪くなったことを表しています。
例文2:隠し事が発覚した場合
「こっそり冷蔵庫のプリンを食べたのが運の尽き。口元についていたクリームで、すぐに家族にばれてしまった」
ちょっとした失敗を、冗談交じりに表現した例です。
例文3:勝負に負けた場合
「最後の一手を読み違えたのが運の尽きだった。そこから形勢を立て直せなかった」
勝負の流れを決定づけた出来事を表しています。
仕事・ビジネスでの例文例文4:仕事上の判断ミス
「重要な契約書の確認を怠ったのが運の尽きとなり、取引先との信頼関係を失ってしまった」
例文5:経営上の失敗
「資金繰りの悪化を放置したことが運の尽きとなり、事業の継続が難しくなった」
例文6:不適切な発言
「会議での不用意な発言が運の尽きとなり、長年進めてきた交渉が決裂した」
ビジネス文章では、失敗の原因や重大な転機を強調する際に使用できます。ただし、客観性を重視する報告書では「決定的な失敗となった」「状況を悪化させた」などの表現が適しています。
文章や小説での例文例文7:「誰にも見つからないと思っていた。しかし、最後に残した足跡こそが、彼にとって運の尽きだった」
例文8:「あの日、偶然立ち寄った場所で旧友と再会したことが、彼女の運の尽きとなった」
例文9:「勝利を目前にして油断した。その一瞬が運の尽きだった」
物語では、登場人物の転落や運命が変わる決定的な場面を印象付ける効果があります。
「運の尽き」の誤用・注意したい使い方意味を理解していても、使う場面や文法を間違えると不自然な文章になります。
- 誤解を招きやすい例:「今日は少し雨が降ったので運の尽きだ」
- 自然な表現:「今日は雨に降られてついていなかった」
軽い不便や一時的な不運に対して使うと、表現が大げさになることがあります。もちろん、冗談として意図的に大げさに使うことは可能です。
また、「運の尽きる」という形を名詞表現としてそのまま使うのも不自然です。状態を述べるなら「運が尽きる」、名詞として使うなら「運の尽き」と区別します。
加えて、必ずしも悪事を働いた人に対して使う言葉ではありません。偶然の事故、判断ミス、勝負の敗北など、本人に悪意がない状況にも使用できます。
【類語・言い換え比較】「年貢の納め時」「命運尽きる」との違い
「運の尽き」には、似た意味を持つ慣用句や言い換え表現が複数あります。しかし、すべてを同じ意味として使えるわけではありません。
特に混同されやすいのが「年貢の納め時」と「命運が尽きる」です。それぞれの意味を比較すると、使い分けの基準が分かります。
主要な類語・言い換え表現の比較| 表現 | 意味・ニュアンス | 適した使用場面 |
|---|---|---|
| 運の尽き | 運が尽き、悪い結末を迎えること | 失敗を決定づけた出来事 |
| 年貢の納め時 | 悪事の報いを受ける、または諦めるべき時期 | 観念する場面、けじめをつける場面 |
| 命運が尽きる | 運命や将来を左右する命運が終わること | 人物・組織・事業などの重大な局面 |
| 万事休す | あらゆる手段がなくなり、もう打つ手がないこと | 解決策を失った絶望的な状況 |
| 絶体絶命 | 逃げ道がなく、非常に危険な状態 | 重大な危機や追い詰められた状況 |
| 一巻の終わり | 物事が完全に終わること | 計画や物語などの終結 |
| 万策尽きる | 考えられる手段をすべて使い果たすこと | 問題解決の方法がなくなった場面 |
この2つは、悪い結果や物事の終わりを表す点では共通しています。しかし、意味の中心は異なります。
「年貢の納め時」は、もともと滞納していた年貢を清算する時期という意味に由来します。そこから、悪事を重ねてきた人がついに捕まり、罪に服さなければならない時を表すようになりました。
さらに転じて、長く続けてきた物事を諦めたり、覚悟を決めたりする時期にも使われます。
例えば、長年独身生活を楽しんできた人が結婚を決めたときに「そろそろ年貢の納め時だ」と表現することがあります。
一方、「運の尽き」は、悪事の報いや責任を必ずしも意味しません。偶然の出来事や判断ミスによって、状況が悪い方向へ決定的に変化することを表します。
使い分けのポイント:
- 運に見放されて失敗したなら「運の尽き」。
- 過去の行いの報いを受けるなら「年貢の納め時」。
- 何かを諦めて決着をつけるなら「年貢の納め時」。
「命運が尽きる」は、「運の尽き」よりも運命そのものの終わりを強く意識させる表現です。
「命運」は、その人や物事の将来を左右する運命や巡り合わせを意味します。
例えば、企業の存続が危ぶまれる状況なら「企業の命運が尽きようとしている」、ある人物の最後の局面なら「彼の命運が尽きた」と表現できます。
一方、「運の尽き」は、ある行動や出来事が悪い結末を招いた転機として使いやすい表現です。
つまり、前者は運命の終局、後者は運が尽きる決定的な出来事や状態に焦点があります。
「万事休す」「絶体絶命」との違い「万事休す」は、問題を解決するための手段がすべて尽きた状態を指します。幸運や不運というより、打つ手がないことが中心です。
「絶体絶命」は、逃げ道がないほど危険な状況に追い込まれていることを表します。ただし、その時点で必ずしも結末が決まっているわけではありません。
例えば、試合の最終局面で大きくリードされている状況は「絶体絶命」と表現できます。そこから逆転の可能性が完全になくなれば「万事休す」という表現が適切になります。
「運の尽き」は、そうした状況に至るきっかけや、結果的に失敗を決定づけた出来事を振り返る際に使うと自然です。
【対義語・英語表現】「運の尽き」の反対の意味は?
「運の尽き」に完全に対応する対義語はある?「運の尽き」には、辞書で一語に固定された代表的な対義語があるわけではありません。
そのため、反対の意味を伝えるときは、どの部分を反対にしたいのかによって言葉を選びます。
代表的な反対方向の表現は次のとおりです。
- 運が向く:好運がやってきて、状況が良い方向へ向かうこと。
- 運が開ける:悪い状況から抜け出し、将来に明るい見通しが生まれること。
- 幸運に恵まれる:良い巡り合わせや幸運を得ること。
- 順風満帆:物事が障害なく、順調に進んでいること。
小学館の『精選版 日本国語大辞典』では、「運が向く」を好運がやってくること、状況が良い方向に向かうこととして説明しています。
「運の尽き」の反対の状況を表したいなら、「運が向く」が特に分かりやすい表現です。
「運の尽き」を英語で表すと?英語では、直訳に近い表現だけでなく、文脈に応じた慣用表現を使うと自然になります。
1.One's luck runs out
「運が尽きる」という意味で、最も直接的な言い換えの一つです。
例文:My luck finally ran out.
意味:ついに私の運も尽きた。
2.Run out of luck
「運を使い果たす」「運がなくなる」という意味です。
例文:He ran out of luck at the worst possible moment.
意味:彼は最悪のタイミングで運に見放された。
3.Seal one's fate
「自分の運命を決定づける」という意味です。特に、ある行動が悪い結末を招く場合に適しています。
例文:That careless decision sealed his fate.
意味:その不用意な判断が、彼の運命を決定づけた。
4.The jig is up
「もう終わりだ」「悪事がばれた」という意味の口語表現です。隠し事が発覚し、逃げられなくなった状況に向いています。
例文:The jig is up. They know everything.
意味:もうおしまいだ。彼らはすべて知っている。
なお、「年貢の納め時」の英訳では「Your game is up.」「The jig is up.」などが使われます。これは悪事が露見したり、これまでの行動に決着がついたりするニュアンスがあるためです。
英語では日本語の慣用句と完全に一致する表現が常に存在するわけではありません。運の悪化なら「one's luck runs out」、決定的な行動なら「seal one's fate」、悪事の発覚なら「the jig is up」と使い分けるのが自然です。
【使う場面を判断】「運の尽き」が自然に伝わるケースと避けたいケース
「運の尽き」は印象の強い言葉です。適切に使えば状況を短く伝えられますが、使う相手や場面によっては、必要以上に深刻な印象を与えることがあります。
「運の尽き」が向いている場面失敗の決定的な原因を説明するとき
何気ない判断や小さなミスが、後に大きな問題につながった場合に適しています。
物語やエンターテインメントで転落を描くとき
登場人物の運命が変わる瞬間を強調したい場合に効果的です。
友人との会話で冗談を交えるとき
軽い失敗を大げさに表現することで、ユーモアを生み出せます。
使わないほうがよい場面深刻な事故や災害の被害者について話すとき
被害者の不幸を「運の尽き」と表現すると、本人の責任や不運を強調しているように受け取られる可能性があります。
仕事上の正式な報告書や謝罪文
客観的な説明が必要な場面では、「重大な判断ミス」「決定的な問題」「事業継続が困難になった」などの具体的な表現が適しています。
まだ改善できる問題について話すとき
「運の尽き」は終局的な印象を与えるため、解決策が残っている状況では大げさに聞こえることがあります。
大切なのは、単に運が悪かったというだけでなく、結果を決定づけるような転機があったかどうかです。
【プロの結論】「運の尽き」を正しく使い分ける3つの判断基準
「運の尽き」を自然に使うためには、意味を暗記するだけでなく、表現が伝えるニュアンスを理解することが大切です。
判断するときは、次の3つのポイントを意識してください。
第一に、運の悪化や決定的な転機を表しているか。
単なる失敗や不便ではなく、後戻りできない結果につながった出来事なら「運の尽き」が適しています。
第二に、責任や報いを強調したいのか。
悪事を重ねた結果として処罰を受けるなら「年貢の納め時」、運命そのものの終わりを強調するなら「命運が尽きる」が適切です。
第三に、状況の深刻さに合っているか。
日常会話なら冗談として使えますが、重大な事故や社会的な問題では、相手の立場に配慮した表現を選ぶ必要があります。
「運の尽き」は、単なる不運を説明するだけの言葉ではありません。ある出来事が、それまでの状況を大きく変え、取り返しのつかない結果につながったという意味を凝縮した表現です。
【運の尽き】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「運の尽き」とは簡単にいうとどういう意味?
A1:それまで続いていた運が尽き、悪い結果や逃れにくい結末を迎えることです。「ここで見つかったのが運の尽き」のように、失敗を決定づけた出来事にも使います。
Q2:「運の尽き」と「年貢の納め時」は同じ意味?
A2:完全に同じではありません。「運の尽き」は運が尽きて悪い結末を迎えること、「年貢の納め時」は悪事の報いを受ける時や、物事を諦めて決着をつける時を意味します。
Q3:「運の尽き」の反対語・対義語は何?
A3:決まった一語の対義語はありません。反対の状況を表すなら「運が向く」「運が開ける」「幸運に恵まれる」などが適しています。
Q4:「運の尽き」を英語で何という?
A4:「one's luck runs out」が代表的です。「seal one's fate」は行動が運命を決定づけること、「the jig is up」は悪事がばれてもう逃げられないことを表します。
Q5:「運の尽き」と「命運が尽きる」はどう違う?
A5:「運の尽き」は悪い結末を招く出来事や状態に焦点があります。「命運が尽きる」は、その人物や組織などの運命そのものが終わるという、より重いニュアンスを持っています。
Q6:「運の尽き」は人に対しても使える?
A6:使えます。例えば「彼にとって、あの判断が運の尽きだった」のように表現できます。ただし、相手の不幸や深刻な出来事に使う場合は、失礼にならないよう注意が必要です。
「運の尽き」は、運命や幸運が尽きて、最後の時や避けがたい悪い結末を迎えることを表す日本語の慣用表現です。「運」と「尽きる」の組み合わせに由来し、1638年刊の『鷹筑波』に関係する古い用例も辞書に記録されています。
日常会話では「~したのが運の尽き」という形が使いやすく、ある出来事が失敗の決定的な原因になったことを表現できます。
類語との違いも確認しましょう。「年貢の納め時」は過去の行いへの報いや観念する時期、「命運が尽きる」は運命そのものの終わり、「万事休す」は打つ手がなくなった状態を意味します。
英語では「one's luck runs out」が基本となり、文脈によって「seal one's fate」などを使い分けます。
言葉の意味だけでなく、何が原因で、どのような結果になったのかを意識すると、「運の尽き」をより自然に使えるようになります。日常会話でも文章でも、状況に合った表現を選ぶことが、正確で伝わりやすい日本語につながります。
主な辞書・参考資料
- 小学館『デジタル大辞泉』
- 小学館『精選版 日本国語大辞典』
- 小学館『プログレッシブ和英中辞典』
- 日本漢字能力検定協会「漢字ペディア」
- imidas「会話で使えることわざ辞典」