砲丸投げの世界記録は、男子が23.56m、女子が22.63mです。男子はアメリカのライアン・クルーザーが2023年5月27日に樹立し、女子は旧ソ連のナタリア・リソフスカヤが1987年6月7日に記録して以来、約39年間も更新されていません。2026年11月現在も、この2つの記録が世界最高記録として残っています。
男子と女子の記録保持者は誰なのか、世界記録はどのように更新されてきたのか。加えて、室内世界記録と屋外記録の違い、日本記録を持つ奥村仁志や森千夏との距離、男女で異なる砲丸の重さ、競技ルールまで、世界陸連(World Athletics)や日本陸上競技連盟などの公的競技記録を基に詳しく整理します。
【2026年最新】砲丸投げの世界記録は男子23.56m・女子22.63m

砲丸投げの世界記録は、男子と女子でそれぞれ異なる選手が保持しています。男子は2023年にライアン・クルーザーが記録を更新しましたが、女子は1987年に樹立された記録が現在まで破られていません。
男子世界記録:ライアン・クルーザーの23.56m
(Ryan Crouser)
23.56m
男子屋外世界記録・2023年5月27日樹立
国籍:アメリカ
主な実績:オリンピック3連覇、世界選手権3連覇
男子の世界記録は、アメリカのライアン・クルーザーが持つ23.56mです。
記録が生まれたのは2023年5月27日。アメリカ・ロサンゼルスで開催されたUSATFロサンゼルス・グランプリで、クルーザーは4投目に23.56mをマークしました。
この一投によって、自身が2021年6月の全米五輪選考会で樹立した23.37mを19cm更新。世界陸連は同年11月23日に世界記録として正式に公認しています。
注目したいのは、単に筋力だけで記録を伸ばしたわけではない点です。クルーザーは投てきサークル内でのステップを大きくする技術改良にも取り組んでいました。助走のない限られた空間で、脚から生み出した力を体幹、肩、腕へ効率よく伝えることが、23mを超える記録につながっています。
女子世界記録:ナタリア・リソフスカヤの22.63m
(Natalya Lisovskaya)
22.63m
女子屋外世界記録・1987年6月7日樹立
樹立地:モスクワ(旧ソ連)
主な実績:オリンピック金メダル、世界選手権優勝
女子の世界記録は、旧ソ連のナタリア・リソフスカヤが1987年6月7日にモスクワで記録した22.63mです。
驚くべきなのは、その記録が約39年間にわたって更新されていないことです。1980年代には東欧や旧ソ連の選手が女子砲丸投げで非常に高い競技力を発揮しており、リソフスカヤはその時代を代表する選手でした。
世界陸連の選手プロフィールにも22.63mが世界記録として掲載されています。女子砲丸投げでは、22mを超えること自体が極めて難しい水準であり、リソフスカヤの記録は歴史的な大記録として残っています。
2026年11月現在、世界記録は更新された?2026年11月4日時点で、男子23.56m、女子22.63mという世界記録に変更はありません。
ただし、2026年シーズンにも高水準の記録が生まれています。世界陸連の2026年シーズン記録では、男子はジャマイカのラジンドラ・キャンベルが9月5日に23.08m、女子はアメリカのチェイス・ジャクソンが9月4日に21.14mを記録しています。
キャンベルの23.08mは世界記録まで48cm、ジャクソンの21.14mは世界記録まで1.49mの差です。2026年も世界のトップ選手たちが高いレベルで競い合っていますが、世界記録の壁は依然として厚い状況です。
【歴代ランキング】砲丸投げの世界記録更新の歴史と推移
砲丸投げの記録を振り返ると、男子では20m、22m、23mという大きな節目を超えるたびに競技水準が変化してきました。女子も同様に、1980年代に記録が大きく伸びています。
男子砲丸投げの歴代上位ランキング屋外競技における男子の歴代上位記録は次のとおりです。
- 23.56m:ライアン・クルーザー(アメリカ)2023年
- 23.23m:ジョー・コバックス(アメリカ)2022年
- 23.12m:ランディ・バーンズ(アメリカ)1990年
- 23.06m:ウルフ・ティンマーマン(東ドイツ)1988年
- 22.98m:レオナルド・ファブリ(イタリア)2024年
23mを超える記録を持つ選手が複数いる一方、23.56mというクルーザーの記録は別格です。2位のジョー・コバックスとの差も33cmあり、世界最高記録の高さが際立っています。
女子砲丸投げの歴代上位ランキング女子の屋外記録の歴代上位は以下のとおりです。
- 22.63m:ナタリア・リソフスカヤ(旧ソ連)1987年
- 22.45m:イローナ・スルピアネク(東ドイツ)1980年
- 22.32m:ヘレナ・フィビンゲロバ(チェコスロバキア)1977年
- 22.19m:クラウディア・ロッシュ(西ドイツ)1987年
- 21.89m:イバンカ・フリストワ(ブルガリア)1976年
女子の歴代上位にも、1970~1980年代の東欧・旧ソ連の選手が多く並んでいます。特にリソフスカヤは22.60m以上の記録も複数残しており、単発の好記録だけでなく、継続して世界最高水準の投てきを実現していた選手です。
世界記録更新の主な歴史世界記録の歴史を大きな節目で整理すると、次のようになります。
1909年:男子15.54m
アメリカのラルフ・ローズが初期の公認世界記録を樹立。男子砲丸投げの国際的な記録史が始まります。
1950年代~1960年:20mの壁を突破
パリー・オブライエンらが記録を伸ばし、ビル・ニーダーが1960年に20.06mを記録。男子で初めて20mを超えました。
1987~1990年:22mから23mの時代へ
アレッサンドロ・アンドレイが22.91m、ウルフ・ティンマーマンが23.06m、ランディ・バーンズが23.12mを記録しました。
2021年:クルーザーが23.37m
ライアン・クルーザーが従来の23.12mを更新し、男子世界記録を23m台半ばへ引き上げました。
2023年:23.56mへ到達
クルーザーが自らの世界記録を19cm更新。2026年11月現在も男子の世界最高記録として残っています。
女子では1924年にフランスのヴィオレット・グロー=モリスが10.15mの初期の世界記録を樹立しました。その後、1969年にナデジダ・チジョワが20.09mを記録して女子初の20m突破を達成し、1987年にリソフスカヤが22.63mへと記録を伸ばしました。
【日本記録との比較】奥村仁志19.09mと森千夏18.22mの実力
世界記録と日本記録を比較すると、日本のトップ選手が世界最高水準にどれほど迫っているのかが分かります。
男子日本記録:奥村仁志の19.09m19.09m
男子日本記録・2024年8月30日
大会:Athlete Night Games in FUKUI 2024
会場:福井県福井市・9.98スタジアム
男子の日本記録は、奥村仁志が2024年8月30日に樹立した19.09mです。
福井県で開催されたAthlete Night Games in FUKUI 2024で、日本人男子として19mの大台を突破しました。
19.09mは日本の男子砲丸投げにおける大きな到達点です。一方、世界記録23.56mとの差は4.47mあります。世界のトップ選手が23m台で競う現状を考えると、世界との差を縮めるには、筋力だけでなく、技術、回転速度、リリースの精度などを総合的に高める必要があります。日本陸上競技連盟の記録資料と世界陸連の選手プロフィールでも19.09mが日本記録として確認できます。
女子日本記録:森千夏の18.22m18.22m
女子日本記録・2004年4月18日
大会:静岡県西部陸上競技選手権大会
会場:浜松市四ツ池公園陸上競技場
女子の日本記録は、森千夏が2004年4月18日に樹立した18.22mです。
女子の世界記録22.63mとの差は4.41m。男子と同様、日本記録と世界記録の間には大きな距離があります。
特筆すべきなのは、森千夏の記録が2004年に樹立されて以来、長期間にわたって日本女子の最高記録として残っていることです。女子砲丸投げで18mを超えることは国内でも非常に高い水準を意味します。
世界記録と日本記録の差を比較
男子の比較
世界記録
23.56m
日本記録
19.09m
記録差:4.47m
女子の比較
世界記録
22.63m
日本記録
18.22m
記録差:4.41m
世界記録を100%とした場合、日本記録は男子が約81.1%、女子が約80.5%に相当します。ただし、これは距離を単純比較した数値であり、選手の競技力を直接評価する指数ではありません。
【室内・屋外を比較】砲丸投げの世界記録はなぜ違う?
砲丸投げには、屋外競技の世界記録だけでなく、室内競技の世界記録も存在します。どちらも同じ砲丸投げですが、記録は競技環境ごとに区別して扱われます。
男子の室内世界記録は22.82m
ライアン・クルーザー
22.82m
2021年1月24日・アメリカ、フェイエットビル
男子の室内世界記録は、クルーザーが2021年1月24日に記録した22.82mです。
当時の室内世界記録だったランディ・バーンズの22.66mを16cm更新しました。クルーザーは1投目でこの記録を達成し、同じ大会の3投目にも22.70mを記録しています。
その後、2023年には屋外で23.56mを記録。屋内と屋外の両方で世界記録を保持する選手となりました。
女子の室内世界記録は22.50m22.50m
1977年2月19日・ヤブロネツ
女子の室内世界記録は、チェコスロバキアのヘレナ・フィビンゲロバが1977年2月19日に記録した22.50mです。
女子の屋外世界記録22.63mとの差はわずか13cm。室内記録としては極めて高い水準で、長年にわたり世界最高の座を守っています。世界陸連の室内競技記録資料にも22.50mが世界室内記録として掲載されています。
室内記録と屋外記録の比較- 男子屋外:23.56m(ライアン・クルーザー)
- 男子室内:22.82m(ライアン・クルーザー)
- 女子屋外:22.63m(ナタリア・リソフスカヤ)
- 女子室内:22.50m(ヘレナ・フィビンゲロバ)
男子は屋外と室内の差が74cm、女子は13cmです。ただし、この差は単純に室内の方が投げにくいという意味ではありません。競技場の構造、床面、投てきサークルの設置環境などが異なり、記録を生み出す条件にも違いがあります。
また、室内だから砲丸が軽くなるわけではありません。シニア男子は7.26kg、シニア女子は4kgという基本重量は屋内・屋外で共通です。
【男女で何が違う?】砲丸の重さ・競技ルール・記録の測定方法
砲丸投げの世界記録を正しく理解するには、競技ルールを知ることも欠かせません。特に重要なのが、男女の砲丸の重量、投てき方法、記録の測定基準です。
男子と女子では砲丸の重さが違う男子一般
7.26kg
16ポンド
女子一般
4.00kg
約8.8ポンド
国際大会のシニア男子は7.26kg、女子は4kgの砲丸を使用します。重量差は3.26kgです。
この重量の違いは、男女の世界記録をそのまま同じ条件で比較できない理由の一つです。男子の23.56mと女子の22.63mは、異なる重量の砲丸を使用した競技結果です。
なお、中学生、高校生、U20などの年齢・競技区分では使用する砲丸の重さが異なります。一般男子の7.26kgをすべての男子選手が使用するわけではありません。
砲丸投げは「投げる」よりも「押し出す」競技砲丸投げは、英語ではShot Putと呼ばれます。名前のとおり、砲丸を遠くへ押し出す競技です。
競技者は砲丸を片手で首やあごの近くに保持し、肩の位置から前方へ押し出します。やり投げのように腕を大きく振り回して投げる競技とは、動作の基本が異なります。
代表的な投てき技術には、次の2種類があります。
グライド投法
サークル内を直線的に移動しながら、身体の移動で生み出した力を砲丸に伝える技術。後ろ向きの姿勢から滑るように移動します。
回転投法
サークル内で身体を回転させ、回転による運動エネルギーを利用して砲丸を押し出す技術。円盤投げに似た回転動作が特徴です。
どちらの投法でも、脚の力を体幹から上半身へと伝え、最終的に砲丸へ伝達する身体の連動性が重要になります。
競技ルールと記録の測定方法国際大会では、砲丸投げに以下のような基本ルールが適用されます。
- 投てきサークルの直径は2.135m。
- 砲丸は片手で肩の位置から押し出す。
- 砲丸は首やあごの近くに保持する。
- 砲丸は約34.92度の角度で設定された有効区域内に落とす。
- 砲丸が地面に落ちる前にサークルから出てはいけない。
- 試技終了後はサークルの後方半分から退出する。
- サークルの縁やストップボードの上部に触れるなどの違反はファウルとなる。
記録の測定では、砲丸が最初に地面に接触した地点のうち、サークルに最も近い位置を基準にします。そこからサークルの内側の円周まで、サークルの中心を通る方向に距離を測定します。
測定値は1cm単位で記録され、1cm未満の端数がある場合は切り捨てます。例えば、実測値が23.567mなら、公認記録は23.56mです。
つまり、単純に砲丸が飛んだ距離を目測しているわけではありません。投てきの有効性を確認したうえで、規定の測定基準に従って正式な記録が決定されます。
【よくある誤解】砲丸投げ世界記録について知っておきたいポイント
砲丸投げの記録には、屋内・屋外の区別や使用する砲丸の重量など、混同しやすいポイントがあります。特に世界記録を調べる際は、以下の点に注意が必要です。
男子23.56mと女子22.63mは同じ重量の記録ではない男子は7.26kg、女子は4kgの砲丸を使用します。したがって、男女の記録を距離だけで比較して、どちらが優れた選手なのかを判断することはできません。
室内世界記録と屋外世界記録は別物室内の22.82mや22.50mは、屋外の世界記録と混ぜてランキングを作るものではありません。それぞれ別の競技環境における世界最高記録として管理されています。
世界記録は毎年更新されるわけではない男子は2023年、女子は1987年の記録が2026年現在も残っています。毎年のシーズン最高記録と、長期間維持されている世界記録は明確に区別する必要があります。
日本記録と世界記録の差は単純な筋力差ではない砲丸投げは筋力だけでなく、身体の回転、移動速度、リリース時の角度、タイミングなどが記録に影響します。世界記録に近づくには、身体能力と技術を組み合わせた総合的な競技力が大切です。
砲丸投げ世界記録に関するよくある質問(FAQ)
Q1:砲丸投げの男子世界記録は何メートルですか?
A1:男子の屋外世界記録は23.56mです。アメリカのライアン・クルーザーが2023年5月27日にロサンゼルスで樹立しました。2026年11月現在も更新されていません。
Q2:砲丸投げの女子世界記録は何メートルですか?
A2:女子の屋外世界記録は22.63mです。旧ソ連のナタリア・リソフスカヤが1987年6月7日にモスクワで記録しました。約39年間破られていない歴史的記録です。
Q3:砲丸投げの室内世界記録は何メートルですか?
A3:男子はライアン・クルーザーの22.82m(2021年)、女子はヘレナ・フィビンゲロバの22.50m(1977年)です。屋外の世界記録とは別に管理されています。
Q4:日本の男子・女子の砲丸投げ日本記録は誰が持っていますか?
A4:男子は奥村仁志の19.09m(2024年)、女子は森千夏の18.22m(2004年)です。
Q5:男子と女子では砲丸の重さが違いますか?
A5:違います。国際大会のシニア男子は7.26kg、シニア女子は4kgです。なお、ジュニアや中学生などの競技区分では別の重量が使用されます。
Q6:砲丸投げは何回投げて記録を競いますか?
A6:一般的には各選手に3回の試技が与えられ、上位8選手がさらに3回の試技を行います。最も遠くに到達した有効記録によって順位が決まります。大会形式によって予選と決勝に分かれる場合もあります。
2026年11月現在、砲丸投げの世界記録は男子23.56m、女子22.63mです。男子はアメリカのライアン・クルーザー、女子は旧ソ連のナタリア・リソフスカヤが保持しています。
男子記録は2023年に更新された一方、女子記録は1987年から約39年間維持されています。男女で記録更新の歴史が大きく異なる点は、砲丸投げの歴史を理解するうえで興味深いポイントです。
日本記録は男子が奥村仁志の19.09m、女子が森千夏の18.22m。世界記録との差はそれぞれ4.47m、4.41mです。国内トップ選手の記録も、国際的な基準で見ると、まだ大きな挑戦の余地が残されています。
今後注目したいのは、ライアン・クルーザーの23.56mに迫る新世代の選手たちと、長年破られていないナタリア・リソフスカヤの22.63mに挑む女子選手の動向です。2026年シーズンも男子ではラジンドラ・キャンベルが23.08m、女子ではチェイス・ジャクソンが21.14mを記録しており、世界最高記録への挑戦は続いています。
砲丸投げを見るときは、飛距離だけでなく、使用する砲丸の重量、屋内・屋外の区分、投てき技術、公式測定方法にも注目すると、競技の奥深さがより鮮明になります。
主な参照資料:World Athletics公式選手プロフィール・世界記録公認発表・歴代記録一覧・2026年シーズンランキング、日本陸上競技連盟公式記録、日本記録認定協会、World Athletics Technical Rules。