2026年、日本各地でクマの市街地への出没や人身被害が続き、地域の安全を守る存在として「熊猟友会」の活動に関心が集まっている。クマの目撃情報を受けた際、現場に駆けつけて調査や捕獲に当たるのは、自治体から協力を求められたハンターたちだ。しかし、その活動は単にクマを駆除するだけではない。出没状況の確認、住民への安全対策、捕獲後の処理まで、幅広い役割を担っている。
一方で、危険を伴う活動に対して報酬はいくら支払われるのか、事故が発生した場合の責任は誰が負うのかという問題もある。2025年9月に始まった緊急銃猟制度は、こうした行政とハンターの関係を大きく変える制度だ。2026年11月6日現在の環境省公表資料、自治体の報酬事例、大日本猟友会の事業報告などをもとに、熊猟友会の実態と今後の課題を整理する。
【基礎知識】熊猟友会とは?役割・組織・現在の活動実態

「熊猟友会」という言葉は、クマの捕獲や駆除に協力する地域の猟友会や、その所属ハンターを指す一般的な呼び方として使われている。
実際には、クマ専用の全国統一組織が存在するわけではない。各都道府県に設置された猟友会と、その下にある市町村単位の支部・地区組織が、地域の鳥獣管理や有害鳥獣捕獲に関わっている。
全国組織に当たるのが一般社団法人・大日本猟友会だ。同会の公式説明によれば、都道府県猟友会、地域の支部・地区猟友会という階層構造を持ち、会員は保有する狩猟免許の種類などに応じて区分される。
つまり、地域でクマの駆除に出動するハンターは、必ずしも全国組織から直接指示を受けているわけではない。多くの場合、自治体との委託契約や地域の捕獲体制を通じて活動する。
熊猟友会が担う主な仕事熊猟友会の仕事は、捕獲だけに限定されない。
主な活動は次のとおりだ。
- クマの目撃情報や痕跡の確認
- 出没地域周辺の警戒・パトロール
- 自治体や警察との情報共有
- 地域住民の安全確保への協力
- 自治体の許可・委託に基づく有害鳥獣捕獲
- 捕獲用のわなの管理や確認
- 捕獲後の個体の処理への協力
- 地域の狩猟者育成や事故防止活動
とりわけ市街地への出没では、住民の避難や通行規制など、行政側の対応との連携が欠かせない。
クマの位置や移動状況を確認するハンターと、住民への情報発信や現場の安全管理を担う自治体職員では、役割が異なる。
大日本猟友会の会員数から見る現在大日本猟友会の2024年度事業報告書によると、2025年3月末時点の構成員数は10万561人だった。
内訳は以下のとおり。
- わな猟:4万1,117人
- 第一種銃猟:5万6,577人
- 第二種銃猟:2,651人
- 網猟:216人
前年度と比較すると、総構成員数は0.5%減少。第一種銃猟の構成員は997人減った一方、わな猟の構成員は545人増えている。
この数字から読み取れるのは、猟友会全体の人数だけでなく、実際に銃猟を担う人材の確保が重要な問題になっていることだ。
なお、10万人という数字は全国の猟友会構成員全体であり、全員がクマの捕獲に従事できるわけではない。地域、免許、経験、委託条件などによって実際の対応可能人数は異なる。
(出典:大日本猟友会「令和6年度事業報告書」)
【2026年最新データ】クマの出没・人身被害と熊猟友会の出動状況
環境省が公表した2026年度の人身被害2026年11月6日現在、環境省が公表している令和8年度のクマによる人身被害速報値は、9月までの集計で次のとおりだ。
| 項目 | 2026年度速報値 |
|---|---|
| 人身被害件数 | 64件 |
| 被害者数 | 68人 |
| 死亡者数 | 6人 |
| 集計対象期間 | 2026年4月〜9月 |
| 公表資料の更新日 | 2026年10月14日 |
被害者数には死亡者も含まれる。
死亡事故の概要資料では、岩手県紫波町、山形県酒田市、岩手県八幡平市、岩手県西和賀町、秋田県秋田市、青森県青森市などで死亡事故が確認されている。
これは単なる山間部の問題ではない。人が日常生活を送る地域でのクマとの遭遇が、安全対策の大きな課題になっている。
(出典:環境省「クマによる人身被害件数(速報値)」「令和8年度のクマによる死亡事故数等」)
クマの出没情報はどこまで増えているのか環境省の2026年10月14日更新資料では、令和8年度のクマ出没情報は8月までの速報値で合計1万9,789件となっている。
参考として、令和7年度の集計は5万801件だった。
ただし、ここで注意したいのは、出没件数の集計方法が都道府県ごとに異なる点だ。警察への通報、市町村への連絡など、各自治体が異なる方法で情報を取りまとめている。
また、北海道は出没数を公表しておらず、クマが生息していない九州・沖縄の8県は集計対象外となっている。
そのため、出没件数をそのまま全国のクマの個体数や被害リスクと同一視することはできない。
それでも、各地の自治体にとって警戒体制を維持する必要性が高まっていることは明らかだ。
2026年度の緊急銃猟は42件2025年9月に始まった緊急銃猟制度は、2026年度も実際に運用されている。
環境省が11月6日に更新した実施状況資料によれば、2026年度に発砲まで至った緊急銃猟は42件。
確認されている事例には、次のような地域が含まれる。
- 4月:福島県郡山市、新潟県長岡市、宮城県仙台市
- 5月:富山県富山市、青森県八戸市、北海道士別市
- 6月:福島県福島市、山形県鶴岡市、北海道下川町
- 7月:岩手県遠野市、宮城県仙台市、奈良県東吉野村
- 9月:東京都八王子市、京都府舞鶴市、秋田県羽後町
- 10月:兵庫県丹波市、広島県広島市、福井県小浜市
- 11月:奈良県宇陀市、京都府福知山市など
これは環境省が把握している事例に限った数字だ。
2025年度も、9月1日から12月25日までに11道県で51件の緊急銃猟が行われた。
制度開始から実際の運用事例が積み重なり、自治体と捕獲者の連携体制が問われる段階に入っている。
(出典:環境省「令和8年度の緊急銃猟実施状況」「クマ被害対策の概要」)
【仕組みを解説】熊駆除は誰が依頼する?自治体と猟友会の関係
クマの駆除は自治体の判断と許可が基本クマを見つけたからといって、一般の人や狩猟者が自由に捕獲できるわけではない。
鳥獣保護管理法では、狩猟による場合などを除き、野生鳥獣の捕獲や殺傷は原則として禁止されている。
ただし、農林水産業への被害や人身被害を防止する必要がある場合には、所定の許可を受けて捕獲することができる。
通常の有害鳥獣捕獲では、都道府県知事が許可権限を持つ。ただし、多くの地域では権限の一部が市町村長に移譲されている。
この仕組みのもとで、自治体が地域の猟友会支部やハンターに協力を依頼する。
熊駆除に関係する組織と役割それぞれの主体が何を担っているのかを整理すると、次のようになる。
| 関係主体 | 主な役割 | 関係性 |
|---|---|---|
| 環境省 | 法制度、指針、財政・技術支援 | 国の制度設計と支援 |
| 都道府県 | 捕獲許可、広域調整、自治体支援 | 市町村との連携 |
| 市町村 | 出没情報の把握、住民への周知、捕獲依頼、安全管理 | 現場対応の中心 |
| 地域の猟友会 | 調査、パトロール、捕獲への協力 | 自治体からの依頼・委託 |
| 個々のハンター | 技能や免許に応じた捕獲活動 | 実際の現場作業 |
| 警察 | 住民の安全確保、現場の警戒・交通対応など | 自治体との協力 |
| 地域住民 | 目撃情報の通報、避難や注意事項への協力 | 情報提供と安全確保 |
重要なのは、猟友会が自治体の指示を受けずに独自判断で公的な駆除を行う組織ではないという点だ。
自治体が対応方針を決め、必要に応じて猟友会などに協力を求める。この基本的な関係を理解しておく必要がある。
駆除依頼から捕獲までの流れ一般的な有害鳥獣捕獲では、次のような流れになる。
1. 住民や施設管理者などから自治体にクマの目撃情報が寄せられる。
2. 自治体が出没場所や周辺状況を確認する。
3. 必要に応じて警察、都道府県、猟友会などと対応を協議する。
4. 法令上の許可や委託条件を確認し、捕獲体制を整える。
5. 捕獲後は記録や個体の処理などを行う。
すべての出没が捕獲につながるわけではない。
山林などへの移動が確認された場合は警戒や経過観察、住民への注意喚起などが選択されることもある。
また、クマの出没対策は捕獲だけでは完結しない。放任果樹や生ごみなどの誘引物の管理、侵入防止柵、緩衝帯の整備も必要になる。
環境省のガイドラインも、捕獲、追い払い、出没防止対策を組み合わせる総合的な管理を重視している。
【報酬・日当を検証】猟友会の熊駆除費用と捕獲報奨金はいくら?
熊駆除の報酬に全国統一基準はあるのか結論からいえば、全国の猟友会に共通する熊駆除の日当や報奨金は設定されていない。
報酬は自治体ごとに異なり、主に次のような方式が採用されている。
- 1頭捕獲するごとの報奨金
- 出動した時間に応じた時給
- パトロールなどに対する日当
- わなの設置や運搬に対する費用
- 緊急銃猟に対する特別手当
- 燃料費や装備品などの実費負担
ここで注意したいのは、自治体から猟友会という団体に支払われる金額と、実際に現場で活動したハンター個人の受取額は必ずしも同じではないことだ。
自治体によって異なる実際の報酬事例2025年に報じられた自治体の事例を見ると、金額や支払い方式には大きな差がある。
| 自治体 | 報酬・手当の事例 | 支給対象 |
|---|---|---|
| 北海道池田町 | ヒグマ駆除報酬を5万円から8万1,300円に引き上げ | 捕獲報酬 |
| 新潟県長岡市 | 1頭当たり2万円 | 捕獲報酬 |
| 富山県射水市 | 1頭当たり5万円の報奨金制度を創設 | 捕獲報奨金 |
| 秋田市 | 1頭当たり1万円の報奨金、出動報酬8,000円 | 捕獲・出動 |
| 長野県飯山市 | 日当5,700円から2倍近くに引き上げ | 日当 |
| 岩手県一戸町 | 猟友会に1頭5万円、ハンターに時給1,500円 | 団体・個人 |
これらは2025年の報道で紹介された事例であり、2026年11月時点の全国共通料金ではない。自治体によって制度の対象期間や支給条件も異なる。
特に興味深いのが、FNNプライムオンラインによる岩手県内33市町村へのアンケート調査だ。
回答した21自治体の報酬体系を調べたところ、遠野市はハンター1人当たり時給952円、一戸町は猟友会への1頭5万円に加えてハンター個人に時給1,500円を支払う仕組みだった。
平泉町では、市街地での緊急銃猟に対してハンター1人当たり3万円を設定していた。
加えて、回答自治体21のうち5自治体が報酬を増額済みで、13自治体が今後の増額を検討していた。
この調査結果は、危険性や作業内容が異なるにもかかわらず、自治体間で報酬体系が統一されていない現状を示している。
(出典:FNNプライムオンライン「危険度に見合わない」クマ駆除ハンターの報酬、自治体間の報酬格差が深刻、2025年11月15日)
熊1頭の駆除費用は2万円から5万円なのかネット上では、熊駆除の費用として2万円、5万円、8万円といった金額が取り上げられることがある。
しかし、これらをそのまま全国の標準料金として理解するのは正確ではない。
例えば、北海道鹿追町の2025年9月の議会会議録では、町内の狩猟者団体に24人が所属し、そのうちクマ駆除の許可を受けている人は17人と説明されている。
同町では、クマ1頭の駆除について、町から1万5,000円、国から8,000円を合わせた2万3,000円を報酬として支払っていた。
加えて、パトロールなどの出役に対しても日当などを支給している。
この事例からも分かるように、捕獲報酬だけで活動全体の費用を判断することはできない。
熊駆除費用に含まれるもの自治体が負担する費用には、捕獲そのもの以外にも多くの項目がある。
- ハンターへの出動手当
- 捕獲報酬や報奨金
- パトロールや調査に必要な費用
- 燃料費、交通費
- わなや安全装備などの資材費
- 捕獲個体の運搬・処理費用
- 保険料や安全研修費用
- 緊急対応のための人員配置費
環境省は指定管理鳥獣対策事業交付金などを通じて、都道府県や自治体のクマ対策を支援している。
ただし、国からの交付金があるからといって、すべての自治体で同額の報酬が支給されるわけではない。
2026年の課題は、単純に1頭当たりの報奨金を引き上げることだけではなく、出動、待機、調査、捕獲後の処理まで含めた持続可能な費用体系を構築することにある。
【2025年法改正・2026年運用】緊急銃猟制度と責任問題を解説
緊急銃猟制度はいつ始まったのか2025年4月18日に成立し、4月25日に公布されたのが、令和7年法律第28号による鳥獣保護管理法の改正だ。
この改正によって新設されたのが緊急銃猟制度である。
施行日は2025年9月1日。
従来は、住宅が集合する地域や駅などの多数の人が集まる場所での銃猟が原則として禁止されていた。
緊急性の高いケースでは警察官職務執行法や刑法上の緊急避難などを踏まえた対応が行われてきたが、より予防的かつ迅速な対応を可能にする制度が求められていた。
そこで改正法では、一定の安全条件を満たした場合、市町村長の判断で日常生活圏に出没したクマやイノシシへの銃猟を実施できる仕組みが整備された。
緊急銃猟を実施するための4つの条件緊急銃猟は、単にクマが市街地に現れたという理由だけで実施できるものではない。
法律上、次の4つの条件をすべて満たす必要がある。
1. クマなどの危険鳥獣が人の日常生活圏に侵入している、または侵入するおそれが大きい。
2. 人の生命や身体への危害を防止するため、緊急の対応が必要である。
3. 銃猟以外の方法では、迅速かつ的確な捕獲が困難である。
4. 住民などに弾丸が到達するおそれがないよう、安全を確保できる。
実施の判断をするのは市町村長だ。
市町村は必要な安全確保措置を講じたうえで、要件を満たす技能や経験を持つ捕獲者に業務を委託できる。
緊急銃猟で責任を負うのは誰なのかこの制度で最も重要なのが、自治体とハンターの責任分担だ。
環境省の緊急銃猟ガイドラインでは、緊急銃猟の実施主体は市町村であり、最終的な責任も市町村が負うという考え方が示されている。
具体的には次のように整理できる。
| 責任・業務 | 主な担当 |
|---|---|
| 緊急銃猟の実施判断 | 市町村長 |
| 現場の安全確保 | 市町村 |
| 住民への避難・通行制限 | 市町村 |
| 捕獲業務の実施 | 委託を受けたハンターなど |
| 銃猟行為に関する専門的判断 | 捕獲者 |
| 物損に対する損失補償 | 市町村長 |
| 人身事故に対する賠償 | 市町村(国家賠償法上の責任) |
| 捕獲者自身の事故への補償 | 保険などによる対応 |
物損については鳥獣保護管理法に基づく損失補償、人身事故については国家賠償法に基づく市町村の賠償責任が関係する。
ただし、これは緊急銃猟制度に基づく場合の整理だ。通常の有害鳥獣捕獲や狩猟における責任まで、すべて市町村が負うという意味ではない。
また、ハンターの注意義務がなくなるわけでもない。法律やガイドラインに沿った安全管理と、捕獲者としての適切な注意が求められる。
猟友会は緊急銃猟を断れるのか環境省が2025年11月に公表した緊急銃猟に関するQ&Aでは、市町村から協力を求められたハンターに応諾義務はなく、断ることができると説明されている。
この点は非常に重要だ。
緊急銃猟は危険を伴う業務であり、すべてのハンターが対応できるわけではない。
必要な技能や経験があるか、現場の安全を確保できるか、保険や報酬の条件が整っているかなどを踏まえ、協力するかどうかを判断できる。
ハンターの保険や補償も見直されている2026年3月27日の環境大臣記者会見では、公的な捕獲に従事するハンターの補償についても言及された。
それまで死亡・後遺障害の補償上限が300万円だった保険について、東京海上日動が2,500万円に引き上げたプランを提供することが紹介された。
危険な現場で活動する人材を確保するには、報酬だけでなく、本人や家族が安心できる補償体制も必要だ。
2026年4月には環境省の緊急銃猟ガイドラインも改訂され、実際の対応事例7件や各工程に関する16件のポイントが追加された。
制度を作る段階から、現場で安全に運用する段階へと政策の重点が移っている。
【深刻な課題】猟友会の高齢化・人手不足と評判の実態
ハンターの高齢化はどこまで進んでいるのか熊猟友会を取り巻く問題の一つが、担い手の高齢化だ。
環境省が公表している年代別狩猟免許所持者数の資料では、2021年度の狩猟免許所持者は21万3,400人。このうち60歳以上は11万9,100人で、全体の約56%を占めている。
ただし、この年代別資料の最新掲載年は2021年度であり、2026年の実人数を示すものではない。
一方、大日本猟友会の2024年度事業報告でも、第一種銃猟の構成員が減少傾向にあることが示されている。
特にクマの捕獲には、狩猟免許を持っているだけでは対応できないケースがある。
地域の地形やクマの行動に関する知識、現場経験、安全管理能力なども必要になるからだ。
つまり、狩猟免許所持者の総数が一定程度維持されていても、自治体が必要とする捕獲人材が十分に確保できているとは限らない。
国が進める2026年の人材確保策2026年3月27日に決定された「クマ被害対策ロードマップ」では、2030年度までに整備する人材・資機材の目標が示された。
| 項目 | 2026年3月時点 | 2030年度目標 |
|---|---|---|
| クマ捕獲作業などに従事する自治体職員 | 784人 | 2,500人 |
| 箱わな | 5,527基 | 10,000基 |
| クマ撃退スプレー | 7,093本 | 20,000本 |
自治体職員の目標は、現在の約3倍に当たる。
ここで注目したいのは、国が猟友会だけに依存する体制から、自治体職員や認定鳥獣捕獲等事業者なども含めた複数の担い手による体制へ移行しようとしていることだ。
ロードマップでは、2030年度までに恒常的なクマの生息域にある自治体の緊急対応体制を100%確保することも目標としている。
また、2026年10月30日には、環境省が市街地クマ対策の技術導入実証事業について、56件の応募から10団体を選定したと発表した。
ドローン、カメラ、アプリなどの技術を活用し、出没対応の効率化を検証する取り組みだ。
人材の確保と技術の活用を組み合わせる方向性が見えている。
熊猟友会の評判は良いのか、悪いのか熊猟友会への評価は、活動のどの側面を見るかによって異なる。
肯定的に評価されるのは、地域の安全を守るために専門知識や経験を提供している点だ。
自治体職員だけでは対応が難しい場面で、地域に精通したハンターの存在は大きい。
一方、批判や疑問が生まれやすいのは、次のような問題だ。
- 駆除報酬が危険性に見合っているのか
- 自治体によって報酬に差があるのはなぜか
- 事故が発生した際の責任分担が明確なのか
- 捕獲だけでなく出没防止策も十分に進められているのか
- 地域の安全を少数の高齢ハンターに依存していないか
2025年の岩手県内の報酬調査でも、自治体ごとの金額差や報酬体系の違いが問題として取り上げられた。
ただし、こうした問題を理由に、猟友会全体の活動を一括して評価するのは適切ではない。
通常の狩猟、自治体から委託された有害捕獲、緊急銃猟では、業務の性質も責任の所在も異なるからだ。
【プロの結論】熊猟友会を評価するための判断基準熊猟友会の活動を理解する際には、単純な捕獲頭数や報酬額だけを見るべきではない。
本当に評価すべきなのは、次の4つの観点だ。
1. 安全管理が確立されているか
自治体、警察、ハンターの役割が明確で、住民の安全を最優先する体制が整っているか。
2. 報酬と費用負担が適正か
捕獲報酬だけでなく、パトロール、待機、燃料費、装備費、保険なども考慮されているか。
3. 責任と補償が明確か
通常の有害捕獲と緊急銃猟を区別し、契約、保険、事故時の対応が事前に決まっているか。
4. 捕獲以外の対策も実施されているか
放任果樹の管理、侵入防止柵、緩衝帯整備、住民への情報提供などを組み合わせているか。
熊猟友会の活動を持続させるには、ハンター個人の善意や責任感だけに頼る仕組みから脱却する必要がある。
行政が費用と責任を明確にし、専門人材を育成し、地域全体でクマとのすみ分けを進めることが重要になる。
【よくある質問】熊猟友会に関するFAQ
Q1:熊猟友会に所属すれば誰でもクマを駆除できる?
A1:誰でも自由にクマを捕獲できるわけではない。狩猟免許、銃砲所持許可、捕獲許可や委託条件、必要な経験・技能などが関係する。緊急銃猟でも、法令上の要件を満たす捕獲者であることが必要だ。
Q2:熊駆除の報酬は1頭いくら?
A2:全国統一の金額はない。2025年の自治体事例では、1頭2万円、5万円、8万1,300円などの報酬・制度が確認されている。時給や日当を別途支給する自治体もある。
Q3:熊駆除で事故が起きたらハンターが責任を負う?
A3:緊急銃猟では市町村が実施主体となり、物損の補償や人身事故の賠償などについて責任を負う制度になっている。ただし、通常の有害鳥獣捕獲や一般の狩猟とは責任関係が異なるため、個別の契約や保険も確認する必要がある。
Q4:猟友会は自治体からの駆除依頼を断れる?
A4:緊急銃猟については、環境省のQ&Aでハンターに応諾義務はなく、協力を断ることができると説明されている。
Q5:2026年のクマ被害はどのくらい?
A5:環境省の2026年10月14日更新資料では、9月までに人身被害64件、被害者68人、死亡者6人となっている。出没情報は8月までに1万9,789件だが、速報値であり、集計方法にも地域差がある。
2026年の熊猟友会は、単なる地域の狩猟者団体という枠を超え、自治体の鳥獣管理や住民の安全確保を支える重要な存在になっている。
2025年9月に施行された緊急銃猟制度によって、市町村が主体となって生活圏に出没したクマに対応する法的な仕組みも整った。2026年11月6日現在、環境省が把握する緊急銃猟の発砲事例は42件に達している。
しかし、報酬の地域格差、ハンターの高齢化、銃猟人材の減少、保険や事故補償の問題は残されている。
国が進める2030年度までの自治体職員2,500人体制や、箱わな・安全装備の整備目標は、こうした課題に対応するための政策でもある。
今後求められるのは、猟友会にすべてを任せるのではなく、行政が責任と費用を明確にし、専門人材が適切な待遇と補償のもとで活動できる仕組みを整えることだ。
【最終的なポイント】熊猟友会の活動を支えるのは、ハンター個人の技術や経験だけではない。適正な報酬、明確な責任分担、事故への補償、自治体との連携、そして次世代の担い手育成がそろって初めて、地域の安全を長期的に守る体制が成立する。
クマとの共存を考えるうえでも、捕獲だけに注目するのではなく、出没を防ぐ環境整備と、現場で働く人材を支える制度の両方を見ていく必要がある。
主な参照資料
- 環境省「クマに関する各種情報・取組」(2026年11月6日更新)
- 環境省「緊急銃猟ガイドライン」(2026年4月改訂)
- 環境省「クマ被害対策ロードマップ」(2026年3月27日)
- 大日本猟友会「令和6年度事業報告書」
- FNNプライムオンライン(2025年11月15日)
- 共同通信(2025年10月30日)
- 鹿追町議会会議録(2025年9月16日)
※統計の集計期間と公表日、自治体ごとの報酬条件は区別して記載しています。