名古屋の暴力団対策を理解するには、国の暴力団対策法だけでなく、愛知県と名古屋市がそれぞれ設けている暴力団排除条例を確認する必要がある。
両条例は対象や規制内容が異なり、事業者、行政、市民が暴力団の活動を支えない仕組みを構築している。
1.暴力団対策法による指定暴力団への規制正式名称は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」。1992年に施行された法律だ。
この法律では、一定の要件を満たす暴力団を都道府県公安委員会が指定暴力団として指定する。
主な規制対象には、次のような行為がある。
- みかじめ料や用心棒代の要求
- 不当な金銭要求や債権取り立て
- 企業への不当な利益供与の要求
- 暴力団への加入強要や脱退妨害
- 暴力団の威力を利用した不当要求
違反が確認された場合、警察は中止命令や再発防止命令などの行政措置を講じることができる。
愛知県警によると、2025年中には暴力団員に対して中止命令を6件発出している。
2.愛知県暴力団排除条例の内容愛知県暴力団排除条例は、2011年4月1日に施行された。
2024年6月1日には一部改正が施行され、事業者による契約時の確認や、祭礼・花火大会などの行事から暴力団を排除するための規定が設けられた。
特に重要なのが次の内容だ。
| 規制・対策 | 内容 |
|---|---|
| 利益供与の禁止 | 暴力団の威力を利用する目的で金品を渡すことなどを禁止 |
| 契約時の措置 | 暴力団の活動を助長しないことの確認や契約解除条項の設定を促す |
| 不動産取引 | 暴力団事務所として使用されると知りながら不動産を譲渡・貸与することを禁止 |
| 祭礼・イベント | 暴力団の関与を排除するための措置を主催者に求める |
| 青少年保護 | 暴力団事務所への青少年の立ち入りなどを規制 |
この条例は、暴力団員本人だけでなく、資金や場所を提供する周辺の事業者にも目を向けている。
暴力団が活動を続けるには、事務所、不動産、資金、取引先などの基盤が必要になる。そうした基盤を地域社会から切り離すことが条例の狙いだ。
3.名古屋市暴力団排除条例で禁止されること名古屋市暴力団排除条例は、2012年4月1日に施行された。
市の公式説明によると、主な取り組みは以下のとおり。
行政による排除
- 公共工事などの入札に暴力団を参加させないための措置
- 暴力団の利益になると認められる公の施設の利用制限
市民・事業者による排除
- 債権回収やトラブル解決に暴力団員の威力を利用しない
- 暴力団の威力を利用する目的で金品を渡さない
- 祭礼や興行などの運営に暴力団を関与させない
重要なのは、暴力団員に金銭を渡す行為だけでなく、暴力団の威力を利用しようとする側にも規制が及ぶ点だ。
例えば、一般企業が取引先との紛争を解決するために暴力団員を利用することも、条例が問題視する行為に当たる。
4.名古屋の暴力団事務所は規制されている?暴力団事務所については、愛知県暴力団排除条例第18条に具体的な規定がある。
対象となる学校、児童福祉施設、図書館、公園などの敷地から周囲200メートル以内では、暴力団事務所の開設・運営が禁止されている。
加えて、条例が定める用途地域における開設・運営にも規制がある。
ただし、条例の施行・適用時点ですでに運営されていた事務所には一定の経過措置があり、すべての既存施設に一律で適用されるわけではない。
また、条例には不動産の所有者や仲介業者が、暴力団事務所として利用されることを知りながら不動産取引を行うことへの規制もある。
名古屋市内の特定の事務所が現在も使用されているかどうかは、個別の公的情報によって確認する必要がある。
5.錦三丁目・栄・椿町などの特別区域とは?愛知県暴力団排除条例第21条では、特に排除活動を強化する区域として「暴力団排除特別区域」を指定している。
名古屋市内では、次の地域が対象だ。
- 名古屋市中村区の椿町
- 名古屋市中区の錦三丁目
- 名古屋市中区の栄三丁目1番から15番
- 名古屋市中区の栄四丁目
豊橋市にも対象区域がある。
これらの地域では、接客業や飲食業など一定の事業に関して、暴力団員から用心棒の役務を受けることや、その対価として利益を渡すことなどが禁止されている。
みかじめ料の支払いや用心棒代をめぐる問題に対し、地域を限定して規制を強化する仕組みだ。
【みかじめ料・恐喝への対処】名古屋で不当要求を受けたらどうする?

名古屋の歓楽街や事業者が注意したい問題の一つが、みかじめ料や用心棒代などの不当要求だ。
愛知県警は、暴力団の資金獲得活動として、縄張り内の事業者に対する挨拶料や場所代などの名目による金銭要求を挙げている。
また、近年の資金獲得手段として、詐欺、窃盗、違法薬物の密売、ヤミ金融、建設業や人材派遣業への関与なども紹介している。
みかじめ料とは何かみかじめ料とは、暴力団が挨拶料や場所代などの名目で事業者に要求する金品のことだ。
飲食店や接客業などが対象となるケースがあり、継続的な金銭負担につながることもある。
一方、通常の商取引や正当なサービス料金と、暴力団の威力を背景に要求される金銭は区別しなければならない。
名目だけで判断せず、要求の経緯や相手の言動を含めて確認することが大切だ。
不当要求を受けた場合の対応実際に金銭を要求されたり、威圧的な言動を受けたりした場合は、次の対応を優先したい。
1. 自分だけで解決しようとしない。
2. 相手と無理に交渉したり、直接対決したりしない。
3. 要求された日時、内容、金額、連絡方法などを記録する。
4. メッセージや書面などの証拠を安全に保存する。
5. 警察や暴力追放運動推進センターに相談する。
危険が差し迫っている場合は110番に通報する。
愛知県警は、不当要求に関する相談者への助言や対応方法の指導、必要に応じた保護措置も案内している。相談したことによって被害が拡大しないよう、警察の支援を利用することが重要だ。
【愛知県の相談窓口】暴力団に関する相談先と連絡方法
暴力団に関する問題は、警察や専門機関に相談できる。
2026年10月更新の愛知県公式案内に掲載されている主な相談先は次のとおり。
愛知県警察本部・暴力相談センター
052-951-7700
愛知県の2026年10月更新案内では年中無休・24時間受付
公益財団法人 暴力追放愛知県民会議
052-883-3110
月曜日~金曜日 9:00~17:00(祝日を除く)
最寄りの警察署
刑事課でも暴力団に関する相談を受け付けている。
緊急時の通報
暴力追放愛知県民会議は、秘密厳守・相談無料を掲げている。
事業者だけでなく、一般市民も相談できるため、みかじめ料や不当要求、暴力団との関係を疑う取引などで不安を感じた場合には、早めに専門窓口を利用したい。
【プロの結論】2026年の名古屋のヤクザ情勢をどう見るべきか
2025年末の愛知県警資料と2026年に公表された警察庁の組織犯罪分析を総合すると、名古屋を含む愛知県の暴力団情勢には、3つの特徴がある。
第一に、暴力団の構成員・準構成員等は減少している。
愛知県内の勢力は2020年末の約1,200人から2025年末には約770人となった。全国的にも同様の減少傾向が続き、警察庁によると全国の暴力団構成員等は2025年末に約1万7,600人と過去最少を記録した。
第二に、六代目山口組と弘道会の関係が愛知県の勢力構造を理解する重要な要素になっている。
愛知県警の2025年末資料では、県内勢力の99%が六代目山口組であり、その内訳で四代目弘道会が52%を占める。名古屋の暴力団情勢を考える際、全国組織と地域組織の関係を切り離して理解することはできない。
第三に、組織犯罪は暴力団だけでは説明できなくなっている。
匿名・流動型犯罪グループとの連携や資金供与、詐欺、組織的窃盗など、犯罪の形態は多様化している。警察庁と愛知県警が両者への対策を重点課題に掲げている背景には、こうした構造変化がある。
情報を見極めるための3つの判断基準名古屋のヤクザに関する情報を調べる際には、次の3点を意識したい。
- 人数の基準日を見る: 2025年末の統計なのか、2024年以前の情報なのかを確認する。
- 地域の範囲を見る: 愛知県全体の人数と名古屋市内の人数を混同しない。
- 組織と犯罪グループを区別する: 六代目山口組や弘道会と、匿名・流動型犯罪グループは同一の組織ではない。
こうした判断基準を持てば、古い組織情報や根拠のない事務所情報、SNS上の噂に振り回されにくくなる。
【名古屋のヤクザ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、名古屋にはヤクザが何人いる?
A1:愛知県警が公表した2025年末の数字では、愛知県全体の暴力団構成員と準構成員等は約770人。名古屋市だけの人数は、この数字からは分からない。
Q2:名古屋のヤクザと六代目山口組はどのような関係?
A2:愛知県警の2025年末資料では、県内の暴力団勢力の99%を六代目山口組が占める。その系列に属する弘道会が、愛知県内で強い影響力を持っている。
Q3:現在の弘道会は三代目と四代目のどちら?
A3:愛知県警の2025年末の県内勢力資料では四代目弘道会と表記されている。三代目という表記は、同資料に掲載された2024年末の全国比較にも登場するため、統計の基準時点を区別する必要がある。
Q4:名古屋でみかじめ料を要求されたら、どこに相談すればいい?
A4:愛知県警察本部の暴力相談センター(052-951-7700)や暴力追放愛知県民会議(052-883-3110)に相談できる。危険が差し迫っている場合は110番を利用する。
Q5:名古屋の暴力団事務所は法律で禁止されている?
A5:愛知県暴力団排除条例第18条により、学校などの対象施設の周囲200メートル以内などで事務所の開設・運営が禁止されている。ただし、既存事務所には一定の経過措置がある。
2026年現在の名古屋のヤクザをめぐる情勢は、愛知県警の2025年末の統計から具体的に読み取れる。
県内の暴力団構成員・準構成員等は約770人、2025年中の検挙人員は周辺者を含めて295人。六代目山口組が県内勢力の99%を占め、その内訳では四代目弘道会の存在感が大きい。
一方、匿名・流動型犯罪グループとの接点や、詐欺・窃盗・恐喝などの資金獲得犯罪への対応も重要になっている。
暴力団排除条例や暴力団対策法による規制、警察による取締り、地域や事業者による排除活動は、今後も重要な役割を担う。
名古屋の暴力団情勢を正確に理解するには、組織の知名度やネット上の噂ではなく、警察が公表する勢力統計、検挙状況、法律・条例の適用状況を基準にすることが最も確実だ。