検索時に混乱しやすい理由は、原作シリーズと映画関連書籍のタイトルがよく似ているためだ。どちらも「スケアリーストーリーズ 怖い本」という言葉を含むが、編集内容も目的も異なる。
① 岩崎書店版:アルビン・シュワルツ編の怪談短編集
アメリカの民話や都市伝説、幽霊譚などを集めた短編集。日本語版は岩崎書店から刊行され、全3巻で構成されている。翻訳は関麻衣子、イラストはカワズミが担当する。
一話ごとに独立した物語が収録されているため、長編小説のように登場人物や物語の展開を追い続ける必要はない。短時間で読める怪談を楽しみたい人に適している。
② DU BOOKS版:映画の制作背景を楽しむビジュアルノベライズ
こちらは映画のシナリオやコンセプトアート、怪物の造形資料、登場人物の背景などを収録した192ページのカラー書籍だ。原案はギレルモ・デル・トロ、著者はリチャード・アシュリー・ハミルトン、翻訳は阿部清美。DU BOOKSから2020年2月21日に発売された。
原作の怪談を29編、28編、25編と読むための本ではなく、映画がどのように視覚化されたかを知るための資料性の高い一冊である。映画の制作過程やクリーチャーデザインに興味がある人はこちらが候補になる。
つまり、怪談そのものを読みたいなら岩崎書店版、映画の裏側やモンスターのデザインを知りたいならDU BOOKS版を選ぶのが基本だ。
【全3巻を解説】あらすじ・収録作品・それぞれの怖さ

岩崎書店版は、アルビン・シュワルツが1981年から1991年にかけて発表したアメリカの怪談シリーズを日本語にしたもの。原書は「Scary Stories to Tell in the Dark」「More Scary Stories to Tell in the Dark」「Scary Stories 3: More Tales to Chill Your Bones」の3冊だ。
原書の初期版ではスティーブン・ガンメルが挿絵を担当した。日本語版ではカワズミのイラストが採用されており、原書のビジュアルと日本語版のビジュアルを同一視しないこともポイントになる。
第1巻「いばりんぼうをつかまえた」
いばりんぼうをつかまえた
2020年1月刊行・ISBN 978-4-265-86031-9
全29編・109ページ(国立国会図書館の書誌情報)
シリーズの入口となる一冊。表題作では、森のほうから悲しげな歌声が聞こえ、犬が歌い始めるという不思議な展開が描かれる。
収録されているのは、聞き手を驚かせる話、幽霊の話、身近な場所で起きそうな現実味のある事件など。超自然的な怪異だけに偏らず、日常と恐怖の距離が近い作品がそろっている。
特徴は、長い説明を重ねず、短い物語の中で不安を膨らませる構成だ。怪談の語り聞かせにも向いており、初めてシリーズを読む人に適している。
第2巻「恐怖のひき肉ソーセージ」
恐怖のひき肉ソーセージ
2020年5月刊行・ISBN 978-4-265-86032-6
全28編・113ページ
第2巻の表題作は、シリーズの中でも強烈な印象を残す怪談だ。
国立国会図書館の書誌情報に掲載されたあらすじによると、肉屋のブラントは妻と金銭問題で口論になり、怒りから妻を殺害する。その後、遺体をソーセージ用のひき肉にしてしまうという、ブラックユーモアと猟奇性を含む物語である。
この設定からも分かるように、第2巻は幽霊や怪物だけではなく、人間の欲望や身勝手さが生み出す恐怖も扱っている。
全28編を収録し、表題作以外にも不思議な出来事や怪談が並ぶ。刺激の強い題材が苦手な読者は、購入前に内容を確認しておきたい。
第3巻「呪いのかかしハロルド」
呪いのかかしハロルド
2020年10月刊行・ISBN 978-4-265-86033-3
全25編・125ページ(図書館書誌情報)
第3巻の中心となるのは、人間と同じ大きさの人形ハロルドをめぐる怪談だ。
トーマスとアルフレッドという2人の男が作ったハロルドは、かかしのような姿をしている。2人は嫌なことがあるたびに人形へ八つ当たりするようになるが、やがてハロルドをめぐって不穏な出来事が起こり始める。
この話の恐ろしさは、最初から怪物が襲ってくることではない。人間が作ったものに対して繰り返し行った行為が、思いもよらない形で返ってくるという不気味さにある。
第3巻には「青白い女」「赤いできもの」「黒い犬」「足音」などの作品も収録されている。映画で見覚えのある怪異を原作側から確かめたい人にとって、特に注目したい一冊だ。
3冊の収録数を合計すると、29編+28編+25編=全82編。一冊ずつ独立した怪談集として楽しめるボリュームになっている。
【書誌情報を比較】岩崎書店の全3巻とDU BOOKS版の違い
購入時に間違えないためには、タイトルだけではなく、ISBN・出版社・刊行時期を確認するのが確実だ。
岩崎書店の全3巻セットには、ISBN978-4-265-11026-1が付与されている。学参ドットコムの書誌情報では、2021年3月15日発行、セット価格3,080円と記載されている。これはセット版の書誌上の価格情報であり、2026年の実売価格や在庫状況とは区別したい。
各巻のISBNは次のとおりだ。
- 第1巻:978-4-265-86031-9
- 第2巻:978-4-265-86032-6
- 第3巻:978-4-265-86033-3
DU BOOKS版は別書籍で、192ページのフルカラー。映画の制作資料を重視した構成である。映画.comの発売告知では、当初2,000部限定の商品として紹介されていた。
【映画と原作の違い】ギレルモ・デル・トロとアンドレ・ウーヴレダルが再構成した恐怖
映画『スケアリーストーリーズ 怖い本』は、アメリカで2019年に公開されたホラー作品。日本では2020年2月28日に劇場公開された。
企画・製作・ストーリー原案を担当したのは、『シェイプ・オブ・ウォーター』で知られるギレルモ・デル・トロ。監督は『ジェーン・ドウの解剖』や『トロール・ハンター』で知られるアンドレ・ウーヴレダルだ。
映画版のあらすじ物語の舞台は1968年のアメリカ。ハロウィンの夜、高校生のステラたちは町外れにある古い屋敷に忍び込む。
そこで見つけたのが、恐ろしい物語が書かれた一冊の本だった。ステラがその本を持ち帰ると、周囲の人間が次々と不可解な出来事に巻き込まれていく。
加えて、本の空白ページには新しい物語が書き加えられていく。そこに描かれるのは、まさにステラたち自身の身に起きる恐怖だった。
原作が一話完結の怪談集なのに対し、映画はステラと仲間たちの行動を中心に据え、複数の怪談をひとつのストーリーに結び付けている。
映画に登場する怪異は原作と同じなのか映画には、原作の有名な怪談や挿絵をモチーフにした怪物が登場する。代表的なものを挙げると次のとおりだ。
- ハロルド: 原作第3巻の「呪いのかかしハロルド」に登場する存在。
- 青白い女(ペイル・レディ): 原作の「青白い女」を連想させる映画の怪異。
- 赤いできもの: 原作の「赤いできもの」を映画の展開に取り入れている。
- 大きな足指の怪談: 原作第1巻の「The Big Toe」に由来するエピソード。
- ジャングリー・マン: 原作の複数のイラストや怪異のイメージを組み合わせた映画独自の造形。
特に重要なのは、映画に出てくる怪物が、必ずしも原作の物語をそのまま再現しているわけではない点だ。
「呪いのかかしハロルド」は映画でどう変わった?原作と映画の違いが分かりやすいのがハロルドだ。
原作のハロルドは、トーマスとアルフレッドが作った等身大の人形。2人が繰り返し人形を痛めつけるという設定が、物語の不穏さにつながっている。
一方、映画版ではハロルドに襲われた人物が、わらを詰められたかかしのような姿へ変わっていく。映画の演出では、原作とは異なるビジュアルと恐怖表現が採用された。
アンドレ・ウーヴレダル監督は2019年のインタビューで、原作のハロルドにあった皮膚を剥ぐ描写について、撮影したものの最終編集では外したと説明している。過度に残酷な表現を避けることや、作品全体のテンポを優先したことが理由だった。
つまり、映画は原作の恐怖を弱めただけではない。原作が持つ怒りや不気味さを残しながら、映像作品として成立するように再構成している。
DU BOOKSのビジュアルノベライズは映画の補完資料映画を見た後に、怪物がどのように作られたのかを知りたい人には、DU BOOKS版が役立つ。
この本には映画のシナリオを読み解く資料だけでなく、コンセプトアートや写真、登場人物の背景、特殊造形担当マイク・ヒルによるクリーチャー制作資料も掲載されている。
原作の挿絵に登場する怪物が、実写映画のクリーチャーとしてどのように具体化されたのか。その変化を楽しめる点が、一般的な映画のノベライズとは異なる魅力だ。
【評判を検証】スケアリーストーリーズ怖い本はなぜ議論を呼んだのか
このシリーズの評価を考えるうえで欠かせないのが、アメリカで起きた学校図書館への設置をめぐる論争だ。
アメリカ図書館協会(ALA)の知的自由局がまとめた1990~1999年の「最も頻繁に異議申し立てを受けた本100冊」では、アルビン・シュワルツの『Scary Stories』シリーズが第1位に掲載されている。
異議申し立ての理由には、オカルトや悪魔的要素、暴力、宗教的観点などが含まれていた。怖い挿絵や猟奇的な題材が、児童書として適切なのかという議論を呼んだのである。
評判が分かれる3つの理由1.短編ならではのテンポのよさ
長編ホラーのように伏線を何十ページも追い続ける必要がない。数ページで物語が展開し、最後に意外な出来事が起こる構成は、怪談を気軽に楽しみたい読者に向いている。
2.児童書としては刺激の強い題材
「恐怖のひき肉ソーセージ」のように、殺人や死体を扱う物語も含まれている。児童向けという分類だけで、すべての内容が穏やかだと考えるのは適切ではない。
3.挿絵が恐怖体験の大きな部分を占める
原書のスティーブン・ガンメルによる挿絵は、物語の不気味さを強める重要な要素として知られる。日本語版ではカワズミのイラストが採用されているため、原書のイラストを期待して購入すると印象が異なる可能性がある。
子どもにも読ませて大丈夫?岩崎書店版は児童向けホラーとして紹介されており、販売書誌では小学校中学年からを目安とする情報もある。
ただし、対象年齢の目安と、すべての子どもが安心して読めるかどうかは別問題だ。怖い話が好きな子には楽しめる一方、猟奇的な描写や怪物のイラストが苦手な子には刺激が強い場合もある。
保護者が購入する場合は、最初に表題作の内容や収録作品を確認し、子どもの反応を見ながら読む巻を選ぶとよい。
【プロの結論】失敗しない選び方と本当に楽しめる読者
「スケアリーストーリーズ怖い本」を選ぶ際には、何を目的に読むのかを先に決めると間違いがない。
初めて読むなら第1巻
怪談短編集の雰囲気を知りたい人。短い話を少しずつ読み進めたい人に向いている。
人間の怖さを味わうなら第2巻
猟奇的な設定やブラックユーモアを含む怪談に興味がある人向け。刺激の強い題材が苦手なら注意。
映画ファンなら第3巻
映画にも登場するハロルドの原作を読みたい人や、怪物の背景を知りたい人におすすめ。
映画の制作背景を知るならDU BOOKS版
コンセプトアート、特殊造形、映画のシナリオなどを楽しみたい人に向いている。
なお、岩崎書店版は短編集なので、必ず第1巻から順番に読む必要はない。販売情報でも、どの巻からでも読める独立した構成として案内されている。映画を先に見た人が第3巻から読み始めても楽しめる。
反対に、次のような人には注意が必要だ。
- 残酷な題材や猟奇的な怪談が苦手な人
- 怪談よりも、登場人物の成長を描く長編小説を求めている人
- 原書のスティーブン・ガンメルの挿絵をそのまま楽しみたい人(日本語版のイラストとは異なる)
このシリーズの本質は、怪物の正体を詳しく説明することではなく、身近な場所に潜む不安を短い物語に凝縮することにある。だからこそ、映画のように物語全体を通じて恐怖を描く作品とは、読書体験そのものが異なる。
【よくある質問】スケアリーストーリーズ怖い本に関するFAQ
Q1:スケアリーストーリーズ怖い本は全部で何巻ありますか?
A1:アルビン・シュワルツ編の岩崎書店版は全3巻。第1巻「いばりんぼうをつかまえた」、第2巻「恐怖のひき肉ソーセージ」、第3巻「呪いのかかしハロルド」で、合計82編の怪談を収録している。
Q2:スケアリーストーリーズ怖い本の映画と原作は同じ内容ですか?
A2:同じではない。映画は原作の複数の怪談や怪物を取り入れ、ステラたちを主人公とする独自のストーリーに再構成している。原作は一話完結型の短編集で、映画は複数の怪談をつなぐ長編ホラーだ。
Q3:DU BOOKS版と岩崎書店版はどちらを買えばいいですか?
A3:怪談を読みたいなら岩崎書店版、映画のシナリオやコンセプトアート、怪物の制作資料を見たいならDU BOOKS版。目的が違うため、同じ本の別バージョンとして選ばないようにしたい。
「スケアリーストーリーズ怖い本」というタイトルで探されている書籍には、アルビン・シュワルツ編の岩崎書店版全3巻と、映画の世界を紹介するDU BOOKS版がある。
岩崎書店版は全82編の怪談を収録した短編集で、「いばりんぼうをつかまえた」「恐怖のひき肉ソーセージ」「呪いのかかしハロルド」という3冊が中心となる。原作ならではの短編形式や、人間の心理に潜む恐怖を楽しめるのが特徴だ。
一方、映画はギレルモ・デル・トロの企画・製作とアンドレ・ウーヴレダルの演出によって、原作の怪談をひとつの物語にまとめた作品。DU BOOKS版では、その映像化の裏側まで知ることができる。
2026年に本を探すなら、まずISBNと出版社を確認すること。怪談を読みたいのか、映画の制作資料を見たいのか。この違いを押さえておけば、探していた「怖い本」を間違えずに選べる。