都道府県の経済力を比較するとき、県内総生産と並んで注目したいのが1人当たり県民所得だ。
GDPが大きい地域は経済活動の規模が大きいことを示すが、そこに暮らす人々の所得水準まで同じ順位になるとは限らない。
2023年度の1人当たり県民所得ランキング上位内閣府の2023年度県民経済計算を基にした全国順位は次のとおり。
- 1位・東京都:636万8,000円
- 2位・愛知県:415万円
- 3位・静岡県:382万2,000円
- 4位・福井県:364万2,000円
- 5位・栃木県:355万5,000円
- 6位・茨城県:352万6,000円
- 7位・群馬県:352万3,000円
- 8位・富山県:350万4,000円
- 9位・滋賀県:346万1,000円
- 10位・和歌山県:345万6,000円
大阪府は345万円で11位、神奈川県は334万9,000円で15位、埼玉県は328万6,000円で18位となった。
一方、最下位は沖縄県の231万5,000円。東京都と沖縄県では約405万円の差がある。
県内総生産と県民所得は何が違う?両者の違いは、何を測定しているかにある。
- 県内総生産:その都道府県内で生み出された付加価値の合計。
- 県民所得:その都道府県に居住する人や企業などに帰属する雇用者報酬、財産所得、企業所得などの合計。
- 1人当たり県民所得:県民所得を県の総人口で割ったもの。
- 1人当たり県民雇用者報酬:県民雇用者報酬を県民雇用者数で割ったもの。
例えば、東京都に本社を置く企業が大きな利益を生み出している場合、その企業活動による付加価値は東京都のGDPに反映される。一方、従業員が埼玉県や千葉県に住んでいれば、居住地に基づく所得統計とは数字の現れ方が異なる。
加えて、1人当たり県民所得には企業所得も含まれるため、一般的な会社員の平均年収や手取り額とは一致しない。
実際に雇用者報酬のランキングを見ると、東京都630万1,000円に続いて千葉県528万1,000円、愛知県526万6,000円、神奈川県526万円、大阪府513万9,000円となる。生活者の賃金水準を調べるなら、県民所得だけでなく雇用者報酬も確認したい。
【経済成長率と地域格差】2023年度の47都道府県に起きた変化

GDPランキングは経済規模の順位を示すが、地域経済の勢いを知るには成長率と過去の推移も欠かせない。2023年度は、コロナ禍からの経済活動の正常化、物価上昇、製造業の生産動向などが各地域の数字に影響した。
名目経済成長率が高かった都道府県2023年度の名目経済成長率では、福井県が11.5%増で全国1位となった。続いて岡山県9.8%増、長崎県8.7%増、山形県7.6%増という結果だった。
愛知県も7.0%増で上位に入った。反対に山梨県は1.9%減、和歌山県は0.4%減となっている。
実質経済成長率の上位・下位物価の影響を取り除いた実質経済成長率では、福井県の11.7%増がトップだった。
上位と下位を比較すると、次のような特徴が見られる。
実質成長率の上位
- 1位:福井県 11.7%増
- 2位:長崎県 7.0%増
- 3位:徳島県 6.0%増
- 4位:山形県 5.4%増
- 4位:福島県 5.4%増
実質成長率の下位
- 43位:岐阜県 1.6%減
- 44位:長野県 2.0%減
- 44位:広島県 2.0%減
- 46位:和歌山県 3.9%減
- 47位:山梨県 4.5%減
茨城県も1.4%減で42位だった。県の公表資料によると、製造業のうち一次金属の減少が実質成長率を押し下げた。
この結果から分かるのは、GDP規模の大きさと経済成長の勢いは必ずしも一致しないということだ。大都市圏が経済規模で優位に立つ一方、成長率では地方県が上位を占める年度もある。
都道府県別GDPの歴代推移と大阪・愛知の順位逆転2023年度のランキングで特に注目されるのが、大阪府と愛知県の順位変動である。
2022年度は大阪府の名目県内総生産が約43兆1,477億円、愛知県が約43兆653億円で、大阪府が上回っていた。
ところが2023年度には、愛知県が46兆911億円、大阪府が44兆9,924億円となり、愛知県が逆転した。
愛知県は7.0%増、大阪府は4.3%増。製造業の伸びが大きかった愛知県と、商業やサービス業を含む多様な産業を持つ大阪府の成長率の違いが順位に表れた。
東京都は2022年度の約120兆3,000億円から2023年度には125兆円へと拡大し、首位を維持している。東京の全国シェアは21.0%で、他の都道府県との差は依然として大きい。
都道府県別GDPの地域格差を生む構造的な要因地域間の経済格差は、単純に人口の差だけで説明できない。主に次のような構造が関係している。
1.企業や本社機能の集中
東京都には金融機関、大企業の本社、情報通信企業、専門サービス事業者が集中している。企業活動を支えるサービス産業の集積が、都内総生産を押し上げている。
2.製造業の集積と輸出競争力
愛知県、静岡県、三重県、滋賀県などでは製造業が重要な役割を果たす。自動車、機械、電子部品などの生産活動は、国内外の需要や設備投資の動向に影響されやすい。
3.地域の人口と労働市場
人口が多い地域は、労働力や消費市場が大きく、企業活動も集まりやすい。一方、人口減少が進む地域では、働き手の確保や消費市場の維持が課題になる。
4.交通・物流・都市機能の違い
港湾、空港、高速道路、鉄道などの交通インフラは、企業の立地や物流コストを左右する。地域の産業集積と交通網が結び付くことで、経済活動の規模に差が生じる。
ただし、GDPが小さい地域でも、特定の産業で高い競争力を持つケースはある。経済規模だけを根拠に、地域の産業力や将来性まで評価するのは適切ではない。
【プロの結論】都道府県GDPランキングを正しく読む3つの判断基準
2023年度の県民経済計算から読み取れる地域経済の実態は、単なる順位表以上の情報を含んでいる。統計を比較するときは、次の3つの基準を押さえておきたい。
判断基準1:経済規模を知りたいなら名目県内総生産を見る。
企業活動や産業集積を含め、都道府県全体の経済規模を比較する場合は名目県内総生産が基本になる。企業の立地や市場の大きさを検討する場合にも有効だ。
判断基準2:経済活動の伸びを知りたいなら実質成長率を見る。
物価上昇によって金額が膨らんだだけなのか、実際の生産活動が拡大したのかを区別できる。投資判断や地域産業の動向を調べるときには欠かせない。
判断基準3:住民の所得水準を知りたいなら1人当たり指標を見る。
1人当たり県民所得や県民雇用者報酬を確認すれば、経済規模だけでは分からない地域ごとの所得構造を把握できる。ただし、実際の暮らしやすさを判断するには物価、住宅費、社会保障、雇用環境なども必要だ。
また、2023年度の県民経済計算は、2026年に公表された最新の全国比較データであり、2026年の現在進行形の経済状況を直接示すものではない。年度の違いを混同せず、最新の四半期GDPや地域の景気指標と組み合わせることが大切だ。
【都道府県GDPランキング】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年最新の都道府県別GDPランキングは何年度のデータですか?
A1:2026年11月6日時点では、2023年度(令和5年度)の県民経済計算が最新の全国47都道府県比較データです。内閣府は2026年11月5日に47都道府県と6政令指定都市分の統計表を掲載しました。
Q2:GDPが最も高い都道府県はどこですか?
A2:東京都です。2023年度の名目県内総生産は125兆185億円で、全国1位。2位は愛知県の46兆911億円、3位は大阪府の44兆9,924億円です。
Q3:GDPランキングと1人当たり県民所得ランキングは同じですか?
A3:異なります。GDPは地域内で生み出された付加価値の総額ですが、1人当たり県民所得は県民所得を人口で割ったものです。2023年度は大阪府がGDPで3位なのに対し、1人当たり県民所得では11位でした。
2023年度の都道府県別GDPランキングでは、東京都が125兆185億円で首位を維持し、愛知県が大阪府を抜いて2位となった。神奈川県、埼玉県、兵庫県などを含め、上位地域には大規模な産業・企業集積が見られる。
一方、実質経済成長率では福井県や長崎県などの地方県が上位に入り、経済規模と成長の勢いが異なることも明らかになった。1人当たり県民所得では東京都、愛知県、静岡県などが上位に並び、GDPランキングとは異なる地域の特徴が浮かび上がる。
今後、都道府県の経済力を比較する際には、名目GDPだけで判断せず、実質GDP、経済成長率、1人当たり県民所得、雇用者報酬、産業構造を組み合わせて見ることが重要だ。
GDPランキングは、地域の優劣を決めるための数字ではない。日本の経済活動がどこに集まり、どの産業が成長し、地域ごとにどのような課題があるのかを読み解くための基礎資料なのである。