2026年11月現在、日本の宇宙飛行士を取り巻く環境に大きな動きがある。JAXA(宇宙航空研究開発機構)に在籍する現役宇宙飛行士は6名。なかでも注目されるのが、2027年3月以降に国際宇宙ステーション(ISS)へ向かう予定の諏訪理宇宙飛行士だ。2026年9月には、搭乗するクルードラゴン宇宙船運用14号機(Crew-14)も正式に決定した。
一方、宇宙飛行士の仕事は、ロケットに乗って宇宙へ行くことだけではない。ISSでの科学実験や設備の保守、地上管制との連携、国際チームでの訓練など、地上と宇宙の両方に重要な役割がある。JAXAの公式情報をもとに、日本人宇宙飛行士の歴代の歩み、2026年の現役メンバー、採用条件、選抜試験、訓練内容、1日のスケジュールまで詳しく解説する。
【2026年最新】現役宇宙飛行士は誰?諏訪理と米田あゆにも注目

2026年11月現在、JAXAの公式プロフィールに掲載されている現役宇宙飛行士は6名だ。日本の有人宇宙活動は、ISSで長期滞在を経験してきたベテラン世代と、新たに認定された次世代の飛行士が協力する体制へと移っている。
JAXAに在籍する現役宇宙飛行士6名JAXAの有人宇宙技術部門が公開しているプロフィールをもとに、2026年の現役メンバーを整理すると次のとおりだ。
- 星出彰彦:ISS長期滞在や船外活動を経験し、日本人2人目のISS船長を務めた宇宙飛行士。
- 油井亀美也:自衛隊での経験を持ち、ISS長期滞在や宇宙機の運用に携わってきた宇宙飛行士。
- 大西卓哉:ISS長期滞在を複数回経験し、科学実験やステーション運用に従事してきた宇宙飛行士。
- 金井宣茂:医師としての経験を持ち、宇宙医学やISSでの長期滞在に携わってきた宇宙飛行士。
- 諏訪理:地球科学や国際機関での経験を持ち、2027年のISS長期滞在に向けて訓練中。
- 米田あゆ:医師としての経歴を持ち、2024年に宇宙飛行士として正式認定された新世代のメンバー。
ここで注意したいのは、「現役宇宙飛行士」と「現在ISSに滞在している宇宙飛行士」は同じ意味ではないことだ。6名という数字はJAXAに在籍する現役メンバーの数であり、全員が同時に宇宙にいるわけではない。
諏訪理宇宙飛行士の2027年ISS長期滞在が決定2026年の日本人宇宙飛行士の動向で、特に重要なのが諏訪理のミッションだ。
JAXAは2026年1月9日、諏訪理宇宙飛行士をISS長期滞在搭乗員に指名したと発表した。さらに同年9月25日には、搭乗する宇宙船がスペースXのクルードラゴン宇宙船運用14号機(Crew-14)に決定した。
打ち上げは2027年3月以降の予定で、具体的な打ち上げ日は2026年11月時点で確定していない。諏訪にとっては初めての宇宙飛行となる。
ISSでは「きぼう」日本実験棟を含む施設の維持・保全、科学実験、各種運用業務などを担当する予定だ。単に宇宙空間に滞在するのではなく、日本がこれまで積み重ねてきた有人宇宙技術を次の世代へつなぐ役割も担う。
諏訪は1977年生まれ。プリンストン大学大学院で地球科学の博士号を取得した後、青年海外協力隊、世界気象機関(WMO)、世界銀行などで経験を積んだ。2023年7月にJAXAへ入構し、約2年間の基礎訓練を経て2024年10月21日に宇宙飛行士として認定されている。
宇宙飛行士になるまでの経歴が、必ずしも航空・宇宙分野だけで構成されるわけではないことを示す人物でもある。
米田あゆ宇宙飛行士はどんな人物?米田あゆも、2026年の日本の有人宇宙活動を担う重要なメンバーだ。
2023年2月、諏訪理とともにJAXAの宇宙飛行士候補者に選ばれた。2人は基礎訓練を修了し、2024年10月21日付で正式に宇宙飛行士として認定されている。
米田は医師としての専門性を持つ。宇宙では人間の身体に微小重力などの影響が生じるため、医学的な知識は宇宙飛行士の活動や健康管理を考えるうえでも重要な背景となる。
2026年には諏訪とともに火星衛星探査計画(MMX)の広報アンバサダーにも就任。有人宇宙活動だけでなく、日本の惑星探査への関心を社会に広げる役割も担っている。
若田光一は現在どうしている?現役との違い日本人宇宙飛行士の代表格として知られる若田光一は、2026年現在の現役JAXA宇宙飛行士には含まれない。
若田は1992年に宇宙飛行士候補者として選抜され、5回の宇宙飛行を経験した。ISSへの累計滞在時間は504日18時間35分に達し、日本人としての宇宙滞在記録を築いた人物だ。2014年には日本人初のISS船長を務めている。
その後、2022年10月から2023年3月までのCrew-5ミッションにも参加。2024年3月にJAXAを退職した。
つまり、若田は宇宙飛行士としての実績を持つ歴代の代表的人物だが、現役6名とは区別する必要がある。
【仕事内容を解説】宇宙飛行士はISSと地上で何をしている?
宇宙飛行士の仕事は、大きく分けると宇宙空間での任務と地上での業務に分かれる。一般には宇宙船に搭乗する姿が注目されるが、実際には宇宙に行く前後の準備や地上での運用支援も重要な仕事だ。
ISSで行う科学実験と研究活動現在の宇宙飛行士の主要な任務は、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在して科学実験や施設運用を行うことだ。
ISSは地上から約400km上空を飛行する有人実験施設で、アメリカ、ロシア、日本など15カ国が協力して運用している。
宇宙環境の特徴は、地上とは異なる微小重力や高真空などの条件を利用できることにある。これを活用し、次のような研究が行われている。
- 物理学・材料科学:微小重力環境を利用した材料の性質や結晶生成の研究。
- 医学・生命科学:宇宙環境が人体や細胞、生物に与える影響の調査。
- 地球観測:地球環境や自然現象を宇宙から観測する活動。
- 宇宙技術の実証:将来の月探査や長期宇宙滞在に必要な技術の検証。
宇宙飛行士は、地上の研究者が考案した実験を軌道上で実施し、装置を操作してデータを取得する。研究者と連携しながら、実験の進行やトラブルにも対応する。
日本実験棟「きぼう」での仕事日本の宇宙飛行士にとって重要な活動場所が、ISSに設置された日本実験棟「きぼう」だ。
「きぼう」は日本初の有人宇宙施設であり、宇宙環境を利用した科学実験や技術実証を行うための施設である。2008年から2009年にかけてISSに運ばれ、組み立てられた。
宇宙飛行士は、きぼうの実験装置を操作するだけでなく、設備の状態を確認し、必要に応じて修理や交換なども行う。
例えば、実験装置に異常が発生した場合には、地上の管制担当者や研究者と連絡を取りながら原因を調べ、手順に従って対応する。こうした作業は、ISS全体の安全な運用にも直結する。
ロボットアーム操作と船外活動宇宙飛行士の仕事には、ロボットアームを操作する作業もある。
ISSに到着した物資の移動や機器の設置、外部設備の作業などで使用される。操作には正確な位置把握と慎重な判断が求められる。
また、必要に応じて船外活動(EVA)を行う。専用の宇宙服を着用してISSの外に出て、設備の点検や交換、修理などを実施する。
船外活動は宇宙飛行士にとって重要な任務の一つだが、常に実施する仕事ではない。事前の訓練、安全確認、地上管制との連携が欠かせない専門作業である。
宇宙飛行士の地上での仕事も多い宇宙飛行士は、宇宙に滞在していない期間にもさまざまな業務を担当する。
JAXAが公開している活動レポートを見ると、地上での仕事には次のようなものがある。
- ISSの運用計画や作業手順の確認。
- 地上管制官として宇宙飛行士やISS運用チームを支援する業務。
- 宇宙船や実験装置の操作手順に関する訓練。
- 月面探査など次世代の有人宇宙開発に向けた機器の評価。
- 科学実験や宇宙食などのミッション準備。
- 講演、教育活動、広報活動を通じた宇宙開発の普及。
諏訪理の場合、NASAの地上管制官に相当するCAPCOMの資格訓練や、ISSの半年単位の運用計画を統括するインクリメントリード業務にも携わってきた。
これは、宇宙飛行士が単なる搭乗員ではなく、宇宙開発の技術者・運用担当者としての役割も担っていることを示している。
【1日のスケジュール】ISSで宇宙飛行士はどう生活している?
宇宙飛行士の1日は、地上での生活と同じように、起床、食事、仕事、運動、睡眠を基本としている。ただし、ISSでは地球の昼夜のリズムに左右されないため、時間を決めて生活することが重要だ。
ISSでの1日のスケジュール例JAXAが公開している宇宙飛行士向けの解説資料などを参考にすると、1日の生活は次のようなイメージになる。
- 起床・朝食:身支度を整え、食事を取る。
- 地上との作業確認:管制チームとその日の任務や注意事項を確認する。
- 午前の業務:科学実験、設備の点検、装置の操作などを行う。
- 昼食:食事と休憩を取る。
- 午後の業務:実験の継続、機器のメンテナンス、運用作業などを進める。
- 体力トレーニング:筋力や心肺機能を維持するために運動する。
- 夕食・自由時間:食事や個人的な時間を過ごす。
- 就寝:翌日の活動に備えて睡眠を取る。
JAXAの資料に示されている1日の活動例では、睡眠約8.5時間、仕事約6.5時間、体力トレーニング約2.5時間などが組み込まれている。実際の時間配分はミッションや当日の作業によって変わる。
なぜ毎日運動する必要があるのか宇宙では身体にかかる重力の影響が小さくなるため、地上と同じように生活していると筋力や骨量の低下などが生じる可能性がある。
そのため、ISSの宇宙飛行士は日常的にトレーニングを行う。トレッドミルや自転車型の運動器具、抵抗運動装置などを使い、筋力と心肺機能の維持を目指す。
運動は健康維持だけでなく、地球へ帰還した後の身体機能の回復にも関係する。宇宙での仕事を続けるために欠かせない業務の一部だ。
宇宙での生活は自由時間もある?ISSでの生活は、常に実験や作業に追われているわけではない。決められた勤務時間のほかに、休息や個人の時間も設けられている。
ただし、ISSは複数の国が共同で運用する施設だ。限られた電力や設備、作業スペースを国際クルーで共有する必要があるため、作業の優先順位や時間の調整が欠かせない。
宇宙飛行士にとって、スケジュールを守ることは個人の生活習慣だけでなく、チーム全体の安全とミッションの成功にも関わっている。
【日本人宇宙飛行士の歴代】選抜からISS時代までの歩み
日本の有人宇宙活動は、1980年代の宇宙飛行士選抜から始まり、スペースシャトル時代、ISS建設・長期滞在時代へと発展してきた。
ここで押さえておきたいのが、日本人初の宇宙飛行と、日本の宇宙機関が選抜した宇宙飛行士による初飛行は異なるという点だ。
日本人で最初に宇宙へ行ったのは秋山豊寛1990年12月2日、当時TBS社員だった秋山豊寛が旧ソ連のソユーズTM11号に搭乗し、宇宙ステーション「ミール」に向かった。
秋山は日本人として初めて宇宙へ行った人物で、宇宙から地球の映像を撮影し、生中継を行った。
一方、JAXAの前身である宇宙開発事業団(NASDA)が選抜した宇宙飛行士として、初めてスペースシャトルに搭乗したのは毛利衛だ。1992年9月12日にエンデバー号で宇宙へ向かい、科学実験を実施した。
この2つの出来事は混同されやすいが、宇宙飛行の歴史を理解するうえで重要な違いである。
日本人宇宙飛行士の歴史と主な転換点JAXAの有人宇宙活動の記録をもとに、主要な出来事を時系列で整理した。
| 時期 | 人物・出来事 | 主な実績・位置づけ |
|---|---|---|
| 1985年 | 毛利衛・向井千秋・土井隆雄 | NASDAの第1期宇宙飛行士として選抜。 |
| 1990年 | 秋山豊寛 | 日本人初の宇宙飛行を実現。JAXA選抜の宇宙飛行士とは別の経歴。 |
| 1992年 | 毛利衛 | 日本人として初めてスペースシャトルに搭乗。 |
| 1994年 | 向井千秋 | アジア初の女性宇宙飛行士として宇宙飛行を実施。 |
| 1996〜2000年代 | 若田光一・野口聡一・古川聡・星出彰彦・山崎直子 | ISS建設や運用に向けた日本の有人宇宙活動を拡大。 |
| 2009年 | ISS長期滞在時代の本格化 | 日本人宇宙飛行士によるISS長期滞在が始まる。 |
| 2015〜2017年 | 油井亀美也・大西卓哉・金井宣茂 | ISS長期滞在を経験する次世代メンバーが登場。 |
| 2023年 | 諏訪理・米田あゆ | 14年ぶりのJAXA宇宙飛行士候補者として選抜。 |
| 2024年 | 諏訪理・米田あゆ | 基礎訓練を修了し、10月21日付で宇宙飛行士に認定。 |
| 2026年 | 諏訪理 | ISS長期滞在とCrew-14への搭乗が決定。2027年3月以降の打ち上げを予定。 |
JAXAが公表する歴代プロフィールでは、引退した宇宙飛行士は毛利衛、土井隆雄、山崎直子、向井千秋、野口聡一、若田光一、古川聡の7名だ。
これに対し、現役として掲載されている6名を合わせると、JAXAに在籍した宇宙飛行士の歴代メンバーは13名となる。ただし、この13名全員が宇宙飛行を経験しているわけではない。諏訪と米田は宇宙飛行士として認定されているが、2026年11月時点では初飛行前だ。
若田光一が残した日本人宇宙飛行士の実績歴代の中でも若田光一は、日本の有人宇宙活動を語るうえで欠かせない人物だ。
JAXAの飛行履歴によると、若田は5回の宇宙飛行を経験し、宇宙滞在時間は累計504日18時間35分。2014年のISS第39次長期滞在では、日本人として初めてISS船長を務めた。
また、2022年から2023年にかけて参加したCrew-5では、ISSの太陽電池アレイのアップグレードに関わる作業にも貢献した。
若田の実績は、日本人宇宙飛行士の役割が、宇宙実験を行う専門家から、国際宇宙施設全体を運用するリーダーへと広がってきたことを示している。
【宇宙飛行士になるには?】JAXAの採用条件と選抜試験を解説
宇宙飛行士を目指す場合、日本ではJAXAの宇宙飛行士候補者募集が代表的な選択肢となる。ただし、募集は常時行われているわけではなく、募集時期に応じて応募資格や選考方法が定められる。
直近の大規模なJAXA募集は2021年度に開始され、2022年に選抜が行われた。この募集では、応募者の職業や専門分野の幅が広がったことも大きな特徴だった。
JAXA宇宙飛行士の応募資格・採用条件2021年度のJAXA宇宙飛行士候補者募集要項では、主な条件として次の項目が設定されていた。
- 国籍:日本国籍を有すること。
- 実務経験:2022年3月末時点で原則3年以上の実務経験を有すること。
- 学位による経験換算:修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなす規定があった。
- 身長:149.5cm以上190.5cm以下。
- 視力:両眼とも遠距離の矯正視力1.0以上。
- 色覚:正常であること。
- 聴力:背後2mの距離で通常の会話が可能であること。
また、募集要項では法令上の条件なども定められていた。
ただし、これらはあくまで2021年度募集の条件であり、将来の募集でも同じ身長・視力・実務経験の基準が適用されるとは限らない。応募を考える場合は、その時点で公開される最新の募集要項を確認する必要がある。
理系の大学やパイロット経験は必須なのか宇宙飛行士という職業には、理工系大学の卒業やパイロット経験が必須というイメージがある。しかし、2021年度のJAXA募集では、特定の学部や専攻だけに応募資格を限定していなかった。
重要なのは、専門性を持ちながら異なる分野の知識や技術を吸収できることだ。
JAXAは、宇宙飛行士には多様なバックグラウンドが求められると説明している。科学や工学の知識だけでなく、医学、社会科学、国際協力、組織運営などの経験も、宇宙での任務に生かせる可能性がある。
諏訪理の地球科学や国際機関での経験、米田あゆの医師としての専門性は、その多様性を示す具体例だ。
JAXA宇宙飛行士選抜試験の流れ2021年度の募集では、書類選抜から第3次選抜まで、合計5段階の選考が実施された。
JAXAの公式発表によると、応募者は4,127名。最終的に宇宙飛行士候補者として選ばれたのは諏訪理と米田あゆの2名だった。
選考過程の主な内容は次のとおりだ。
- 書類選抜:応募資格、健康診断結果、健康状況申告、エントリーシートなどを審査。
- 第0次選抜:英語試験、一般教養試験、STEM分野の試験、小論文、適性検査など。
- 第1次選抜:宇宙飛行士に必要な能力や資質、運用に関する適性などを評価。
- 第2次選抜:医学検査、医学特性検査、英語や資質に関する面接など。
- 第3次選抜:最終的な適性や人物面などを総合的に評価。
選抜で重視されるのは、知識や学力だけではない。国際チームの一員として活動できるか、困難な状況でも冷静に判断できるか、ほかのメンバーと協力して任務を遂行できるかなども評価の対象となる。
4,127人から2人へ。選抜の難しさを数字で見る2021年度のJAXA募集では、最終的に4,127名が応募した。過去最高だった2008年の963名と比較すると、約4.3倍の応募数だ。
選抜の人数は次のように推移した。
- 応募者:4,127名
- 書類選抜合格者:2,266名
- 第0次選抜合格者:205名
- 第1次選抜合格者:50名
- 第2次選抜合格者:10名
- 最終選抜による候補者:2名
応募者全体に対して候補者に選ばれた割合は約0.05%。単純計算では約2,064人に1人という非常に狭い門だった。
ただし、倍率だけで選抜の本質を判断することはできない。宇宙飛行士には、専門知識、健康状態、精神的な安定性、チームワーク、語学力など、複数の能力を高い水準で組み合わせることが求められる。
【宇宙飛行士の訓練内容】認定まで約2年、その後も続く専門訓練
宇宙飛行士候補者に選ばれたからといって、すぐに宇宙へ行けるわけではない。JAXAへの入構後、候補者は約2年間の基礎訓練を受け、必要な能力や技術を身につける。
2023年に候補者となった諏訪理と米田あゆも、この訓練を経て2024年10月に正式認定された。
基礎訓練は大きく4つの分野に分かれるJAXAが公表する基礎訓練の内容は、主に次の4分野で構成されている。
- 宇宙開発の基礎知識:JAXAの業務、宇宙工学、宇宙機の仕組みなどを学ぶ。
- ISS・きぼうのシステム知識:ISS全体や日本実験棟の設備、運用方法を理解する。
- 科学実験の知識:軌道上で実施する物理学、医学、生物学などの実験に関する知識を身につける。
- 基礎能力訓練:健康管理、体力、航空機操縦、語学、サバイバル技術、スキューバなどを学ぶ。
講義で知識を習得するだけでなく、実技を通じて実際の任務に対応できる能力を身につけていく。
宇宙飛行士が受ける専門的な訓練基礎訓練を終えて宇宙飛行士に認定された後も、訓練は続く。
ISS長期滞在ミッションに選ばれた場合には、搭乗する宇宙船や滞在する施設に応じた専門訓練が必要になる。
主な訓練内容は次のとおりだ。
- 船外活動訓練:宇宙服の操作や船外作業の手順、安全対策を習得する。
- ロボットアーム訓練:ISSのロボットアームを使った機器の操作や移動を学ぶ。
- ISSシステム訓練:電力、通信、生命維持などのシステム操作を習得する。
- 水中訓練:水中環境を利用して無重力に近い状態での作業を練習する。
- サバイバル訓練:緊急着陸や予期しない事態への対応能力を高める。
- 国際訓練:NASAやESAなど各国の宇宙機関と連携して、共通の運用手順を習得する。
2027年のISS長期滞在に向けて準備を進める諏訪理の活動は、訓練がどれほど幅広いかを理解する具体例となる。
JAXAの活動報告によると、諏訪は2025年9月に欧州宇宙機関(ESA)のCAVES訓練に参加した。イタリアの洞窟環境でチームワークや問題解決能力を磨く訓練だ。
2026年には米国での水上サバイバル訓練や、ISSの緊急事態対応、水再生装置、船外活動などに関する準備も進めている。
加えて、NASAの地上管制業務やISSの運用計画にも関わってきた。宇宙飛行士の仕事が、身体能力だけでなく、複雑なシステムを理解してチーム全体を支える能力を必要とすることがよく分かる。
【プロの結論】宇宙飛行士に向いている人とは?宇宙飛行士を目指すうえで、単純に宇宙が好きという気持ちだけでは十分ではない。必要なのは、専門分野を持ち、その知識を異なる環境でも活用できる能力だ。
特に、次のような資質は重要になる。
- 専門的な知識を身につけ、継続的に学習できる。
- 英語を使って国際的なチームと意思疎通できる。
- 予想外の問題が発生しても、落ち着いて対応できる。
- 自分の意見を伝えながら、他者の判断も尊重できる。
- 健康管理や体力維持を長期的に継続できる。
- 異なる文化や価値観を持つ人々と協力できる。
反対に、自分の専門分野だけにこだわり、他人との協力や柔軟な判断を苦手とする場合は、宇宙飛行士の仕事との相性を慎重に考える必要がある。
宇宙飛行士は個人の能力を競う職業であると同時に、チーム全体の成果に責任を持つ専門職でもある。優れた知識や体力に加え、周囲と協力しながら任務を完遂する姿勢が欠かせない。
【よくある質問】宇宙飛行士に関するFAQ
Q1:宇宙飛行士になるには大学の理系学部を卒業する必要がありますか?
A1:2021年度のJAXA募集では、特定の理系学部や専攻に限定されていなかった。文系を含む幅広い専門分野の人材にも応募の機会があった。ただし、実務経験や医学的条件などの要件は設定されていた。
Q2:宇宙飛行士の採用に年齢制限はありますか?
A2:2021年度のJAXA募集では、応募資格に一律の年齢上限は設けられていなかった。ただし、健康状態や実務経験などの条件があり、次回募集では要項を改めて確認する必要がある。
Q3:宇宙飛行士は毎日宇宙にいるのですか?
A3:いいえ。宇宙飛行士は宇宙滞在期間以外にも、地上で訓練や研究、ISSの運用支援、機器の評価、広報などを担当する。宇宙へ行くまでの準備期間も長い。
Q4:諏訪理宇宙飛行士はいつ宇宙へ行きますか?
A4:2026年9月にCrew-14への搭乗が正式決定した。打ち上げは2027年3月以降の予定で、2026年11月時点では具体的な打ち上げ日は確定していない。
Q5:若田光一宇宙飛行士は現在も現役ですか?
A5:若田光一は2024年3月にJAXAを退職している。そのため、2026年のJAXA現役宇宙飛行士6名には含まれない。ただし、5回の宇宙飛行や日本人初のISS船長という実績を持つ歴代の代表的な宇宙飛行士である。
2026年11月現在、日本の宇宙飛行士は新たな段階に入っている。JAXAに在籍する現役メンバーは6名で、星出彰彦、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂という経験豊富なメンバーに、諏訪理と米田あゆが加わっている。
特に諏訪理のCrew-14搭乗決定は、日本の有人宇宙活動にとって大きな節目だ。2027年3月以降に予定されるISS長期滞在では、「きぼう」の運用や科学実験を通じて、これまで日本が蓄積してきた技術と経験を次の時代へつないでいくことが期待される。
宇宙飛行士の仕事は、宇宙空間での実験や船外活動だけではない。地上での訓練、管制業務、機器の評価、国際協力など、幅広い業務が一つのミッションを支えている。
また、宇宙飛行士を目指す人にとって、特定の理系分野やパイロット経験だけが道ではない。専門性、実務経験、語学力、健康、チームワークなど、さまざまな能力を磨くことが求められる。
今後はISSで培った技術を、月周回有人拠点や月面探査、さらに将来の有人火星探査へと発展させることが大きな課題になる。宇宙飛行士は、その最前線で科学と技術、そして国際協力を結びつける存在だ。
宇宙飛行士という職業を理解する際には、「誰が宇宙へ行ったか」だけでなく、「宇宙で何を実現し、その経験を地球にどう還元するのか」という視点を持つことが大切である。
主な確認資料: JAXA有人宇宙技術部門、JAXA公式プレスリリース、NASA Crew-14発表資料。