「自分の血圧は年齢に対して正常なのだろうか」「40代と60代では正常値が違うのでは?」と疑問に感じている人は少なくありません。血圧は加齢とともに高くなる傾向がありますが、実は日本高血圧学会が定める成人の正常血圧に、20代・30代・40代といった年代別の基準はありません。2026年11月現在、基本となるのは2025年8月29日に発行された「高血圧管理・治療ガイドライン2025」です。
同ガイドラインでは、成人の正常血圧を診察室で120/80mmHg未満、家庭で115/75mmHg未満と分類しています。一方、高血圧の診断基準や治療中の目標血圧は別に設定されています。年齢による平均値の違いだけで安心したり、必要以上に血圧を下げたりしないためにも、それぞれの意味を正しく理解することが大切です。
【まず結論】年齢別血圧正常値は存在する?成人の基本基準を解説

年齢別血圧正常値を調べる際、最初に押さえておきたいのは、正常血圧の判定基準と年齢による血圧の変化は別の問題だということです。
日本高血圧学会の2025年版ガイドラインでは、成人の血圧分類は年代ごとに変更されていません。20代でも70代でも、正常血圧の基本的な判定基準は同じです。
成人の正常血圧は120/80mmHg未満診察室で測定する成人の正常血圧は、次の2つを両方満たす状態です。
- 収縮期血圧(上の血圧):120mmHg未満
- 拡張期血圧(下の血圧):80mmHg未満
例えば、血圧が118/76mmHgなら正常血圧の範囲です。一方、115/82mmHgの場合は上の血圧が低くても、下の血圧が80mmHg以上なので正常血圧には分類されません。
上と下の両方を確認することがポイントです。
収縮期血圧と拡張期血圧の違い血圧計に表示される2つの数字には、それぞれ異なる意味があります。
- 収縮期血圧:心臓が収縮して血液を全身に送り出すとき、血管にかかる圧力。一般に「上の血圧」と呼ばれる。
- 拡張期血圧:心臓が拡張して血液を取り込むときの血管内の圧力。一般に「下の血圧」と呼ばれる。
例えば、130/85mmHgなら、収縮期血圧が130mmHg、拡張期血圧が85mmHgという意味です。
どちらか一方だけが高い場合も注意が必要です。特に高齢者では、上の血圧が高く、下の血圧が比較的低い「孤立性収縮期高血圧」が見られることがあります。下の血圧が低いから問題ないと判断するのは適切ではありません。
【基準値を比較】診察室血圧と家庭血圧の正常値・高血圧の違い
血圧の基準値を調べると、120/80mmHgや115/75mmHg、さらには140/90mmHgなど、複数の数字が出てきます。
これらは必ずしも矛盾しているわけではありません。正常血圧の分類、高血圧の診断基準、治療中の目標血圧という異なる目的で使われているためです。
診察室と家庭では正常血圧の基準が異なる日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」に基づく成人の血圧分類では、次のように整理されています。
診察室血圧の正常値は120/80mmHg未満、家庭血圧の正常値は115/75mmHg未満です。
家庭血圧の基準が診察室より5mmHg低く設定されているのは、医療機関では緊張などによって血圧が高くなる場合があるためです。
正常血圧から高血圧までの分類成人の血圧分類を、診察室と家庭に分けて整理すると以下のとおりです。
- 正常血圧:診察室120/80未満、家庭115/75未満。
- 正常高値血圧:診察室120~129かつ80未満、家庭115~124かつ75未満。
- 高値血圧:診察室130~139または80~89、家庭125~134または75~84。
- Ⅰ度高血圧:診察室140~159または90~99、家庭135~144または85~89。
- Ⅱ度高血圧:診察室160~179または100~109、家庭145~159または90~99。
- Ⅲ度高血圧:診察室180以上または110以上、家庭160以上または100以上。
ここでいう「または」は、収縮期血圧と拡張期血圧のどちらか一方でも該当すれば、その分類に当てはまるという意味です。
高血圧の診断基準は140/90mmHg以上正常血圧の上限と高血圧の診断基準は同じではありません。
- 診察室血圧:140/90mmHg以上。
- 家庭血圧:135/85mmHg以上。
上の血圧または下の血圧のいずれかが基準以上の場合、高血圧が疑われます。ただし、1回の測定だけで確定するのではなく、繰り返し測定した値や家庭血圧、健康状態などを踏まえて医師が判断します。
つまり、120/80mmHg未満でなければ直ちに高血圧というわけではありません。正常高値血圧や高値血圧という段階もあり、将来のリスクを見据えた管理が必要です。
【20代から80代まで】年代別血圧正常値と注意したいポイント
年齢別血圧正常値を探している人が最も気になるのは、自分の年代ではどこまでの数値なら問題ないのかという点でしょう。
ここでは20代から80代までの年代別に、成人の共通基準と健康管理上の注意点を整理します。
年代別に見る正常血圧と健康管理のポイント| 年代 | 正常血圧の基準 | 健康管理で意識したいこと |
|---|---|---|
| 20代 | 診察室120/80未満 家庭115/75未満 |
若さだけで安心せず、食生活や睡眠、運動習慣を整える。 |
| 30代 | 同じ基準 | 仕事のストレス、運動不足、体重増加などに注意する。 |
| 40代 | 同じ基準 | 健診結果を確認し、血圧の長期的な変化を把握する。 |
| 50代 | 同じ基準 | 血圧上昇につながる生活習慣や脂質異常症などの併存リスクを確認する。 |
| 60代 | 同じ基準 | 収縮期血圧の上昇や脈圧の変化に注意する。 |
| 70代 | 同じ基準 | 75歳以上では身体機能やフレイル、立ちくらみなども踏まえて管理する。 |
| 80代以上 | 同じ基準 | 日常生活動作、転倒リスク、認知機能、服薬状況を含めて個別に判断する。 |
この表で重要なのは、年代が上がっても正常血圧の分類そのものは変わらないことです。年齢によって血圧が高くなりやすいからといって、高い数値を正常とみなしてよいわけではありません。
20代・30代の血圧正常値20代・30代では、仕事や学業、生活リズムの変化などによって血圧が変動することがあります。
この年代では血圧が低めの人もいますが、成人の正常血圧は120/80mmHg未満という共通基準で判断します。
若いから高血圧にならないという考え方は誤りです。家族に高血圧の人がいる場合や、健診で高い数値を指摘された場合には、家庭血圧も確認するとよいでしょう。
40代・50代の血圧正常値40代・50代は、生活習慣の影響が血圧に表れやすくなる年代です。
体重増加、塩分の多い食事、飲酒、運動不足、睡眠不足などが重なると、血圧が上昇する可能性があります。
この年代では、健診で一度正常と判定されたことだけで安心せず、毎年の数値を比較することが大切です。以前は110mmHg台だった収縮期血圧が130mmHg台に上がってきた場合などは、診断基準に達していなくても生活習慣を見直すきっかけになります。
60代の血圧正常値60代になると、血管の弾力性が低下することなどから、収縮期血圧が上昇する傾向があります。
特に上の血圧だけが高くなる孤立性収縮期高血圧には注意が必要です。例えば、150/75mmHgのように下の血圧が比較的低くても、上の血圧が高ければ放置してはいけません。
上と下の血圧の差である脈圧も含め、医療機関で全体的な評価を受けることが望まれます。
70代・80代の血圧目安と高齢者の血圧目標70代・80代では、血圧の数値だけでなく、身体機能や日常生活の状態を確認する必要があります。
日本高血圧学会の2025年版では、従来のように暦年齢だけで治療方針を分けるのではなく、個人の健康状態や機能状態を考慮する方向性が示されています。
元気に日常生活を送っている75歳以上の人と、フレイルや認知機能の低下、転倒リスクがある人では、同じ血圧でも治療上の判断が異なる場合があります。
80代だから150mmHgでも正常という単純な考え方は適切ではありません。反対に、正常値を目指して自己判断で薬を増やしたり、急激に血圧を下げたりすることも避ける必要があります。
【2025年版ガイドライン】正常血圧と治療目標は何が違う?2026年の最新情報
2026年現在、血圧管理の基準として参照されるのは、日本高血圧学会が2025年8月29日に発行した「高血圧管理・治療ガイドライン2025」です。
日本高血圧学会は2025年7月25日に改訂内容を発表しました。従来の知識中心の内容から、実際に血圧を下げる行動につなげることを重視した構成になっています。2026年3月31日版の正誤表も公式ガイドライン案内ページに掲載されています。
2025年版で示された新しい降圧目標今回の要点は、降圧治療を受ける成人の目標血圧が、原則として年齢によらず統一されたことです。
- 診察室血圧:130/80mmHg未満。
- 家庭血圧:125/75mmHg未満。
ここで注意したいのは、これは高血圧の治療を受ける人が目指す降圧目標であり、正常血圧の分類とは別だということです。
例えば、診察室血圧が128/78mmHgなら、正常血圧ではなく高値血圧に分類されます。一方、治療中の人にとっては130/80mmHg未満という目標を達成している状態です。
この違いを理解すると、インターネット上で見かける「130/80未満が正常値」という説明が、必ずしも正確ではないことが分かります。
なぜ治療目標は正常血圧より高いのか正常血圧は、血圧の分類における健康的な水準を示します。一方、治療目標は、高血圧患者の脳卒中や心血管疾患などの発症リスクを抑えるために設定される実際の管理目標です。
すべての人が正常血圧の数値まで薬で下げなければならないという意味ではありません。
治療の必要性や方法は、血圧の高さだけでなく、年齢、合併症、腎機能、心血管疾患のリスク、副作用などを総合して判断されます。
75歳以上・80代の治療で重視されること2025年版の考え方では、75歳以上でも身体機能が保たれ、治療に十分耐えられる場合には、積極的な血圧管理が検討されます。
ただし、身体機能や認知機能が低下している場合、立ちくらみや起立性低血圧、転倒、腎機能への影響などを考慮した個別の調整が必要です。
特に80代では、血圧の数値だけを追いかけるのではなく、食事や歩行、日常生活を無理なく続けられることも治療の大切な判断材料になります。
高齢者の血圧管理では、自己判断による降圧薬の中止や増量は避け、主治医と目標を共有が必要です。
【毎日の測定方法】家庭血圧の正しい測り方と朝晩の変動
健康診断や病院での測定だけでは、日常生活における血圧の状態を十分に把握できない場合があります。
そのため、日本高血圧学会のガイドラインでも家庭血圧の測定が重視されています。家庭で測定する習慣をつけると、診察室では分からない血圧の変動を把握しやすくなります。
朝の血圧を測るタイミング朝は次の条件を目安に測定します。
- 起床後1時間以内。
- 排尿を済ませた後。
- 朝食を食べる前。
- 朝の降圧薬を服用する前。
- 椅子に座って1~2分程度安静にした後。
朝は、起床後の血圧上昇を確認するうえで重要な測定時間です。特に高血圧の治療中の人は、朝の家庭血圧を継続して記録することが役立ちます。
夜の血圧を測るタイミング夜は就寝前に測定します。
朝と同様、椅子に座って1~2分程度安静にしてから測りましょう。入浴や運動、飲酒の直後などは数値が変動する可能性があるため、毎日できるだけ同じ条件で測定することが大切です。
血圧測定で守りたい7つのポイント- 上腕にカフを巻くタイプの血圧計を使用する。
- 背もたれのある椅子に座る。
- 足を組最初に、足裏を床につける。
- 測定前に1~2分程度安静にする。
- カフを巻いた腕を心臓の高さに保つ。
- 測定中は会話をしない。
- 測定値を都合よく選ばず、すべて記録する。
朝と夜は、それぞれ原則2回ずつ測定し、その平均を参考にします。4回以上繰り返して低い数値が出るまで測ることは推奨されません。
測定値は少なくとも5日間、できれば7日間程度継続して記録し、朝と夜の平均を分けて確認します。
朝と夜で血圧が違うのはなぜ?血圧は一日中一定ではありません。一般的に活動している昼間は高く、睡眠中は低くなる傾向があります。
ただし、朝の起床時に血圧が急激に上がる場合や、夜間になっても血圧が十分に下がらない場合があります。
こうした変動には、睡眠の状態、ストレス、塩分摂取、飲酒、服薬状況などが関係することがあります。
特に朝の血圧が高い状態が続く場合は、家庭血圧の記録を医師に見せて相談しましょう。日中の診察室血圧が正常でも、朝や夜に高血圧が見つかることがあります。
【知っておきたい誤解】年齢別平均値と正常値・白衣高血圧の違い
血圧については、年齢別の平均値と正常値を混同しているケースが少なくありません。また、病院で測った数値と家庭で測った数値が違う場合にも、注意すべきポイントがあります。
年齢別血圧平均値が高くても正常とは限らない年齢別の平均血圧は、同じ年代の人たちを測定して得られた統計上の数値です。正常血圧は、健康管理のために定められた分類基準であり、両者は意味が異なります。
厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査では、20歳以上の収縮期血圧の平均値は男性131.6mmHg、女性126.2mmHgでした。
これは集団全体の平均であり、正常血圧の基準を示すものではありません。平均値が高いからといって、その年代では高い血圧が正常だと判断することはできないのです。
また、平均値には降圧薬を使用している人なども含まれるため、個人の健康状態を評価する際には、平均値だけでなく実際の測定結果や既往歴などを確認する必要があります。
白衣高血圧とは?病院だけで血圧が高くなる状態白衣高血圧とは、医療機関で測定した血圧は高いものの、家庭など診察室以外で測定すると正常範囲になる状態です。
医療機関で緊張することなどが原因となり、普段より高い数値が出る場合があります。
白衣高血圧だからといって、将来も問題がないとは限りません。家庭血圧を継続して測り、定期的に医療機関で確認することが大切です。
仮面高血圧とは?家庭では高いのに病院では正常仮面高血圧は、白衣高血圧とは反対に、診察室では正常範囲なのに家庭や職場では血圧が高くなる状態です。
仕事中のストレス、睡眠時無呼吸症候群、朝方の血圧上昇、降圧薬の効果が切れる時間帯などが関係することがあります。
健康診断で問題がなかったとしても、家庭血圧の平均値が高ければ注意が必要です。
このように、診察室血圧だけでは見つけにくい高血圧もあるため、日常的な家庭血圧の記録には大きな意味があります。
血圧が高いときに見直したい生活習慣血圧の管理では、薬物療法だけでなく日々の生活習慣も重要です。
- 減塩:食塩の摂取量を見直し、加工食品や外食の塩分にも気を配る。
- 適度な運動:体調に合わせてウォーキングなどを習慣にする。
- 体重管理:肥満がある場合は、無理のない方法で体重を管理する。
- 節酒:飲酒量や飲酒頻度を見直す。
- 睡眠:十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を整える。
- 禁煙:喫煙習慣がある場合は禁煙に取り組む。
血圧が高い人は、生活習慣の改善と並行して医師の診察を受けましょう。すでに降圧薬を服用している場合は、数値が改善したからといって自己判断で服薬を中止しないことが大切です。
【年齢別血圧正常値】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:20代・30代の血圧正常値はどれくらいですか?
A1:成人の場合、20代・30代も診察室血圧120/80mmHg未満、家庭血圧115/75mmHg未満が正常血圧の基準です。年代別に異なる正常値は設定されていません。
Q2:60代・70代・80代は血圧が高くても正常ですか?
A2:年齢が上がると血圧は高くなりやすいものの、加齢だけを理由に高い数値を正常と判断することはできません。成人の血圧分類は共通です。ただし、75歳以上では身体機能やフレイル、転倒リスクなどを踏まえた個別の治療目標が検討されます。
Q3:家庭血圧が130/80mmHgなら正常ですか?
A3:家庭血圧130/80mmHgは正常血圧ではありません。家庭血圧の正常値は115/75mmHg未満です。また、130/80mmHgは高値血圧の範囲に該当します。繰り返し同程度の数値が出る場合は、記録を続けて医療機関に相談しましょう。
Q4:血圧の上だけ高い場合も高血圧ですか?
A4:はい。収縮期血圧または拡張期血圧のどちらか一方が高血圧の診断基準に達している場合も、高血圧が疑われます。上の血圧だけが高くなる孤立性収縮期高血圧は高齢者に多く見られるため、下の血圧が低いからといって放置しないようにしましょう。
Q5:2026年現在、血圧の最新基準は変わっていますか?
A5:2026年11月現在、基本となるのは日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」です。正常血圧は診察室120/80mmHg未満、家庭115/75mmHg未満で、治療中の目標は原則として診察室130/80mmHg未満、家庭125/75mmHg未満です。正常血圧の分類と治療目標を混同しないようにしましょう。
年齢別血圧正常値について、最も重要なのは、成人の正常血圧に20代・30代・40代・50代・60代・70代・80代といった年代別の独立した基準はないという点です。
2026年11月現在の基本的な基準は、診察室血圧120/80mmHg未満、家庭血圧115/75mmHg未満です。一方、高血圧の診断基準は診察室140/90mmHg以上、家庭135/85mmHg以上であり、治療中の降圧目標は原則として診察室130/80mmHg未満、家庭125/75mmHg未満となっています。
年代によって血圧が上がりやすくなる傾向はありますが、それを理由に高い数値を正常と考えるのは適切ではありません。特に40代以降は健診結果を継続的に確認し、60代以降は収縮期血圧や家庭血圧にも注意を払いましょう。
また、75歳以上の高齢者では、血圧の数値だけでなく身体機能や日常生活の状態を踏まえた治療が必要です。年齢だけで目標を決めず、医師と相談しながら無理のない管理を続けることが大切です。
毎朝と就寝前の家庭血圧測定を習慣にし、数値を記録することから始めてみてください。単日の結果に一喜一憂せず、継続的な変化を把握することが、将来の脳卒中や心血管疾患の予防につながります。
主な根拠資料:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」、日本高血圧協会の血圧分類・家庭血圧測定に関するQ&A、厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」。