多発性骨髄腫は、血液細胞の一種である形質細胞ががん化する血液のがんです。
形質細胞は、本来、細菌やウイルスなどの異物から身体を守る抗体をつくる役割を担っています。
しかし、形質細胞ががん化すると、骨髄腫細胞が異常に増殖し、正常な抗体とは異なるMタンパクを大量につくるようになります。
この異常なタンパク質が血液や臓器に影響を与え、骨の破壊、腎機能障害、貧血、免疫機能の低下などを引き起こします。
Mタンパクとは何?2026年の検査で注目される理由Mタンパクとは、骨髄腫細胞がつくり出す異常な免疫グロブリン、またはその一部である異常タンパク質です。
正常な抗体は身体を守る働きをしますが、Mタンパクには通常の抗体のような感染防御機能がありません。
そのため、骨髄腫細胞が増えると、正常な免疫機能が妨げられるだけでなく、腎臓などにも負担がかかります。
Mタンパクは、多発性骨髄腫の診断や治療効果の判定、再発の確認に使われる重要な指標です。
2026年現在も、次のような検査が組み合わせて行われています。
- 血清Mタンパクの測定
- 血清免疫グロブリンの測定
- 尿中Mタンパクの測定
- 遊離軽鎖(フリーライトチェーン)の測定
- 骨髄検査による骨髄腫細胞の確認
国立がん研究センターによると、血液検査ではMタンパクだけでなく、クレアチニン、カルシウム、アルブミン、β2ミクログロブリンなども確認します。
つまり、Mタンパクの数値だけで病状を判断するのではなく、腎機能や骨病変、骨髄中の異常細胞などを総合的に評価することが必要です。
多発性骨髄腫は日本でどのくらい発症する?国立がん研究センターの解説によると、日本では人口10万人あたり約6.0人が発症するとされています。
すべてのがんの約1%、血液がんの約10%を占める病気です。
若い世代での発症は比較的まれで、年齢が高くなるほど発症数が増える傾向があります。
ただし、発症率だけでは個人のリスクを判断できません。年齢や健康状態、血液検査の結果などを踏まえた評価が必要です。
【見逃したくない初期症状】腰痛・貧血・骨折に注意

多発性骨髄腫の厄介な特徴は、初期には自覚症状がほとんどない場合があることです。
健康診断や人間ドックの血液検査、尿検査で異常が見つかり、詳しい検査を受けて初めて判明するケースもあります。
進行すると、骨や腎臓、血液をつくる機能などに影響が現れます。
代表的な初期症状・関連症状| 症状 | 主な原因・特徴 |
|---|---|
| 腰痛・背中の痛み | 骨の破壊や圧迫骨折 |
| 貧血・倦怠感 | 赤血球の減少 |
| 息切れ・動悸 | 貧血による酸素運搬能力の低下 |
| 骨折しやすい | 骨がもろくなる |
| 口の渇き | 高カルシウム血症 |
| 便秘・吐き気 | 高カルシウム血症など |
| 感染症にかかりやすい | 免疫機能の低下 |
| 腎機能の低下 | Mタンパクなどによる腎臓への負担 |
今回紹介した著名人の経験にも、症状の違いが表れています。
佐野史郎さんの場合
腎機能障害が発見のきっかけでした。一般的な腰痛や骨折だけでなく、腎臓の異常から多発性骨髄腫が見つかることもあります。
宮川花子さんの場合
腰の激しい痛みが診断につながりました。長引く痛みの背景に、骨の病変が隠れている場合があります。
楠部知子さんの場合
長期間続いた腰痛に加え、骨密度の著しい低下や複数の骨折が判明しました。
3人の経緯からも、症状の現れ方は一様ではないことが分かります。
ただし、腰痛や貧血があるからといって、多発性骨髄腫とは限りません。症状が続く場合や血液検査に異常がある場合は、医療機関で原因を調べることが大切です。
多発性骨髄腫の原因は何?2026年現在も、多発性骨髄腫の明確な原因は解明されていません。
分かっているのは、骨髄腫細胞に遺伝子異常や染色体異常が生じ、形質細胞が異常に増殖するようになることです。
また、年齢が高くなるほど発症が増える傾向も確認されています。
一方、日常生活でのストレスや特定の食べ物などを、直接的な発症原因と断定できる医学的根拠はありません。
有効な予防法も確立されていないため、血液検査や尿検査の異常を放置しないことが大切です。
【治療法を解説】抗がん剤・造血幹細胞移植・最新免疫療法
多発性骨髄腫の治療では、患者の年齢、病気の進行度、腎機能、合併症、染色体異常などを考慮して治療方法を選びます。
必ずしも診断された人全員が、すぐに抗がん剤治療を始めるわけではありません。
1.薬物療法・化学療法治療の中心となるのが薬物療法です。
骨髄腫細胞を減らすために、複数の薬剤を組み合わせて治療します。
主な薬剤の種類には、次のものがあります。
- プロテアソーム阻害薬
- 免疫調節薬
- ステロイド薬
- 抗体医薬・分子標的薬
代表的な薬剤には、ボルテゾミブ、レナリドミド、ダラツムマブなどがあります。
薬剤の組み合わせは患者によって異なり、効果や副作用を確認しながら調整されます。
2.自家造血幹細胞移植佐野史郎さんや楠部知子さんが経験したのが、自家造血幹細胞移植です。
これは患者本人の造血幹細胞を事前に採取・保存し、大量化学療法を行った後に体内へ戻す治療方法です。
治療の基本的な流れは次のとおりです。
1. 複数の薬剤による導入療法を行う。
2. 血液中から造血幹細胞を採取する。
3. 大量化学療法によって骨髄腫細胞をできる限り減らす。
4. 保存しておいた本人の造血幹細胞を体内に戻す。
5. 造血機能の回復を確認しながら経過を観察する。
自家移植は、主に移植に耐えられる体力や臓器機能がある患者が対象です。
国立がん研究センターの解説では、65歳未満で重い合併症などがない患者が代表的な対象として紹介されています。ただし、65歳という年齢は一律の絶対基準ではなく、個々の身体状態によって判断されます。
3.放射線治療骨髄腫細胞は放射線に感受性が高いため、局所的な病変や痛みの緩和を目的として放射線治療が行われる場合があります。
宮川花子さんが2023年に右側の頭蓋骨にできた形質細胞腫に対して放射線治療を受けたことも、この治療法に関連する事例です。
放射線治療だけで全身の多発性骨髄腫を管理するのではなく、必要に応じて薬物療法などと組み合わせます。
4.2026年に注目されるCAR-T細胞療法・二重特異性抗体2026年の多発性骨髄腫治療では、免疫の働きを利用した治療も重要になっています。
日本骨髄腫学会が公開する2026年6月更新の治療アルゴリズムには、次の治療法が掲載されています。
- CAR-T細胞療法:患者のT細胞を利用し、がん細胞を認識して攻撃するように改変する治療。
- 二重特異性抗体:免疫細胞と骨髄腫細胞の双方に結合し、免疫細胞ががん細胞を攻撃するよう促す治療。
特にBCMAという骨髄腫細胞の標的を利用した治療が重要な選択肢になっています。
これらは再発・難治性の多発性骨髄腫などに対する治療選択肢として位置づけられています。
ただし、すべての患者に適用できるわけではなく、病状、過去の治療歴、全身状態、治療施設の条件などを踏まえた判断が必要です。
従来の薬物療法や移植に加えて、新たな治療の選択肢が広がっている点が2026年の大きな特徴です。
【予後・生存率】多発性骨髄腫は治る?再発と寛解の違い
多発性骨髄腫について検索すると、「完治するのか」「余命はどのくらいか」「再発するのか」といった疑問が多く見られます。
現在の医学では、多発性骨髄腫は一般に完全な治癒が難しく、長期的に病気をコントロールしていくことを目指す疾患です。
ただし、治療法の進歩によって長期生存を目指せるようになり、治療後に仕事や日常生活へ戻る患者もいます。
2026年に確認できる5年生存率生存率を確認する際には、どの年代に診断された患者のデータなのかを確認する必要があります。
厚生労働省の全国がん登録による2016~2018年診断例の5年生存率データでは、多発性骨髄腫の5年相対生存率は次のとおりです。
多発性骨髄腫・5年純生存率49.6%
2016~2018年診断例・男女計・15歳以上
集計対象
22,798人
95%信頼区間
48.8~50.4%
出典:厚生労働省「全国がん登録 5年生存率」集計表
この数字は、診断された患者集団についての統計です。個々の患者の余命を示すものではありません。
また、2016~2018年に診断された人のデータであるため、2026年現在の最新治療を受けた患者の成績がそのまま反映されているわけでもありません。
生存率は病期、染色体異常、年齢、腎機能、治療への反応などによって変わります。
したがって、数字だけを見て個人の予後を決めつけることはできません。
寛解と完治は同じではない多発性骨髄腫の闘病報道でよく登場する言葉が「寛解」です。
寛解とは、治療によって病気の症状や検査上の異常が大きく改善した状態を指します。
一方、完治は病気が治り、再発の心配がなくなった状態を意味します。
両者は同じではありません。
佐野史郎さんは2026年8月のテレビ出演で、約3年前に寛解したと説明しながらも、再び病気が進行する可能性を意識していると語りました。
この発言は、寛解後も定期的な検査や健康管理が続くことを示しています。
多発性骨髄腫は再発しやすい?国立がん研究センターは、多発性骨髄腫について、治療後に再発したり、再び病気が進行したりする可能性が高いと説明しています。
そのため、治療が終わった後も定期的な血液検査や画像検査などによる経過観察が必要です。
再発が確認された場合には、これまでの治療歴や薬剤への反応を踏まえて、別の薬剤や免疫療法などが検討されます。
再発したからといって、直ちに治療の選択肢がなくなるわけではありません。
芸能人4人の経過から分かること- 佐野史郎さん:寛解後も維持療法や定期的な検査を意識。
- 宮川花子さん:治療を続けながら生活の質と舞台復帰への希望を大切にしている。
- 岸博幸さん:薬剤の副作用にも対応しながら、社会活動を継続。
- 楠部知子さん:移植を経験し、医療や映画などの活動を通して闘病経験を発信。
同じ病名でも、治療の内容や身体への影響、社会復帰の形は大きく異なります。
【山本太郎氏は患者なのか?】「多発性骨髄腫の一歩手前」の発言を検証
多発性骨髄腫に関連して、2026年1月に大きな話題になったのが、れいわ新選組の山本太郎氏の発表です。
2026年1月21日、山本氏は党の公式YouTubeチャンネルで、健康上の理由から参議院議員を辞職し、無期限の活動休止に入る考えを明らかにしました。
その際、自身の健康状態について「多発性骨髄腫、その一歩手前」と説明しています。
山本太郎氏は多発性骨髄腫と診断されたのか?ここは誤解しやすいポイントです。
山本氏が公表したのは、多発性骨髄腫の確定診断ではなく、「一歩手前」という表現です。
この発言だけでは、具体的な病型や検査数値、医学的な診断名までは分かりません。
例えば、多発性骨髄腫には、次のような段階や関連疾患があります。
- MGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)
- くすぶり型多発性骨髄腫
- 症候性多発性骨髄腫
MGUSやくすぶり型では、直ちに治療を必要としない場合があり、定期的な検査で経過を観察することがあります。
ただし、山本氏がどの状態に該当するのかは、公表情報だけでは判断できません。
したがって、佐野史郎さんや宮川花子さんなど、確定した多発性骨髄腫を公表した人と同じ扱いにするのは適切ではありません。
【多発性骨髄腫芸能人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:多発性骨髄腫を公表した芸能人・有名人は誰ですか?
A1:代表的な公表者には、俳優の佐野史郎さん、漫才師の宮川花子さん、経済評論家の岸博幸さん、精神科医で俳優の楠部知子さんがいます。山本太郎氏も関連する健康状態を公表していますが、確定診断を公表した4人とは区別が必要です。
Q2:佐野史郎さんは2026年現在、多発性骨髄腫が再発していますか?
A2:2026年8月の「徹子の部屋」では、約3年前に寛解し、現在も検査数値に問題がないと説明しています。公表された情報からは、再発したとは確認できません。
Q3:宮川花子さんは現在も治療を受けていますか?
A3:はい。2026年の報道では、投薬や化学療法を続けていることが伝えられています。車椅子での生活を送りながらも、夫の大助さんとともに漫才の舞台への復帰を目指しています。
Q4:多発性骨髄腫の初期症状は何ですか?
A4:初期には自覚症状がほとんどない場合があります。進行すると腰痛、骨の痛み、骨折、貧血、息切れ、腎機能障害、感染症にかかりやすくなるなどの症状が現れることがあります。
Q5:多発性骨髄腫は完治しますか?
A5:一般的には完全な治癒が難しい病気ですが、薬物療法や造血幹細胞移植、免疫療法などで長期的に病気をコントロールすることを目指せます。寛解後も再発の可能性があるため、定期検査が必要です。
Q6:多発性骨髄腫の生存率はどのくらいですか?
A6:2016~2018年診断例の全国がん登録データでは、15歳以上の男女計の5年純生存率は49.6%です。ただし、これは集団の統計値であり、個人の予後を直接示すものではありません。
2026年11月現在、多発性骨髄腫を公表した著名人の状況は、それぞれ異なっています。
- 佐野史郎さん:寛解後の検査数値に問題がないと報告し、俳優活動を継続。
- 宮川花子さん:治療を続けながら、なんばグランド花月での漫才復帰を目標にしている。
- 岸博幸さん:治療と仕事、趣味を両立しながら活動。
- 楠部知子さん:自家造血幹細胞移植を経験し、映画制作や漫才にも挑戦。
- 山本太郎氏:多発性骨髄腫の一歩手前と説明しており、確定診断を公表した人とは異なる。
多発性骨髄腫は、初期症状が分かりにくく、治療後も再発への注意が必要な病気です。しかし、薬物療法や自家造血幹細胞移植、CAR-T細胞療法、二重特異性抗体など、治療の選択肢は広がっています。
今回紹介した著名人の経験からも、治療を受けながら仕事に戻る人、新しい活動に挑戦する人、日々の生活を大切にする人など、それぞれの向き合い方があることが分かります。
大切なのは、病名だけで将来を決めつけないことです。検査結果、治療への反応、合併症、生活環境などを総合的に考えながら、専門医とともに治療方針を選んでいくことが大切です。