DHは英語の「Designated Hitter」の頭文字を取った略称です。日本語では「指名打者」と訳されます。
通常の野球では、投手も9人の打順の中に入り、自分の打席が回ってくると打者として出場します。一方、DH制を採用した試合では、投手とは別に打撃専門の選手を指定し、投手の代わりに打席へ立たせることができます。
つまり、DH制は守備を担当する選手と、投手の代わりに打撃を担当する選手を分ける仕組みです。
DHは守備位置ではなく、打撃の役割DHについて間違えやすいのが、遊撃手や三塁手のような守備位置の一つだと考えてしまうことです。
DHは守備位置ではありません。あくまで、投手に代わって打席に立つ役割です。
試合中、DHは基本的にベンチで待機し、打順が回ってくると打席に入ります。守備側に回ったときは、ほかの野手が守備を担当します。
例えば、次のようなチーム編成が可能です。
- 投手:投球に専念する。
- 捕手:捕球や送球、守備の指揮を担当する。
- 内野手・外野手:それぞれの守備位置を担当する。
- DH:投手の打順に入り、打撃に専念する。
この仕組みによって、守備力に課題があっても打撃力が高い選手をスターティングメンバーに起用しやすくなります。
DHにはどんな選手が起用される?DHに選ばれる選手に、年齢や体格などの特別な条件はありません。チームの戦術や選手構成によって起用方法が変わります。
代表的なのは次のような選手です。
1. 打撃力に優れた選手
長打力や出塁能力に優れ、打撃でチームに貢献できる選手です。守備に就かせるよりも、打撃に専念させた方がチームの戦力を生かせる場合に起用されます。
2. 守備面に課題がある選手
打撃能力は高いものの、守備力や走力に課題がある選手もDHに向いています。
3. ベテラン選手
年齢や体力面を考慮し、守備による負担を減らしながら打撃力を生かす目的で起用されることがあります。
4. 守備から復帰する選手
故障からの復帰過程にある選手について、守備に就かせず打撃から実戦復帰させる選択肢にもなります。ただし、実際の起用は故障の状態やチームの判断によります。
DHは単なる控え選手の出場枠ではありません。打撃を軸にチームの攻撃力を組み立てるための重要な役割です。
【打順とポジション】DHは何番を打つ?投手との違いも解説

DHの打順に固定された番号はありません。
監督がチームの打線を考え、1番から9番までの好きな打順にDHを配置できます。一般的には、長打力や打点を期待できる選手を中軸に置くことがありますが、出塁能力を重視して上位打線に起用することも可能です。
DHを入れると選手は何人になる?通常の野球では、投手1人と野手8人の合計9人が守備につきます。
DH制を採用すると、守備につく9人に加えて指名打者が1人加わり、基本的に打順表には10人が記載されます。
| 比較項目 | DH制なし | DH制あり |
|---|---|---|
| 守備につく人数 | 9人 | 9人 |
| 打撃に参加する人数 | 9人 | 10人 |
| 投手の打撃 | 投手自身が担当 | DHが代わりに担当 |
| 打撃専門選手 | 原則なし | 起用できる |
| 打順 | 9人で構成 | 10人で構成 |
| 投手の交代時 | 打順にも影響 | 原則としてDHは継続 |
重要なのは、DH制でも守備につく人数は9人のままだということです。DHが加わることで、守備人数が10人になるわけではありません。
DHは何番に置くのが効果的?DHの打順は、選手の特徴によって変わります。
- 3番:高い打率と出塁能力を生かす。
- 4番:長打力と打点を期待する。
- 5番:中軸の後ろで得点機会を広げる。
- 6番以降:下位打線の攻撃力を補強する。
もちろん、これは戦術上の一例であり、規則で指定された打順ではありません。
また、DHは投手の打順を引き継ぐ役割なので、ほかの野手の代わりに自由に指定できるわけではありません。
【公認野球規則5.11】DHの交代ルールと消滅する条件を整理
DH制を理解するうえで欠かせないのが、公認野球規則5.11です。
この規則には、指名打者の登録方法や交代、投手との兼任などが定められています。
特に試合観戦で知っておきたいのは、DHは自由に交代できるわけではないという点です。
1. DHは試合開始前に申告するDH制を使う場合、試合前に提出するオーダー表へ指名打者の名前と打順を記載しなければなりません。
試合開始前にDHを使わないと決めた場合、途中から新たにDHを追加することはできません。
DHを採用するかどうかは、試合開始前に決める必要があります。
2. DHには最初の打席を完了する義務がある試合開始時に登録されたDHは、相手チームの先発投手に対して、少なくとも1度は打撃を完了しなければ交代できません。
例えば、打撃力の高い選手を先発DHとして登録し、最初の打席に立たせずに別の選手へ交代するような、いわゆる「当て馬」の起用は認められていません。
ただし、相手の先発投手が交代した場合は、この打撃完了義務の例外となります。
3. DHに代打・代走を送ることはできるDHに代打を送ることは可能です。
この場合、代打で出場した選手が新しいDHとして打順を引き継ぎます。
代走についても同様で、DHに代わって出場した代走者が以後の指名打者の役割を引き継ぎます。
つまり、DHは試合終了まで同じ選手が担当しなければならないわけではありません。
4. DHが守備につくとどうなる?DHを守備位置につかせることもできます。
しかし、この場合はDH制が消滅します。
例えば、3番DHの選手を外野手として守備につかせると、投手がその選手の代わりに3番の打順を引き継ぐことになります。
DHを守備に回すこと自体は禁止されていませんが、元のDH制度を維持したまま守備も担当させることはできません。
5. DHが消滅する主なケース日本高等学校野球連盟が公開している公認野球規則5.11の解説では、次のようなケースがDH消滅の条件として示されています。
- 投手がマウンドから別の守備位置に移った場合。
- 代打者や代走者が、そのまま投手になった場合。
- 投手がDHの代打または代走として出場した場合。
- DHが守備位置についた場合。
- ほかの守備位置にいた選手が投手になった場合。
これらの条件に該当すると、原則としてその試合中にDHを復活させることはできません。
試合中に守備位置を変更する際は、DHが継続するのか消滅するのかを正しく判断する必要があります。
【大谷ルールとは】投手とDHを兼任できる特別な仕組み
大谷ルールとは、先発投手がDHを兼任し、投手としての出場と打者としての出場を別々に扱える制度です。
公認野球規則5.11(b)に定められています。
このルールは、投打の両方で活躍する二刀流選手の能力を最大限に生かすための仕組みです。
通常のDH制では投手と打者は別の選手従来のDH制では、投手がマウンドに立ち、DHがその投手の代わりに打席に立つという関係でした。
そのため、投手自身が打席に立つ場合には、DHを放棄する必要がありました。
ところが、投手としても打者としても高い能力を持つ選手の場合、この仕組みでは打撃面の能力を十分に生かせません。
そこで導入されたのが、いわゆる大谷ルールです。
大谷翔平選手のような二刀流選手に対応
選手
投手と打者の両方でプレーする二刀流選手を象徴する存在です。大谷選手のように先発投手とDHを兼任する起用が、この規則を理解する代表的な例になります。
大谷ルールを使う場合、監督は試合開始前のオーダー表に同じ選手を2度記載します。
- 1つ目:先発投手
- 2つ目:指名打者
記録上は2つの役割を持つ選手として扱われます。
このため、投手を降板した後もDHとして打席に立ち続けることが可能です。
投手とDHを兼任した場合の交代条件| 試合中の状況 | ルール上の扱い |
|---|---|
| 先発投手とDHを兼任して出場 | 可能 |
| 投手を降板してDHを継続 | 可能 |
| DHを交代して投手を継続 | 可能 |
| 一度退いた役割に再び戻る | 不可 |
| 投手とDHの両方を交代 | 可能。ただし後任が両方を兼任する形で引き継ぐことはできない |
例えば、大谷選手が先発投手とDHを兼任しているとします。
途中で投手として降板しても、DHの役割を続けることができます。一方、DHとしての出場を終えても、投手として続投することは可能です。
ただし、一度退いた役割に再び戻ることはできません。
この点は、単純に投手とDHを自由に入れ替えられる制度ではないことを示しています。
大谷ルールは救援投手にも適用される?ここは誤解しやすいポイントです。
5.11(b)の特別な二刀流扱いは、試合開始時に先発投手とDHを兼任する選手として登録することが前提です。
試合途中から救援投手が登板した場合、その投手が自動的に大谷ルールの対象になるわけではありません。
また、DHとして出場していた選手を途中から投手に変更する通常の交代と、先発投手が最初から投手とDHを兼任する特例は区別する必要があります。
【2026年最新】高校野球とプロ野球のDH制導入スケジュール
2026年は、国内野球界でDH制が広がる節目の年です。
これまでプロ野球ではセ・リーグとパ・リーグで異なるルールが採用されていましたが、高校野球でも制度が導入され、セ・リーグも2027年からの採用を決めています。
DH制の歴史と日本野球界の動き制度の変遷を時系列で整理すると、次のようになります。
日本のプロ野球で先にDH制を取り入れたのはパ・リーグです。
1975年に導入されました。
NPBの公式歴史資料では、1974年11月に翌年から2年間の試行期間を設けて指名打者制を採用することが決定した経緯も確認できます。
当時のパ・リーグは、観客動員や試合の魅力向上などの課題を抱えており、打撃を重視した試合展開を目指す動きがありました。
以降、パ・リーグではDH制が定着し、投手が打席に立たない野球が基本となりました。
セ・リーグはなぜ2027年までDH制を導入しなかった?セ・リーグは長年、投手も打席に立つ9人野球を維持してきました。
投手の打撃や、チャンスで投手に代打を送るかどうかという監督の判断も、セ・リーグの試合の特徴として親しまれてきたためです。
しかし、野球界の環境が変化する中で、セ・リーグも制度の見直しを進めました。
2025年8月4日、セ・リーグは2027年シーズンからのDH制導入を正式に決定しました。
NPBの発表では、国際大会への対応や高校・大学野球での導入など、国内外の野球界の変化が決定の背景として挙げられています。
また、2026年シーズンは導入に向けた準備期間と位置付けられました。
高校野球は2026年度からDH制を採用高校野球でも、2026年度シーズンからDH制が採用されています。
日本高等学校野球連盟は、公認野球規則5.11の要点や具体的な試合のケースを公式サイトで公開しています。
2026年1月29日には、DH制を高校野球特別規則に明記したことも報じられました。
高校野球での導入は、選手起用にも影響を与える変更です。
例えば、投手としての能力が高い選手を打撃の負担から解放できる一方、打撃に優れた控え選手の出場機会を確保しやすくなります。
また、大谷ルールに対応した運用も示されており、投打の両方に秀でた選手の活躍にも配慮されています。
【徹底比較】DH制ありとなしの違い!メリット・デメリットは?
DH制の導入は、単に投手が打席に立たなくなるだけの変更ではありません。
選手の役割、監督の采配、チーム編成、試合の見どころまで変化します。
DH制のメリットメリット1:投手が投球に専念できる
投手は投球や守備に集中しやすくなります。
打撃や走塁による負担を考慮せず、投球を中心に試合を組み立てられる点は大きな特徴です。
メリット2:攻撃力を高められる
投手の打順に打撃力のある選手を起用できるため、打線全体の攻撃力を高めやすくなります。
特に得点圏に走者がいる場面では、投手に代打を送るかどうかという問題がなくなり、打撃専門の選手に勝負を任せられます。
メリット3:選手の活躍の場が広がる
守備力に課題がある選手や、打撃に特化した選手も先発出場しやすくなります。
ベテラン選手や故障から復帰する選手にとっても、打撃能力を生かす機会が増えます。
メリット4:国際大会とのルール統一が進む
MLBでは2022年から両リーグでDH制が採用されています。
国内でもセ・リーグが2027年に導入すれば、プロ野球のリーグ間でルールが統一されます。
国際的な野球環境との共通性が高まる点も利点です。
DH制のデメリット一方、DH制には注意すべき点もあります。
デメリット1:投手交代をめぐる駆け引きが減る
DH制がない野球では、投手に打順が回ってきた際、続投させるか代打を送るかという判断が必要です。
好投している投手を打席に立たせるのか、それとも攻撃を優先して交代させるのか。
この判断は、セ・リーグの野球を特徴付けてきた要素の一つです。
DH制を採用すると、こうした場面は基本的になくなります。
デメリット2:控え選手の出場機会が変化する
投手に代打を送る機会が減るため、控えの野手が試合に出場する機会も変わります。
特に打撃専門の選手がDHに定着すると、控え選手との競争が激しくなる可能性があります。
デメリット3:選手層の厚さが重要になる
DHに適した強打者を確保できるチームは、打線を強化しやすくなります。
一方、打撃に優れた選手が少ないチームは、DHの枠を十分に生かせない可能性があります。
そのため、チームの選手層や育成方針が、これまで以上に重要になると考えられます。
DH制あり・なしの違いを観戦目線で比較| 観戦ポイント | DH制あり | DH制なし |
|---|---|---|
| 投手の打席 | 基本的になし | あり |
| 打線の厚み | 強打者を追加できる | 投手の打撃も含めて構成 |
| 代打の駆け引き | 投手の打順では基本的になし | 投手交代と連動 |
| 投手の役割 | 投球に集中しやすい | 打撃・走塁も担当 |
| 監督の采配 | DHの交代や打線構成が重要 | 継投と代打の判断が重要 |
| 試合の魅力 | 攻撃力と打撃専門選手の活躍 | 投手の打席や交代の駆け引き |
どちらが優れているかは、野球のどの部分を重視するかによって異なります。
打撃力の高い選手が多く登場する試合を楽しみたい人にはDH制が魅力的です。
一方、投手の打席や代打をめぐる監督の采配を楽しみたい人には、DH制なしの野球にも独自の面白さがあります。
【プロの結論】2027年以降の野球観戦で注目したいポイント
2026年の制度変更を踏まえると、DH制は単なる打撃専門選手の登録制度ではなく、野球の戦術や選手育成に関わる仕組みだと分かります。
特に注目したいのは、次の3点です。
1. DHの選手選びがチームの個性を左右するDHに誰を起用するかは、監督の戦術が表れる部分です。
長打力のある選手を置くのか、出塁率の高い選手を置くのか、ベテラン選手の経験を生かすのか。
同じDH制でも、チームによって起用方法は異なります。
2. 投手の打撃能力をどう評価するかDH制の普及によって、投手が打席に立つ機会は減っていきます。
一方、大谷ルールのように投打の能力を両立させる制度も存在します。
投手として優秀でありながら、打者としても高い能力を持つ選手をどう育てるのかは、今後も野球界の興味深いテーマです。
3. セ・パの野球の違いがどう変わるか2027年からセ・リーグもDH制を採用すると、長年続いてきたセ・パのルールの違いがなくなります。
これまでのセ・リーグでは投手の打席を含めた戦術が求められましたが、今後は両リーグともDHを含めた打線構成が基本になります。
ただし、ルールが統一されても、チームごとの戦術や選手育成の特徴まで同じになるわけではありません。
各球団がどのようなDHを育て、どのような選手を獲得するのかにも注目が集まります。
【野球のDH】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:野球のDHとは何の略ですか?
A1:DHはDesignated Hitterの略です。日本語では指名打者といい、投手の代わりに打席に立つ選手を指します。
Q2:DHは守備をすることがありますか?
A2:守備につくこと自体は可能です。ただし、DHが守備につくと原則として指名打者制度は消滅し、投手がその選手の打順を引き継ぎます。
Q3:DHは何番を打つのですか?
A3:決まった打順はありません。監督が1番から9番までの任意の打順に配置できます。打撃力や出塁能力など、選手の特徴に応じて決められます。
Q4:DHは試合途中から追加できますか?
A4:できません。DHを使用するかどうかは試合開始前に決め、オーダー表に記載する必要があります。
Q5:DHに代打や代走を出せますか?
A5:出せます。代打や代走として出場した選手が、新たなDHの役割を引き継ぎます。ただし、先発DHには最初の打席を完了する義務があります。
Q6:大谷ルールとは何ですか?
A6:公認野球規則5.11(b)に定められた特例です。先発投手がDHを兼任でき、投手を降板した後もDHとして打席に立ち続けられます。
Q7:2026年から高校野球でもDH制が始まったのですか?
A7:はい。日本高等学校野球連盟は2026年度シーズンからDH制を採用しています。公認野球規則5.11に基づく運用が行われています。
Q8:セ・リーグのDH制はいつから始まりますか?
A8:2027年シーズンからです。2025年8月4日にセ・リーグが正式決定しました。2026年シーズンは導入に向けた準備期間です。
Q9:パ・リーグのDH制はいつから始まったのですか?
A9:1975年です。パ・リーグが日本のプロ野球で先に指名打者制を採用しました。
野球のDHとは、投手の代わりに打席に立つ指名打者のことです。守備を担当せず、打撃に専念することで、チームの攻撃力を高める役割を担います。
公認野球規則5.11では、DHの登録や交代、制度が消滅する条件などが定められています。また、大谷ルールによって先発投手がDHを兼任できるようになり、投打の二刀流選手も能力を発揮しやすくなりました。
2026年度から高校野球でDH制が採用され、2027年にはセ・リーグにも導入されます。1975年から続いてきたパ・リーグとの制度の違いが解消されることで、日本のプロ野球は新しい段階に入ります。
これから野球を観戦するときは、単に誰が打席に立つかだけでなく、なぜその選手がDHに選ばれたのか、投手交代によってDHがどう変化するのかにも注目してみてください。選手起用や監督の采配が、これまで以上に深く楽しめるはずです。