今回の欠航問題で最も重要なのは、2,312便という数字の対象範囲だ。
Flight Master DASTのデータを引用したサウスチャイナ・モーニング・ポストの報道では、2026年7〜8月に欠航したのは、中国本土から日本へ向かう予定便。日本発中国行きの便を含む、日中間の全航空便を合算した数字ではない。
7月・8月の欠航実績| 項目 | 2026年の実績 |
|---|---|
| 7月の欠航便 | 1,195便 |
| 7月の欠航率 | 31.4% |
| 7〜8月の欠航便合計 | 2,312便 |
| 7〜8月の欠航率 | 30.7% |
| 9月の欠航推計 | 780便 |
7〜8月の欠航率は、およそ3便に1便が運航されなかった計算になる。夏休みや家族旅行、留学関連の移動が増える時期だけに、利用者への影響は小さくない。
加えて、同報道では航空アナリストの李漢明氏による9月の状況も紹介されている。同氏の集計では、9月に欠航した中国・日本間の便は780便に上り、対象は150〜200路線に及んだという。
ただし、9月の780便は航空券が販売されていない状況などから推計した数字であり、7〜8月の2,312便と完全に同じ集計方法とは限らない。単純に合算することはできない。
30.7%を自分の航空券の欠航確率と考えてはいけないここは誤解されやすいポイントだ。
30.7%は、対象期間の中国本土発日本行きの予定便に対する欠航割合である。日本発の便や中国国内線を含む全航空便の欠航率ではない。
また、東京・大阪などの主要空港と地方空港では、運航会社や便数、代替ルートの選択肢が異なる。
したがって、30.7%という数字だけで、自分が予約した中国便の欠航可能性を判断することはできない。重要なのは、航空会社、便名、出発日、発着空港を個別に調べることだ。
【欠航理由と真相】日中関係・需要低迷・機材繰りの3つが重なった

中国便の欠航を理解するには、外交問題だけでなく、航空会社の経営判断と運航上の事情を分けて考える必要がある。
1.日中関係の緊張と中国政府の渡航自粛要請大きな転換点となったのは2025年11月だ。
2025年11月14日、中国外務省は中国国民に対して日本への渡航を控えるよう注意喚起した。背景には、高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁などを受けた日中関係の悪化がある。
翌15日には日本政府側も中国側に申し入れを行い、両国間の人的交流への影響が懸念される状況となった。さらに16日には、中国の文化観光当局も日本旅行を控えるよう呼びかけた。
外務省の2026年版外交青書によると、中国政府による渡航自粛要請後、2025年12月の中国からの訪日者数は前年同月比で約45%減少した。
2025年通年では中国からの訪日者数は約909万6,000人に達していたものの、年末には状況が大きく変化していた。
2026年1月26日にも中国外務省は春節期間中の日本旅行について自粛を呼びかけた。
その結果、中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空の大手3社は、日本路線の航空券について変更・キャンセル料を免除する特別対応を延長した。
この措置は2026年10月24日までの対象便を含むものだった。
航空会社にとって、旅行者が予約を取り消す状況が続けば、予定どおりの座席供給を維持する経済的なメリットは小さくなる。
予約状況を見ながら運航便数を減らすことは、経営上の合理的な判断にもなる。
2.訪日需要の低下と航空会社の路線再編もう一つの大きな理由が、旅行需要の変化だ。
サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、2026年7〜8月、中国本土からの海外旅行先として日本はトップ3から外れ、韓国、タイ、マレーシアが上位となった。
中国の航空会社は、需要が比較的強いアジア各国へ航空機や座席供給を振り向けていたという。
興味深いのは、中国国内の航空需要そのものが大きく落ち込んでいたわけではない点だ。
Flight Masterの推計では、2026年7月1日から8月末までの中国国内航空会社の旅客輸送量は1億5,364万件に達し、前年同期比4.4%増だった。国際線の旅客輸送量も3.1%増加していた。
つまり、中国の航空市場全体が縮小したというより、日本路線の需要が弱まり、航空会社が限られた運航資源を別の市場に振り向けたという構図が見えてくる。
3.機材繰りによる欠航と路線採算の問題航空会社が発表する欠航理由には「機材繰り」という表現がある。
これは、予定していた航空機を別の路線に回す必要が生じたり、機材の整備・運用計画を変更したりすることで、当初の便を運航できなくなる状況を指す。
特に便数が少ない地方路線では、機材や乗務員の配置変更が路線全体に影響しやすい。
ただし、機材繰りという説明があったからといって、必ずしも航空機の故障や安全上の問題が起きたわけではない。
また、航空会社が公表した理由と、背景にある市場環境は別の問題だ。需要の減少が運航計画の変更につながり、結果として機材繰りが必要になることもある。
関係する企業・組織と欠航問題の関係| エンティティ | 関係・役割 | 確認できる事実 |
|---|---|---|
| Flight Master DAST | 航空データ提供 | 7〜8月の欠航2,312便、欠航率30.7% |
| 中国外務省 | 渡航政策 | 2025年11月から日本への渡航自粛を呼びかけ |
| 中国国際航空 | 航空会社 | 日本路線の特別な航空券変更・払い戻し対応を発表 |
| 中国東方航空 | 航空会社 | 日本路線の特別対応や地方路線の欠航が発生 |
| 中国南方航空 | 航空会社 | 欠航・変更時の非自発的払い戻し制度を案内 |
| 長崎県 | 地方自治体 | 長崎・上海便の欠航期間を公表 |
| ANA | 日系航空会社 | 中国系航空会社の減便による需給変化を決算資料で説明 |
【地方路線の現状】静岡・上海便と長崎・上海便はいつ再開する?
中国便の欠航問題は、東京や大阪などの大都市だけの話ではない。
地方空港では、運航便数が少ないため、一本の定期便が長期間運休すると、旅行者や地域経済への影響が大きくなる。
特に注目したいのが、静岡・上海便と長崎・上海便だ。
静岡・上海便:中国東方航空が運休を継続静岡空港と上海浦東国際空港を結ぶ路線では、中国東方航空による運休が続いている。
SBS静岡放送の2025年12月17日の報道によると、上海便は2025年11月には月18便運航されていたが、12月に入ると4往復に減少。12月13日以降は全便が欠航した。
同社は静岡県に対し、2026年1月から3月28日までの欠航を連絡し、理由を「機材繰りのため」と説明していた。
一方、報道では、中国政府による日本への渡航自粛要請など、政治情勢の影響も背景として指摘されていた。
2026年11月6日時点で確認できる静岡県日中友好協議会の中国線時刻表でも、上海線のMU2020便・MU2019便は運休中と表示されている。
当初の運休期間として記載されている2026年10月23日を過ぎても、掲載上は運休状態が続いている。したがって、現時点では具体的な運航再開日を確定情報として扱うことはできない。
長崎・上海便:2027年3月27日まで欠航長崎空港と上海浦東国際空港を結ぶ定期便も、長期間の欠航が決まっている。
2026年9月18日、KTNテレビ長崎は、中国東方航空が長崎県に対し、上海便を2027年3月27日まで欠航すると連絡したと報じた。
同路線は2025年12月から欠航が続いており、今回の延長で運休期間がさらに長くなった。
注目すべきは、今回の欠航理由について、中国東方航空が「市場原因」と説明したことだ。
これは、航空会社が市場環境を踏まえて運航を見送っていることを示す。機材繰りとは異なる説明であり、路線の採算や需要の問題が関係していると考えられる。
長崎県も2026年9月28日更新の国際定期航空路線情報で、長崎・上海線について週2便(月曜日・金曜日)の運航予定を掲載しながら、2027年3月27日まで欠航すると明記している。
地方路線の運航状況比較| 路線 | 航空会社 | 2026年11月時点の状況 |
|---|---|---|
| 静岡〜上海 | 中国東方航空 | 運休中。再開日の確定情報なし |
| 長崎〜上海 | 中国東方航空 | 2027年3月27日まで欠航予定 |
| 長崎〜ソウル | 韓国系航空会社 | 週3便運航中 |
地方路線については、運休期間の終了日と実際の運航再開日を混同しないことが大切だ。航空会社が運航再開を発表し、空港の最新時刻表に反映されるまでは、予約可能な状態かどうかを慎重に確認したい。
【運航状況の確認方法】中国発日本行き・日本発中国行きを調べる手順
中国便の欠航を調べる際は、検索エンジンに表示されるニュースだけで判断するのではなく、予約した便そのものの情報を確認する必要がある。
1.航空会社の公式運航情報を確認する最初に調べたいのは、実際に航空機を運航する航空会社の情報だ。
主な確認先は次のとおり。
| 航空会社 | 確認する情報 |
|---|---|
| CA便の運航状況、特別対応、予約変更 | |
| MU便の運航状況、欠航・払い戻し通知 | |
| CZ便の運航状況、変更・返金条件 | |
| NH便および提携航空会社の運航情報 | |
| JL便およびコードシェア便の運航情報 |
航空会社の公式サイトやアプリでは、便名と搭乗日を指定して運航状況を確認できる。
特に重要なのは、航空券に記載された便名だけでなく、実際の運航会社も確認することだ。
例えば、JAL便名で購入していても、実際には中国東方航空が運航するコードシェア便の場合がある。その場合、運航変更に関する最新情報は実際の運航会社から確認する必要がある。
2.空港の公式フライト情報を確認する空港の出発・到着案内も有効だ。
- 成田空港・羽田空港:国際線出発・到着情報
- 関西国際空港:国際線フライト情報
- 中部国際空港:出発・到着便情報
- 富士山静岡空港:国際線運航状況
- 長崎空港:本日のフライト・月間時刻表
航空会社のメール通知が届いていなくても、空港の発着案内で欠航が表示されることがある。
ただし、空港の表示が更新されるタイミングと航空会社の通知には時間差が生じる可能性がある。
3.Flight Master DASTのデータは何に使える?Flight Master DASTは、中国の航空便の動向を分析するうえで参考になるデータ提供元だ。
今回の2,312便、30.7%という数字も同社のデータに基づく報道で注目された。
ただし、こうした統計は市場全体の傾向を把握するためのものだ。個人の予約が確実に運航されるか、払い戻しが認められるかを決めるものではない。
旅行直前の判断では、航空会社の予約管理画面や公式運航情報を優先したい。
欠航情報を確認するときのチェック項目- 予約番号と航空券番号が正しいか
- 出発日と到着日を間違えていないか
- 便名と実際の運航会社が一致しているか
- 出発便だけでなく帰国便も確認したか
- 乗り継ぎ便への影響がないか
- 航空会社から変更・払い戻しの通知が届いていないか
特に往復航空券では、往路の欠航だけでなく復路の予約状態も確認することが重要だ。
【中国国際航空・東方航空・南方航空】欠航時の変更・払い戻しとキャンセル料
中国便が欠航した場合、最も気になるのは航空券代が戻ってくるのか、別の日に無料で変更できるのかという点だろう。
ここで重要なのは、航空会社側の都合による欠航と、旅行者自身の都合によるキャンセルは扱いが異なるということだ。
中国国際航空:特別対応の対象期間に注意中国国際航空は2026年1月26日、日本路線を対象とする航空券の特別対応を発表した。
対象には、2026年1月26日12時までに購入・再発券された999から始まる航空券で、2026年3月29日から10月24日までの対象路線を含む旅程など、複数の条件が設定されていた。
この特別対応では、初回の変更手数料免除や未使用区間の払い戻し手数料免除などが案内されていた。ただし、運賃差額などは別途発生する場合がある。
注意したいのは、2026年11月6日時点では、この特別対応の対象となる搭乗期間が終了していることだ。
今後の搭乗便や新たに購入した航空券に、同じ無料変更・返金条件が自動的に適用されるわけではない。
中国東方航空:欠航理由と対象便によって条件が変わる中国東方航空も2026年1月26日に日本関連路線の特別対応を公表している。
対象航空券や旅行期間、取消手続きの時期などに条件が設けられていた。
また、2026年10月には台風「蔷琵」の影響を受ける便について、対象便の前後3日以内への変更を1回無料とし、未使用区間の非自発的払い戻しについて手数料を免除する特別措置を発表している。
これは台風の影響を受けた対象便に関する措置であり、すべての日本路線の欠航に適用されるものではない。
中国南方航空:非自発的払い戻し制度を確認中国南方航空の公式案内では、航空会社側の理由や天候、航空交通管制などによって出発便が欠航・遅延した場合、非自発的な変更や払い戻しの制度が説明されている。
航空会社の対応によっては、後続便への振り替えや経路変更、非自発的払い戻しが選択肢となる。
公式案内では、対象条件を満たす場合、変更手数料を免除した変更を1回行える制度も紹介されている。
また、航空会社側の理由で出発地において欠航・遅延した場合と、天候や空港など航空会社以外の理由で欠航した場合では、食事や宿泊の対応が異なる。
欠航時に返金を受けるための手続き実際に欠航通知を受け取った場合は、次の順序で進めるとよい。
STEP 1:欠航通知を保存する
航空会社から届いたメール、SMS、アプリの通知画面を保存する。便名、搭乗日、欠航理由が分かる情報も残しておきたい。
STEP 2:変更と払い戻しの条件を確認する
航空会社の公式窓口に連絡し、次の点を確認する。
- 無料で変更できる日付の範囲
- 払い戻し手数料の有無
- 運賃差額や税金の扱い
- 往復航空券や乗り継ぎ便への影響
- 返金の申請期限と受取方法
STEP 3:購入した窓口で手続きする
航空会社の公式サイトで購入した場合は、公式サイトや航空会社の窓口で手続きする。
旅行予約サイトや旅行代理店で購入した場合は、原則として購入元にも連絡し、手続き方法を確認する。
STEP 4:ホテルや別の交通機関も確認する
航空券が返金されても、ホテル代や現地交通費まで自動的に返金されるわけではない。
宿泊施設のキャンセル規定、旅行保険、クレジットカード付帯保険なども確認する必要がある。
特に乗り継ぎを含む旅行では、航空券が別々に購入されているか、同一の航空券として発券されているかによって対応が変わることがある。
【プロの結論】中国便の欠航リスクを見極めるために必要な判断基準
2026年の中国便の欠航問題は、単純に航空会社の運航トラブルとして片付けられるものではない。
日中関係、旅行需要、航空会社の路線再編、機材の配置という複数の要素が結びついている。
特に重要なのは、統計上の欠航率と個別路線の運航状況を分けて考えることだ。
旅行を計画する際には、次の3つを判断基準にしたい。
第一に、地方路線の運航継続性を確認する。
静岡・上海便や長崎・上海便のように、運休期間が長期化している路線は注意が必要だ。運航再開予定日だけでなく、実際に航空券が販売され、航空会社の公式時刻表に反映されているかを確認する。
第二に、予約した航空券の条件を把握する。
無料変更・払い戻しの特別措置は、航空会社、発券日、搭乗期間によって異なる。過去に発表された無料キャンセル措置が、現在の航空券にも適用されるとは限らない。
第三に、旅行日程に代替手段を確保する。
出張や留学、重要なイベントなど、到着日時を変更できない旅行では、別の直行便や乗り継ぎルートも調べておきたい。ホテルや現地交通機関も、航空便の変更に対応できる予約条件を選ぶとリスクを抑えやすい。
【中国飛行機欠航】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:中国便の欠航率30.7%は、日本発中国行きも含んでいますか?
A1:含まれていない。2026年7〜8月の2,312便、30.7%という数字は、中国本土発日本行きの予定便を対象としたものだ。日本発中国行きの欠航率を示す数字ではない。
Q2:中国国際航空・中国東方航空・中国南方航空の航空券は、欠航したら必ず全額返金されますか?
A2:必ずしもすべてのケースで同じ条件になるわけではない。航空会社側による欠航なのか、旅行者自身の都合によるキャンセルなのか、また特別対応の対象航空券なのかによって異なる。欠航時は航空会社の非自発的払い戻し規定を確認したい。
Q3:静岡・上海便と長崎・上海便は2026年11月に運航再開していますか?
A3:2026年11月6日時点で、静岡・上海便は公開されている時刻表で運休中。長崎・上海便については、長崎県が2027年3月27日までの欠航を公表している。いずれも再開日については最新の航空会社・空港発表を確認する必要がある。
2026年7〜8月、中国本土発日本行きの予定便では、2,312便が欠航し、欠航率は30.7%に達した。
その背景には、2025年11月以降の日中関係の緊張、中国人旅行者の訪日需要の変化、航空会社による路線再編や機材繰りなどがある。
特に地方路線では、静岡・上海便の運休継続や、長崎・上海便の2027年3月27日までの欠航など、影響が長期化している事例も確認できる。
一方、すべての中国便が欠航しているわけではない。大都市間の路線と地方路線、航空会社ごとに運航状況は異なる。
旅行者が取るべき行動は明確だ。
- 航空会社の公式運航情報を確認する。
- 便名・搭乗日・実際の運航会社を照合する。
- 欠航通知を受けたら、変更と払い戻しの条件を確認する。
- 地方路線は運航再開日が公式に確定しているか確認する。
- 往復便や乗り継ぎ便、宿泊先への影響も調べる。
中国便の予約では、統計上の欠航率よりも、自分が利用する便の最新情報と返金条件を把握することが最も重要だ。 日中間の航空需要や外交関係は今後も変化する可能性があり、2027年春以降の地方路線の再開状況も引き続き注目される。