最初に押さえたいのは、飛行機の事故に遭う確率と、墜落事故に遭う確率、事故によって死亡する確率は、それぞれ異なる数字になるという点です。
事故全体なら約75万9,646便に1件IATAの2025年安全報告によると、世界の航空会社が運航した約3,870万便のうち、事故として集計されたのは51件でした。
事故率は100万便あたり1.32件。IATAが公表した換算値では、次のようになります。
2025年の航空事故全体の発生率0.000132%

1回の運航に換算した概算値
1.32件
100万便あたり
759,646便
事故1件あたりの運航回数
出典:IATA 2025 Annual Safety Report。事故全体の発生率であり、墜落・死亡事故だけの確率ではありません。
この数字は、飛行機に1回乗ると約75万9,646回に1回の割合で、何らかの航空事故が発生するという統計上の目安です。
ただし、事故には着陸時の機体損傷、滑走路からの逸脱、地上での接触なども含まれます。
そのため、これをそのまま「飛行機が墜落する確率」と解釈するのは間違いです。
飛行機の死亡事故に遭遇する確率は?2025年に発生した死亡事故は8件でした。
全38.7百万便を分母として単純計算すると、死亡事故の発生頻度は次のようになります。
- 事故全体:100万便あたり1.32件
- 死亡事故:100万便あたり約0.207件
- 死亡事故1件あたり:約484万便
これは2025年の単年データから算出した概算です。
一方、IATAが公表した2021~2025年の5年間の平均では、死亡事故は約560万便に1件という水準でした。
つまり、単年の数字には年ごとの変動があるものの、死亡事故そのものは非常にまれです。
乗客個人が死亡する確率はさらに別の指標ここで注意したいのが、死亡事故の発生確率と、乗客1人が死亡する確率は同じではないことです。
国際民間航空機関(ICAO)の2025年版安全報告では、2024年の定期商業航空輸送について、次の数字が公表されています。
- 輸送旅客数:約45億2,800万人
- 死亡者数:296人
- 死亡率:10億人の旅客輸送あたり65人
この死亡率を単純換算すると、約1,538万人の旅客輸送につき1人の死亡者に相当します。
ただし、これは世界全体の旅客輸送量を分母とした統計指標です。乗客だけの死亡者数を用いた個人別の厳密な確率ではなく、搭乗する路線や条件による差も反映していません。
覚えておきたいのは、事故全体の数字だけで飛行機の死亡リスクを判断してはいけないということです。
【IATA 2025年安全報告を徹底分析!100万便あたりの事故率】
2026年11月時点で、世界の航空安全を比較するうえで重要な最新の通年資料が、IATAの2025年安全報告です。
IATAは国際航空運送協会の略称で、世界の航空会社が参加する国際的な業界団体です。
2026年3月9日に発表された同報告では、2025年の航空事故全体の発生率は2024年より改善しました。一方、死亡事故の件数や機内死亡者数は前年を上回っています。
2024年と2025年の航空事故率を比較以下はIATAの公式発表に基づく比較です。
出典:IATA「2025 Annual Safety Report」。事故率は100万便あたり。機体別の数値も同じ単位です。
この比較から見えてくるのは、事故全体の発生率と死亡事故の発生状況が必ずしも連動しないという事実です。
2025年は事故総数が54件から51件に減り、事故率も1.42から1.32に改善しました。
しかし、死亡事故は7件から8件に増加し、機内死亡者数も244人から394人に増えています。
なぜ事故率が改善しても死亡者が増えるのか理由は、事故の発生件数と事故の重大度が別の要素だからです。
例えば、着陸時に機体の一部が滑走路に接触した事故と、機体の制御を失って大きな被害が生じた事故では、同じ1件でも結果が大きく異なります。
2025年の死亡者数については、IATAが具体例としてエア・インディア171便の事故(機内死亡者241人)と、PSA航空5342便の事故(64人)を挙げています。この2件だけで機内死亡者全体の77%超を占めました。
つまり、死亡者数はごく少数の重大事故によって大きく変動します。
このため、航空会社や航空業界の安全性を評価するときは、単年の死亡者数だけではなく、事故率の長期推移や死亡事故の発生頻度も合わせて見る必要があります。
IATA加盟航空会社と非加盟航空会社の違い同じ2025年の報告には、航空会社の安全監査に関する比較も掲載されています。
IATAのIOSA(IATA Operational Safety Audit)登録航空会社の事故率は100万便あたり0.98件で、非登録航空会社の2.55件を下回りました。
また、IATA加盟航空会社全体の事故率は0.72件で、非加盟航空会社の3.09件より低い結果でした。
ただし、これは各グループの統計上の比較です。加盟や登録だけで個々の便の安全性が保証されるわけではありません。
【墜落事故と航空事故の違いとは?数字を誤解しないための基礎知識】
飛行機墜落確率を調べる際、意外に見落とされやすいのが「航空事故」という言葉の範囲です。
航空事故は、一般にイメージされる大規模な墜落事故だけを指す言葉ではありません。
航空法で定められている航空事故の範囲国土交通省の航空輸送安全報告では、航空法などに基づく航空事故の定義が説明されています。
主な対象は次のとおりです。
- 航空機の墜落、衝突、火災
- 航空機による人の死傷や物件の損壊
- 航空機内にいる人の死亡や行方不明
- 他の航空機との接触
- 航行中に機体が大修理を必要とする損傷を受けた事態
例えば、旅客機が着陸時に滑走路へ機体の一部を接触させて損傷した場合や、飛行中の乱気流によって乗客が負傷した場合なども、条件によって航空事故に該当します。
一方、重大インシデントは事故が発生するおそれがあった事態です。
滑走路への誤進入、エンジンの異常、非常脱出など、事故に至らなかったものの安全上重要な事態が含まれます。
事故・重大インシデント・墜落の違い| 用語 | 意味 | 墜落との関係 |
|---|---|---|
| 航空事故 | 人の死傷や機体の重大損傷などを伴う事態 | 墜落は一部 |
| 墜落事故 | 航空機が地面や水面などに墜落する事故 | 航空事故の一種 |
| 死亡事故 | 事故によって死亡者が発生した事態 | 必ずしも大規模な墜落とは限らない |
| 重大インシデント | 事故につながるおそれがあった事態 | 事故には至っていない |
この違いを理解すると、ニュースで報じられる「航空事故が発生」という見出しだけで、墜落や乗客全員の死亡を想像する必要がないことが分かります。
なぜ航空事故率には軽微な事故も含まれるのか航空業界では、重大な事故だけを分析していては安全性を高められません。
機体の損傷や着陸時の異常、地上での接触といった事象にも、将来の重大事故につながる危険要因が隠れている可能性があります。
そのため、航空事故全体を広く集計し、事故に至った要因や運航環境を分析する仕組みが採用されています。
事故率が高く見える統計でも、その数字だけから墜落リスクが高いとは判断できないのです。
【国内線と国際線はどっちが安全?ジェット機とプロペラ機も比較】
日本国内で飛行機に乗る場合、国内線と国際線のどちらが安全なのかも気になるところです。
また、地方路線で使用されるプロペラ機と、幹線・国際線で多く使用されるジェット機の安全性も比較されます。
ここでは国土交通省の最新資料とIATAの機体別統計を確認します。
国土交通省の2025年度安全報告国土交通省は2026年9月1日、「航空輸送の安全にかかわる情報(令和7年度)」を公表しました。
この資料は、2025年4月から2026年3月までの本邦航空運送事業者の安全情報をまとめたものです。
報告によると、2025年度に発生した航空事故は8件、重大インシデントは2件でした。
ここで重要なのは、8件すべてが大型旅客機の墜落事故という意味ではないことです。
事故には回転翼航空機の事故や、飛行中の乱気流による負傷、地上走行中の機体接触、落雷や鳥との衝突による機体損傷などが含まれています。
特に、2025年4月6日に発生した佐賀航空の回転翼航空機の事故では、海上への不時着水により搭乗者3人が死亡しました。
このように、日本の航空安全統計を読むときも、対象となる航空機の種類と運航形態を確認する必要があります。
日本の大手航空会社では乗客死亡事故が長期間発生していない国土交通省の報告には、注目すべき記録も掲載されています。
客席数100席超または最大離陸重量50,000kg超の航空機を使用する特定本邦航空運送事業者では、1986年以降、乗客の死亡事故が発生していません。
これは日本の大手航空会社を対象とする重要な安全実績です。
ただし、日本国内のすべての航空機、ヘリコプター、小型機などを含めた事故がゼロという意味ではありません。
国内線と国際線の安全性は比較できる?国土交通省の2025年度資料には、日本の航空運送事業者について、国内線定期便と国際線を合わせた航空事故発生率の推移が掲載されています。
一方、同資料の比較グラフでは両者が合算されているため、国内線と国際線それぞれの事故率を直接比較することはできません。
また、飛行時間や距離、離着陸回数、就航地域なども異なるため、単純な事故件数だけで安全性を決めることは適切ではありません。
国内線だから必ず安全、国際線だから危険という判断にも根拠はありません。
ジェット機とターボプロップ機の事故率比較続いて、機体の種類を比較します。
IATAの2025年統計では、次の結果になっています。
100万便あたりの事故率
ジェット機1.03件
ターボプロップ機4.08件
IATA 2025年統計。ターボプロップ機の事故率はジェット機の約3.96倍です。
数字だけを見ると、ターボプロップ機の事故率が高くなっています。
しかし、これは死亡事故率の比較ではありません。
ターボプロップ機は、地方路線や短距離路線などで使用されることが多く、運航環境や空港条件、運航便数の構成もジェット機とは異なります。
加えて、2025年の死亡事故はジェット機4件、ターボプロップ機4件でした。
したがって、事故率の違いをそのまま「プロペラ機はジェット機より約4倍危険」と読み替えることはできません。
機体の種類だけで安全性を判断するのではなく、運航環境や事故の重大度を含めて評価する必要があります。
【飛行機事故の原因と発生状況は?2025年のデータから分析】
飛行機事故は、ひとつの原因だけで発生するとは限りません。
機体の構造や整備状況、気象条件、空港設備、操縦・運航管理など、複数の要素が関係する場合があります。
IATAが公表した2025年の主な事故パターンIATAの2025年安全報告では、事故の多かった分類として次の項目が挙げられています。
1.テールストライク
離着陸時に機体の尾部が滑走路に接触する事象です。
機体の損傷につながることがあり、着陸操作や機体姿勢の管理が重要になります。
2.着陸装置に関する事象
着陸装置の作動や損傷などに関係する事故です。
着陸時の安全性を維持するため、整備や点検が欠かせません。
3.滑走路逸脱
着陸または離陸時に航空機が滑走路から外れる事象です。
滑走路の状態、雨や雪、横風、機体の速度管理などが関係します。
4.地上での機体損傷
空港内での移動や地上作業中に機体が損傷する事故です。
航空事故という言葉から飛行中の墜落を想像しがちですが、地上で発生する事故も統計の対象になります。
加えて、2025年は死亡事故の主要因のひとつとされる飛行中の制御喪失(LOC-I)が発生しませんでした。IATAによると、これは2020年以来2回目の記録です。
空港の設備も事故の重大度に影響する同報告では、空港施設が2025年の事故の16%に関係していたとされています。
滑走路周辺の障害物や設備、照明、路面の状態などは、航空機の安全に影響する要素です。
事故そのものの発生を防ぐだけでなく、事故が起きた場合に被害を大きくしない空港設計も求められています。
運輸安全委員会は事故をどのように調査する?日本では、運輸安全委員会(JTSB)が航空事故や重大インシデントの原因調査を行っています。
同委員会の役割は、事故が起きたという事実を確認するだけではありません。
事故の経緯を科学的に分析し、再発防止につながる安全上の問題を明らかにすることです。
2026年版の交通安全白書によると、2025年度に調査対象となった航空事故等は28件で、同年度に34件の調査報告書が公表されています。
また、国土交通省の安全報告には、実際の運航に関する事例も掲載されています。
例えば、貨物重量の入力間違いや、整備作業における確認不足、管制指示の認識違いなどです。
こうした事例は、重大な墜落事故とは異なるものの、航空安全を維持するうえで見逃せない情報です。
事故の発生を防ぐには、機体の性能だけでなく、操縦士、整備士、管制官、空港職員など、多くの関係者による安全管理が必要になります。
【飛行機墜落確率は過去より低下?2026年最新の長期推移】
航空事故率は、長期的には改善してきました。
IATAの資料によると、2005年の事故率は100万便あたり3.72件でした。
それに対し、2025年は1.32件です。
単純比較すると、約20年間で事故率は約64.5%低下しています。
過去と現在の死亡事故リスクIATAは、死亡事故の5年間の移動平均についても比較しています。
- 2012~2016年:死亡事故1件あたり約350万便
- 2021~2025年:死亡事故1件あたり約560万便
この比較では、死亡事故の発生頻度も改善しています。
単年の事故件数が増減しても、5年間の平均を見ることで長期的な安全性の変化を把握できます。
ICAOの統計では2024年に事故率が一時的に上昇一方、ICAOの2025年版安全報告では、2024年の世界の定期商業航空輸送について、事故率は100万便あたり2.56件と発表されています。
2023年の1.87件から36.8%増加した数字です。
2024年には事故95件、死亡事故10件、死亡者296人が記録されました。
ただし、この数字をIATAの2025年の1.32件と単純比較してはいけません。
ICAOの集計は、最大離陸重量5,700kg超の固定翼機による定期商業運航を対象としており、事故の分類やデータ収集方法もIATAとは異なります。
異なる統計機関の数字を並べる際には、対象範囲と定義を確認することが欠かせません。
2026年の飛行機安全性を判断するときのポイント2026年11月時点では、2025年の通年データが世界の航空安全を比較する最新の確定資料です。
2026年の通年事故率はまだ確定していないため、現段階では2025年の結果と長期的な推移を中心に評価するのが適切です。
また、国土交通省の2025年度報告は2026年9月に公表されており、日本の航空会社の安全情報を確認するための最新資料のひとつです。
【プロの結論】飛行機の墜落確率を正しく判断するための3つの基準
飛行機の安全性を考える際、最も大切なのは数字の意味を正しく理解することです。
基準1:事故率と死亡事故率を混同しない100万便あたり1.32件という数字は、あらゆる航空事故を含めた発生率です。
墜落事故だけの確率でも、乗客が死亡する確率でもありません。
飛行機の安全性を調べるなら、事故全体、死亡事故、乗客死亡率を区別して確認しましょう。
基準2:単年の数字より長期的な平均を見る航空事故は発生件数が少ないため、1件の重大事故によって死亡者数や死亡事故率が大きく変化します。
そのため、単年の数字だけで航空業界全体の安全性が悪化したと判断するのは早計です。
IATAの5年平均や過去20年間の推移を組み合わせることで、より実態に近い判断ができます。
基準3:国内外の航空会社の安全情報を確認する航空会社の安全性を調べるときは、次のような情報が参考になります。
- 国土交通省が公表する航空輸送の安全情報
- IATAの航空会社安全監査制度IOSA
- ICAOの国際航空安全統計
- 運輸安全委員会が公表する事故調査報告書
ただし、統計上の事故率だけで特定の便の安全性を予測することはできません。
航空安全は、機体、整備、運航管理、空港設備、国際基準などが組み合わさって成り立つものです。
【飛行機墜落確率に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:飛行機に1回乗ると墜落する確率は何%ですか?
事故全体の発生率なら、IATAの2025年統計では約0.000132%です。ただし、これは墜落事故だけの確率ではありません。死亡事故は2025年に8件で、事故全体の51件とは区別する必要があります。
Q2:飛行機に乗って死亡する確率はどれくらいですか?
ICAOの2024年統計では、旅客輸送量10億人あたり65人の死亡者が記録されています。単純換算で約1,538万人の旅客輸送につき1人に相当します。ただし、個々の乗客に対する厳密な死亡確率ではありません。
Q3:国内線と国際線ではどちらが安全ですか?
国土交通省の2025年度報告では、国内線定期便と国際線を合わせた事故率が掲載されています。両者を分けた直接比較はできないため、国内線と国際線のどちらかが必ず安全とは断定できません。
Q4:プロペラ機はジェット機より危険ですか?
IATAの2025年統計では、ターボプロップ機の事故率は100万便あたり4.08件、ジェット機は1.03件でした。ただし、これは事故全体の比較であり、死亡事故率の比較ではありません。運航環境や路線の違いも考慮する必要があります。
Q5:飛行機の事故率は昔より下がっていますか?
はい。IATAによると、2005年の100万便あたり3.72件から、2025年は1.32件まで低下しています。死亡事故の5年間の平均発生頻度も改善しています。
Q6:飛行機事故の原因は何が多いですか?
2025年のIATA報告では、テールストライク、着陸装置に関する事象、滑走路逸脱、地上での機体損傷などが主な事故分類として挙げられています。気象条件、空港設備、整備、運航上の要因などが関係します。
Q7:2026年の飛行機は過去と比べて安全ですか?
長期的な統計では、航空事故率は大きく低下しています。2026年11月時点で最新の通年比較に使えるIATAのデータは2025年分です。日本では国土交通省が2026年9月に2025年度の安全情報を公表しています。
飛行機墜落確率を調べると、100万便あたり1.32件という数字が目に入ります。しかし、この数字は墜落事故だけでなく、機体損傷や滑走路逸脱なども含む航空事故全体の発生率です。
2025年のIATA統計では、世界の事故総数は51件、死亡事故は8件でした。事故率全体は前年より改善した一方、死亡者数は増加しており、事故の件数と重大度を分けて見る必要があります。
日本では、国土交通省の2025年度安全報告により、国内航空会社の安全情報や事故の発生状況が公表されています。また、大手航空会社における1986年以降の乗客死亡事故ゼロという長期的な実績も確認できます。
飛行機は、技術革新や安全管理の積み重ねによって事故率を長期的に低下させてきました。飛行機に乗る際には、センセーショナルな事故ニュースの印象だけに左右されず、IATA・ICAO・国土交通省などが公表する統計を基準に安全性を判断することが大切です。